●ネジレバネ目(撚翅目でんしもく) Strepsiptera 体長は0.5~6mm(雄)。雄は1対の後翅を持ち,前翅は平均棍化している。雌はうじむし状で,翅を持たない。多くの目の昆虫に内部寄生し,過変態を行う。雌雄で寄主昆虫が異なる種もいる。雌の体内に卵巣はなく,卵は血体腔内に存在し,精子は,育房,生殖管を通り体内に入り体腔内で受精が起る(血体腔受精)。卵胎生で,1齢幼虫は三爪型幼虫と呼ばれ,活発に寄主をさがし,寄主の皮膚の薄い部分から体内に侵入する。幼虫は皮膚を通して栄養を寄主から得る。長い間甲虫に近縁と考えられていたが,最近,DNA分析の結果,ハエ目に近縁であることが報告された。しかし,その後の分析で,甲虫ともハエ目とも近縁でないと考えられるようになった。日本から41種,世界から約500種が知られる。ウンカに寄生する種もいる。
オス
オスの交尾器挿入 老熟幼虫は頭部を寄主外に出す。 精子
オスは蛹になって初めて外から確認できる
●シリアゲムシ目(長翅目) Mecoptera (scorpionfly) 日本産の前翅長は9~25 mm. 体はやわらかく,顔は前方へ細長く伸び,先端に咀嚼口を持つ.多くの種では,雄は腹端の把握器を背中側に曲げ,サソリのような姿勢をとる.成虫は、森林周辺に住み,昆虫の死体や小型の昆虫を捕食する。幼虫はいもむし型で,土やコケの中にすみ,腐植,死肉,コケなどを食べる.一部の種は,交尾の前にオスが餌あるいは口から分泌した液で作った球で,メスをおびき寄せ交尾することが知られている.日本から45種,世界から約500種が記録されている.ヤマトシリアゲムシ,ガガンボモドキ
Scorpion fly 結婚プレゼント(えさ)をする。メスが餌を食べている間に交尾
●ノミ目(隠翅目) Siphonaptera 体長は1~9 mm.翅がなく,体は左右に扁平で,頑丈にできている.後脚は特に跳躍用に発達している.成虫は温血動物に寄生し,大半は哺乳類を吸血する.幼虫はいもむし型(無脚)で,成虫の糞や動物の体から脱落した有機物を食べる.日本から71種,世界から1,800種が知られる.ケオプスネズミノミはペスト菌をネズミから人に媒介し,過去において多くの人命を奪った.
ネコノミ(幼虫):咀嚼口を持ち,血は吸わない。寄主の体表の垢,成虫の糞,寄主巣内のゴミ等をえさとする。 ネコノミ(成虫) 口器は針状
●ハエ目(双翅目) Diptera 体長は1~40 mm. 成虫は1対の前翅のみを持ち,後翅は退化し平均棍となる.口器は舐め型,または吸収型.幼虫はうじむし型で,脚を持たない.地球上のあらゆる環境にすみ,成虫は花蜜,樹液,腐敗動植物,糞,動物血液,昆虫類などを餌とし,幼虫は腐敗動植物,糞,生きた植物やキノコの組織,昆虫類の成虫や幼虫,哺乳類の各器官や組織の一部などを食物としている.日本から5,300種,世界から約110,000種が知られる.
双翅目 (鱗弁)
糸角亜目 短角亜目(短角直縫群) 環縫亜目(短角環縫群)(囲蛹をつくる) 無額嚢群 有額嚢群 無弁翅類 有弁翅類 (蛹生類) 無額嚢群 有額嚢群 無弁翅類 有弁翅類 (蛹生類) 鳥,哺乳類に外部寄生。 成虫は老熟幼虫を生み,その 幼虫はすぐ蛹となる。Braulidaeは無弁翅,残りは有弁翅
環縫亜目 短角亜目 「アブ」と名のつくもののうちハナアブ科やアタマアブ科などはハエの仲間であり、逆に「ハエ」と名のつくもののうち、アシナガバエ科やオドリバエ科などはアブの仲間である。 糸角亜目
羽化直後のシリアカニクバエの反転した額嚢
囲蛹 環縫亜目に見られる 囲蛹殻 外側の殻で最終齢の幼虫の脱皮殻が硬化しいもの。 中に真の蛹(裸蛹)が存在する。
糸角亜目
チカイエカ アカイエカの亜種。休眠をしない。フィラリアの媒介虫。西ナイルウィルスの媒介虫になる可能性がある。
短角亜目
短角亜目
環縫亜目 無額嚢群
環縫亜目 無額嚢群
環縫亜目 有額嚢無弁翅類 ニガウリ、スイカ、キュウリなどのウリ類だけでなく、トマト、ピーマンなどの多くの果菜類やパパイヤ、マンゴウなどの果実を加害
ミカンなどの柑橘類だけでなく、トマト、ピーマンなどの多くの果菜類やパパイヤ、マンゴウ、グァバ、バナナなどの果実を加害
オス成虫をメチルオイゲノールによる誘引殺虫 不妊虫(オス)放飼 メチルオイゲノールはラン(Bulbophyllum属,通称ミバエラン)に含まれ,ミバエをおびき寄せるのに使われている.ミバエはこれを摂取し体内で酸化し,ミバエのメスを誘引するフェロモンとして利用.
オス成虫をキュウルアで誘引殺虫 不妊虫(オス)放飼 ラン科のセッコクの一種 Dendrobium superbum がキュウルアを放出し,それに雄は誘引される。雄はそれをなめて摂食し,それを基に性フェロモンを作る
Napomyza lateralis ハモグリバエ科 環縫亜目 有額囊群無弁翅類
トマトハモグリバエ 侵入害虫 ウリ科,ナス科,マメ科,キク科,アブラナ科作物に寄生 酷似したマメハモグリバエも侵入種
環縫亜目 有額嚢有弁翅類 ツェツェバエ Glossina属の総称で,23種が知られている.20種がトリパノソーマ(原虫,眠り病の病原微生物)を媒介,特に7種が重要. 成虫は,動物や人の血を吸う。子宮を持ち老熟幼虫を産み落とす. Tsetse fly, transmitting trypanosomes of mammals.
クモバエの1種(コウモリに寄生) 蛹生類(有弁翅類)