津波の基礎知識
1 津波発生の仕組(海溝型) アメリカ地質調査所(USGS)より 1 津波発生の仕組(海溝型) アメリカ地質調査所(USGS)より 日本列島が海のプレートから押されていることが関係しています。 プレートは,1年間に8㎝ほどの非常にゆっくりとした速度で動いているので,普段は気が付くことができません。 では,その動きを動画で見てみましょう。 プレートが動いて,陸地がひきずりこまれていきます。 その力がたまって,耐えきれなくなると陸のプレートがはじけます。 陸のプレートがはじけると,地震となって地面が揺れたり、津波が起こったりすることがあります。 http://m.youtube.com/watch?v=4Xebwzb3dDE&desktop_uri=%2Fwatch%3Fv%3D4Xebwzb3dDE
2 津波と波浪の違い 海域で吹いている風によって生じる波浪は海面付近の現象で、波長(波の山から山、または谷から谷の長さ)は数メートル~数百メートル程度です。一方津波は、地震などにより海底地形が変形することで周辺の広い範囲にある海水全体が短時間に持ち上がったり下がったりし、それにより発生した海面のもり上がりまたは沈みこみによる波が周囲に広がって行く現象です。 津波の波長は数キロから数百キロメートルと非常に長く、これは海底から海面までのすべての海水が巨大な水の塊となって沿岸に押し寄せることを意味します。このため津波は勢いが衰えずに連続して押し寄せ、沿岸での津波の高さ以上の標高まで駆け上がります。しかも、浅い海岸付近に来ると波の高さが急激に高くなる特徴があります。また、津波が引く場合も強い力で長時間にわたり引き続けるため、破壊した家屋などの漂流物を一気に海中に引き込みます。 気象庁 地震と津波
3 津波の速度 100mを10秒で走る速度! 気象庁 津波発生と伝播のしくみ 3 津波の速度 100mを10秒で走る速度! 津波は、海が深いほど速く伝わる性質があり、沖合いではジェット機に匹敵する速さで伝わります。逆に、水深が浅くなるほど速度が遅くなるため、津波が陸地に近づくにつれ後から来る波が前の津波に追いつき、波高が高くなります。 水深が浅いところで遅くなるといっても、オリンピックの短距離走選手なみの速さで陸上に押し寄せるので、普通の人が走って逃げ切れるものではありません。津波から命を守るためには、津波が海岸にやってくるのを見てから避難を始めたのでは間に合わないのです。海岸付近で地震の揺れを感じたら、または、津波警報が発表されたら、実際に津波が見えなくても、速やかに避難しましょう。 気象庁 津波発生と伝播のしくみ
4 津波の伝播の様子① 津波の高さは沿岸部に到達すると急激に高くなる! 気象庁 津波発生と伝播のしくみ 4 津波の伝播の様子① 気象庁 津波発生と伝播のしくみ これは,2003年に発生した十勝沖地震による津波のアニメーションです。津波が、到達した沿岸付近で急激に高くなっている様子がわかります。 津波の高さは沿岸部に到達すると急激に高くなる!
日本 ペルー 4 津波の伝播の様子② 津波は繰り返し襲ってくる! 後から最大の津波がくることもある! 4 津波の伝播の様子② 日本 ペルー 津波は繰り返し襲ってくる! 後から最大の津波がくることもある! これは,平成19年(2007年)8月16日にペルーで発生した地震による津波のアニメーションです。 日本から遠く離れたペルーから海を渡って,20時間以上もの時間をかけて日本につきました。 ハワイなど途中の沿岸で反射・散乱を繰り返しながら、波が複雑に変化しています。 最初の波が到達した後も、後続波がつぎつぎと日本に来襲する様子も見えます。 数時間以上してから最大の津波が来る場合もあります。 気象庁 平成19年(2007年)8月16日にペルーで発生した地震による津波のアニメーション
5 津波の高さ これは東北地方太平洋沖地震で発生した津波の高さを示した図です。 多くの地点で非常に高い津波が観測されていることが分かります。 5 津波の高さ これは東北地方太平洋沖地震で発生した津波の高さを示した図です。 多くの地点で非常に高い津波が観測されていることが分かります。 補足 人の目に映る3.11津波浸水MAP http://michinoku.irides.tohoku.ac.jp/ttjt/ttjt_view.html
1分以上揺れてたら高台へ避難! 6 揺れの長さ① 揺れている時間が1分以上続いたら,津波の可能性大. 断層が割れるのに時間がかかる 6 揺れの長さ① 1分以上揺れてたら高台へ避難! 揺れている時間が1分以上続いたら,津波の可能性大. 断層が割れるのに時間がかかる 断層面積が大きい 断層面積はマグニチュードに対応 マグニチュード 大 ならば津波 高 ! マグニチュードが大きな地震であるほど,断層面積が大きいので,割れるのに時間が掛かります。 つまり,揺れている時間が長い地震ほど,マグニチュードの大きな地震である可能性が高いということです。 ただし,地盤によってはいつも長めに揺れる場所もあります。 揺れている時間が1分以上続いた場合,非常に大きな地震が発生し,津波が発生する可能性が高まります。 ただし,地盤によって,いつも長めに揺れる場所もあります 資料作成協力 慶應義塾大学環境情報学部准教授 大木聖子
5 揺れの長さ 6 揺れの長さ② 地震 断層の長さ 7.3 兵庫県南部地震 (阪神・淡路大震災) 50km 9.0 東北地方太平洋沖地震 6 揺れの長さ② 5 揺れの長さ マグニチュード 地震 断層の長さ 揺れていた時間 7.3 兵庫県南部地震 (阪神・淡路大震災) 50km 13秒程度 9.0 東北地方太平洋沖地震 (東日本大震災) 500km 2分40秒以上 兵庫県南部沖地震では揺れの時間は約13秒ほどだったという記録があります。 一方で,東北地方太平洋沖地震では2分40秒以上も揺れが続き,大きな津波が発生しました。
巨大 3m 5 揺れの長さ 7 大津波警報・津波警報 10m超 大津波警報 10m 5m 特別警報 種類 発表基準 津波の高さ予想の区分 5 揺れの長さ 7 大津波警報・津波警報 種類 発表基準 津波の高さ予想の区分 巨大地震の場合の発表 大津波警報 特別警報 予想される津波の高さが 高いところで 3m を超える場合。 10m超 巨大 10m 5m 大津波警報は,予想される津波の高さが高いところで3mを超える場合に発表されます。 巨大地震の場合は,巨大とだけ発表され,明確な高さの予想を伝えないことになっています。
高い 1~3m 7 大津波警報・津波警報 5 揺れの長さ 津波 3m (1m<予想高さ≦3m) 警報 種類 発表基準 津波の高さ予想の区分 5 揺れの長さ 7 大津波警報・津波警報 種類 発表基準 津波の高さ予想の区分 巨大地震の場合の発表 津波 警報 予想される津波の高さが 高いところで 1~3m 高い 3m (1m<予想高さ≦3m)
29分後 36分後 34分後 7 大津波警報・津波警報・津波注意報 8 津波到達時間① 8 津波到達時間① 7 大津波警報・津波警報・津波注意報 29分後 大船渡 第1波 11日14時46分 (-) 0.2m 最大波 11日15時15分 3.2m以上 釜石 第1波 11日14時45分 (-) 0.1m 最大波 11日15時21分 4.1m以上 石巻市鮎川 第1波 11日14時46分 (+) 0.1m 最大波 11日15時20分 3.3m以上 36分後 34分後 東北地方太平洋沖地震では,大船渡では29分後,石巻市鮎川では34分後など,最大波がおよそ30分前後で到達しました。 2011/03/12 19:35発表 気象庁 津波観測に関する情報より作成
3分 7 大津波警報・津波警報・津波注意報 8 津波到達時間② 平成5年 北海道南西沖地震 地震発生後 で津波が到達 津波警報は5分後。 7 大津波警報・津波警報・津波注意報 8 津波到達時間② 平成5年 北海道南西沖地震 地震発生後 3分 で津波が到達 平成5年の北海道南西沖地震では,地震発生後3分で津波が到達したという記録が残っています。 津波警報の発令は5分後であったため,多くの人が犠牲になりました。 津波警報は5分後。 198人が犠牲に。
9 過去の津波被害 7 大津波警報・津波警報・津波注意報 地震発生日 マグニチュード 地震名 死者(日本全体) 7 大津波警報・津波警報・津波注意報 9 過去の津波被害 地震発生日 マグニチュード 地震名 死者(日本全体) 明治29(1896)年6月15日 8.5 明治三陸地震 約22,000人 昭和8(1933)年3月3日 8.1 昭和三陸地震 1,522人(死者) 1,542人(行方不明) 昭和35(1960)年5月23日 チリ地震津波 122人(死者) 20人(行方不明) 明治三陸地震では,震度1程度の弱い揺れが5分以上続き,その後大津波が襲来したという記録が残っています。 マグニチュードの大きい地震ほど,揺れが長くなり,津波が発生しやすいことを忘れないでおきましょう。 以下参考資料です。(読み原稿ではありません) 仙台管区気象台ウェブサイト「宮城県に影響を及ぼした地震・津波の被害」より http://www.jma-net.go.jp/sendai/jishin-kazan/higai.htm ★明治三陸津波 三陸海岸から約200kmの沖合いに震源があったため微震(震度1)程度であったが、震動はやや長く継続し、十勝国茂寄村では地響きを約5分間感じたという記録が残っています。地震による直接の被害はなかったが、地震後大津波に襲われ三陸海岸に大被害をもたらした。宮古では地震後18分に引き波で始まり、20時07分には最大波高4.6mを示した。最も激しかったのは陸前国吉浜で、波の高さは24.4mに達した。この津波は遠く太平洋を横断してハワイおよびサンフランシスコの検潮儀にも記録があった。災害地を通じて家屋全半壊・流失10,617戸、溺死者27,122人。 ★昭和三陸津波 岩手県宮古市・宮城県石巻市・仙台市・福島県福島市で震度5を観測するなど、北海道から近畿・中国地方にかけての広い範囲で有感となった。地震後約30~60分の間に津波が北海道と三陸沿岸を襲い、大きな被害が出た。岩手県沿岸の津波の高さは10m以上にも及び、とくに綾里湾では28.7mにも達した。この津波は九州にいたる太平洋沿岸各地に及び、さらに津波は北米・南米の太平洋沿岸にも到達した。この津波による人的被害は、死者・行方不明者3,064名、負傷者1,092名にのぼった。 ★チリ地震津波 18000Km離れた地球の裏側チリ沖で発生した世界最大のM9.5の地震。その地震の22.5時間後に襲った津波は日本沿岸で観測され、津波の最大波高は、花咲339cm、八戸582cm、御前崎380cm、土佐清水268cm、油津202cmなどで、三陸沿岸北部で異常に高い地頃があった。この地震による津波では、東北地方の三陸沿岸を中心に、死者119人(岩手県58人、宮城県45人)、行方不明者20人、負傷者872人が犠牲となり、また、建物の全壊1,571戸、半壊2,183戸、流失1,259戸のほか道路の損壊や橋の流失、堤防決壊、船舶の沈没や流失など甚大な被害となった。とくに被害が大きかったのは宮城県の志津川で、津波は約1km内陸に達し、死者行方不明者37人、負傷者560人、家屋全壊986戸、半壊364戸、流失186戸、床上浸水1,756戸に達した。
<終わり>