日本語の「二重主語文」 — メタ情報の中心化理論の視点から —

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日本語の「二重主語文」 — メタ情報の中心化理論の視点から — 日本語の「二重主語文」 — メタ情報の中心化理論の視点から — アンドレ・ヴロダルチック Centre de Linguistique Théorique et Appliquée (CELTA) 理論応用言語学研究センター ソルボンヌ大学 (Paris 4) wlodarczyk.andre@gmail.com

氷山のメタファーとしての 言語的意味の部分性 発話 明示的な意味 言外の意味 4-2 氷山のメタファーと言語的意味の部分性  形式言語と異なるものとしての人間言語においては、意味内容の一部分は、言外に留まり、 聞き手(あるいは翻訳者)の認識によって発話が「解釈」され、再構成されることになっ ている。 「Marie lit un livre マリーは本を読んでいる。」という例文においては、それ らの認識によって、マリーとは何者かということ(女性、話し手および聞き手の知り合い )、および、一冊の本があるということ、これら二つの理解が可能になる。また、動詞 lire 読む、によって、マリーは読むということができるほど、(年齢的に)大きいのか、と いうことを知ることができるのである。 認識 知識

Meta-Informative Centering Theory 発話の中心化のメタ情報論 Meta-Informative Centering Theory MIC 1-2 発話の中心化のメタ情報論と言語対照 発話の中心化のメタ情報論(MICまたは、MIP論:叙述のメタ情報論)は、ア ンドレ・ヴロダルチク教授により、日本語の研究をもとに打ち出された一 般言語理論である。この理論は、パリ・ソルボンヌ大学の理論•応用言 語学研究センター(CELTA)のアンドレ・ヴロダルチクとエレーヌ・ヴロダ ルチク両教授によって、多様な諸言語(ゲルマン諸語、スラブ語、ロマン ス語)のために展開された。エレーヌ・ヴロダルチク教授は、この理論の 言語対照(教育と翻訳)における応用を提案する。MIC:中心化のメタ情 報論

発話の形式と意味内容 レベル 構築 分野 意味内容 上 話してを含む表現 語用論 下 情報を伝える表現 意味論 (意味されるもの) 上 話してを含む表現 (メタ情報など) 語用論 下 情報を伝える表現 (情報) 意味論 機能         インターフェース           構文論 形式 (意味するもの) 基礎となる表現 形態論 従属した表現 音韻論 2-2 形式と意味内容  文法(シンタクシスとパラタクシス)は 形式(音韻論、韻律素論、および形態論)と意味内容( 意味論、および語用論)の仲介(インタフェース)の役割を担うものである。 意味内容 としての情報とメタ情報は区別されなければならない。メタ情報は「語用論」に属するも のであるが、各言語の文法において中心的位置を占めるものである。なぜなら、メタ情 報は、発話における意味内容の一次展開に関係するものだからである。発話は、コミ ュニケーション単位、および纏(まと)まった文章又は談話の一部分として定義される。

情報 = 意味内容(階層分析 1) 発話 : メーリは本を読んでいる。 SIT : 読む (読むもの : “メーリ”) 意味論 発話 : メーリは本を読んでいる。 SIT : 読む (読むもの : “メーリ”) (読まれるもの : “本”  ) 意味論 レベル 3-2 情報=意味内容 (階層分析 レベル1)  発話 : Marie lit un livre.マリーは本を読んでいる。意味状況(読む)は二つの 参加者を持っている。一つ目は、読むもの(マリー)という、アクティブ的 な役割、そして二つ目は、読まれるもの(本)という、パッシブ的な役割で ある。 情報

情報とメタ情報(階層分析 2) 発話 : メーリは本を読んでいる。 述語 主語 補語 語用論 レベル メタ情報 SIT : 読む 意味論 5-2 情報とメタ情報 (階層分析 レベル2) 発話の中に含まれる「情報」は、「メタ情報の指標」によって豊かになる。この 「メタ情報の指標」は、話し手の様々な「注意中心(CA)」を示している。  発話#1の例文を再び取り上げて見てみると、レベル2の分析において 、le lisant(読むもの)は、「主語」あるいは、総合的CAとして取り上げら えるが、その一方、le lu(読まれるもの)は、「補語」あるいは局所的CA として取り上げられると付け加えることができる。叙述のメタ情報論にお いては、「述語」は、『主語について述べること』としての語源的定義に従 って規定されている(それは、論理学で規定されている述語、つまり、一 つもしくは複数の引数と呼ばれる項を持つ関係とは異なるものである) SIT : 読む (アクティブ的役割 : “メーリ”) (パッシブ的役割  : “本” ) 意味論 レベル 情報

発話における 旧情報 (O) および 新情報 (N) ステータス   メタ情報論の妥当性は、一つの判断を提案するも のであり、真偽を主張するものではない。   話し手は、たとえ、一般的に容認されている真偽 と矛盾していてもよい。例えば、コペルニクスの『地球 は太陽の周りを回っている』という言葉は、彼の時代 において信じられていたこととは矛盾するものであっ た。 6-2 発話における旧情報および新情報ステータス  メタ情報は、 文脈の中でしか妥当的でない。それは『既知』であり『未知』で あるが、談話の妥当性によるもので、情報の性質によるものではない。 話し手は、対話者の意見がどのようなものであろうとも、「話し手の想像 通りに」情報を表現することができる。 したがって、「メタ情報論の妥当 性」は、一つの判断を提案するものであり、真偽を主張するものではな いのである。 特に、話し手は、たとえ、一般的に容認されている真偽と 矛盾していてもよいのである。 例えば、コペルニクスの『地球は太陽の 周りを回っている』という言葉は、彼の時代において信じられていたこと とは矛盾するものであった。

談話と認識における旧メタ情報 および新メタ情報の二分類 O/Nのニ分類: Os/Ns 談話に支えられ、前方照応的(anaphoric)/後方照応 的(cataphoric)役割の区別に一致するもの  Oi/Ni 情報自体に支えられるもの (タイプ、あるいは、インスタ ンスとしての意味状況に関する) 7-2 談話と認識における旧メタ情報および新メタ情報の二分類  旧メタ情報と新メタ情報ステータスの二つのタイプを区別する。一つ目は、談 話に支えられる旧メタ情報ステータス(Os)と新メタ情報ステータス(Ns) で、前方照応的(anaphoric)/後方照応的(cataphoric)役割の区別に一 致するものである。つまり、文章において、その情報が既に記載されて いるものか、あるいは、されるべきものかということである。二つ目は、タ イプ、あるいは、インスタンスとしての意味状況に関する情報自体に支 えられる旧メタ情報ステータス(Oi)と新メタ情報ステータス(Ni)で、それ らは、それぞれの価値を伴う情報を持つ。その価値とは、 旧メタ情報に おいては、総称的、一般的、習慣的、潜在的価値であり、また新メタ情 報においては、特定的、個別的、偶発的、実在的価値である。旧メタ情 報ステータス(Oi)と新メタ情報ステータス(Ni)は、情報それ自体、つまり 、一般的タイプや、逆に個別的インスタンスとして話したり見たりする意 味状況に依存するものである。これまでの私たちの研究により、今日的 かつ偶発的な情報が新情報として取り上げられる一方、習慣的かつ潜 在的な意味状況は、同様に、既知情報として考えられるということを証 明できた。

発話 :あ、メーリについてですが、これが、彼女の読んでいる本です。 階層分析 (その3) 発話 :あ、メーリについてですが、これが、彼女の読んでいる本です。 評言 語用論 レベル II 主題 焦点 語用論 レベル I 述語 補語 主語 メタ情報 8-2 階層分析(レベル3) 話し手が言語表現の中心化による既知〔旧〕又は、未知〔新〕メタ情報ステー タスと、残りの発話(逆ステータスの箇所)との対照を確立する時、談話 は二つに分割される。これを、「拡張的発話(extended utterance)」と呼 ぶことにする(これは、「主題(Topic)」と「焦点(Focus)」を兼ね備えるも のである)。「主題(Topic)」とは、既知〔旧〕メタ情報ステータスを保有し 、未知〔新〕メタ情報をもたらす評言と対照をなすものである。その一方、 「焦点(Focus)」とは、正反対のもので、新情報ステータスを保有し、既 知情報の背景(background)と対照をなすものである。 (大勢の中からマリーの話を取り上げて) あ、マリーについてですが、これが 、彼女の読んでいる本です。 主語であるマリーは、発話の前方に置かれている上、ポーズ(間)により分割 されている:それにより、「主題」、そして既知として置かれ、また残り全 ての発話(「評言」)の対照となる、言語表現の注意中心となっている。  分析文例における評言の中には、新たにOとNとの対照がある:補語で ある本が前に置かれ、c’est(それは・・・です)で提示されており、「焦点」 と対照をなす、「焦点」となっているのである。 情報 SIT : 読む   (アクティブ的役割 :“メーリ” )   (パッシブ的役割  : “本” ) 意味論 レベル

メタ情報 談話の中軸 語用論レベル 注意の中心 総合的 局所的 レベル 1 : (基本発話レベル) 主語 補語 レベル 2 : (拡張的発話レベル) 主題 焦点 レベル 3 : (文章レベル) 総合的話題 局所的話題 9-2 メタ情報(談話の中軸) したがって、三つの語用論レベルを区別する。 基本発話レベル:主語と述語は、同様の 既知〔旧〕又は、未知〔新〕メタ情報 ステータスを持つ。 拡張的発話レベル: 既知〔旧〕主題は未知〔新〕評言と対照的であり、未知〔 新〕焦点は既知〔旧〕背景と対照的である。 文章レベル:「局所の話題」を様々な語用論の発話の「注意の中心化」と名づ け、「総合的話題」を文章全体に関わる発話の「注意の中心化」と名づ ける。

基本発話と拡張的発話の例証 #1 Copernic écrivit une lettre au pape. コペルニクスがローマ法王に手紙を書いた #1は、完全な未知〔新〕ステータスで基本発話である (たとえ、皆、コペルニクスを知っていたとしても) 。 #2 C’est Copernic qui écrivit une lettre au pape. ローマ法王に手紙を書いたのは、コペルニクスだ。 #2は、焦点の拡張的発話である:フランス語のquiから始まる発話部分は、「 焦点」であり、前文脈により知られているはずである。発話 #2は、発話 #1の 代わりとして、適切に用いられ得るものである。 10-2 基本発話と拡張的発話の例証 ある一つの表現における 既知〔旧〕ステータスと 未知〔新〕ステータスは、各 文脈(文脈)で話し手が選択する視点に依る。 #1 Copernic écrivit une lettre au pape.コペルニクスがローマ法王に手紙を書 いた。#1は、完全な未知〔新〕ステータスで基本発話である (たとえ、皆、 コペルニクスを知っていたとしても) 。 #2 C’est Copernic qui écrivit une lettre au pape. ローマ法 王に手紙を書いたのは、コ ペルニクスだ。 #2は、焦点の拡張的発話であ る:フランス語のquiから始まる発話部分は、「焦点」であり、前文脈によ り知られているはずである。発話 #2は、発話 #1の代わりとして、適切に 用いられ得るものである。

「焦点」の用法 どの言語においても、焦点は全ての文体レベルに使用され、イントネーション、および語順や特殊/副詞の順序によって表される。 Jeżeli どの言語においても、焦点は全ての文体レベルに使用され、イントネーション、および語順や特殊/副詞の順序によって表される。 ピエールさえ来た。 5.600ドル、昨日私たちが工面した。 発話における語末に置いたままで、「焦点」を際立たせることが可能である。 この風潮で残るもの、それは絶え間ない信仰である。 (H.ポアンカレ: « La Science et l’Hypothèse ») 日本語においては、この手法は大変有効である: (わたしが) かえる の は じぶん の うち だ。 C’est chez moi que je rentre. 11-2「焦点」の用法(多様な諸様式) どの言語においても、焦点は全ての文体レベルに使用され、イントネーション 、および語順や特殊/副詞の順序によって表される。 (1) Même Pierre est venu. ピエールさえ来た。 (2) Fifty six hundred dollars we raised yesterday. 5,600ドル、昨日私たちが工面した。 発話における語末に置いたままで、「焦点」を際立たせることが可能である。 Ce qui reste de cette tendance, c'est la croyance à la continuité. (H. Poincaré: « La Science et l’Hypothèse ») この風潮で残るもの、それは絶え間ない信仰である。(H. ポアンカレ« La Science et l’Hypothèse ) 日本語においては、この手法は大変有効である: (わたし が )かえる の は じぶん の うち だ。 C’est chez moi que je rentre. (私が)帰るのは自分の家だ。 スラブ諸語(語尾変化が)は書き言葉においても頻繁に生じる。

レベル1と2における 「主題」を伴う「焦点」 主 語 述 主 語 述 発話 発話 O N O N 注意の 注意の 中心語 中心語 焦点 主題 背景 N 主 語 述 主題 評言 13-2 レベル1と2における明示的な「主題」を伴う「焦点」 レベル1と2の発話の中心化を構成する基本構想は、発話の主語における 主題化と焦点化の作用を明らかにする。言い換えれば、主語と述語に 伴う基本発話を、「主題」と 「評言」あるいは、「焦点」と「背景」を伴う拡 張的発話に変換するということである。 O N 発話 発話

「主題」を伴う「焦点」(例) Non, la cuisine, c’est moi qui la fais.    いいえ、料理(主題1)、それをするの(主題2)は、私(焦点)で す。 ... c’est le master qui vous prépare à la recherche, un brevet de technicien, c’est un diplôme professionnel ...    ...あなたに追究の心づもりをさせるのは、それはマスター(焦点 )で、技術者免状(主題1)、それ(主題2)は職業上の免状です ... 12-2明示的な「主題」を伴う「焦点」(例) (1) Non, la cuisine (Topique), c’est moi (Focus) qui la fais.いいえ、料理(主題 1)、それをするの(主題2)は、私(焦点)です。(2) ... c’est le master (Focus) qui vous prépare à la recherche, un brevet de technicien (Topique), c’est un diplôme professionnel ......あなたに追究の心づもりを させるのは、それはマスター(焦点)で、技術者免状(主題1)、それ(主 題2)は職業上の免状です...

メタ情報論と日本語 主語 O (ポーズ無し) と 述語 O: 総称的発話 #1 地球は太陽の周囲を回転する。 主題 O (ポーズ有り) et 評言 N #2 この本は、昨日買ったばかりです。 主語 N (ポーズ無し) と 述語 N #3 夜の底が白くなった。(川端康成) 焦点 N (ポーズ有り) と背景 O #4 あの薬は止めた後が苦しい。 14-2 メタ情報論と日本語 レベル1と2の「注意の中心化」を構成する基本構想は、全ての言語のメタ情 報構造の描写の為に使用することができる。日本語の助詞、「は」と「が 」の用法においても説明可能である。日本語の助詞における、この理論 は、「は」と「が」に続く、上昇や下降、あるいはポーズによる分離や未分 であり得るイントネーションを考慮に入れる。:ポーズは 拡張的発話に おいて現れる。つまり、主題と評言、そして、焦点と背景に分割されると いうことである。左の縦線(主語Oと述語O)では、総称的価値を完全に 付与する非拡張的発話における「は」の用法。主語Oから述語Nに向か う対角線では、新情報ステータスを保有する評言を含む、拡張的発話 における、名詞的なグループを主題化するための「は」の用法。右の縦 線(主語Nと述語N)では、完全な新非拡張的発話における主語 NPを 強調するための「が」の用法。主語Nから述語Oに向かう対角線では、 既知情報の背景と相反する、新ステータスのNPを主題化するための「 が」の用法。 例)-主語O(ポーズ無し)と述語O(総称的発話)#1 (地球は太陽の周囲を 回転する)-主題O(ポーズ有り)と評言O#2 (この本は昨日買ったば かりです。) -主語名詞句(ポーズ無し)と述語N#3 (夜のそこが白くな った:川端康成)-焦点N(ポーズ有り)と背景O#4 (あの薬は止めた後 が苦しい) 

言語的意味の不完全さ: 表示されない「主語 」 と 「主題」 発話 焦点 主題 補語 明示的な意味 主語 言外の意味 15-2 言語的意味の不完全さ: 「主題」と表示されない主語 基本構想は、「注意の中心化」に適用される氷山のメタファーを提示する。 CONNAISSANCES 認識

「主題」と表示化されていない主語 言語は、主題が変わらない場合、それを繰り返さない。 #1 Q: バカンスは、何をしようか ? #2 A: (バカンスは、) 海に行こう。. 主語が(文脈や、発言のシチュエーションが)周知のものである場合、日本語においては、それは説明されない。 #3 一緒に行きます か? #4 Est-ce qu’[il, elle] ira / [tu] iras avec nous ? On y va ensemble ? 動詞の変化がある言語においては、人称代名詞にもよるが、主語は必然 的なものであり、日本語から翻訳する際に明示化されるべきだとされている 。それが、たとえ《不特定多数の人》を表す主語:onであったとしても、同様 に考えられている。 16-2 「主題」と表示化されていない主語  焦点は、その性質から、たとえ「新」でさえも言外にとどまることができない 。同様に、補語は、既知情報ステータスを持っている場合を除いて(ど の格においても、文脈によって表現が可能であれば、省略することを強 いられる。)、表示化されていない状態にとどめることはできない。言語 は、主題が変わらない場合、それを繰り返さない。―バカンスは、何をし ようか?―(バカンスは、)海に行こう。 主語が(文脈や、発言のシチュエーションが)周知のものである場合、日本語 においては、それは説明されない。―いっしょ に いきます か?Est- ce qu’[il, elle, tu] ira(s) avec nous ? On y va ensemble ? 動詞の変化がある言語においては、人称代名詞にもよるが、主語は必然的 なものであり、日本語から翻訳する際に明示化されるべきだとされてい る。それが、たとえ《不特定多数の人》を表す主語:onであったとしても、 同様に考えられているのである。

発話の中心化と本情報 (その結合) 主題 主語 主体の役割 焦点 補語 客体の役割 17-2 発話の中心化と意味役割の諸機能との結合 主題 主語 主体の役割 焦点 補語 客体の役割  17-2 発話の中心化と意味役割の諸機能との結合 発話の中心化として定義された概念は、主語と補語、そして主題と焦点のど ちらにおいても、全ての意味論の機能と組み合わせることが可能である 。加えて、上部レベル(主題と焦点)の「注意の中心化」は、下部レベル の(主題と焦点)の「注意の中心化」に付け加えることができる。

発話の中心化と意味役割の結合の例(1a.1b) 1a. Ô, Marie lit un livre. あ、マリーが本を読んでいる。 (能 + [ 主語 || アクティブ的役割] + [補語 || パッシブ的役割) 1b. (Quant à) Marie, elle lit un livre. マリーは、本を読んでいる。(マリーなら、彼女は本を読んでいるよ)。 (能 + [ 主題 || 主語|| アクティブ的役割] + [焦点 || 補語 || パッシブ的役割) 18-1-1 発話の中心化と意味内容の諸機能との結合の例  1a. Ô, Marie lit un livre. (Actif + [Sujet || Rôle actif] + [Objet || Rôle passif]) あ、マリーが本を読んでいる。(能 + [ 主語 || アクティブ的役割] + [補語 || パッシブ的役割) 1b.  (Quant à) Marie, elle lit un livre. (Actif + [Topique || Sujet || Rôle actif] + [Focus || Objet || Rôle passif]) マリーは、本を読んでいる。(マリーなら、彼女は本を読んでいるよ )。 いいえ、マリーは、 本を、読んでいるよ。 マリーが読んでいるのは本ですよ。 (能 + [ 主題 || 主語|| アクティブ的役割] + [焦点 || 補語 || パッシ ブ的役割)

発話の中心化と意味役割の結合の例(1c.1d) 1c. (Quant à) Marie, c’est un livre qu’elle lit . (大勢の中からマリーの話を取り上げて) あ、マリーについてですが、これが、彼女の読んでいる本です。 (能 + [ 主題|| 主語|| アクティブ的 役割] + [焦点 || 補語 || パッシブ的役割) 1d. ( Quant au / Le ) livre, c’est Marie qui le lit. あ、その本は、今、マリが、読んでいる。(その本なら、 マリが読んでいるところです 。) (能 + [ 主題 || 補語||パッシブ的役割] + [焦点 || 補語 || アクティブ的役割) (N.B.: あ、その本は、今、マリが(基本主語)読んでいる。) 18-1-2 発話の中心化と意味役割の結合の例  1c. (Quant à) Marie, c’est un livre qu’elle lit . (Actif + [Topique || Sujet || Rôle actif] + [Focus || Objet || Rôle passif]) (大勢の中からマリーの話を取り上げて) あ、マリーについてですが、これが 、彼女の読んでいる本です。 (能 + [ 主題|| 主語|| アクティブ的役割] + [焦点 || 補語 || パッシブ的役割) 1d.  (Quant au) (le) livre, c’est Marie qui le lit.あ、その本は、今、マリが、読 んでいる。あ、その本は、今、マリが読んでいる。その本なら、 マリが読 んでいるところです。 (能 + [ 主題 || 補語||パッシブ的役割] + [焦点 || 補語 || アクティブ的役割) Actif 能動態Passif 受動態Rôle actif アクティブ的役割Rôle médian 中間的 役割Rôle passtif パッシブ的役割Sujet 主語Objet 補語Topique 主題 Focus  焦点

「主題」の使用 (フランス語の多様なスタイルと日本語の翻訳) くだけた話し方 (1) Un dico électronique, ça doit être très pratique, n’est-ce pas ? 電子辞書、すごく便利ですよね。 (2) Les acteurs, à mon avis, ils doivent changer pas mal le texte de départ . その俳優たちって、私が思うに、元のセリフを結構変えているんじゃないかな。 格式ばった話し方 (3) Et cependant, ces deux changements, nous les regardons l'un et l'autre comme des déplacements. (H. Poincaré) だが、これらの二つの変化に関しては、その両方をどちらも移行だとみなすのである。 (H. ポアンカレ) 20-2「主題」の機能(フランス語の多様なスタイルと日本語の翻訳) フランス語においては、主語は必須であるため、「焦点」はくだけた話し方に おいて非常に多く使用される。したがって、日本語と対照する際には注 意をしなくてはならない。なぜなら、そこでは、発話行為の各シチュエー ションに適応する、スタイルレベル(くだけた話し方および格式ばった話 し方)の使い方を知り、そのスタイルレベルを維持した翻訳をする必要 があるためである。 Un dico électronique, ça doit être très pratique, n’est-ce pas ? 電子辞書、すごく便利ですよね。 Ces acteurs-là, à mon avis, ils doivent changer pas mal le texte de départ . その俳優たちって、私が思うに、元のセリフを結構変えているんじゃないかな 。  「焦点」は、日本語においては、その使い方は、くだけた話し方の標章が十 分ではない。 一方、フランス語においては、「焦点」は、くだけた話し方以外でも同じ様に使 用されているのである。(科学的理論) Et cependant, ces deux changements, nous les regardons l'un et l'autre comme des déplacements...  だが、これらの二つの変化に関しては、その両方をどちらも移行だとみな すのである。 (ポアンカレ)

語用論レベル I と II 「注意の中心(CA)化」構造の同型性 Dépendance 構成レベル 基本発話 拡張的発話 主語 述語 主題 評言 総合的CA 19-2 語用論レベルI と IIにおける「注意の中心化」の同型性 語用論レベルI と IIにおける「注意の中心化」の同形性は、拡張的CAにおい ては、「主題」を主語に、そして基本CAにおいては、「焦点」を補語にた とえることができると考えられる。また、同様の意味論的内容と、異なる 語用論的内容という二つの観点が非常に似通っていることから、この同 型写像を使用して、ある一つの言語において様々なテキストを構成させ ることができるのである。ある一つの言語から別の言語に翻訳するとき 、同型性は、原文の語用論的内容の一部分のみを維持するために利 用することができる。(次項のスライド参照) 総合的CA 補語 動詞 焦点 背景 局所的CA 局所的CA

主題と主語の類似点と相違点(日本語の翻訳) 主題と主語は、両方とも総合的(拡張的)「注意の中語」にある 表現においては、一般的に主題化の標識は全く目立たない(イントネーション)が、時によって、非常に明瞭になる(例:日本語の助詞「は」、フランス語の前照応反復) 。 Le père de Marc, il est médecin. 太郎のお父さんは医者です。 主語が必須ではない言語においては、かなり頻繁に「主題」が使用されている。例えば、日本語の「主題」を翻訳する際に、くだけた話し方ではない、格調の高いフランス語のスタイルでは、その主語によって「主題」を翻訳する Le père de Marc est médecin. 21-2 主題と主語の類似点と相違点(日本語の翻訳) 主題と主語は、両方とも総合的(拡張的)「注意の中心化語」にあり、大きな 相似点を持つ。主語、それは述語の同等の情報価値があるものである 。表現においては、一般的に焦点化の標識は全く目立たない(イントネ ーション)が、時によって、非常に明瞭になる(日本語の助詞「は」、口頭 フランス語の照応反復):Taro no otosan wa isha desu.Le père de Marc, il est médecin.たろう の おとうさん は いしゃ です。 主語が必須ではない、ある一つの言語においては、かなり頻繁に「焦点」が 使用されている。例えば、日本語の「焦点」を翻訳する際に、くだけた話 し方ではない、格調の高いフランス語のスタイルでは、その主語によっ て「焦点」を翻訳するのである。Le père de Marc est médecin.

「発話の中心化」と態 態の従来の定義: 構文上の主語と補語の位置を様々な意味状況の役割に引き合わせる。 MIC論は、情報の提示方法として 、態の語用論的定義を提案する。 態とは、 「CA中心語」としての基本発話の主語と補語と(アクティブ役割とパッシブ的役割を果たす) 意味状況の参加者とを結びつけるものである。 広辞苑 態:動詞の表す動作に主語がどう関わるかを表現する文法形式。態。 主語が動作の主体であれば能動態、客体であれば受動態。 能動態:主語が(積極的に)ある動作を行うことを表す形式。 受動態:主語の指すものがある動作の対象となり、その作用を受ける という関係を示す動詞の様相。

受動態文の 「主題化」された主語と補語 受動態と補語の主題化との共有点: 受動態文の 「主題化」された主語と補語 受動態と補語の主題化との共有点: アクティブ役割を果たさない参加者を総合的な「注意の中心化」として扱うことである。 その相違: 拡張的発話における焦点化された補語は、非拡張的発話の「注意の中心化」である受動態の主語よりも、さらに総合的な表現範囲を持つ。なぜなら、話題となっている補語が談話の全体の、ある一つの「テーマ」である時、 受動文より「主題」を含む拡張的発話(能動態文)の方を選ぶ為である。

受動的発話と能動的発話の中心化 受動態は、意味状況のアクティブ役割を果たさない参加者を表す語を、非拡張的発話の総合的な「中心語」として扱うことを可能にする。また、補語が、主題化されている場合においても、受動態文の文頭に置かれた主語として、翻訳が可能である。 Ce livre a été offert à Jean pour son anniversaire. その本は(主語)ジョンの誕生日の時に贈られたものです。 Ce livre、Jean l’a eu pour son anniversaire. その本は、(主題)ジョンが誕生日の時にもらったものです。

「主題」および「焦点」の有無による 日本語の発話の使用と翻訳 算数は、花子が太郎に教わった。 ([主題||補語1||算数], [主語||花子 ], [補語2||太郎]) As for arithmetics Hanako learned it from Tarô. (2) 算数は、花子が、太郎に教わった。 ([主題||補語1||算数], [焦点||主語||花子], 補語2||太郎]) 発音→「花子が」に「ストレス」がある As for arithmetics, it’s Hanako who learned it from Tarô. 25-2 主題、および焦点の有無による日本語の発話の使用と翻訳 「注意の中心化」の様々な提示方法を組み合わせることができる:例えば、 態(能動態と受動態)と拡張的発話の構造である。ここに、「主題」を含 む受動態の日本語文例、加えて「焦点」がある文例と無い文例も紹介す る。 英語は、日本語に翻訳するために幾つかの表現方法を持ってい る:例えば、as regards, as for…(~に関しては、~について言うと/~と して)による「主題」、分裂文(cleft sentence)による「焦点」である。英語に は、受動態が存在するが、日本語の発話においては能動態で訳すこと が好まれる:As for arithmethics, Hanako learned it from Taro.焦点を含 む発話は、英語で次のように翻訳することができる:As for arithmetics, it’s Hanako who learned it from Taro.

MIC論の結論 I. たとえ言語が、同等の形態統語の方法を持っていたとしても、 各言語により、異なる働きをもつ: スタイルレベル (フォーマルな書き言葉、およびインフォーマルな話し言葉) 形態論的特性に基づく、文化/教養の特性における、各言語のスタイルレベルに依存している(ex.日本語で頻繁に使われる「主題」や、 「必須」 ではない「主語」など)。 26-2 結論 数ヵ国語を比較すると、それらが発話の中心を示すために、それぞれ異なる 標識を使用していることに気づく。 たとえ言語が、同等の形態統語の方法を持っていたとしても、各言語により 、異なる働きをもつのである。それは特に、フォーマルな書き言葉、およ びインフォーマルな話し言葉などのスタイルレベル、さらに単純に言うと すれば、文化/教養の特性における、各言語のスタイルレベルに依存し ているのである。文化/教養の特性は、形態論的特性に基づくものであ る。 教育と翻訳の方法(メソッド)は、各言語が独自にもつ、様々な方法で明示さ れるべきであり、また、比較されるべきなのである。したがって、各言語 はそれぞれが異なる働きをもつ、ということに、学習者と翻訳者の注意 を引きつける必要があると考える。 (これは、例えば、日本語で頻繁に使われる「主題」や、必須ではない「主語」 などに現れる)この研究プログラムは、パリ・ソルボンヌ大学の理論•応 用言語学研究センター(CELTA)によって実現されたものである。(複数 の高い標準の修士論文、進行中の修論、また進行中の二つの博士論 文、その一つはワルシャワ大学と提携して行われているもの) II. 教育と翻訳の方法(メソッド)は、各言語が独自にもつ、様々な方法で「注意の中心化」が明示されるべきである。

日本語の二重主語文 日本語の文法論に 二重主語文論が要るか? 1-2 発話の中心化のメタ情報論と言語対照 発話の中心化のメタ情報論(MIC論:叙述のメタ情報論)は、アンドレ・ヴロダ ルチク教授により、日本語の研究をもとに打ち出された一般言語理論で ある。この理論は、パリ・ソルボンヌ大学の理論•応用言語学研究センタ ー(CELTA)のアンドレ・ヴロダルチクとエレーヌ・ヴロダルチク両教授に よって、多様な諸言語(ゲルマン諸語、スラブ語、ロマンス語)のために 展開された。エレーヌ・ヴロダルチク教授は、この理論の言語対照(教 育と翻訳)における応用を提案する。MIC:中心化のメタ情報論

述語形容詞 、又は、 述語動詞に対する ハとガ名詞句の文中の線的な語順 遠称位置 近称位置 主題ハ1 焦点ガ2 関係 形容詞、または、 動詞 主語ハ2 補語ガ1 唯一の位置 補語ガ1 主語ハ2 関係 形容詞、または、 動詞 主題ハ1 焦点ガ2

”ブーメラン効果”式の対立 ハ ガ s t s : ガ → ハ ; { ガ1 - 主語標識, ハ2 - 主語標識 }

[主語ハ] と [主語ガ] [主語ハ] 駝鳥が飛ばないことを除いては、鳥は飛ぶ。 [主語ガ] 青空に富士山がくっきり浮き上がって見える.

[主題ハ] と [焦点ガ] [主題ハ] 確かな数は分かりませんが、ざっと500人 ぐらいでしょう。 [焦点ガ] 歩き方までが彼の性格を物語っていた.

以下の三つの発話における情報は、同じで、 違うのはのメタ情報です。 発話の情報(内容)の構造(その1) 以下の三つの発話における情報は、同じで、 違うのはのメタ情報です。  太郎は花子が好きだ。  太郎は、花子が好きだ。 太郎は、花子が、好きだ。 love(Taro, Hanako) 因子分解可能: 太郎は好きだ= love(Taro) 花子が好きだ= love(Hanako) Note: The Subject is replaced by the Topic in 2. This is peculiar to the Japanese language. However, this is possible only because the ‘extended utterance’ containing a topic or a focus has an intonational marker.

[主題ハ] + (〇主語) + [焦点ガ] + (〇補語ガ) + [形容詞] 主題、主語と補語を含む発話  太郎は花子が好きだ。 {主題化されていない主語に基ずく発話} [主語ハ] + [補語ガ] + [形容詞]  太郎は、花子が好きだ。 {主題化された主語に基ずく発話} [主題ハ ] + (〇主語) + [補語ガ] + [形容詞] Note: The Subject is replaced by the Topic in 2. This is peculiar to the Japanese language. However, this is possible only because the ‘extended utterance’ containing a topic or a focus has an intonational marker.  太郎は、花子が、好きだ。 {主題化された主語に基ずく発話} [主題ハ] + (〇主語) + [焦点ガ] + (〇補語ガ) + [形容詞]

因子分解不可能: 鼻が長い =長い(鼻) *象は長い =*長い(象) 象は鼻が長い =鼻が長い(象) 発話の情報(内容)の構造(その2) 象は鼻が長い。 象は、鼻が長い。 象は、鼻が、長い 以上の発話の情報(内容)は同じである。 違うのは、メタ情報である。 因子分解不可能: 鼻が長い =長い(鼻) *象は長い =*長い(象) 象は鼻が長い =鼻が長い(象) Note: In 2a the distinction is made between Global and Local Subjects. However, this distinction is characteristic of the Syntactic level (Constituency) only. It seems more natural to interpret this meaning as in 2b in virtue of the fact that the relation between Subject and Object is of Dependency type and characterise the Paratactic level. The latter interpretation is in accord with our new Paratactic Theory of Metainformation structure. - the Subject coincides with the Topic

二重主語文である解釈 象は鼻が長い。 象は、鼻が長い。 象は、鼻が、長い。 {主題化されていない主語に基ずく発話} [総合主語ハ] + [局所主語ガ] + [形容詞] 象は、鼻が長い。 {主題化された総合主語に基ずく発話} [主題化された総合主題ハ] + [局所主語ガ] + [形容詞] Note: In 2a the distinction is made between Global and Local Subjects. However, this distinction is characteristic of the Syntactic level (Constituency) only. It seems more natural to interpret this meaning as in 2b in virtue of the fact that the relation between Subject and Object is of Dependency type and characterise the Paratactic level. The latter interpretation is in accord with our new Paratactic Theory of Metainformation structure. - the Subject coincides with the Topic 象は、鼻が、長い。 {主題化された総合主語と焦点化された焦点主語を含む発話} [主題化された総合主語ハ] + [焦点化された局所主語ガ] + [形容詞]

二重主語文でない解釈 象は鼻が長い。 象は、鼻が長い。 象は、鼻が、長い。 {主題化されていない主語に基ずく発話} [主語ハ] + [補語ガ] + [形容詞] 象は、鼻が長い。 {主題化された主語に基ずく発話} [主題化された主語ハ] + [補語ガ] + [形容詞] Note: In 2a the distinction is made between Global and Local Subjects. However, this distinction is characteristic of the Syntactic level (Constituency) only. It seems more natural to interpret this meaning as in 2b in virtue of the fact that the relation between Subject and Object is of Dependency type and characterise the Paratactic level. The latter interpretation is in accord with our new Paratactic Theory of Metainformation structure. - the Subject coincides with the Topic 象は、鼻が、長い。 {主題化された主語と焦点化された補語を含む発話} [主題化された主語ハ] + [焦点化された補語ガ] + [形容詞]

二重主語文に関する結論 二重主語文論は正確ではございません。

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