陰陽五行学説 大分大学医学部 演者:安東、森、清田、堤、冨來、丸目
歴史 易:宇宙のとらえ方 陰陽五行説=陰陽説+五行説 中国の春秋戦国時代(B.C.770~B.C.221)に陰陽説と五行説が結びついた。 封神演義の周~三国志~秦の始皇帝の時代 医学のみならず中国哲学の根幹をなしている。 例 天文、暦算、地理、農業・・・ 日本には5~6世紀ごろに伝わった。 現在の曜日はその名残で、木火土金水に日(陽)と月(陰)を加えたものが用いられてる。
陰陽学説
陰陽学説の関係 ①依存関係 ②対立・制約関係 ③消長と平衡 ④転化
①依存関係 陰と陽はそれぞれ単独で存在することはできない。 2つの相対するものがあってこそ生まれる概念である。 例) 上は陽で、下は陰であるが、 上がなければ、下は存在せず、同様に下がなければ上もない。
②対立・制約関係 ・陰と陽は、互いに依存しあっているだけでなく、互いに対立してもいる。 ・制約とは、陰陽は互いに一方を牽制し、相手と自身とを常にバランスの取れた状態にしているということである。
③消長と平衡 【陽消陰長】・【陰消陽長】 陰陽の関係は、一方が増えると一方が減少する。 例)冬→春・夏、夏→秋・冬 【陽長陰消】・【陰長陽消】 陽気の産生には一定の陰液の消耗を要する 陰液の化生には一定の陽気の消耗を要する 正常範囲内であれば、【平衡】、 これが崩れると、【陰陽失調】になる。
④転化 一定の条件下で陽が陰に転化し、陰が陽に転化すること 例)夏至・冬至 急性熱病(実熱証→虚寒証) 一般的には、陰陽の一方の状態が最高度に達したときに、他方に転化する可能性が生じる。 例)夏至・冬至 急性熱病(実熱証→虚寒証)
中医学での運用 ①組織構造の説明 ②病理変化の説明 ③診断 ④治療 ⑤薬性と用薬
①組織構造の説明 人体の臓器や部位にも陰陽の関係が存在する。 組織構造 陽 陰 部位 上部 体表 背部 外側 下部 体内 腹部 内側 臓 腑 人体の臓器や部位にも陰陽の関係が存在する。 組織構造 陽 陰 部位 上部 体表 背部 外側 下部 体内 腹部 内側 臓 腑 臓と腑 六腑 五臓 臓と臓 心 肺 肝脾腎 臓内部 心陽 腎陽 心陰 腎陰
②病理変化の説明 陰陽平衡が崩れた状態 病気 [病理変化の基本] 陰陽偏盛&陰陽偏衰 陰陽偏盛:何か悪いものが体の中に 邪気の盛実(実証) 入ってきてあばれている状態 陰陽偏衰:体の中に本来ないといけない 正気の不足(虚証) ものが不足している状態
③診断 疾病の発生・進行・変化は基本的に陰陽失調が存在するので、それを陰陽で概括する。 例)八綱弁証 → 表・熱・実は陽、裏・寒・虚は陰 疾病の発生・進行・変化は基本的に陰陽失調が存在するので、それを陰陽で概括する。 例)八綱弁証 → 表・熱・実は陽、裏・寒・虚は陰 診法 陽証 陰証 望診 色つや鮮やか 色つや暗い 問診 熱はあるが寒がらない 冷たいものを飲みたがる 寒がるが熱はない 口渇はない 聞診 話声は高くよく響く 口数は多い 話声は低く弱々しい 口数は少ない 切診 浮、数、大、滑、実脈 沈、遅、小、渋、虚脈
④治療 疾病の発生と進行の基本は陰陽失調 →陰陽平衡を取り戻すことが治療の基本 ⅰ)陰陽の不足を補う ⅱ)余分なものを取り除く 例) →陰陽平衡を取り戻すことが治療の基本 ⅰ)陰陽の不足を補う ⅱ)余分なものを取り除く 例) 陰陽偏盛は邪気亢盛の実証→『実はこれを瀉す』 陰陽偏衰は正気不足の虚証→『虚はこれを補う』
⑤薬性と用薬 陰 陽 薬性 寒涼 温熱 薬味 酸、苦、鹹 辛、甘、淡 作用 沈降、収斂 昇浮、発散 寒涼の陰薬は陽証に 温熱の陽薬は陰証に 酸・苦・鹹の通下・涌吐作用 辛・甘・淡は発散・補益作用 沈降の陰薬は病邪の攻瀉 昇浮の陽薬は邪気の発散
五行学説
概念 五行学説では、すべての事物は木・火・土・金・水という5種類の物質の運動と変化によって生成すると考えられ、五行の間には「相互に生みだし(相生)、相互に制約する(相克)」という関係がある。
特性 木・・・樹木のように屈曲・伸長する性質 「木は曲直をいう」 火・・・炎のように温熱・上昇する性質 「火は炎上をいう」 木・・・樹木のように屈曲・伸長する性質 「木は曲直をいう」 火・・・炎のように温熱・上昇する性質 「火は炎上をいう」 土・・・大地のように万物を生み出し、受け入れる性質 「土は万物を生じる」 金・・・金属のように重く沈む性質と状態を変革する性質 「金は従革をいう」 水・・・みずのように潤い、寒冷する性質 「水は潤下をいう」
五臓 中医学では生体を肝・心・脾・肺・腎という5つの機能的構成要素に分割して理解している 肝は全身の気を運行させ、精神を安定させる性質を持つ→木 心は温熱作用を持つ→火 脾は栄養物を消化吸収する性質を持つ→土 肺は吸気と水分を各臓器へ下ろす性質を持つ→金 腎は全身を潤す性質を持つ→水 「肝」・・・自律神経、中枢神経、肝臓、筋骨格系など 「脾」・・・胃、脾臓、口、唇など
五行分類表 五行 木 火 土 金 水 人 体 五臓 肝 心 脾 肺 腎 五腑 胆 小腸 胃 大腸 膀胱 五体 筋 脈 肉 皮 骨 五官 目 舌 口 鼻 耳 五液 涙 汗 涎 涕 唾 五華 爪 面 唇 毛 髪 五声 呼 笑 歌 泣 呻 五志 怒 喜 思 悲 恐
五行分類表 五行 木 火 土 金 水 自 然 界 五季 春 夏 長夏 秋 冬 五方 東 南 中 西 北 五気 風 暑 湿 燥 寒 五色 青 赤 黄 白 黒 五味 酸 苦 甘 辛 鹹 五化 生 長 化 収 蔵
五行の生・克・乗・侮 相生: 五行間で相互に生み出す関係 相克: 五行間の相互に制約する関係 相生: 五行間で相互に生み出す関係 相克: 五行間の相互に制約する関係 五行はそれぞれ孤立したものではなく、相生と相克によって絶えず変化し、バランスを維持している。 相乗 相侮 協調関係がくずれた後の相互影響
相生 五行のうちある1行が、別の1行に対して資生・促進・助長に作用すること。 木生火、火生土、土生金、金生水、水生木
相克 五行のうちある1行が、別の1行に対して制約、抑制的に作用すること。 木克土、土克水、水克火、火克金、金克木
相乗・相侮 相乗 相克の過剰なもの。 相侮 相克の関係が逆になること。 -克する側がより強くなる。 -克される側がより弱くなる。 相克の過剰なもの。 -克する側がより強くなる。 -克される側がより弱くなる。 相侮 相克の関係が逆になること。 -克する側がより弱くなる。 -克される側がより強くなる。
五臓における 相生関係 腎の精は、肝を養う。 肝が蔵している血は、心を助ける。 心の熱は、脾を温める。 脾が化生する水穀の精微は、肺を満たす。 肺の粛降作用により、水が下降して腎水を助ける。
五臓における相克関係 肺は吸気や水分を行き渡らせることにより、肝陽の上亢を抑制する。 肝は全身の働きを伸びやかにし、脾気が滞らないようにする。 脾は飲食物の消化吸収により、腎水が氾濫しないよう制御する。 腎は潤いを与え、心火が亢進しないよう防止する。 心は陽熱により、肺気の粛降が過剰にならないよう制約する。
臓腑間の病理的影響 相生関係による伝変 「母病子及」 「子病犯母」 相克関係による伝変 相乗・相侮
診断面での応用 体内の病変は相応した体表の組織・器官に反映され、色・音声・形態・脈象などに変化が表れる。 例) 心火で顔が赤くなる。 例) 心火で顔が赤くなる。 肝気鬱結で弦脈になる。 木 火 土 金 水 肝 心 脾 肺 腎 春 夏 長夏 秋 冬 青 赤 黄 白 黒
治療面での応用 伝変を予測した治療 治療原則 「虚すればすなわちその母を補う」 「実すればすなわちその子を瀉す」 五行の相生・相克などの法則に基づいて、 病変の進行を予測して治療を行う。 治療原則 「虚すればすなわちその母を補う」 「実すればすなわちその子を瀉す」
参考文献 「中医学の基礎」 平間直樹等監修 東洋学術出版社 「基礎中医学」 神戸中医学研究会監修 燎原 「中医学の基礎」 平間直樹等監修 東洋学術出版社 「基礎中医学」 神戸中医学研究会監修 燎原 「TCM 医学生のための漢方医学 3」 日本TCM研究所 とり天 だんご汁