精神疾患がある方の地域生活を 支えるかかわり

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34-2 今 日 の ポ イ ン ト今 日 の ポ イ ン ト 現代社会とストレスと糖尿 病 1.1. ストレスによる 血糖コントロールへの影響 2.2. QOL障害によるストレ ス 3.3. 糖尿病とうつ 4.4. ひとことアドバイス 5.5.
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我が国の自殺死亡の推移 率を実数で見ると: 出典:警察庁「自殺の概要」
今後めざすべき基本目標 ―「ケアの流れ」を変える―
あなたに合った 薬と出会うために 監修 : 国際医療福祉大学 教授 上島 国利 すまいるナビゲーター ブックレットシリーズ No.4
2.介護に必要な「時間」に置き換えて「要介護度」を判定します。 聞き取った「心身の状況(5項目の得点)」から直接、「要介護度」を求めることはできません。病気の重さと必要な介護量は必ずしも一致しないからです。 そこで、調査結果をコンピュータに入力し、その人の介助にどのくらいの「時間」が必要なのかを推計することで、介護の必要量の目安としています。この「要介護認定基準時間」を用いて要介護度を判定します。
SWOT分析 看護師 転職例 強み (Strengths) 弱み (Weaknesses) 機会 (Opportunities)
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「効率的で質の高い医療提供体制の構築」と「地域包括ケアシステムの構築」(車の両輪)
在宅医療をご存じですか? 編集:○○○○○ 訪 問 診 療 往 診 在宅医療を利用できる方(例) 在宅医療で受けられる主なサービス
目 次 第1章 大阪府保健医療計画について 1.医療計画とは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
衛生委員会用 がんの健康講話用スライド.
在宅医療をご存じですか? 編集:○○○○○ 訪 問 診 療 往 診 在宅医療を利用できる方(例) 在宅医療で受けられる主なサービス
退院後支援事業における手順 ⑧退院後支援計画による支援の終了 ⑦退院後支援計画に基づいたサービスの利用 ⑥退院後支援計画の決定・交付
未病はなぜよくならないのか? 医療者の問題 ① 未病をみることができない ② 健診に携わる医師や総合内科医の不足 ③ 患者さんとの意思疎通力の不足 患者さんの問題 ① 未病の概念をしらない ② 「薬」に対する絶大な信仰心.
~「依存症対策のあり方について(提言)」(平成29年3月)と府の対応~
私のカルテ 発熱性好中球減少に対する予防的G-CSF製剤使用のための地域連携パス(通称:G連携)
Presentation transcript:

精神疾患がある方の地域生活を 支えるかかわり 南千住東西地域推進連携会議 精神疾患がある方の地域生活を 支えるかかわり 2018/11/20 医療法人社団讃友会 あべクリニック 精神科・心療内科 東京都認知症疾患医療センター 副センター長 近藤 康寛

5大疾患って何? (厚生労働省) 2

5大疾患 (厚生労働省) が ん 脳血管疾患 (脳卒中) 心疾患 精神疾患 糖尿病 3

5大疾患患者数の年次推移 厚生労働省 「平成23年   患者調査」より 精神疾患 糖尿病 が ん 脳血管疾患 (脳卒中) 心疾患

近藤 康寛 御参考 (こんどう やすひろ) [所属] 医療法人社団讃友会 あべクリニック 精神科・心療内科 東京都認知症疾患医療センター [役職] 副センター長 [資格] 社会福祉士 / 精神保健福祉士 <現在の主な業務> ●精神科医療ソーシャルワーカー/認知症専門相談員 ●東京都認知症疾患医療センター職員研修内容検討委員 ●荒川区中央会議 アドバイザー ●荒川区地域ケア会議 アドバイザー/助言者   ●荒川区在宅療養連携推進委員 ●荒川区認知症初期集中支援チーム員 ●オレンジカフェにっぽりんぐ(認知症カフェ)運営者 ●医療・福祉・介護専門職研修会、区民介護教室の講師など 4

プログラム 第1章|あべクリニックの案内 第2章|精神保健の歴史と概要 第3章|統合失調症を知る 第4章|精神科病院への入院 プログラム  第1章|あべクリニックの案内 第2章|精神保健の歴史と概要 第3章|統合失調症を知る 第4章|精神科病院への入院 第5章|精神疾患の方への 対応と実践ケース編 5

第1章|あべクリニックの案内 6

精神科・心療内科・認知症疾患医療センター あべクリニック アクセス 代 表 ℡:03-5810-7808 認知症専用 ℡:03-5615-3020 日暮里駅前中央ビル5F 日暮里駅 徒歩2分 7

精神保健福祉士・ 社会福祉士 (ソーシャルワーカー) 精神科医療チーム ~どんな職種がいるの?~ 精神科医 (医師) 看護師・ 保健師 医療事務員 作業療法士 精神保健福祉士・ 社会福祉士 (ソーシャルワーカー) 心理士 (カウンセラー) ※一般的な職種構成です

医療連携型認知症カフェ オレンジカフェにっぽりんぐ 御参考 あべクリニック 医療・福祉事業 医  療 精神科・心療内科 診療(外来) カウンセリング 往診・精神科訪問看護 認知症疾患医療 センター(荒川区) 医療連携型認知症カフェ オレンジカフェにっぽりんぐ 荒川区認知症初期 集中支援チーム デイケア デイケア ナイトケア リワークプログラム もの忘れ予防プログラム 福 祉 就労継続支援事業 B型作業所 Studio753 9

第2章|精神保健の歴史と概要 10

5 精神疾患は身近な病気? 厚生労働省の調査によると、 精神疾患の治療のために受診している (通院・入院含む)患者数は、 平成26年で約392万4000人いました。 5 日本人は、生涯を通じて     人に1人は精神疾患に かかるといわれています。 11

日本の精神保健の歴史 ●1900年(明治33年) 精神病者看護法 親族が監護義務者として 精神障がい者の看護を行う。 日本の精神保健の歴史  ●1900年(明治33年)  精神病者看護法  親族が監護義務者として  精神障がい者の看護を行う。 私宅監置が認められる=座敷牢 ●1950年(昭和25年)  精神衛生法  精神障がい者に適切な医療・  保健の機会を提供する。   私宅監置の廃止➡入院中心へ 12

認知症 うつ病 発達障害 統合失調症 パニック障害 依存症 摂食障害 代表的な精神疾患の種類 認知症 うつ病 発達障害 統合失調症 パニック障害 パーソナリティ障害 依存症 摂食障害 13

精神病床の平均在院日数の推移 資料:厚生労働省 14

精神障害保健福祉者手帳所持者の推移 (東京都) 資料:東京都福祉保健局「福祉・衛星行政統計(年報)」 15

精神疾患の患者さんは どこにいるのか? 16

第3章|統合失調症を知る 17

統合失調症の方って、 どんな印象ですか? 18

陽性症状 陰性症状 陰性症状 認知機能障害 統合失調症の症状 幻覚 妄想 感情がなくなる まとまりのない行動 自閉・意欲低下 変わった行動 注意力の低下 認知機能障害 記憶力 ・ 注意力 ・ 判断力の低下 20

統合失調症 人 に1人 100~120 =珍しい病気ではない <統合失調症の原因>         に1人    =珍しい病気ではない 人 100~120  <統合失調症の原因>  ・生物学的要因   病気のなりやすさ 個人の性質  ・心理・社会的要因   対人関係や生活の大きな変化によるストレス 発症年齢 15歳~35歳  慢性疾患 長期になる 正式な疾患の原因はまだ解明されていない 21

精神疾患の誤解~遺伝と環境の相互作用~ 遺伝などの先天的要因 ストレスなどの後天的要因 統合失調症 ハンチントン 舞踏病 早期幼児 自閉症 ハンチントン    舞踏病 早期幼児    自閉症 双極性障害 統合失調症 不安障害 適応障害 PTSD 22

ドーパミン 心の3原色 快 バランス セロトニン 不 快 ノルアドレナリン 衝 動 (緊張・過敏) 快 楽 覚 醒 (注意力・判断力) 東邦大学名誉教授  有田秀穂 博士提唱 衝 動 (緊張・過敏) 食欲 性欲 攻撃力 不安 イライラ やる気 意欲 気分 感情 認知機能 増 快 楽 (動機付け) 覚 醒 (注意力・判断力) 減 積極力 気力 無駄な 動作 ふるえ 快 不 快 ドーパミン ノルアドレナリン

統合失調症ドーパミン仮説 陽性症状 ドーパミンの   不足 陰性症状 幻覚 妄想 など 意欲 思考 低下など ドーパミンの 過剰な放出 24

統合失調症 抗精神病薬 受容体が乱れるのを薬の効果で防ぐ 25

統合失調症の薬のかたち(剤型) 錠 剤 細 粒 内用液 OD錠【口腔内崩壊錠】 持効性注射剤 26 ・携帯に便利 ・保存性にすぐれている 錠 剤 ・携帯に便利 ・保存性にすぐれている ・水と一緒に飲む 細 粒 ・量を細かく設定できる 内用液 ・どこでも飲める ・ジュース・スープなどに混ぜることが可能 ・携帯に便利な分包タイプがある OD錠【口腔内崩壊錠】 ・水なしでも溶けて、のどにつかえにくい ・携帯に便利で保存性にすぐれている 持効性注射剤 ・1回の注射で数週間効果が持続する 26 参照:ヤンセンファーマー「統合失調症を知るために」

抗精神病薬の副作用 ●手足のふるえ ●舌がもつれる ●便秘 ●前屈みの姿勢 ●唾液の異常 ●体重増加 ●立ちくらみ ●頭がまわらない ●糖尿病 ●だるさ ●性欲減退 ●ねむけ ●月経不順 ※治療効果が出る=副作用もある ➡この調整こそが精神科専門医の技 27

1年後の再発率 治療中断 70% 薬の継続 30% 薬・その他治療の継続 8% ●症状がない時もお薬を飲む必要がある ●飲み忘れを防ぐ工夫  治療中断 70%  薬の継続 30%  薬・その他治療の継続 8% ●症状がない時もお薬を飲む必要がある ●飲み忘れを防ぐ工夫 ➡ピルケース、ポケット付きカレンダーの利用 ●持効性注射剤にする ●家族、支援者と連携 統合失調症は、ぶり返し=再発しやすい病 28

統合失調症の一般的な経過 陽性症状 リハビリテーション 陰性症状 29

幻覚の種類 幻 聴 幻 視 幻 触 幻 嗅 幻 味 実在しない物音や人の声が聞こえる 実際にはない物が見える 統合失調症 陽性症状 幻覚の種類 げんちょう 幻 聴 実在しない物音や人の声が聞こえる げん  し 実際にはない物が見える 幻 視 げんしょく 実際には触れていないのに、 何かが触れているように感じる 幻 触 げんきゅう 幻 嗅 実際にはないはずの臭いがする げん み 幻 味 実際にはしないはずの味を感じる 30

妄 想 妄想とは、現実にありえないことを 真実と強く思い込み、非合理的で 訂正不可能なもの。 被害妄想➡一番出現しやすい妄想 統合失調症 陽性症状  妄 想 「電波が・・・、暗号が・・・、裁判になる、 防犯カメラが部屋にあって今は話せない」など 意味不明な発言。 「カーテンの隙間から人が見ている」 「自分は死刑になる」など支離滅裂な発言をする。 妄想とは、現実にありえないことを 真実と強く思い込み、非合理的で 訂正不可能なもの。 被害妄想➡一番出現しやすい妄想 本来、被害妄想は誰にだってある➡頻度の問題

妄想・幻覚への適切な対応 ①経験を否定しない ②主訴、SOSを受け取り、理解する ③妄想の内容を積極的に聞き出さない 説得しようとしない ④短時間のコンタクトと具体的で現実的な会話 ⑤安心できる環境づくりと誠実で一貫性のある対応 ⑥心理社会的アプローチにつなげる ⑦新しい対処方法の獲得 ⑧一緒にふりかえる 32

33

陰性症状 ・引きこもる ・感情表現が乏しくなる ・考える力が低下 ・意欲が減退 ・過剰な睡眠 長い方は数年間続く。 家事や仕事ができない。 長い方は数年間続く。 家事や仕事ができない。 ※症状がわかりにくいため、理解されずらい 34

認知機能障害 認知機能障害=判断力、注意力の低下 ●色々なことに気づけない ●一つに集中すると他に関心が向かない ●2つ、3つ同時に出来ない ●記憶力が低下し覚えられない 35

心理社会的アプローチ ●リハビリテーション ●SST(社会生活技能訓練) ●作業療法、運動療法(フットサルなど) ●生活支援、就労支援 薬物療法以外の治療の総称 ●リハビリテーション ●SST(社会生活技能訓練) ●作業療法、運動療法(フットサルなど) ●生活支援、就労支援 ●ピアサポート、当時者研究 ●精神療法 36

再発を防ぐために =薬物療法+心理社会的アプロ―チ 車の両輪として並行して行う ストレス 環境 調整 精神療法 薬物 療法 生活の 工夫 ストレス 脆弱性 37

強みを活かしたアプローチ 障害・課題 疾患・症状 健康・強み 38

第4章|精神科病院への入院 39

精神科病院入院の種類 任意入院 応急入院 措置入院 病院の医師が治療のために必要と診断した場合に、ご本人の同意のもとに行っ  ていただく入院です。ただし、72時間に限り、精神保健指定医の判断により  退院を制限することがあります。 医療保護 入院 患者さんご本人の同意がなくても、精神保健指定医が入院の必要性を認め、   患者さんのご家族等のうちいずれかの方が入院に同意したときの入院です。精 神保 健福祉法に基づく家族等とは、次のような方です。 (優先順位はありません。) ・配偶者 ・父母(患者さんが未成年の場合:両親が望ましい) ・祖父母、子、孫、兄弟姉妹 ・後見人又は保佐人、家庭裁判所が選任した扶養義務者 患者さんに上記の家族等がいない場合または家族等の全員が意思を表示する ことができない場合で、精神保健指定医が入院の必要性を認めたときは、患 者さんの居住地の市区町村長の同意により医療保護入院となることがあります。 応急入院 患者さんご本人または保護者・扶養義務者の同意がなくても、精神保健指定医 が緊急の入院が必要と認めたとき72時間を限度として行われる入院です。 措置入院 自傷他害のおそれがある場合で、知事の診察命令による2人以上の精神保健 指定医の診察の結果が一致して入院が必要と認められた場合、知事の決定に よって行われる入院です。 緊急措置 入院 自傷他害のおそれがある場合で、正規の措置入院の手続きがとれず、しかも急 速を要する場合、精神保健指定医1人の診察の結果に基づき知事の決定に よって72時間を限度として行われる入院です。

入院の課題 ①完全閉鎖の環境、身体拘束 ②ADL(日常生活動作)の低下 ③精神疾患は根治しない疾患が多い ④高額な費用負担(家族の負担など) ⑤強制的な入院をさせても、その経緯を  覚えている(例)「一生恨む」「見捨てられた」 ⑥入院前と生活環境が変わっていな  ければ、同じことの繰り返しになる 入院は手段の1つであり、解決策ではない

第5章|精神疾患の方への 対応と実践ケース編 第5章|精神疾患の方への      対応と実践ケース編 41

困難事例ケース① 事例ケース1 統合失調症の高齢者が銀行に日参し、“世界銀行から預金へ振り込みを確認してほしい”等々の内容の訴えで、営業時間外にもATMの外線通話を続け、警察にも同様の訴えを繰り返す。 事例ケース2 “降ろしていないのに勝手に預金が引き出されている“(認知症に起因する)と訴えるも、前日に自力で窓口で下しているため、本人が引き出しているが理解できず、窓口で怒鳴る、叫ぶを度々繰り返す。

困難事例ケース② 事例ケース3 「預金を勝手に別の銀行に移された」と根拠、証拠のない訴えを繰り返し、行員が事実に基づいて説明しても、修正が効かず、何回も銀行を訪れる。 事例ケース4 「利用している訪問介護職員が入院計画書を盗んだ、とご本人が区や都に苦情を申し立てる」 43

事例ケースに関わった時、 あなたは、どう対応しますか? 44

困難ケースのかかわり・対応① ①緊急性の有無(生命の危機・自傷他害行為など) 問題なし<②へ進む> 問題あり<⑧先ず通報する> 精神科流 困難ケースのかかわり・対応① ①緊急性の有無(生命の危機・自傷他害行為など)  問題なし<②へ進む> 問題あり<⑧先ず通報する> ②本人の訴えそのものを受け止める(受容) ③対応、調査結果は丁寧に本人へ伝える ➡本人の意に沿わない内容でも、真実を伝える ➡可能であれば、2人で対応し、1人は本人に寄り添い、   もう1人は事実をしっかり伝える <チーム対応> ④本人には損害がないこと、情報は漏えいしていないこと   などを伝え、本人が今、感じている不安な点を軽減する 何よりも信頼関係の構築を最優先にする 45

困難ケースのかかわり・対応② ⑤正しい情報、間違った情報を整理する(情報の記録) ➡情報が間違っていたら、適切な対応は絶対にできない 精神科流 困難ケースのかかわり・対応② ⑤正しい情報、間違った情報を整理する(情報の記録) ➡情報が間違っていたら、適切な対応は絶対にできない ⑥行動の原動力、主訴は何か?関係者みんなで   仮説を立てる(チーム対応) (例)➡「お金」に対する異常行動         =経済的な不安感が強い・・・・ ⑦本人へ適切な支援先につなげる提案をする  合意あり<⑧へ進む> 拒否<見守る・支援先に相談> ⑧必要な支援先へ連絡(連携) (例)地域包括支援センター、警察へ連絡 46

バイオ・サイコ・ソーシャルモデル 住み慣れた地域で 生活するためには? 骨折で入院・・・ バイオ サイコ ソーシャル 47 ●左大腿骨警部骨折術後 ●屋内杖歩行見守り 生理的・身体的機能状態 ●既往歴:特になし サイコ ソーシャル 精神的・心理的状態 社会環境状態 ●統合失調症 47

ソーシャル(社会環境)に視野を広げる 本 人 バイオ サイコ ソーシャル 家庭・環境 制 度 病 院 親 族 地 域 (近所) 48

仮説に対して、基礎情報、新たに得た情報 を整理し、仮説を検証することを繰り返す 言動・現象への影響を想像する[仮説] 入院前の 生活状況 本 人 制度・サービスの 利用有無/状況 バイオ サイコ ソーシャル 家庭・環境 制 度 住環境 仮説に対して、基礎情報、新たに得た情報 を整理し、仮説を検証することを繰り返す 病 院 親 族 医師からの 状況説明内容 助けてくれるこどもや 親族の有無/状況 病院同士の医療連携 地 域 (近所) 精神疾患への理解 気の知れた知人・ 友人などの有無 49

精神疾患の方への「かかわり」のポイント ①可能な範囲で精神疾患について理解することで、 本人の立場にたって、しっかり向かい合う ①可能な範囲で精神疾患について理解することで、   本人の立場にたって、しっかり向かい合う ②否定しない。自尊心を傷つけない ③感情の交流を大切にする ④声のトーン、スピード、長さを相手に合わせる 認知症の初期にみられる日常生活上の変化を示す。これは東京都全域を対象とした疫学調査で「認知症」と診断された対象者の家族が気づいた日常生活上の変化を頻度順に示したものである。1項目のみでみれば加齢による生理的な変化と区別することは難しい。しかし、このような変化が少なくとも半年前と比較して目立つようであれば認知症を疑うタイミングといえる。  ここで問題となるのは家族がいなければこのような変化は気づかれにくいことであろう。65歳以上の4割が単身あるいは高齢者世帯であり、その割合が今後ますます増加することを考えれば、家族に情報源を求めることが難しい状況もあり得る。家族から情報が得られる場合には、認知症を疑うことはむしろ容易と言っていい。本人との問診を通して認知症を疑う技術がかかりつけ医に求められる理由である。   出 典                   東京都福祉局:「高齢者の生活実態及び健康に関する調査・専門調査報告書」(1995) ⑤目の前の不安を取り除くことを優先する ⑥当事者の選択を重視する ⑦リファーする(適切な支援先へ引き継ぐ)勇気をもつ 50

精神障害者等による一般刑法犯 検挙人員(罪名別) 精神障害者等による一般刑法犯 検挙人員(罪名別) 資料:法務省平成26年版犯罪白書 ◆低い検挙率  精神障害者等の検挙人員は3,701人 ※交通事件をのぞく全刑法犯の 1.4% 精神障害者等/検挙人員総数の比率は、殺人15.1%、放火19.5%だけ他に比べ高めだが2割を超えていない。 「精神障害者=犯罪者予備軍」は統計上なりたたない 健常者の犯罪率:25万8,785人÷1億2,410万人✕100=0.21% 精神障害者の犯罪率:3,701人÷320万人✕100=0.12% 印象に左右されてはいけない ➡ 精神障害者は怖くない

地域連携 チーム対応 ★地域包括支援センター 困った時の相談窓口(荒川区南千住) 地域連携 ~認知症、統合失調症など~  南千住西部(南千住1・5・6・7丁目)  ℡03-5604-5710  南千住東部(南千住2・3・4・8丁目)  ℡03-3805-5702 ●荒川区役所  荒川区福祉部障害者福祉課(障害全般)  荒川区福祉部高齢者福祉課(65歳以上・認知症など)  代表 ℡03-3802-3111 ●あべクリニック(精神科・認知症疾患医療センター)  代表 ℡:03-5810-7808  認知症専用 ℡:03-5615-3020(担当:近藤) 地域連携 チーム対応 地域連携 認知症の相談窓口は、医療関係、保健関係、福祉関係、介護経験者等に分けられる。 医療関係では、総合病院等の神経内科や老年科等が開設する窓口の他、もの忘れ外来でも診断や治療と並行して相談に応じている。保健関係では、地域の保健所、保健センターや精神保健福祉センター等があり、保健師等の専門スタッフが相談に応じ、関係機関とも連携する体制がある。福祉関係では、市区町村の身近な生活圏域ごとに設置される地域包括支援センターを核とした地域の支援体制強化の期待が寄せられている。 また、若年性認知症については、国の事業において若年性認知症専用のコールセンターが全国で一箇所設置されている。 介護経験者等の団体としては「公益社団法人 認知症の人と家族の会」が代表例である。ほとんどの都道府県に支部があり、相談事業、認知症の本人交流会の支援等の活動が行われている。(家族の会:0120-294-456 [月~金:10~15時]) また、最近では、若年性認知症の人を中心に、本人同士が“仲間に会いたい、思いを共有したい”との主旨からブログを立ち上げ交流を行うなど、相互支援の動きも始まっている。 52

精神疾患はこころの病ですか? 53

こころは綺麗なまま こころが病むことはない 精神疾患は、こころの病ですか? 精神疾患は、脳の機能変調  こころは綺麗なまま   こころが病むことはない 54

55

困難な対応はチャンス 小さなお節介 つながる勇気を ご清聴ありがとうございました