バリオン音響振動で探る ダークエネルギー ~非線形成長と赤方偏移歪みの影響~

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バリオン音響振動で探る ダークエネルギー ~非線形成長と赤方偏移歪みの影響~ バリオン音響振動で探る ダークエネルギー ~非線形成長と赤方偏移歪みの影響~ 西道 啓博 (東大理) 宇宙初期における時空と物質の進化 2007/5/28

ダークエネルギーと宇宙の膨張則 ダークエネルギーの状態方程式 w = -1 ⇒ DE=宇宙定数 pDE = w ρDE フリードマン方程式 i :ダークマター、バリオン、DE、、、 DEの負の圧力により加速膨張を説明 逆に、膨張の履歴を詳細に追えば、DEに迫れる

Standard ruler θ r = L/θ L r (θ<<1) 333m 静止ユークリッド空間では (flat universe)

Standard ruler 333m L z z+dz 共動距離 (dz << z)

距離からダークエネルギーへ スケールの見積もりのズレ 全てwに押し付ける (他のパラメータは固定) wの誤差/スケールの誤差 スケールの指標 視線方向 角度方向 共動角径距離

銀河の密度ゆらぎの2点相関関数 SDSS LRG バリオン+DM z ~ 0.35 Eisenstein et al. (2005) ~50k gals バリオン+DM ~100h-1Mpcに特徴的なBump

100h-1Mpc θ z z+dz BAOはstandard rulerとして利用可能!!

銀河分布から情報を引き出す 2つの方法論 できるだけたくさんの情報を取り出す できるだけクリーンな情報を使う 正確な理論の構築が必要 構造の成長の非線形性 赤方偏移歪み 銀河バイアス できるだけクリーンな情報を使う 十分線形領域と思える部分だけ使う BAOにより得られる距離の情報だけ使う

{ 非線形成長 赤方偏移歪み 銀河バイアス これは本当か? Percival et al.(2007) SDSS DR5 MG + LRG ~500k gals 実線: 線形理論 振動だけ取り出したもの 上の3つの影響はあまり ないものと期待できる これは本当か?

基礎方程式 流体近似の方程式系を摂動的に解く pressureless & irrotational fluid flow 密度ゆらぎ: δ(x,τ), 特異速度u(x,τ) 連続の式 オイラー方程式 ポアソン方程式 δ(k) = δ(1)(k) + δ(2)(k) + δ(3)(k) + … θ(k) = θ(1)(k) + θ(2)(k) + θ(3)(k) + … 速度発散: θ≡∇・u

real space power spectrum linear theory 1-loop correction P(22)(k) P(13)(k) PL(k-q) PL(q)  -k+q k-q k -k  -q q PL(k) PL(q) q  -q  k k-q k -k

redshift space power spectrum μ: kと視線方向の成す角の余弦 σv: 1次元速度分散 Scoccimarro (2004) 摂動論で1-loop orderまで評価 (線形レベルでは3つは等しい) Gaussian random motionによるdamping factor large scale small scale Kaiser効果 finger-of-God効果 ※観測者は画面下方

結果1: 振動全体に対する影響 構造の非線形成長により、振動が減衰 赤方偏移歪みの効果はほとんど効かない peak、troughの位置は見た目にはほとんど変わらない

結果2: peak と troughの位置 最初の3つめまでのpeak、troughのズレは0.3%以内@z~1

toy modelによる理解 A(k)の影響はほとんど Psmoothで吸収できた 今回の結果はλの 効果とconsistent A’(kL)>0 今回の結果はλの 効果とconsistent λ>0 線形 非線形 + : P - : T peak, troughのズレ

まとめ 線形理論ベースの解析で0.3%程度のスケールに対する精度が達成可能 赤方偏移歪みの振動部分への影響はほとんどsmoothなパワースペクトルで吸収できた ダークエネルギーの状態方程式パラメータwに焼き直したとき、系統誤差は1%レベルに抑えられる