からだをまもる免疫のふしぎ (日本免疫学会:羊土社)
病原体がからだの中に入ってくることを「感染」といいます。病原体に感染して病気になったときは、熱が出たり元気がなくなったり下痢をしたりしますが、しばらく休んでいると大体の場合は治ってしまいます。これは「免疫」が働いているおかげです。 「私はおたふく風邪になったからもうならないの」という話を聞いたことがあるでしょう。これは、一度おたふく風邪にかかると免疫の働きが「おたふく風邪」の病原体を覚えていて二度目におたふく風邪の病原体が入ってきても、免疫ですばやくやっつけてしまうため、おたふく風邪にはかかりません。これを難しくいうと「免疫記憶」といい免疫のとても大切な役割です。
ところで、免疫はからだのどこにあるのでしょうか。正解は「血の中の白血球」です。血が赤いのは血の中に赤い赤血球がたくさん入っているためですが、血の中には白血球という白い細胞もいます。これが免疫細胞です。免疫細胞にはいろいろな細胞があって、 ひとつは好中球こうちゅうきゅうといって病原体が肺いてきた場所へ行って病原体を退治する細胞です。 ふたつめは、マクロファージといって、やっぱり、病原体を食べてしまってやっつける細胞です。 みっつめは、Bリンパ球は「抗体」というものを作ります。抗体は、病原体をやっつけるときにはとても大切な働きをするのでこれは次のページで見ることにしましょう。 よっつめはキラーT細胞。これは病原体にやられてしまった細胞を殺します。 いつつめはヘルパーTリンパ球。これはBリンパ球やマクロファージをお助けします。 そして、なにより大切なのが樹状細胞じゅじょうさいぼう。木の枝のようにあちこちに手を伸ばした形をしています。樹状細胞の仕事は、病原体が体の中に入ってきたときに「病原体がどんな性質なのか、どういうふうに退治すればよいか」を仲間に指令することです。もし、樹状細胞が指令をだせないと、仲間たちはうまく働くことができません。
病原体がからだの中に入ってきたとき、免疫はこんなふうにチームプレイをします。 1.まず、樹状細胞が病原体が入ってきたことを知り、Bリンパ球に「抗体を作れ!」と指令を出します。 2.Bリンパ球はその病原体にぴったり合う抗体を作り、 3.それを病原体にくっつけて 4.動けなくしてしまいます。 5.それを目印にマクロファージが駆けつけてたべてしまったりするのです。 同時に、キラーT細胞やヘルパーT細胞もチームプレイで活躍します。 こうして、からだは病原体に打ち勝つのです。
ところで、ひとつの病原体にぴったりの抗体はひとつです。ですから、からだのなかには、今までかかった病気の数だけ抗体の作り方レシピがある、ということです。 初めての病原体に対する抗体を作るのには一週間かかることもあります。けれど二回目の時には「あっ前にもやってきたアイツだな!」とすばやく抗体を作ることができるしくみになっているのです。
このようにわたしたちのからだは、ふしぎな免疫のしくみで守られているのです。