「理科大好きボランティア」 事業を利用しての理科実験教室

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「理科大好きボランティア」 事業を利用しての理科実験教室 独立行政法人国立オリンピック記念青少年センター 青少年教育フォーラム第5号pp.129-138 「理科大好きボランティア」 事業を利用しての理科実験教室 川村康文  2005 発表者:入野寿洋 東京理科大学 川村研究室

1.問題と目的 若者の「科学技術離れ」「理科離れ」 対策 平成14年度 「科学技術・理科大好きプラン」(文部科学省)  「科学技術・理科大好きプラン」(文部科学省)  →理科好きな青少年の育成を目指す

図1 科学技術・理科大好きプラン及び関連施策 SSH、SPP、理科大好きスクール 理科大好きボランティア 図1 科学技術・理科大好きプラン及び関連施策

「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」 「サイエンスパートナーシッププログラム(SPP)」 「理科大好きスクール」 →研究者や専門家の力を利用 「理科大好きボランティア」(平成15年度~) →地域の教育力を利用 PTAや地域 学校が週休2日制に完全移行してから、科学実験教室を求める声は高い 週休2日制:H14(2002)年度~ 考察を行った 「理科大好きボランティア」が、 どのように応え得るのか?

2.「理科大好きボランティア」とは 文部科学省 独立行政法人科学技術振興機構(JST) 科学技術理解増進部 科学技術理解増進事業 「理科大好きコーディネーター・ボランティア支援」 理科大好きボランティア 理科大好きコーディネーター Japan Science and Technology Agency

理科大好きコーディネーター 実験教室、科学工作教室、自然観察、天文観測、科学技術講演、研究所見学など 実験講師は経験・知識・専門性を生かす ストーリーに沿った企画、地域・NPO・科学館などと連携、プロデューサー的役割 JSTが選出した「サイエンス・レンジャー」が適任 理科大好きボランティア 実験講師にそれほどの専門性は求められない 常時申し込みを受け付け →全国各地で数多くの体験的学習を行うことを目指す 理科実験のボランティア講師の登録・紹介 →理科実験教室が開催しやすいよう支援

3.「理科大好きコーディネーター・ ボランティア支援」の評価と今後のあり方 2004年8月31日 理科大好きボランティア有識者会議  2003年度~2004年8月前半に行われた実績の報告 →「理科大好きコーディネーター・ボランティア支援」の事業評価と、今後のあり方などを議論  「理科大好きボランティア」…75件 参加者:男子1609人 女子1349人 計2958人  「理科大好きコーディネーター」…95件 参加者:男子1392人 女子1449人 計2841人 ベルマーク教育助成財団、社団法人発明協会、NPO法人ガリレオ工房、onsen(オンライン自然科学教育ネットワーク)Online_Natural_Science_Education_Network、サイエンスEネット、NPO法人四国自然史科学研究センター、「『理科大好きコーディネーター』を実践したサイエンス・レンジャー」

図2 「理科大好きボランティア」での活動内容 図2 「理科大好きボランティア」での活動内容 実験教室と工作教室に集中 →実験教室へのニーズの高さを写し出した

図3 「理科大好きボランティア」の活動場所 小学校が多く、ついで公民館や図書館 高校では行われているが中学校ではゼロ 科学館や博物館での開催数も多くはない

理科大好きコーディネーター…参加者の高学年化 →科学館や博物館の活用、実験内容の高度化の可能性 図4 参加者の分布 実験講師の活動経験も浅い 理科大好きコーディネーター…参加者の高学年化 →科学館や博物館の活用、実験内容の高度化の可能性 理科大好きボランティア…参加者の低学年化 →小学校や公民館で身近な実験道具を用いた実験

4.「理科大好きボランティア」を利用した 理科実験教室の事例 (1)親子で体感!ワクワク ワンダーサイエンス 日時   2003年10月25日(土)10:00~12:00 場所   京都市立安朱小学校 講堂 スタッフ 小学校のPTA        サイエンスEネットのメンバー 参加者  児童54名 大人40名 計94名 実験内容 「ブラック・ウォール」        「ペットボトル顕微鏡」        「紫キャベツを用いての         酸性・アルカリ性実験」        「蓄光実験」 川村先生が実験講師の立場で参加 実験内容の決定および実験材料費の調査に協力 あんしゅ

「ブラック・ウオール」  偏光軸が直交した2枚の偏光板を用いて、  本来は存在しない壁がまるで実在するようにみせる 図5 ブラック・ウオールの演示 図6 ブラック・ウオールの工作

ペットボトルのキャップにガラス玉を埋め込み レンズとし、タマネギの細胞を観察する 「紫キャベツを用いての酸性・アルカリ性実験」 「ペットボトル顕微鏡」 ペットボトルのキャップにガラス玉を埋め込み レンズとし、タマネギの細胞を観察する 「紫キャベツを用いての酸性・アルカリ性実験」 紫キャベツの汁に身近な調味料など(レモン、酢、天然水、石鹸水)を加えて変色の様子を観察する 「蓄光実験」 巨大蓄光シートを用いて全身写真を撮る ペットボトルの口にセロテープを貼り、その上に試料をのせ、キャップをゆるめたり締めたりしてピントを合わせる 図7 紫キャベツを 用いての酸性・アルカリ性実験

参加した児童の声 「おもしろかった!!」 「いろいろな知らないことがわかってよかった」 「またこんな実験をやりたい」 参加した保護者の声 「子どもがとても楽しそうにしていました」 「親もはじめての体験ができ、 とても面白く参加できました」 「親子でできて楽しかったです」 参加した児童や保護者の満足が得られた

実験指導の補助として参加した参加者の感想 児童や保護者の声を受けて… 実験指導の補助として参加した参加者の感想 「色々と学ぶところが沢山ありました。次の実験教室に生かしていきたいと思います」 「非常に楽しい時間を過ごさせて頂きました」 実験教室の活動にやりがいを感じている 実験教室を企画してやっていきたいという気持ち

実験名人が一人で実験内容を決め、材料を準備し、プログラムを決めてしまう スタッフは実験名人の手伝いをしただけ これまでの実験教室 実験名人が一人で実験内容を決め、材料を準備し、プログラムを決めてしまう スタッフは実験名人の手伝いをしただけ 自分たちが講師を務める イメージ作りができない 理科大好きボランティア 実験教室をTAとして担っているという自覚が 芽生える 過大な過去の実績は求められない 実験教室の全体像をつかんだり、実験教室を企画することに対する展望がもてるようになったりする 次は自分が講師で行える というイメージができる 実験教室に何度か参加

(2)子供たちへの科学実験教室 日時   2004年7月19日(月・祝)13:00~15:00 場所   信州大学教育学部物理実験室 スタッフ 信州大学教育学部の学生12名 ・実験の方法を解説する ・実験の原理を解説する ・子どもたちと一緒に実験を行う 参加者  小学校4年生~6年生の児童43名 実験内容 「牛乳パックカメラ」        「はずむシャボン玉」

「牛乳パックカメラ」「はずむシャボン玉」に決定 実験教室の実験内容を決定するまでの過程 大学生たち 自分たちで面白いと思える実験を提案 実際に行い、自分たちが指導できるか議論 2時間で指導できるような実験を選ぶ 面白さ、楽しさの観点から再度判断 「牛乳パックカメラ」「はずむシャボン玉」に決定

参加する児童を各班に分けて、各班ごとに自由に進める 実験教室の運営方法についての議論 論点:2つの実験をどのように指導するのか? 参加する児童を各班に分けて、各班ごとに自由に進める or 参加する児童全体に対して指導する 意見 「全体で40人の児童を掌握するのは厳しい」 「各班ごとにバラバラに進行したのでは最終的に掌握が難しくなる」 内容・方法の説明→全体指導 実験中→班ごとに指導 (学生が役割分担) 途中の運営は 大学生が行った

牛乳パックの一方(対物側)に虫めがねを取りつけ、接眼側にコンビニ袋をスクリーンとして用いる 「牛乳パックカメラ」 牛乳パックの一方(対物側)に虫めがねを取りつけ、接眼側にコンビニ袋をスクリーンとして用いる リサイクルのセンスを養える レンズの有無の比較により、 レンズの技術面のすごさを実感させる 「はずむシャボン玉」 石鹸液にグリセリンなどを適量混ぜ、膜を厚くし、割れにくいシャボン玉を作る 像の鮮明さの比較 手まりのようにつける 保護者も実験に意欲的に参加

「理科大好きボランティア」は、大学生たちにも活動の場を広く提供することができる制度 参加した子どもたちの感想 「とっても楽しかった」 「またこのような実験教室をやってほしい」 参加した大学生の感想 「やりがいを感じた」 「理科実験があらためて面白いと思った」 子どもたち・大学生にとって有意義な活動 今回の実験教室 実験名人が一人でやってきて、名人技の理科実験をしっかりとコーディネートされたシナリオのもとでみせる実験教室とは異なる 大学生たちが手作りで、学びながら企画、運営された ひたむきな熱意と素朴に子どもたちを楽しませたいという思いに支えられた 「理科大好きボランティア」は、大学生たちにも活動の場を広く提供することができる制度

5.考察 (1)事例1について TAとして参加→その後主任講師を担当 ⇒自立して講師を担当できるようになった 「理科大好きコーディネーター」を 利用しての実験講師はまだ荷が重い 「理科大好きボランティア」を 活用しようという人は育ちつつあるが、 「理科大好きコーディネーター」を 活用するにはまだ敷居が高い 「理科大好きコーディネーター」の 活用を行えるように環境を整備 課題

ある大学生が実験ショーを行ったところ、予算オーバーで大学生の持ち出しとなってしまった (2)事例2について 参加した大学生たちは、いろいろなボランティア活動を継続 ⇒大学生のボランティア意識を高揚 ある大学生が実験ショーを行ったところ、予算オーバーで大学生の持ち出しとなってしまった 「理科大好きボランティア」の知名度が まだ低いため、広く知られていない 小学校 事前に相談を受けていれば… 課題 「理科大好きボランティア」を広く広報

6.おわりに 川村(2004) 「実験講師の新たな養成が可能なシステムが必要」 理科大好きボランティア 気軽に実験講師を担当できる  「実験講師の新たな養成が可能なシステムが必要」 理科大好きボランティア 気軽に実験講師を担当できる 何度か補助をするうちに、講師としての素養を高め、やがて独り立ちできる 講師を担当する機会を開き、講師の不足を解消 依頼者はオンラインで講師の依頼ができる 青少年教育フォーラム第4号 「理科大好きボランティア」は、実験講師の養成や実験教室の開催をこれまでより容易にするシステムを提供している

今後の展望 実験教室を通して、学びながら教師としての 指導力を高め合い、自信をつけていきたい。 毎回の「気づき」が自分の授業計画作りに生きるようにしたい。 実験での「感動」を大切にすることを忘れない。