酵素表層発現酵母を用いた有機リン農薬検出法の構築

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酵素表層発現酵母を用いた有機リン農薬検出法の構築 National Institute of Technology, Fukui College, Advanced Engineering Course 酵素表層発現酵母を用いた有機リン農薬検出法の構築 福井工業高等専門学校 環境システム工学専攻  ○松浦 和也、高山勝己 電極  BAS GCカーボン(内径6 mm)  電極表面にNIR(SIGMA:10 Unit)  を固定後、透析膜で被覆 反応条件  電圧 : 0.2 V(Ag/AgCl sat. KCl)  溶液量 : 1.0 mL pH7 (Tris-HCl緩衝液)  OD600=1.0のMT8-1(OPH)  10 mM NADPH溶液 緒言 殺虫効果 生体内では... 神経伝達阻害物質 Organophosphate nerve agent X=S:Parathion , Sumithion(m-CH3) X=O:Paraoxon として働く 我々の研究室では、有機リン加水分解酵素(OPH)表層発現酵母 (MT8-1(OPH))を用いて、安価な有機リン農薬センサーの開発を 目指した。本研究では、図1のようにパラチオンを検出することを考 えた。 図3. 測定系の概略図 電流値が安定したら、7 μM(2 ppm)になるようにパラチオンを 反応液に添加して、パラチオンに対する電流-時間応答を記録した。 ②コントロール実験 (1)OPHを表層発現していない酵母MT8-1+NIRの条件 (2)MT8-1(OPH)のみの条件 ③電極の使用回数による電流値の変化 NIRを被覆したGC電極を使用し、①と同様な条件下で3回行い、 ピーク電流値の変化を見た。 *ニトロ基還元酵素 * 赤:MT8-1+NIR 緑:MT8-1(OPH)のみ ピーク電流  MT8-1(OPH)+NIR : 750 nA  MT8-1+NIR : 60 nA  MT8-1(OPH)のみ : 60 nA 図1. パラチオンの検出スキーム OPH表層発現酵母は、細胞表層工学技術を使用しており、 図2のような構造となっている。 7 µMのパラチオンに対して、 正味700 nAの応答が確認できた。 グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI) 酵母 MT8-1 C末端 N末端 有機リン加水分解酵素 GPIアンカーはOPHのC末端に結合 し、また酵母の細胞壁と共有結合 してOPHを発現している。 プラスミドを 導入 プラスミドはGPIアンカーが発現後、OPHが発現する塩基配列となっている。 図4. パラチオンの電流-時間曲線 図5. パラチオンの検量線 図6. 電極の使用回数による電流値の変化 図2. OPH表層発現酵母の構造 パラチオンと類似構造を持つ有機リン化合物の検出 細胞表層酵素を用いる利点 (1)酵素を表層に発現している方が反応が早い。 (2)酵母が酵素を生成する。 ①スミチオンとマラチオンの電気化学的検出 スミチオンやマラソンの構造は、パラチオンに類似構造を持つ有機リン化合物である。パラチオン検出時と同様な実験条件と図3に示した測定系を用いて、7 μMになるようにスミチオンとマラソンを反応液に加え、電流-時間応答を記録した(図7)。 実験方法と結果 ②微小電極を用いたスミチオンの検出 以下の反応条件でスミチオンを反応させた。 反応液組成 OD600=1.0のMT8-1(OPH) 10 mM NADPH 7μM スミチオン 反応液全量:1000μL 攪拌時間:30 min スミチオン 次に、左に示した微小電極に 10 mM Tris-HCl緩衝液を90 µL 滴下し、0.2 V(Ag/AgCl)印加した。反応液を遠心分離し、上澄み 10 µLを緩衝液に滴下して電流 -時間応答を記録した(図8)。 マラソン OPH表層発現酵母の培養 (1)SD-W液体培地500 mLにMT8-1(OPH)を植菌し、振とう機(TAITEC:BR-300LF)を用いて25 ℃、120 rpmで振とう培養を行った。 (2)培養中、静止期の半分の吸光度の時に塩化コバルトを加えた。 (3)培養開始から5日後に取り出し、200 mM HEPES緩衝液(pH7)で 洗浄を行い、冷凍保存した。 パラチオンの電気化学的検出 ①パラチオンの電流-時間曲線 培養したMT8-1(OPH)とNIRを用いて、パラチオンの電気化学的検 出実験を行った。電気化学的検出には、図3のような測定系を使用 した。 図7. マラチオンとスミチオンとの検出 図8. 微小電極におけるスミチオンの電流応答