第 6 章 :フィードバック制御系の安定性 6.1 フィードバック系の内部安定性 6.2 ナイキストの安定定理

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振動体の振幅を一定とする 振動発電機負荷のフィードバック制御 長岡技術科学大学 ○ 永井 和貴 齋藤 浄 小林 泰秀
長岡技術科学大学 大学院 工学研究科 機械創造工学専攻 髙山 誠 指導教員 小林 泰秀 准教授
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第 6 章 :フィードバック制御系の安定性 6.1 フィードバック系の内部安定性 6.2 ナイキストの安定定理 6.1 フィードバック系の内部安定性 6.2 ナイキストの安定定理 極零点消去, ナイキストの安定定理 キーワード : 学習目標 : ナイキストの安定定理を理解し,フィードバック 制御系の安定性を判定できるようになる.

6.1 フィードバック系の内部安定性 [ 例 6.1 ] :厳密にプロパー( ) :プロパー( ) 図 6.1 フィードバック制御系 6.1 フィードバック系の内部安定性 :厳密にプロパー( ) 分母の次数が分子の次数より大きい :プロパー( ) 図 6.1 フィードバック制御系 [ 例 6.1 ] 不安定な極零点消去 のとき 安定?

初期値 ) ( t y 初期値 初期値 を考慮 図 6.2 ステップ応答例 不安定 より

[ 例 6.1 ] 不安定 不安定な極零点消去が生じている

[ 結果 1 ] [ 結果 2 ] P(s) と K(s) の間に不安定な極零相殺が存在するとき, フィードバック制御系は内部安定ではない. 以下の三つは等価である (a) フィードバック制御系が内部安定 (b)     が安定 (c)       の零点がすべて安定

6.2 ナイキストの安定判別法 フィードバック系の内部安定性 特性多項式 の根を求める 開ループ伝達関数の周波数応答に 基づき図的に判別する 6.2 ナイキストの安定判別法 フィードバック系の内部安定性 特性多項式 の根を求める 因数分解などにより,直接計算する ラウスやフルビッツの安定条件を適用する 実際的でない 高次系では手間がかかる 開ループ伝達関数の周波数応答に 基づき図的に判別する

ナイキストの安定判別法 [1] 目的 :開ループ系 の極 :閉ループ系 の極 (閉ループ系の極) (開ループ系の極) :開ループ系      の極 :閉ループ系   の極 (閉ループ系の極) (開ループ系の極) (          の中で)開ループ系の不安定極の数 知っている.簡単に計算できる. (         の中で)閉ループ系の不安定極の数 知りたい.計算が難しい.

[2] 方法 閉曲線 (このなかにすべての不安定な極がある) 閉曲線 の内部にある開ループ系の極の数 閉曲線 の内部にある閉ループ系の極の数 閉曲線 の内部にある開ループ系の極の数 閉曲線 の内部にある閉ループ系の極の数 Im 半径 Re 図 6.3(a) 右半平面全体を囲む閉曲線

複素数 を決めると,対応 する複素数 が定まる. 写像 :(閉曲線 に沿って) と時計方向に 1 回転 このとき,対応する   が描く軌跡: が原点を時計方向にまわる回転数 Im Im Re Re 図 6.3 閉曲線 とその による像

:閉曲線 の内部にある(不安定な) 開ループ系の極の数 :既知 : が原点を反時計方向に  まわる回転数 :図的に調べる 安定性を知ることができる ならば安定 ならば不安定 Im Im Re Re

[3] ベクトル軌跡の利用 右に 1 だけ移動 :ナイキスト軌跡 が点 を Π 回まわる が原点を Π 回まわる Im Im Re Re

   上を と動くとき,ベクトル軌跡 に一致する 半径 の円周上を動くとき   上を と動くとき,ベクトル軌跡と 実軸に関して対称 Im Im 半径 Re Re

ナイキストの安定判別法 [ステップ 1 ] 開ループ伝達関数のベクトル軌跡 を, 角周波数 の範囲で描き,ナイキスト軌跡 を得る. 開ループ伝達関数のベクトル軌跡 を, 角周波数 の範囲で描き,ナイキスト軌跡 を得る. [ステップ 2 ] 開ループ伝達関数 の極の中で実部が正で あるもの(つまり, 不安定極)の個数を調べ,これを とする. ナイキスト軌跡 が点 のまわりを反時計方向に まわる回数を調べ,これを Π とする. [ステップ 3 ] [ステップ 4 ]      ならばフィードバック制御系は安定, ならばフィードバック制御系は不安定である.

ナイキスト軌跡が点 のまわりを反時計方向に まわる回数が, 開ループ伝達関数の不安定極の個数 に等しいならば,制御系は安定である. ナイキストの安定判別法の利点 ループを閉じる前の開ループ伝達関数の周波数 応答によって, 図的に制御系(閉ループ系)の安定性 を判別できる 計算の必要がなく,次数の高い系やむだ時間系にも容易に  適用できる 実測データに基づいて判定できる 直感的に分かりやすく,さらに安定余裕も調べられる

[ 例 6.2 ] [ステップ 1 ] Im Re [ステップ 2 ] :不安定極0個 [ステップ 3 ] [ステップ 4 ] :不安定極0個 ナイキスト線図が(-1, 0)を回る回数0個 制御系は安定

[ 例 6.3 ] (不安定系の場合) [ステップ 1 ] (a) (b) Im Im Re Re [ステップ 4 ] [ステップ 2 ] [ステップ 3 ] :不安定極1個 :不安定極1個 回転数1回 回転数0回 不安定 安定