<S4> 「2 人の自分」に,気づくには? フル回転の直感君 と 錆びつく熟慮様 ■ K(14): 序章 & 1 章: 直感は自動 but 熟慮には注意の支払い 1 直感君と熟慮様? K(14, 1 章) 2 なぜ熟慮様を意識的に磨く? K(14, 序章 + 1 章) 3 不快に耐える自制力は? 機会費用と埋没費用
前回の復習 バイアスを繰り返す理由 3種類の「2人の自己」とは? 本講義の中心課題は? 前回の復習 バイアスを繰り返す理由 3種類の「2人の自己」とは? 本講義の中心課題は? システム1と2,経済学と行動経済学の主体,経験と記憶する自己 ヒューリスティクスの本質(p.31)とは? 例は? 難しい問題は,簡単な問題に置き換えて回答 バイアス 最初に結論ありきで,物語を正当化 自信過剰 スティーブ問題は,どんなヒューリスティックで,なぜ起こる? 代表性ヒューリスティック 事前確率の無視 ベイズ推定以外: 大病院と小病院,ギャンブラーの誤謬,飛行訓練
本日の読解力Check まるで2人のキャラクターのように説明される判断システムのそ れぞれの特徴は? pp.56-8 (物語化 直観的理解) システム1: 自動的に,直感として働く「速い思考」 システム2: 注意を払えば,熟慮を使える「遅い思考」 各々が働く一般的な例は? どちらが好き? なぜ? p.43, 45 章題の「注意と努力」が重要な理由は? 2章, p.428 知的作業の汎用資源: 努力 注意と自制 システム2 ∴ 意欲・意識がなければ努力できない プログラム・習慣化
1 直感君 と 熟慮様?: 第1章 本講義での略称: as if 2人のキャラクター pp.56-8 1 直感君 と 熟慮様?: 第1章 本講義での略称: as if 2人のキャラクター pp.56-8 自動的に直感として働く「速い思考」のシステム1: 直感君 自制できれば熟慮が働く「遅い思考」のシステム2: 熟慮様 直感: オフにはできない反射的・自動的判断 ヒューリスティックス or 専門的スキル if 訓練 熟慮: 直感を抑え,注意を払えれば,オンにできる判断 注意を払うには費用: 認知費用 希少財(≒定額の予算 p.46)
日常判断におけるバイアス・失敗の主因? 反射的に働く直感による系統的なエラー: バイアス 近道の解決法として,ヒューリスティックスを活用 <S2>練習 直感を自制し,熟慮に任せる注意が働かない <S5> 合理性 注意を払う費用・努力 それ以上の便益の自覚が必要条件 熟慮しても,注意力や訓練が不十分 <S5> アルゴリズム 各自で注意力の上限が存在 注意力の配分にも限度 例: 約半数が見えないバスケコートのゴリラ p.47
Q1 システム 1 と システム 2 の作動例 直感君 or 熟慮様 のいずれの仕事? その特徴は? P.43, 45 2+2 を暗算する 2+2 を暗算する 17 × 24 を暗算する (ただし算盤学習者やインド人ではない) 空いた道路で,車を運転する 狭いスペースに,駐車する (ただしプロの駐車係ではない) 簡単な文章を理解する 社交的な場で,自分の振る舞いが適切か,監視する 特徴: オフにできない自動運転 vs. オンにするには注意力が必要
システム 1 と システム 2 の 巧妙な役割分担 直感君 と 熟慮様 の相互作用 自動的な直感・印象・感覚・意志 快適モードの熟慮: 確信 快適モード(p.48): 熟慮様は厳密にはオフではなく,低努力の省エネモード 直感君には難しい問題 熟慮様をオン(通常モード) 熟慮様は,自己を監視(するよう直感をプログラム)できる p.49 ∴ 大半は直感君のとおり but 難問や最終決定権は熟慮様 ∴ 熟慮様の任務: セルフコントロール: 直感君の衝動の自制 図2(p.51)の直感君と熟慮君の衝突,図3(p.53)の印象と確信
2 なぜ,熟慮様を意識的に磨くのか? 確認: アナタは,アナタの直感君と熟慮様に気づけた? 写真を見た? p.39 2 なぜ,熟慮様を意識的に磨くのか? 確認: アナタは,アナタの直感君と熟慮様に気づけた? 写真を見た? p.39 テキスト通り? 17 × 24 を暗算した? p.40 電話しながらできるのは,どっち? なぜ? どちらが負荷・不快? 2人の自分を自覚できた? 確認したアナタとは誰? p.53
熟慮様を「意識的に」磨くべき理由 直感君は常にオン but 熟慮様を働かすには注意・努力という費用 錯視(見間違い)・認知錯覚(思い違い)の理解には熟慮様が不可欠 現代社会における熟慮様磨きが重要な理由 自覚・意識が必要 知的作業: 熟慮様による努力と秩序を要する p.40 セルフコントロール: 熟慮様は直感君の衝動を抑制 p.52
それでも熟慮様が錆びつく理由 自我消耗に陥っていない? <S4> p.79 熟慮様を働かすには,セルフコントロール(自制)が必要 あらゆる自発的努力は,メンタルエネルギーの共有プールを利用 But 勉強を強いる セルフコントロール力が消耗 「考えたくないのに,無理に考える」と,特に消耗 <S5> すると,衝動的になり,根気を失い,論理的意思決定が難しくなる ∴ 熟慮様を十分に働かすことができない: K(14)を読解できない すると日々,直感によるバイアスを繰り返す But 熟慮できないので,過誤さえ自覚できず,自信過剰
Q2 「小学校13年生化」現象の謎? 出席をとらない講義に,出席する理由は何だろう? そんな大講義で,聴解力を養成するのではなく,私語をする学生 がいるのはなぜだろう? いつも私語をする学生の出席目的は,何だろう? 彼らは,成功するだろうか? それはなぜだろう? 彼らは,まず何をすべきだろう? <S5> フロー体験
3 不快に耐える自制力は? 熟慮様を働かせる「必要条件」 十分条件ではない! 知的作業の不快さに耐える努力: 注意も自制も費用! 3 不快に耐える自制力は? 熟慮様を働かせる「必要条件」 十分条件ではない! 知的作業の不快さに耐える努力: 注意も自制も費用! 注意を払って,熟慮様を通常モードにオン 不快 その熟慮を維持するように,自制する 苦痛 この反復によってスキル↑ may be メンタル・エネルギー↑ ただし習慣化には,練習目標の自覚や意識が重要 otherwise? ∴ 不快や苦痛に勝てれば,判断(スキルや熟考)力がアップ 直観君では誤りやすい例: <S2-3>論理,不確実性・確率 経済学
経済学の基本論理: インセンティブ と 費用 経済学の核心 ≒ <S1> インセンティブ = 便益B ー 費用C 合理的経済人(ホモ・エコノミカス): 純便益Nの最大化 下4部 経済学の費用 = 機会費用 = その選択によって犠牲にされた純便益 = 会計費用C + Cに含まれない次善の純便益N [ - Cに含まれる埋没費用S ] = 次善の便益 if Cが同じ場合 ∵ C + [B - C] = B 埋没費用(サンクコスト)S 合理的な意思決定の費用ではない = その選択をしようがしまいが,もう回収不可能な固定費用
Q3 合理的経済人: 機会費用 ≠ 会計上の費用 <S2> 練習 問17 会計費用Cが同じ典型的なケース すべて100円の自販機。1番好きなコーヒーは180円,2番目に好 きな紅茶は140円の効用,どちらを買う? その機会費用は? C[100] + N[140 ー 100] = 140 = 次善の便益(C=100で同じ場合) 会計費用Cが異なる一般的なケース 紅茶の自販機の価格だけが90円だった場合は? C[100] + N[140 ー 90] = 150 機会費用↑ 授業への出席費用は,誰もがいつでも同じか?
Q4 経済学者の78%が間違う機会費用? 下記サイト or フランク(08)『日常の疑問を経済学で考える』 アレックス・タバロック 「経済学者も『機会費用』のことがよくわかっていない!?」 1番大好きな嵐のコンサートの転売不可のチケットをタダでも らったので出かけると,隣で同時刻に2番目に好きで最高5000円 支払っても良いと思っているAKBのチケットが4000円だと知った。 嵐のコンサートを見る機会費用は? 0円: 25%, 1000円: 22%, 4000円: 26%, 5000円: 28% C[0] + N[5000 ー 4000] = 1000 Cが異なるケース 嵐のチケットを4000円で買っていた場合は? Cが同じケース C[4000] + N[5000 ー 4000] = 5000 次善の便益
Q5 合理的経済人: 無視すべきサンクコスト <S2> 練習サンプル 問15&16 消費や投資,結婚や仕事 【消費】 2000円の効用(満足度)を感じる映画のチケットを持って 出かけたが,映画館の前でその1500円のチケットの紛失に気づいた, どうする? 【投資】 すでに80億円投資したスマホ開発にまだ20億円かかる のに,収入予想は90億円に低下した,どうする? 授業への出席費用は? 学費,食費,住居費,交通費,バイト代のいずれ?
A5 サンクコストの錯誤 サンクコスト(埋没費用)は,無視すべき 費用ではない 再購入 なくした\1500のチケットは,埋没費用 サンクコスト(埋没費用)は,無視すべき 費用ではない 再購入 なくした\1500のチケットは,埋没費用 投資継続 投下した\80億は,埋没費用 機会費用 = バイト代,定期を除く交通費 But 現実にはサンクコストの錯誤 なぜ無視できない? 実験 下32章・S(16, 8章) メンタル・アカウンティング 科学・経済学 = 論理(理論) + エビデンス(実証) 実証手法の発展 統計学・計量経済学,実験・フィールドワーク
本日の要点 & 次回への準備 システム1(直感君)とシステム2(熟慮様)に気づく難しさ 費用(注意・努力)を払って,熟慮様(=アナタ)を作動する必要 But もし自我消耗なら,読解・聴解・論理的熟考が難しい Then,熟慮様は錆びつき,直感君による失敗の繰り返し 推論: 今回読めない・聴けない・考えられない 次回 将来予測 私(= 熟慮様)が気づくには,熟慮様をオンにする必要 1 次回準備: K(14) 2-3章 <S5> システム2の計器・性能・消耗 熟慮様にはタスク設定機能,なのに Why 失敗? Q3 問12
Q6 本当に「科学」的なエビデンス? 誤差を含む事実判断の論理 科学・統計学の発展 誤差を含む事実判断の論理 科学・統計学の発展 10人に街頭インタビューし, 内閣支持者は2人(8人は不支持) なので,国民は内閣を見限っているとの報道,納得する? 100人に聞いて20人が支持だった場合も同じ結論? なぜ? <S3> 代表性ヒューリスティック(標本サイズの無視),ランダム,有意水準 同等という帰無仮説は,ランダムなサンプルとしても,5%の有意水準では, 棄却できない 不支持が多いとは言えない 棄却される 不支持は誤差の範囲を超えて多い
A6 エビデンスの判断に必要な統計的訓練 フリーソフトR(or Rstudio)を使えば,1行タイプで検定完了 二項検定の例 cf. カイ二乗検定 chisq.test(c(2,8)) binom.test(2,10,0.5) p = 0.109… > 0.05 binom.test(20,100,0.5) p = 0.000… < 0.05 ∴ 10人中8人では,5%有意ではない: 過少なサンプル 機器・ソフトの急速な発展とエビデンスべースのコミュニケーション 実際に,検定・推定はスマホでも可能な時代 But 基礎知識と反復練習の機会は減少? 希少価値
Rの活用 と 学び方の例 サイコロを4回振った期待値を 読みやすい入門書 1 万回繰り返したヒストグラム エビデンスによる謎解き サイコロを4回振った期待値を 読みやすい入門書 1 万回繰り返したヒストグラム エビデンスによる謎解き 百円でサイコロを四回振り,すべて 1なら十万円ゲットのギャンブル 基礎演習 グループワーク課題