医療法人社団 新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○斉藤智 大前利道 大前由美 沼本美由紀 田村美香子 真空採血管用ホルダーの再使用について 真空採血管用ホルダの再使用についての検討内容をご報告いたします。 医療法人社団 新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○斉藤智 大前利道 大前由美 沼本美由紀 田村美香子
背景 微量採血器具(針部分)の操作方法ミス 針以外の周辺部分に関して・・・H18年3月局長通知 (海外感染事例より、注意喚起) (真空採血管の内容物逆流防止の採血手技) マスコミ報道が交錯・・・医療機関困惑 昨年5月に微量採血用器具の操作ミスによる”針の複数人への使用”が社会問題となりました。そしてH18年に針以外の周辺部分がディスポでない製品の使用方法に関する局長通知に基づき、厚生省より全国医療機関の実態調査に発展した経緯がありました。 それに伴い採血ホルダも同じ?とのマスコミ報道が交錯し、困惑された医療現場が多いかと思われます。
目的 採血ホルダの 滅菌再使用を検討 当院の健診採血でも真空採血管用採血ホルダを使用しておりました。マスコミ報道の中、受検者に対する不安材料を少しでもなくすために、急きょホルダの使用を中止して、シリンジ採血へと変更しました。 しかし、これにより採血時の針刺し事故の危険性が高まり、医療廃棄物が増えました。 よって、今回針着脱可能な採血ホルダを滅菌し、再使用が可能かどうか検討したので報告します。
検討器具・機器 着脱ホルダ(T社 ベノジェクトⅡホルダーD) 針付ホルダ(N社 採血針ホルダー付) 針付シリンジ(N社 シリンジGA) オートクレーブ滅菌(S社 MAC-350P型) EOG滅菌(E社 Eogelk SA-N160) γ線滅菌 検討した採血器具は、テルモの針着脱可能な採血ホルダ、二プロの針付ホルダ、針付シリンジです。 滅菌器は、SANYOのオートクレーブ、エルクのガス滅菌、γ線滅菌についてです。
比較検討内容 1. 各滅菌器のメリット・デメリット 2. 各採血器具の使用コスト 1. 各滅菌器のメリット・デメリット 2. 各採血器具の使用コスト 各滅菌器のメリットとデメリット、各採血器具の使用コストについて、比較検討しました。
比較検討1 メリット デメリット オートクレーブ滅菌 高い滅菌性能 熱に弱い製品に不適 ガス滅菌 熱に弱いものに有効 ガスを使用 γ線滅菌 一度に大量 滅菌が可能 コスト高く 取扱困難 まず検討1として、各滅菌器のメリットとデメリットを比べました。
結果1 メリット デメリット オートクレーブ滅菌 高い滅菌性能 熱に弱い製品に不適 ガス滅菌 熱に弱いものに有効 ガスを使用 γ線滅菌 一度に大量 滅菌が可能 コスト高く 取扱困難 今回の滅菌対象となっているものは、樹脂製品の採血ホルダです。 このため、滅菌条件としては高熱処理しない滅菌器が必要となります。
考察1 ガス滅菌器 採血ホルダを 最適に滅菌 縦×横=32×35(cm) ガス滅菌器 採血ホルダを 最適に滅菌 よって熱に弱い採血ホルダを滅菌する場合は、ガス滅菌器が一番適しています。 縦×横=32×35(cm)
比較検討2 使用コスト 滅菌済み着脱ホルダ ディスポ針付ホルダ ディスポ針付シリンジ 検討2として、採血器具ごとのコスト比較を行いました。 採血器具には、ガス滅菌をして再使用する着脱ホルダと、ディスポの針付ホルダ、針付シリンジです。
使用コスト 70,350 + 6,560 = 76,910円 26 + 10 = 36円 39 + 7= 46円 ガス滅菌 導入時= ガス滅菌 導入時= (ガス滅菌器/耐用年数) + 着脱ホルダ= 70,350 + 6,560 = 76,910円 針付シリンジ1個あたり = 針付シリンジ + 廃棄物代= 26 + 10 = 36円 針付ホルダ1個あたり= 針付ホルダ + 廃棄物代= 39 + 7= 46円 ガス滅菌器の導入時コストは、76910円となります。これは滅菌器を耐用年数まで使用した場合の年間コストと着脱ホルダ購入コストを足したものです。 針付シリンジは36円、針付ホルダは46円となり、これらには1個あたりの廃棄コストが含まれています。
結果2 年間コスト (千円) 着脱ホルダを滅菌再利用した年間コストとディスポの針付ホルダ、針付シリンジ、それぞれを使用した場合のグラフです。 赤線の始まり76910円は、ガス滅菌器の初期導入コストです。 グラフより、現在、針付ホルダを使用している施設では、年間の採血人数が3344人以上、もしくは針付シリンジを使用している施設では年間の採血人数が5917人以上いれば、コスト面では有用といえます。 また、年間10000人を採血すると仮定した場合、針付きホルダからの変更では150000円のコスト削減、針付きシリンジからの変更では50000円ものコスト削減が可能となります。 76,910円 3344人 (人数)
考察2 着脱ホルダー 年間採血人数 再利用が有用 年間のコスト 一定条件 下にて… 年間の採血人数、年間のコスト負担をクリアできれば、滅菌した着脱ホルダの再使用は有用であるといえます。
まとめ1 ディスポ製品 ホルダとシリンジ ・準備時間がかからない ・複数人への使用はない ・医療廃棄物の増加 ・シリンジ採血は針刺し事故 ディスポ製品 ホルダとシリンジ メリット ・準備時間がかからない ・複数人への使用はない デメリット ・医療廃棄物の増加 ・シリンジ採血は針刺し事故 針付製品を使うメリットには、採血準備時間がかからなく、複数人への使用がないので、交差感染の心配がありません。 しかしデメリットとしては、医療廃棄物を増やし、エコロジーを考えた場合、賛成できない部分もあります。 一方、針付製品は一度、人に刺入したものを滅菌・再使用はすべきでないと考えており、同様な理由により、シリンジは注射などに限って使用すべきであると考えます。 よって、採血時では針刺し事故の危険性を回避するうえでも、シリンジ採血は奨められないといえます。 ★JCCLS(日本臨床検査標準協議会)にも呼びかけを・・・★ ★約 文字★ 日本の人口動態(40歳以上の人口 H12年) 40~65歳 65歳以上 43,628 22,005 合計:65633万人 (34.4) (17.4)
まとめ2 採血ホルダ ガス滅菌で再使用 ・新品同様な滅菌状態 ・一定数実施で低コスト ・医療廃棄物の軽減 ・初期費用の負担 採血ホルダ ガス滅菌で再使用 メリット ・新品同様な滅菌状態 ・一定数実施で低コスト ・医療廃棄物の軽減 デメリット ・初期費用の負担 問題点 ・ディスポ製品の再使用は禁止 一方、今回の検討内容である、滅菌された着脱ホルダの再使用に関していうと、これは新品と同様な滅菌状態であり、かつホルダは個人ごとの使用としているので、ディスポ製品の単回使用という原則に合致しています。よって滅菌環境が整備されれば、採血ホルダの滅菌→再使用は現実的な選択と考えられます。 しかし、今回の検討した着脱ホルダもディスポ製品としての販売されているものです。現在、ディスポ製品では、再使用禁止という禁忌事項がありますので、これに対して医療機関の義務不足として違法解釈できるかもしれませんが、交差感染を防ぎ、新品と同様な滅菌状態となるため、前向きな検討と考えております。 今後の課題としては、JCCLS(日本臨床検査標準協議会)や各医療機器メーカーへ呼びかけ、再使用可能な着脱ホルダの開発、採血方法ガイドラインの検討を行っていただき、採血ホルダの滅菌再使用が標準法の一つとなり、ホルダを再使用を再使用できる可能性があるのではないかと考えます。
質問された内容 滅菌するまでの作業はどのようにしているか・・・? A.ボックスに次亜塩素酸Naをいれて24時間消毒して翌日滅菌機にかけています。 (座長より) 駆血帯でも血が付着することがあるが、別にディスポ製品になっているわけではない・・・なのでホルダだけディスポというのも違和感を感じる。また学会発表ではなく、ワーキンググループ・委員会などのへこの話を持ちかけていろいろ変えていったらいいのではないか? ※という質問というよりは、今後の提案をしていただいた。