持続可能な社会をめざす環境教育 西村仁志(広島修道大学人間環境学部).

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持続可能な社会をめざす環境教育 西村仁志(広島修道大学人間環境学部)

持続不可能な社会 海洋環境の危機 生物多様性の危機 砂漠化の進行 ひろがる南北間格差→不安定な世界情勢 大気汚染と酸性雨 戦争と軍事兵器 地球温暖化(気候変動・海面上昇)

持続可能な社会にむけて 便利さをもとめるライフスタイル 既得権益と利潤を追求する社会経済システム 大量生産・大量消費・大量廃棄=持続不可能 既得権益と利潤を追求する社会経済システム  大量生産・大量消費・大量廃棄=持続不可能 Sustainability=持続可能性 持続可能な地球環境(生命系) 持続可能な人類社会

 地球環境問題の解決、持続可能な社会の実 現のためには? 国・自治体の法律・条例の制定? 環境技術の開発と普及? 人々の意識、行動の変化? ①も②も、③があって可能になります。 ③に働きかけるのが「環境教育」です。

人間環境宣言 (1972 ストックホルム国連人間環境会議) 環境問題についての若い世代と成人に対 する教育は 恵まれない人々に十分に配 慮して行うものとし、 個人、企業および地 域社会が環境を保護向上するよう、その考 え方を啓発し、責任ある行動をとるための 基盤をひろげるのに必須のものである。

ベオグラード憲章 (1975、国際環境教育会議) 環境とそれに関わる問題に気づき、関心を持つとともに、当面する問題を解決したり、新しい問題の発生を未然に防止するために個人及び社会集団として必要な知識、技能、態度、意欲、実行力等を身につけた人々を育てること。

トビリシ勧告 環境教育政府間会議1977 (a)都市や田舎における経済的、社会的、政治的、生態 学的相互依存関係に対する関心や明確な意識を促進 すること。 (b)すべての人々に、環境の保護と改善に必要な知識、 価値観、態度、実行力、技能を獲得する機会を与えるこ と。 (c)個人、集団、社会全体の環境に対する新しい行動パ ターンを創出すること。

環境庁 環境教育懇談会報告(1988) 環境教育とは、人間と環境との関わりについて理 解と認識を深め、責任ある行動がとれるよう国民 の学習を推進することである。

文部省「環境教育指導資料」(1991) 1.環境教育の必要性 これらの環境問題を解決するには、法的規則の 強化や科学技術の力による方法も重要であるが、 教育による、環境に対して豊かな感受性や見識を もつ人作りこそが最も大切であると考えられる。つ まり、自然愛護の心情や環境保全及び環境倫理 についての正しい理解と実践的態度を身につけ た児童生徒を育成することが、人間と自然が共生 可能な社会を作り上げることにつながるのである。

文部省「環境教育指導資料」(1991) 2.環境教育の目的と内容  環境教育の目的は、一人一人が環境や環境問 題に関心・知識をもち、人間活動と環境との関わ りについての総合的な理解と認識の上に立って、 環境の保全に配慮した望ましい働きかけができる 技能や思考力、判断力を身につけ、よりよい環境 の創造活動に主体的に参加し、環境へ責任ある 行動がとれる態度を育成することである。

文部省「環境教育指導資料」(1991) 2.環境教育の目的と内容 環境や環境問題に関心を持たせるとともに豊かな感受性を育て る。 人間生活が環境に及ぼす影響を認識し、その仕組みを理解させ る。 環境の状況を正しく評価できるような知識を身につけさせる。環 境問題を解決するための理論と実践を学はせる。 快適な環境を創造していくための行動に積極的に参加していく 意欲を育む。 環境問題に関する責任と事態の緊急性についての認識を深め させる。

テサロニキ宣言 環境と社会に関する国際会議(1997) 「持続可能性は環境だけでなく、貧困、人口、健康、 食料、民主主義、人権、平和といった諸課題をも 含んでいる」 「環境教育を環境と持続可能性に向けた教育と表 現してもよい」

「環境教育への招待」(ミネルヴァ書房) 市川智史(滋賀大学) 人類の新しい発展、すなわち『持続可能な開発』の実現 に向けて、環境の保全に必要な知識、態度(価値観)、 技能を身につけ、人間と環境を軸とした様々なかかわり 合いという視点から地球的視野に立って環境にかかわ る諸問題をとらえ、エコロジカルなライフスタイルを実践 することができ、地域、国、国際レベルでの環境保全活 動や『環境』と『開発』にかかわる意志決定過程に参加 することのできる人間の育成にあるといえよう。より端的 に言えば環境教育の目的は『持続可能な社会』を担い 得る主体者の育成にあるということができよう。

いろいろな環境教育 テーマ(自然系、生活系、地球環境系…) フィールド(都市公園、里山、森林、水辺、商店街、 まち… 実施主体(学校、企業、行政、市民活動団体… 属性や年代(幼児、小学生、中高生、大学生・青年、 働く世代、育児世代、中高年…) 手法(映像作品、出版物、イベント、講演、ディスカッ ション、演劇、体験学習、ツアー、ワークショップ…)

生活・暮らし 個人 社会 自然 自 然 体 験 生 活 体 験 い の ち の つ な が り の 実 感 環 境 調 和 型 ラ イ フ ス タイ ル グ リ | ン コ ン シ ュ | マ | 地 域 と つ な が る 体 験 ま ち づく り シ ティ ズ ン シ ッ プ の 育 成 市 民 参 加 ・参 画 社 会 変 革 ‖ 持 続 可 能 な 社 会 へ 西村仁志 2007

総合系環境教育 自然系環境教育 地球系環境教育 生活系環境教育 自然 地域 地球規模 阿部治による 社会 環境まちづくり 企業の社会的責任(CSR) 総合的な学習の時間 生活系環境教育 阿部治による 社会

環境教育のあゆみ:第1段階 1970-80年代 環境問題の解決と未然防止に向けた教 育 日本においてはこれ以前から「自然保 護教育」「公害教育」の展開があった。

環境教育のあゆみ:第2段階 1980-90年代前半 一人ひとりの意識と行動の変革を促し、 生活様式(ライフスタイル)の変革を 導く教育 → 個人のイノベーション

環境教育のあゆみ:第3段階 90年代後半 大量生産・大量消費・大量廃棄型の社 会から、持続可能な社会への変革に向 けて、一人ひとりの意識、態度・価値 観、そして行動の変革を導く教育。 (「持続可能な社会の実現に向けた教 育」) → 社会のイノベーション

環境教育のあゆみ:第4段階 2002年以降「E.S.D.=Education for Sustainable Development」 “よりよい未来”をつくるために環境・ 人権・平和・ジェンダー・国際協力・ 多文化共生・福祉など様々なテーマに 取り組む教育活動をつなぐ重要性の認 識(広義の環境教育)

持続可能な社会ー3つの視点 自 然:生態学的持続性 社 会:社会・文化・経済的持続性 人 間:精神・健康的持続性 阿部治による

持続可能な社会ー3つの「公正」 人と人との関係 人と自然との関係 世代内の公正(世界の貧富の格差是正) 世代間の公正(次世代にツケを負わせない) 人と自然との関係 人間と人間以外の生物・無生物との間の公正=種間公正 阿部治による

未来の社会に向けた人類全体の課題 (井上有一,2009) ①環境持続性の保持 ②社会的公正の保障 ③存在の豊かさの実現 「地球に住むひとりひとりの人間すべてが、生 活を破壊されることなく、満足して幸福に生 きていけることの達成」

Education for Sustainable Development E.S.D. Education for Sustainable Development “持続可能な開発のための教育” ・持続可能性に向けての教育 ・持続可能な社会に向けての教育

環境教育とESD 持続可能な社会をめざす環境教育の特徴 ジェンダー教育 平和教育 開発教育 人権教育 環境教育 多文化共生教育 福祉教育 ○○教育 価値観…人間への尊厳、自然への畏敬、多様性、共生など 学習方法…参加型学習、合意形成、対話など 育む力…多面的な見方、コミュニケーション、参加、つなぐ力など ESD-J,2003