冬期極域成層圏対流圏循環の変動に おける赤道域QBOの影響の 統計的有意性

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1標本のt検定 3 年 地理生態学研究室 脇海道 卓. t検定とは ・帰無仮説が正しいと仮定した場合に、統 計量が t 分布に従うことを利用する統計学的 検定法の総称である。
Advertisements

生物統計学・第 5 回 比べる準備をする 標準偏差、標準誤差、標準化 2013 年 11 月 7 日 生命環境科学域 応用生命科学 類 尾形 善之.
Lesson 9. 頻度と分布 §D. 正規分布. 正規分布 Normal Distribution 最もよく使われる連続確率分布 釣り鐘形の曲線 -∽から+ ∽までの値を取る 平均 mean =中央値 median =最頻値 mode 曲線より下の面積は1に等しい.
土木計画学 第3回:10月19日 調査データの統計処理と分析2 担当:榊原 弘之. 標本調査において,母集団の平均や分散などを直接知ることは できない. 母集団の平均値(母平均) 母集団の分散(母分散) 母集団中のある値の比率(母比率) p Sample 標本平均 標本分散(不偏分散) 標本中の比率.
数理統計学 西 山. 推定には手順がある 信頼係数を決める 標準誤差を求める ← 定理8 標準値の何倍の誤差を考慮するか  95 %信頼区間なら、概ね ±2 以内  68 %信頼区間なら、標準誤差以 内 教科書: 151 ~ 156 ペー ジ.
CMIP5 気候モデルにおける ヤマセの将来変化: 海面水温変化パターンとの関係 気象研究所 気候研究部 遠藤洋和 第 11 回ヤマセ研究会 1.
●母集団と標本 母集団 標本 母数 母平均、母分散 無作為抽出 標本データの分析(記述統計学) 母集団における状態の推測(推測統計学)
看護学部 中澤 港 統計学第5回 看護学部 中澤 港
大気科学入門 - 金星大気東西風の超回転について -
JRA-55再解析データの 領域ダウンスケーリングの取り組み
様々な仮説検定の場面 ① 1標本の検定 ② 2標本の検定 ③ 3標本以上の検定 ④ 2変数間の関連の強さに関する検定
太陽多波長フレアデータ解析研究会 NSRO-CDAW10 ピーク時のループトップ電波源(2周波)の高さ (統計解析)
確率・統計Ⅰ 第12回 統計学の基礎1 ここです! 確率論とは 確率変数、確率分布 確率変数の独立性 / 確率変数の平均
第7回 独立多群の差の検定 問題例1 出産までの週数によって新生児を3群に分け、新生児期黄疸の
検定 P.137.
冨川喜弘 (国立極地研究所・トロント大学)
土木計画学 第5回(11月2日) 調査データの統計処理と分析3 担当:榊原 弘之.
Rossby 波動が関係する成層圏平均東西風の変動例
統計的仮説検定の考え方 (1)母集団におけるパラメータに仮説を設定する → 帰無仮説 (2)仮説を前提とした時の、標本統計量の分布を考える
成層圏突然昇温の 再現実験に向けて 佐伯 拓郎 神戸大学 理学部 地球惑星科学科 4 回生 地球および惑星大気科学研究室.
確率・統計Ⅱ 第7回.
統計学勉強会 対応のあるt検定 理論生態学研究室 3年 新藤 茜.
Persistent Homologyを用いた 宇宙の大規模構造の定量化
統計学 12/13(木).
母分散が既知あるいは大標本の 平均に関する統計的検定
正規性の検定 ● χ2分布を用いる適合度検定 ●コルモゴロフ‐スミノルフ検定
*大気の鉛直構造 *太陽放射の季節・緯度変化 *放射エネルギー収支・輸送 *地球の平均的大気循環
母集団と標本調査の関係 母集団 標本抽出 標本 推定 標本調査   (誤差あり)査 全数調査   (誤差なし)査.
CMIP5マルチ気候モデルにおける ヤマセに関連する大規模大気循環の 再現性と将来変化(その2)
高次元データにおける幾つかの検定統計量の漸近分布について
早稲田大学大学院商学研究科 2016年1月13日 大塚忠義
赤道QBOの影響の統計的有意性 ― 大標本法に基づいた評価 ―
近年の北極振動の増幅 Recent Arctic Oscillation amplification
2005/06年冬季における 北半球環状モード変動の 予測可能性について
母集団と標本:基本概念 母集団パラメーターと標本統計量 標本比率の標本分布
相関分析.
大規模数値計算による原始銀河団領域に関する研究
高次元データの解析 -平均ベクトルに関する検定統計量の 漸近分布に対する共分散構造の影響-
1.標本平均の特性値 2.母分散既知の標本平均の分布 3.大数法則と中心極限定理
2005年度・公開講座( ) 長期予報はなぜ当たらないか? 北海道大学大学院地球環境科学院 山崎 孝治.
第8回授業(5/29日)の学習目標 検定と推定は、1つの関係式の見方の違いであることを学ぶ。 第3章のWEB宿題の説明
海氷が南極周辺の大気循環に与える影響 地球環境気候学研究室  緒方 香都 指導教員:立花 義裕教授.
T2統計量・Q統計量 明治大学 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 金子 弘昌.
冬季北大西洋振動が 翌冬の日本の気候に与える影響
中澤 港 統計学第4回 中澤 港
1.標本平均の特性値 2.母分散既知の標本平均の分布 3.大数法則と中心極限定理
標本分散の標本分布 標本分散の統計量   の定義    の性質 分布表の使い方    分布の信頼区間 
講義ノート(ppt)は上記web siteで取得可 #但し、前日に準備すると思われるのであまり早々と印刷しない方が身の為
(昨年度のオープンコースウェア) 10/17 組み合わせと確率 10/24 確率変数と確率分布 10/31 代表的な確率分布
南北両半球間を横断する 水蒸気輸送と降水量との関連性
1.母平均の検定:小標本場合 2.母集団平均の差の検定
早稲田大学大学院商学研究科 2014年12月10日 大塚忠義
統計的検定   1.検定の考え方 2.母集団平均の検定.
Johnson et al., 1999 (Journal of Climate)
CMIP5気候モデルにおける ヤマセの将来変化
「アルゴリズムとプログラム」 結果を統計的に正しく判断 三学期 第7回 袖高の生徒ってどうよ調査(3)
CMIP3 マルチモデルにおける熱帯海洋上の非断熱加熱の鉛直構造 廣田渚郎1、高薮縁12 (1東大気候システム、2RIGC/JAMSTEC)
母集団と標本抽出の関係 母集団 標本 母平均μ サイズn 母分散σ2 平均m 母標準偏差σ 分散s2 母比率p 標準偏差s : 比率p :
温暖化・大気組成変化相互作用モデル グループの現状と課題について
第5回 確率変数の共分散 確率・統計Ⅰ ここです! 確率変数と確率分布 確率変数の同時分布、独立性 確率変数の平均 確率変数の分散
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
高次元データにおける2次形式の近似について
北極振動の増幅と転調は 何故20世紀末に生じたか? Why was Arctic Oscillation amplified and Modulated at the end of the 20th century? 地球環境気候学研究室 鈴木 はるか 513M228 立花 義裕, 山崎 孝治,
確率と統計2007(最終回) 平成20年1月17日(木) 東京工科大学 亀田弘之.
地球環境気候学研究室 谷口 佳於里 指導教員:立花義裕 教授
臨床統計入門(1) 箕面市立病院小児科  山本威久 平成23年10月11日.
東北大学理学研究科 惑星大気研究室 M2 佐藤瑞樹
冨川喜弘 (国立極地研究所・トロント大学)
K2地球システム統合モデル 成層圏拡張の進捗について
従来研究 本研究 結果 南極大型大気レーダーPANSYで観測された大気重力波の数値モデル再現実験による力学特性の解明
Presentation transcript:

冬期極域成層圏対流圏循環の変動に おける赤道域QBOの影響の 統計的有意性 KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 南極昭和基地大型大気レーダープロジェクト(PANSY)研究集会 2004.12.21 冬期極域成層圏対流圏循環の変動に おける赤道域QBOの影響の 統計的有意性 内藤 陽子 ・ 余田 成男 (京大・理) 1. Introduction 2. 数値実験編 ― たくさん時間積分して統計解析 - Naito, Taguchi & Yoden (2003) [JAS, 60, 1380— ] 3. 現実大気編 ― 実験で得られた結果を確認 - Naito & Yoden (2005) [SOLA, submitted] 4. Summary A Statistical Analysis by Using Large Samples

KAGI International Symposium Beppu, 2004 1. Introduction November 3, 2004 成層圏対流圏大気循環の変動が受ける影響 (Yoden et al., 2002; JMSJ ) Equatorial Extratropical dynamical variability Stratospheric Sudden Warming (SSW) events A Statistical Analysis by Using Large Samples

中高緯度へのQBO影響に関する過去の研究 KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 中高緯度へのQBO影響に関する過去の研究  現実大気データの解析 - Holton & Tan (1980, 1982) ; Labitzke (1982) - Dunkerton & Baldwin (1991) ; Naito & Hirota (1997) QBOの位相 西風相(W) 東風相(E) 月平均で見た 極渦の状態 強い 冷たい 弱い 暖かい 大昇温 (大規模な突然昇温) 少ない (7回 / 26年) 多い (13回 / 20年) 数値実験 • 現実大気データの解析結果を支持 - Holton & Austin (1991) ; O’Sullivan & Young (1991) - Gray et al. (2001, 2003) - Niwano & Takahashi (1998) ; Hamilton (1998) A Statistical Analysis by Using Large Samples

KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 2. 数値実験編 Naito, Taguchi and Yoden (2003) [JAS, 60, 1380— ]  使用したモデル 簡略化した3次元大気循環モデル  QBO位相を模した強制 du / dt = …… - aQBO ( u - UQBO ) aQBO : 緩和時間係数 ; UQBO : 基本プロファイル (いずれも赤道域下部成層圏に限るような分布)  長時間積分 • 10800日 x 9とおり  標本の大きさ • 境界条件:常に冬の状態、QBO強制も時間変化なし A Statistical Analysis by Using Large Samples

対流圏 449hPa での 冬極の温度の 頻度分布 データ数: 10800日ずつ KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 E1.0 W1.0 Frequency (%) Temperature (K) 対流圏 449hPa での 冬極の温度の 頻度分布 データ数: 10800日ずつ ~1K 正規分布に近い ほとんど重なっている A Statistical Analysis by Using Large Samples

 大標本法による、二つの平均値の差の検定 KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004  大標本法による、二つの平均値の差の検定 統計量 Z : NW と NE が十分大きければ標準正規分布 標本を取り出した母集団の平均が等しいという仮説のもとで Z が 40.6 に達する確率は非常に小さい (< 10-27) [TW] : TW の平均値 [TE] : TE の平均値 sW2 : TW の分散 sE2 : TE の分散 NW : TW の標本サイズ NE : TE の標本サイズ 二つの平均値の差は非常に有意 A Statistical Analysis by Using Large Samples

KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 3. 現実大気編 Naito and Yoden (2005) [SOLA, submitted ]  解析したデータ NCEP/NCAR再解析データ 1958-2003年(46年分) - 12月-1月-2月(北半球の冬)の日々のデータを解析  QBO位相の定義 赤道東西風データ (courtesy of Dr. Naujokat) - 40-50hPaの平均値を使って、冬ごとに位相を決定  西風相(W) 2316日、東風相(E) 1834日 連続データの独立性 (Laurmann & Gates 1977) 標本サイズ N を N’  N / t0 に置換え t0 : Effective sampling time (日) - およそ成層圏で月、対流圏で週のオーダー A Statistical Analysis by Using Large Samples

帯状平均温度の Effective sampling time t0 (日) KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 帯状平均温度の Effective sampling time t0 (日) 灰色: t0 > 300日 30 成層圏 月(数十日) のオーダー pressure (hPa) 対流圏 20 週(十数日) のオーダー 10 latitude A Statistical Analysis by Using Large Samples

KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 帯状平均温度のコンポジット差 (K) 青色: 西風相(W)のほうが低温 50 hPa 差が最大 ~4K pressure (hPa) 250 hPa ~2K latitude A Statistical Analysis by Using Large Samples

帯状平均温度のコンポジット差の統計的有意性 (%) KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 帯状平均温度のコンポジット差の統計的有意性 (%) 灰色: t0 > 300日 50 hPa 98.30 % pressure (hPa) 250 hPa 最も有意99.9985 % latitude A Statistical Analysis by Using Large Samples

KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 冬極の温度の頻度分布: 対流圏 250hPa ~2K 西風相(W) 東風相(E) 2316日 1834日 有意性 99.9985 % 正規分布に近い ほとんど重なっている A Statistical Analysis by Using Large Samples

KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 4. Summary 実験と解析の新しい枠組みを提案 • 簡略化した3次元大気循環モデルを用いて、 実験パラメータを変えての長時間積分が可能 • 中高緯度成層圏対流圏循環の変動に対する 赤道域QBOの影響の統計的有意性を 大標本法で検定 この手法の応用 • 他の外的強制の影響もこの手法で調べられる (例: 太陽活動11年周期変動、火山エアロゾル、 エルニーニョ南方振動、等々) A Statistical Analysis by Using Large Samples

KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 PANSYへのお願い • 観測の長期間継続 …… データが長すぎることはない 長ければ長いなりの統計ができる A Statistical Analysis by Using Large Samples

That’s all. Thank you for your attention. KAGI International Symposium Beppu, 2004 November 3, 2004 That’s all. Thank you for your attention. A Statistical Analysis by Using Large Samples