川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第7章(pp )

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川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第7章(pp.117-132) 構造物に作用する力 波圧公式 防波堤の設計 川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第7章(pp.117-132)

本日の内容 円柱構造物に作用する波の力(モリソン公式) ケーソン式防波堤の設計   波圧の現象   防波堤設計の流れ   波圧公式(合田公式)   捨て石の安定重量(ハドソン公式)

せん断応力t:物体表面(単位面積)に水平に働く Fx Fy tcosq t q 圧力P:物体表面(単位面積)に垂直に働く pcosq tsinq q p psinq x y dsは微小面積.微小面積を物体表面で積分すれば物体の表面積Sが求まる. 物体表面に働く応力を積分(面積積分)すると物体に働く力が求まる.

物体は速度uで移動 物体は速度uで移動 物体周囲の流体も引きずられて速度vで移動する 周囲流体の密度r 質量M 質量M+M’ 仮想質量 物体が持つ運動エネルギー: 周囲流体が持つ運動エネルギー: 全運動エネルギー: sは微小体積要素 全運動エネルギー: 物体の質量が増加したと解釈できる.

海岸構造物に作用する力はどのようなものがあるか? 形状抵抗:構造物前後の圧力差による抵抗力 圧力差は構造物前後の波高の差,流れのはく離(はく離渦)などで生じる 波によって生じる流れ はく離渦 圧力大 圧力小 波により構造物前後の水深が異なる. 全水圧大 全水圧小

周囲の流体が減速(加速)するさいに円柱に力を与える(もらう). 同じ流体塊 その後,流体塊は減速(du/dt<0,u2<u1)する u2 u1 mu2 構造物に衝突した流体塊 流体塊は運動量を失う.運動量保存則より流体塊が単位時間に失う運動量は流体塊に接する円柱に働く力Fに等しい. F mu1 慣性抵抗:静止している構造物が周囲の流れを減速させることによって流体から受ける反力

表面抵抗:構造物表面上の流れによる表面せん断力に抵抗する力

CD:抗力係数, CM:慣性係数 円柱構造物に作用する流体力 形状抵抗 慣性抵抗 dz dFT D u z x 形状抵抗は流速の自乗に比例し,慣性抵抗は考えている構造物体積と同じ体積の流体の質量と加速度の積に比例する.比例係数はそれぞれ抗力係数,慣性係数と呼ばれる. 形状抵抗の項で流速に絶対値記号が付いているのは,流速の方向に従い抵抗力の方向を表現するためである.

波による流体中の流速と加速度 x=0として代入・整理

で除する 無次元波力 :ケーシー数(Keulegan-Carpenter number)

抗力係数:レイノルズ数に依存する.波浪場では代表流速に流速振幅などを用いる.定常流の場合との違いが大きい.教科書p.6 図1.3参照.

流れに対し垂直方向に働く力(揚力) 振動が発生する. 流れ はく離渦 dFL CL:揚力係数

垂直面に働く波圧 波と波圧の関係が設計上重要 (波の波高・波長から構造物に作用する波圧を求めることが重要) ケーソン式防波堤 波圧分布 揚圧力分布 傾斜堤 混成堤

揚圧力:傾斜堤は捨て石で構成されるので間隙から静水圧に加えて波による水圧がケーソン式防波堤に鉛直上向きに働く. 平均水深での静水圧分布 波の峰の位相時の静水圧分布 上向き 平均水深での静水圧分布からのずれ(波による付加的な圧力分布) 波の谷の位相時の静水圧分布 下向き 実海域での波は平均水面に対し非対称なので一般に と考えてよい.つまり一周期平均すると上向きの圧力となる.

入射する波と波圧の時間変化 鉛直壁 x h 時間 波圧 双峰型波圧 鉛直壁 x h 時間 波圧 衝撃波圧 空気塊 教科書p.125 図7.6

波圧公式 鉛直壁面で砕波せず重複波を形成する場合 波の峰の位相時 サンフルー(Sanflou)の簡略式  波の峰の位相時には湾外から湾内の方向に波圧が作用する.一方,波の谷の位相時には湾内から湾外に波圧が作用する. 波の谷の位相時 湾内 湾外 衝撃砕波圧の場合 ミニキン(Minikin)の公式  波圧は静水面近傍に集中する.

衝撃砕波圧の場合 広井公式  静水面上波高の1.25倍の高さからケーソン下端まで波圧は一様分布になると仮定

防波堤設計の流れ 配置の決定 設計条件の決定 断面の決定 設計波の設定 外力計算(波圧公式) 直立部滑り出し 直立部の転倒 基礎の支持力 傾斜部安定の検討 全体のすべり 細部設計 no 基本断面の決定

合田公式 砕波・非砕波両者で適用可能 p2 p3 p4 η* hC p1 h h’ d

q 波の主方向q 15° hb:有義波高の5倍だけ沖側の位置の水深 b b=q-15°

設計波高Hmax  最高波を用いる。その波高は砕波帯の沖側にあってはHmax=1.8H1/3,砕波帯内にあっては防波堤から沖側5 H1/3の地点における波高を用いる。最高波の周期はTmax=T 1/3とする。   H1/3はその場における有義波高   T 1/3はその場における有義波周期

・被覆石の所要重量の算定 直立堤下部の傾斜堤上面に設置される捨て石 あるいは傾斜堤そのものを構築する捨て石の 所要重量を決定する.(石の重量が小さいと波に浚われてゆく) ハドソン公式 KD:係数 rr:被覆石の密度 Sr:被覆石の比重 q:傾斜堤の斜面角度 q