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放射加熱によって調節された 二酸化炭素氷雲の散乱温室効果と 古火星の温暖化 北海道大学 大学院理学研究科 地球惑星科学専攻 惑星物理学研究室 博士後期課程 3 年 光田 千紘 chihiro@ep.sci.hokudai.ac.jp http://www.ep.sci.hokudai.ac.jp/~chihiro/ 2007/05/10 (Thu) 惑星大気研究会 オンラインセミナー / DM seminar

目次 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 はじめに まとめと今後の課題 生命の普遍性 地形が示唆する温暖な火星古気候 二酸化炭素氷雲による散乱温室効果 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 まとめと今後の課題

目次 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 はじめに はじめに 生命の普遍性 地形が示唆する温暖な火星古気候 二酸化炭素氷雲による散乱温室効果 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 まとめと今後の課題 はじめに

生命の存在は普遍的か 惑星系は普遍的 地球型惑星 = habitable ? 200 以上もの系外惑星系が発見 5 地球質量? の惑星発見 ( Udry et al. 2007 ) 地球型惑星も普遍的であると期待できる 地球型惑星 = habitable ? 液体の物質が必要 (H2O, NH3, CH4,…) 太陽系内での地球型惑星における H2O water の存在条件をまず押さえることが重要 本発表はその 1 例として古火星を取りあげる

現在の火星環境 太陽放射入射 : 地球の 0.43 倍 有効放射温度 : 216 K 大気成分 : CO2 (96%) 太陽放射入射 : 地球の 0.43 倍 有効放射温度 : 216 K 地球: 256 K 大気成分 : CO2 (96%) 大気圧 : 6 hPa 地表面温度 : 220 K 赤道直下では 273 K まで上昇 乾燥寒冷な気候 H2O water は存在不可

地形が示唆する温暖な火星古気候 バレーネットワーク 数 100 km も続く谷地形 38 億年前頃に形成 形成要因 クレータ年代より 形成要因 降水 ? 地下水の流出 ? Valley Networks 当時の地表面温度は * 平常時は氷点下 * ときどき氷点下前後まで上昇 であったことを示唆

CO2-H2O 大気による温室効果の限界 (Kasting 1991) 潜熱加熱による対流圏上部の温度上昇 地表面温度低下 最大地表面温度 230 K 大気圧 2 気圧 雲の放射特性は無視 凝結物はすぐ落下 CO2 凝結が温度構造に与える影響の模式図

CO2 凝結による鉛直構造の変化 大気構造 大気圧↑ CO2 が凝結すると 成層圏; 放射平衡 対流圏: 放射対流平衡 地表面温度↑ 対流中立になるように傾きが決まる 大気圧↑ 地表面温度↑ ある気圧での温度T(p)↓ CO2 凝結 CO2 が凝結すると 対流圏上部温度↑ 地表面, 対流圏温度↓ 更に CO2 が凝結…

CO2 凝結による鉛直構造の変化 大気構造 大気圧↑ CO2 が凝結すると 成層圏; 放射平衡 対流圏: 放射対流平衡 地表面温度↑ 対流中立になるように傾きが決まる 大気圧↑ 地表面温度↑ ある気圧での温度T(p)↓ CO2 凝結 CO2 が凝結すると 対流圏上部温度↑ 地表面, 対流圏温度↓ 更に CO2 が凝結…

CO2 凝結による鉛直構造の変化 大気構造 大気圧↑ CO2 が凝結すると 成層圏; 放射平衡 対流圏: 放射対流平衡 地表面温度↑ 対流中立になるように傾きが決まる 大気圧↑ 地表面温度↑ ある気圧での温度T(p)↓ CO2 凝結 CO2 が凝結すると 対流圏上部温度↑ 地表面, 対流圏温度↓ 更に CO2 が凝結…

散乱温室効果 二酸化炭素氷雲の散乱温室効果 温室効果は雲パラメタに 強く依存(Pierrehumbert and Erlick 1997) 粒径/光学的厚さ 条件次第では強い温室効果を生じさせる (Mischna et al. 2000) 粒径: 〜赤外放射波長(10m) 光学的厚さ : 1 〜 20 雲パラメタの見積りはあまり行われていない 赤外放射反射 > 太陽放射反射 散乱温室効果

目次 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 雲パラメタの見積もり 温暖湿潤な気候の必要条件 はじめに 生命の普遍性 地形が示唆する温暖な火星古気候 二酸化炭素氷雲による散乱温室効果 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 まとめと今後の課題 雲パラメタの見積もり

雲パラメタの見積もり 古火星大気: 主成分が凝結する系 我々の主張: 雲層が対流しない解もあり得る どのような雲対流が起きるかは明らかにされていない 我々の主張: 雲層が対流しない解もあり得る 凝結が対流よりも素早く生じればよい.

凝結時間 << 対流時間 とすると… 一方,大気主成分が凝結する系では,放射冷却で冷えた分,相 変化による潜熱解放で気塊を暖めることが可能であり,周囲より 冷えて重くなる必然性はありません. さらにこのように生じた雲に,正味の放射加熱を受ける効果が あれば,雲は放射収支のつりあうところまで発達して,それ以上 変化しない状態に到達する可能性があります.この場合対流や CO2の降雨や降雪なしに雲の構造が決まることになります. 放射冷却が潜熱加熱で打ち消され, 対流は駆動されない 雲粒径は放射平衡を満たすように自律的に調節される

本研究では… 放射による雲の形成消失過程を考慮した一次元放射対流平衡モデルを用いて その雲による散乱温室効果 を調べる 放射平衡を満たす雲層構造 その雲による散乱温室効果 を調べる

目次 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 一次元放射対流凝結平衡モデル はじめに 生命の普遍性 地形が示唆する温暖な火星古気候 二酸化炭素氷雲による散乱温室効果 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 まとめと今後の課題 一次元放射対流凝結平衡モデル

鉛直一次元放射対流凝結平衡モデル概要 放射対流平衡, CO2 気固平衡 -- 計算の流れ -- を同時に満たす温度-雲構造 を求める 仮定 雲層で対流は生じない 放射冷却を受けた分, 雲粒が成長する 雲粒の運動は無視 凝結核混合比は一定値を保つ 雲粒落下, 併合成長の効果は考えない 各層内は単一粒径 粒径は凝結量から算出 雲質量混合比 (予報変数) 凝結核混合比 (パラメタ) -- 計算の流れ -- 初期構造 温度 T(z), 雲質量混合比 m(z) 放射場を解く 放射による加熱冷却 CO2凝結蒸発 対流調節 収束条件 No Yes 平衡構造!

モデル設定 大気成分: CO2, H2O (飽和蒸気圧) 鉛直解像度 50 層 タイムステップ: 102 〜 104 sec 太陽光度: 0.75 x 現在値 (Gough 1981) 地表面アルベド: 0.2 (Mischna et al. 2000) パラメータ: 大気圧: 0.5, 1.0, 2.0, 5.0, 10.0 気圧 凝結核混合比: 104, 105, 106, 107, 108 , 109 個/大気1kg 鉛直解像度 50 層 タイムステップ: 102 〜 104 sec 収束条件: dT/dt < 10-8 K/sec

放射コード 放射伝達 光学定数 二方向近似(Toon et al. 1989) 気体(CO2 & H2O): 相関 k 分布法 太陽放射: δ-Eddington 近似 赤外放射: Hemispheric mean 近似 光学定数 気体(CO2 & H2O): 相関 k 分布法 吸収線DB: HITRAN2004+HITEMP CO2 圧力励起帯(@0-350, 1150-1800cm-1 ): Kasting et al. 1984 CO2 wing(@300-600cm-1): 500cm-1 cutoff Sub Lorentzian: Winters et al. 1961 H2O 連続吸収: Roberts et al. 1976 雲(CO2 ice): Mie 理論 複素屈折率: Warren 1986 多重散乱を考慮 厚い CO2 大気に 対応

目次 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 計算結果 はじめに 生命の普遍性 地形が示唆する温暖な火星古気候 二酸化炭素氷雲による散乱温室効果 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 まとめと今後の課題 計算結果

結果1: 平衡大気-雲鉛直構造 初期構造: 放射対流凝結平衡構造 雲の放射特性を無視した場合の平衡構造 地表面温度 227 K 大気圧: 2 気圧 凝結核混合比: 107 kg-1 初期構造: 雲の放射特性を無視した場合の平衡構造 凝結物は地面へ落下 地表面温度 227 K 放射対流凝結平衡構造 高度 15-35 km 平均雲粒径 3.0 m 雲氷量 0.026 kg m-2 光学的厚さ 0.5 (@波長20m) 地表面温度 252 K 雲の温室効果 25 K

結果1: 平衡大気-雲鉛直構造 初期構造: 放射対流凝結平衡構造 雲粒径と成長率の負のフィードバック 雲の放射特性を無視した場合の平衡構造 大気圧: 2 気圧 凝結核混合比: 107 kg-1 初期構造: 雲の放射特性を無視した場合の平衡構造 凝結物は地面へ落下 地表面温度 227 K 放射対流凝結平衡構造 高度 15-35 km 平均雲粒径 3.0 m 雲氷量 0.026 kg m-2 光学的厚さ 0.5 (@波長20m) 地表面温度 252 K 雲の温室効果 25 K 雲粒径と成長率の負のフィードバック * 雲の成長に伴って - 光学的に厚くなった雲がより赤外加熱を受ける - 温室効果が増加し, 下層からの赤外加熱が強まる

結果2:凝結核混合比依存性(大気圧2気圧) 地表面温度は凝結核混合比に強く依存 地表面温度に極大値 凝結核混合比 > 109 kg-1 粒径の凝結核混合比依存性 地表面温度に極大値 大気の窓(9, 20 micron)を効率よく後方散乱できる粒径(5, 15 micron)の雲が形成 凝結核混合比 > 109 kg-1 平衡解なし 1micron の雲粒による強い反温室効果 地表面凍結, 大気崩壊へ

結果3:大気圧依存性(凝結核混合比 107kg-1) 大気圧↑: 地表面温度↑ 大気圧 > 3 atm で 地表面温度 > H2O 凝固点 大気圧の増加に伴って 粒径; ほぼ一様 雲氷量; 増加 雲の形成高度範囲が広がったため.

目次 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 仮定の検証 はじめに 生命の普遍性 地形が示唆する温暖な火星古気候 二酸化炭素氷雲による散乱温室効果 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 まとめと今後の課題 仮定の検証

雲層での対流安定性 静的安定度 N2 平衡状態雲層は対流安定: N : 浮力振動数 N2 > 0 で対流安定 大気圧: 2 気圧 凝結核混合比: 107 kg-1 静的安定度 N2 N : 浮力振動数 N2 > 0 で対流安定 雲層ではCO2 は相平衡状態にありますから, 断熱的に持ち上げられたパーセルと周辺大気密度差を議論するには, Co2氷の空間密度を議論すれば十分です. そこで, ここではCO2氷の質量混合比の鉛直勾配()で対流安定性を議論します. このみどりの線が, 断熱的に移動させたパーセルでの鉛直勾配とします. 大気での鉛直勾配がそれよりも小さいと, 持ち上げられたパーセルは周辺大気よりも多くのCO2氷を含むため重くなり, 元の位置に戻りますから, 対流安定であると言えます. 実際に鉛直勾配を求めた結果がこのグラフです. 大気の鉛直勾配は断熱鉛直勾配よりも小さいため, 雲層は対流安定であると言えます. この平衡構造は本モデル仮定した雲層で対流が生じない事と矛盾しないといえます. : 重力加速度 : 雲質量混合比 : 高度 : CO2 潜熱 : 定圧比熱 : 温度 平衡状態雲層は対流安定: * 雲層が対流しないという仮定と矛盾しない

落下による雲の消失時間 形成時間 < 消失時間 落下による雲の消失時間 雲面密度 落下による質量消失率 落下による雲の消失時間 雲面密度 落下による質量消失率 質量消失率 [kg/m2/sec] 凝結核混合比 > 105 kg-1 で 形成時間 < 消失時間

目次 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 温暖湿潤な気候の必要条件 はじめに 生命の普遍性 地形が示唆する温暖な火星古気候 二酸化炭素氷雲による散乱温室効果 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 まとめと今後の課題 温暖湿潤な気候の必要条件

温暖湿潤な気候の必要条件 温暖湿潤な気候の必要条件 地表面温度の凝結核混合比依存性 大気圧 > 数気圧 凝結核混合比 105-107 kg-1 地表面温度の凝結核混合比依存性 温暖化の一時性と調和的 凝結核量を変動させるメカニズム: 火山噴火, 隕石衝突など 観測的にも 1,2 オーダ程度の変動が示唆(Twomey and Wojciechowski 1969; Pollack et al. 1979) Yum and Hudson 2002 Tellus Nakajima et al, 2001 GRL Box model: Kuba et al. 2004 Lu and Seinfeld (2005 JAS) Ghan et al. 1997 by GCM Takemura et al. 2005

温暖湿潤な気候の必要条件 Yum and Hudson 2002 Tellus Nakajima et al, 2001 GRL Box model: Kuba et al. 2004 Lu and Seinfeld (2005 JAS) Ghan et al. 1997 by GCM Takemura et al. 2005

温暖湿潤な気候の必要条件 温暖湿潤な気候の必要条件 地表面温度の凝結核混合比依存性 凝結核混合比の 定量的評価が重要 大気圧 > 数気圧 凝結核混合比 105-107 kg-1 地表面温度の凝結核混合比依存性 温暖化の一時性と調和的 観測的にも 1,2 オーダ程度の変動が示唆(Twomey and Wojciechowski 1969; Pollack et al. 1979) Yum and Hudson 2002 Tellus Nakajima et al, 2001 GRL Box model: Kuba et al. 2004 Lu and Seinfeld (2005 JAS) Ghan et al. 1997 by GCM Takemura et al. 2005 凝結核混合比の 定量的評価が重要

目次 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 はじめに まとめと今後の課題 生命の普遍性 地形が示唆する温暖な火星古気候 二酸化炭素氷雲による散乱温室効果 雲パラメタの見積もり 一次元放射対流凝結平衡モデル 計算結果 仮定の検証 温暖湿潤な気候の必要条件 まとめと今後の課題 まとめと今後の課題

まとめと今後の課題 放射冷却によって形成される CO2 氷雲の鉛直構造とその散乱温室効果を見積もった. 古火星での habitable condition 大気圧: 〜 数気圧, 凝結核混合比: 〜 105-107 kg-1 地表面温度の強い凝結核混合比依存性より, 地形より示唆される温暖化の一時性を説明可能. 今後の課題 凝結核混合比の決定機構 地表からの巻き上げ/隕石衝突/火山噴火/宇宙線 … 対流/雲粒落下の効果 雲対流を陽に解くモデル (→ 北大, 小高グループ) 大気微量成分(CH4)の影響

参考文献1 Gough, D. O.,1981, Solar interior structure and luminosity variations, Sol. Phys., 74, 21-34 Kasting, J. F.,1991, CO2 condensation and the climate on early Mars, Icarus, 91, 1-13 Kasting, J. F.,1993, Early Earth’s atmosphere, Science, 259, 5097, 920-926 Kieffer, H. H., Martin, T. Z., Peterfreund, B. M., Miner, E. E. and Paulluconi, F. D., 1977, Thermal and albedo mapping of Mars during the VikingPrimary mission, J. Geophys. Res., 82, 4249-4291 Pierrehumbert, R. T. and Erlick, C.,1998, On the scattering greenhouse effect of CO2 ice clouds, J. Atmos. Sci., 55, 1897-1903 Mischna, M. A., Kasting, J. F., and Freedman, R., 2000, Influence of carbon dioxide clouds on early Matrian climate, Icarus, 145, 546-554 Mitsuda, C., Yokohata, T., and Kuramoto, K., 2006, Vertical structure an d greenhouse effect of radiatively controlled CO2 ice cloud layer in a Martian paleatmosphere, Proc. of the 39th ISAS Lunar and Planetary Science Conference, 128-131

参考文献2 Pollack, J. B., Kasting, J. F., Richardson, S. M. and Poliakoff, K. 1987, The case for a wet, warm climate on early Mars, Icarus, 71, 203-224 Rothman, L. S., and A. Barbe, D. Chris Benner,L. R. Brown, C. Camy-Peyret, M. R. Carleer, K. Chance, C. Clerbaux, V. Dana, V. M. Devi, A. Fayt, J.-M. Flaud, R. R. Gamache, A. Goldman, D. Jacquemart, K. W. Jucks, W. J. Lafferty, J.-Y., Mandin, S. T. Massie, V. Nemtchinov, D. A. Newnham, A. Perrin, C. P. Rinsland, J. Schroeder, K. M. Smith, M. A. H. Smith, K. Tang, R. A. Toth, J. Vander Auwera, P. Varanasi, K. Yoshino, 2005, J Quant. Spectrosc. Radiat. Transfer, 95, 139-204 関口美保, 2004, ガス吸収大気中における放射フラックスの算定とその計算最適化に関する研究,東京大学博士論文 佐々木晶, 1997, 火星の表層環境とその歴史, 遊星人, 6, 10, 70-79 Toon, O. B., McKay, C. P., Ackerman, T. P. and Santhanam, K., 1989, Rapid calculation of radiative heating rates and photodissociation rates in inhomogeneous multiple scattering atmospheres, J. Geophys. Res., 94, 16287-16301 Yokohata, T., Kosugita, K.,Odaka, M. and Kuramoto, K.,2002, Radiative absorption by CO ice clouds on early Mars:Implication to the stability and greenhouse effect of the clouds, Proc. of the 35th ISAS Lunar and Planetary Science Conference, 13-16 Warren, S. G., 1986, Optical constants of carbon dioxide ice, Appl. Opt., 25, 2650-2674

Appendix

各古火星モデルの概念図

今後の課題 雲の水平分布 凝結核混合比の決定機構 対流/雲粒落下の効果 雲の温室効果 + 大気微量成分(CH4)の影響 非均質核の”核”の供給源は? ダスト巻き上げ 隕石衝突 火山噴火 宇宙線 雲層の上部(高度 35 km)まで核は巻き上がるか? 成層圏まで含めた大気の循環を調べる必要がある 対流/雲粒落下の効果 雲対流を陽に解くモデルを構築中 (北大, 小高グループ) 雲の水平分布 大気大循環モデル(三次元モデル), 雲解像モデル(二 or 三次元モデル) 雲の温室効果 + 大気微量成分(CH4)の影響

本研究: 雲パラメタの見積り 放射平衡を満たす雲構造と その温室効果の見積り 雲成長に伴い, 雲が正味加熱を受ければ… 雲層 =活発な湿潤対流?? 対流の励起源; 放射冷却 放射冷却 = 凝結潜熱であれば, 対流は駆動されない 雲成長に伴い, 雲が正味加熱を受ければ… 雲層は放射平衡構造へと収束 CO2降雨降雪なしに雲構造を決定可能 一方,大気主成分が凝結する系では,放射冷却で冷えた分,相 変化による潜熱解放で気塊を暖めることが可能であり,周囲より 冷えて重くなる必然性はありません. さらにこのように生じた雲に,正味の放射加熱を受ける効果が あれば,雲は放射収支のつりあうところまで発達して,それ以上 変化しない状態に到達する可能性があります.この場合対流や CO2の降雨や降雪なしに雲の構造が決まることになります. 本研究: 放射平衡を満たす雲構造と その温室効果の見積り

火星古気候の謎 (〜 38 億年前) 温暖湿潤な気候 温暖化メカニズムは? Valley Networks 雲パラメタの 定量的評価が重要 多数の流水地形(e.g. Carr 2000) 温暖化メカニズムは? 厚い(〜数気圧) CO2 大気の温室効果(Pollack et al. 1989) 暗い太陽下では大気凝結による温室効果弱化(Kasting 1991) + CO2氷雲の温室効果 雲粒径/光学的厚さ次第で温室効果強(e.g. Forget and Valley Networks 現在の火星の気候は, 冷たく乾燥した状態になっています. しかし,火星の歴史の初期,およそ 38 億年前には,気候は 温暖だったことが多数の流水地形の存在から示唆されていま す. 雲パラメタの 定量的評価が重要

火星版 暗い太陽のパラドックス 当時の太陽光度 現在の 75% 程度 恒星進化の理論 (Gough 1981) 温暖湿潤な気候を得るためには, 75 K もの温室効果が必要(惑星アルベド 0.216 の場合) 参考 ) 現在の地球型惑星の温室効果 火星: 2K, 地球: 30K, 金星: 520K

参考) 地球版 暗い太陽のパラドックス 暗い太陽の下でも海が存在していた? 形成時に海の存在が必要となる岩石が 40 億年前に形成 堆積岩, 枕状溶岩 現在と同程度の地表面温度が長期的に維持されていた可能性を示唆 当時, CO2の分圧が高かった場合, 理論的に説明可能 (Kasting 1993) 38 億年前で 1 気圧

雲層での対流安定性 成層条件 雲質量混合比の鉛直勾配による成層の判定 雲層での熱力学第一法則より 1 >> mでは これに静水圧の式を組み合わせて解くと, 気塊を断熱変化させた場合の雲質量混合比の鉛直勾配が導かれる 成層条件

タイムスケール 大気のバルクでの放射時定数: 〜数週間 雲の放射時定数: 〜1 日 雲層の日変化 大気の凝結率は雲層の放射冷却率に律速される 放射冷却率: 0.1 K/day ただし, 雲粒径が大きくなると光学特性の時間変化が小さくなり, 時定数は長くなる 大気のバルクでの放射時定数: 〜数週間 雲層の日変化 雲層の放射冷却率は赤外放射で決まるため, 地表面温度の日変化に対応した雲層の日変化が存在 ただし, 平衡解がずれるのみで, 平衡状態へ収束するのは変わらない

ストークス沈降速度

併合成長の影響の見積り 大きい雲粒の粒径を R, 小さい雲粒の粒径を rとするとその相対速度は

雲粒落下フラックスの見積り 雲粒の落下フラックス [kg/m/sec] 雲粒の落下速度はストークス沈降速度とすると

考察 平衡雲構造の安定性 地表面温度の凝結核混合比依存性 凝結核混合比の定量的評価が重要 鉛直断熱的摂動に対して, 雲層の内部領域は安定 雲質量無視: 対流中立 雲質量考慮: 対流安定 地表面温度の凝結核混合比依存性 → 古火星気候の温暖化が一時的であったことと調和的 * 凝結核混合比を変動させるメカニズムは多数 * 観測的にも 1,2 オーダ程度の変動の存在が示唆 (Twomey and Wojciechowski 1969; Pollack et al. 1979) 雲層の力学的な安定性について少し考察します. 収束状態は放射平衡構造にあり放射冷却による対流は駆動されません. さらに, 雲の質量を考えますと, その構造は安定です. 仮想的に気塊を断熱的に持ち上げると,気塊は雲質量の増加分周囲よりも重くなり, 再び下へと戻ります. すなわち, このような雲層が形成されれば, 断熱的摂動が生じても安定に存在し続けることが可能です. また, 古火星気候の温暖化は低い風化率から一時的なものであったことが示唆されています. 本研究で示した地表面温度の強い凝結核混合比依存性はこれと調和的です. 凝結核量の 1-2 オーダ程度の変動は観測的にも知られていますから, これによってこの温暖な気候の一時性が説明できる可能性があります. ただし, 古い火星気候への影響を考える為には, 凝結核混合比の定量的評価が重要である考えます. 凝結核混合比の定量的評価が重要

二酸化炭素相変化の気候への影響 極冠 地表面温度 惑星アルベド 大気 正の相関 対流圏上層温度 負の相関 氷雲 地表面アルベド CO2保存 有効放射温度 地表面温度 惑星アルベド レイリー 散乱 気体の 温室効果 惑星全体の 放射エネルギー バランス 大気 太陽放射反射 赤外放射 反射 凝結温度 CO2 保存 正の相関 雲への 赤外加熱 対流圏上層温度 負の相関 雲への 赤外加熱 雲の自己冷却 氷雲

放射スキーム : -Eddington 近似  近似 散乱位相関数を関数 + ルジャンドル関数で表記する方法.  = 0 のピークを表現. Eddington 近似 放射強度の天頂角方向の分布をルジャンドル関数展開し, 二項目まで考慮したもの I (, ) ~ I0() + I1()  天頂角余弦 光学的に薄い場合や, 天頂角が 90 度に近づく場合, 精度が落ちる (e.g. Goody, 1989) よりよい精度が欲しい場合(観測屋さん)は adding 法など.

放射スキーム : Hemispheric mean 散乱位相関数を以下で表現. 1 + g ( 0 < < 90 ) 1 - g ( 90 <  < 180 ) 赤外放射では, δ-Eddington 近似と比較してよい精度を得る(Toon et al. 1989)