商法Ⅰ講義レジュメNo.01 商法・会社法とは何か? 商法・会社法と民法の関係は?

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みなさんこんにちは~ プレゼンテーション はじまりますよ. 関係 は?? 企業会計税法 企業会計と税法との関係について かつてない波紋が巻き起こっている.
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株式投資とは 2013 年 6 月 27 日 そうへい. 目次  株式とは  投資方法  株式投資の良いところ  投資方法  注意点  考察  参考文献.
1.欧州. 特許会社  特許会社とは …. 経営権が国に保留されている事業の、 一部または全部の経営権を、法律などに より付与された会社。  世界で最初の特許会社 モスクワ会 社.
1 平成18年度 商法 Ⅰ 講義レジュメ No. 2  商法の特色  企業の活動に関する特色  企業の組織に関する特色 テキスト参照ページ:新商法講義 14~21p プライマリー 14 ~17p.
国及び地方公共団体が分担すべき役割の明確化 機関委任事務制度の廃止及びそれに伴う事務区分の再構成
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これまでのオンライン利用の促進に関する取組の概要    これまでのオンライン利用の促進に関する取組の概要      参考資料1 ■ e-Japan戦略(平成13年1月IT戦略本部決定)   「2003年までに、国が提供する実質的にすべての行政手続きをインターネット経由で可能とする」とした。 ● オンライン利用拡大行動計画(旧計画)(平成20年9月IT戦略本部決定)
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フランスの年金調整会議 年金調整会議は、2000年に創設された。常設の団体であり、メンバーは国会議員、経営者・労働組合の代表、専門家、国の代表である。その主たる目的は、フランスの年金制度を監視すること、年金に関連する公的政策への勧告をすることであり、専門的知識と全ての参加者による協議に基づいている。
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財務諸表とは テキスト第3章 田宮治雄.
看護現場における 労務管理の法的側面① <労働法と労働契約>
1.労使関係の制度的枠組み *労働組合とは・・・「労働者が自らの仕事や暮らしの質や条件を維持・改良することを目的として自主的に組織した民主的な団体」 *労働者はなぜ労働組合を結成するのか 個人で交渉するよりも多くの成果を引き出すため。 *使用者が組織活動を妨害したり、労働組合との交渉を 拒否することはできない。
六法 憲法 国の基本法 最高法規 民法 私人同士の関係を律する法律 刑法 罪と罰の法律 商法 ビジネスの法律
第20回 商事関係法 2005/12/ /11/8.
第8回 商法Ⅱ        2006/11/ /11/8.
第13回 商事関係法 2005/11/ /11/9.
社会人基礎Ⅱ 第2回 業界・企業分析の基礎 法令の視点から.
第16回 商事関係法 2005/11/ /11/9.
株式会社における出資者と経営者 経営とは、一定の事業計画を構築し、それに沿って経営資源を調達し、さらにそれを用いて、社会に財やサービスを効率的に提供しようとする一連の営みである。 投資家(株主) 取締役 (経営者) 株主総会 所有者 経営 所有と経営の分離 資本の循環 資本金 商品 生産 商品´ 売上.
企業法Ⅰ(商法編)講義レジュメNo.2 商法の特色 企業の活動に関する特色 企業の組織に関する特色
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近畿大学理工学部情報学科 電子商取引研究室所属 3学年 福井 竜太
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○○大学(○○県○○市) ※大学等名フォントはMeiryoUI、20ポイント
米国連結会計 SFAS 年3月13日(木) 担当:内部監査室 加藤英之.
第4章 データ構造 p.82 [誤] ハミルトニアン経路問題  [正] ハミルトン閉路問題 p.82,83 [誤] セールスパーソン問題
個人情報の共同利用について 小売電気事業者となることを予定している事業者は、スイッチングに必要となる個人情 報を共同利用(個人情報の提供又は受領)するにあたって、以下の事項を「本人が容易 に知りうる状態」※1にする必要があります。   ① 共同利用する者の範囲   ② 共同利用の目的   ③ 共同利用する情報項目.
米国の様な普遍主義的個人主義社会では、 四種類の経済が必要となる。Rev.8
六法 憲法 国の基本法 最高法規 民法 私人同士の関係を律する法律 刑法 罪と罰の法律 商法 ビジネスの法律
2. 株式交換と株式移転 両方の会社が法人格を保持したまま合併と同様の経済効果を生じる取引 →
4 許可証(全面施行後。2県以上から許可証の交付を受けている古物商等のみ。)
第10回 商法Ⅱ 2006/12/11.
これまでのオンライン利用の促進に関する取組の概要
入門会計学 第1章 会計学の意義 .
調査項目:(事業環境/健康投資/品質評価から選択) コンソーシアム等名称:
入門会計学 第1章 会計学の意義 .
事例Ⅳ 企業価値計算 企業価値の評価方法 分類 概要 方法 詳細 インカム アプローチ
第4回 商法Ⅱ 2006/10/ /8/28.
これまでのオンライン利用の促進に関する取組の概要
横浜市立大学 アドミッションズセンター 出 光 直 樹
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商法Ⅰ講義レジュメNo.01 商法・会社法とは何か? 商法・会社法と民法の関係は? テキスト参照ページ:新商法講義 1~12p

1 商法・会社法の意義 大まかに言えば、企業に関する法の一つの部門・分野 具体的には: 商法Ⅰ講義レジュメNo.01 1 商法・会社法の意義 大まかに言えば、企業に関する法の一つの部門・分野 具体的には: 形式的 意義の商法・会社法 → 「商法」(明治32年3月9日法律第48号)、「会社法」(平成17年7月26日法律第86号)という名前の法律 実質的 意義の商法 →企業を対象とし、企業に特有な生活関係を規制する法(通説) ①講義の対象とするのは、法律の独立の学問分野であり、悪徳商法、武家の商法、詐欺的、マルチ商法のように「商売の方法」という意味ではない。 ②形式的意義とは内容による分類ではなく、その法律に与えられた名称から形式的に分類されるもの。 これに対して実質的意義とは、その名称に関わらず、実際の内容によって同質のものを統一的に把握するための分類 ※会社法の制定により、商法は企業のうち個人商人を対象とし、会社法は法人企業(会社)を対象とする法律として整理された。

2 形式的意義の商法・会社法 特徴 長所 短所 法律の名称という形式的な基準による定義 明確で分かりやすい 2 形式的意義の商法・会社法 商法Ⅰ講義レジュメNo.01 特徴 法律の名称という形式的な基準による定義 長所 明確で分かりやすい 短所 企業に関する生活関係の全てをカバーしきれない =範囲が狭すぎる 諸外国には商法(典)という名称の制定法を持たない国もあるが、企業や商取引に関する法規制がないわけではない アメリカやイギリスのような英米法系と呼ばれる国々には、体系的な商法典はないのが普通。また、大陸法系と呼ばれる国々(ドイツ、フランス、日本、イタリア等々)でも、イタリアやスイスには商法典はない。

商法Ⅰ講義レジュメNo.01 3 実質的意義の商法 特徴 商法・会社法として統一的、体系的にとらえることのできる 特定の法領域 を商法・会社法と定義=学問分野としての商法・会社法 「企業」:計画的 ・ 継続的 に 営利行為 を行う独立の 経済単位 =商人(商4条)、会社(会2条1号):広い意味では会社も商人に含まれる (参考)個人企業と共同企業(=会社): →企業主(資金を拠出し、利益を取得する者)が一人の人間か二人以上の者が作った団体かによる区別 企業に特有な生活関係:→企業と「取引先」、企業と「社員(株主など)」の間の関係 実質的意義の商法:企業を対象とし、企業に特有な生活関係を規制する法 ・会社法は実質的意義の商法の中心的役割をになう。 企業とは日常生活ではある程度規模の大きい「会社」をイメージし、商人というと個人経営の商店をイメージしがちであるが、学問としての商法においては、両者は同じ意味であり、個人商人も企業であり、いわゆる大企業も商人である。 企業に関する規制のうち、会社を対象とする規制が「会社法」という形で独立したため、新商法は、主として個人商人を対象とする商法の一般法となった。

※本講義の対象は、実質的意義の商法であるが、その中心は形式的意義の商法(総則・商行為法)および会社法(総則)となる。 商法Ⅰ講義レジュメNo.01 ※本講義の対象は、実質的意義の商法であるが、その中心は形式的意義の商法(総則・商行為法)および会社法(総則)となる。 実質的意義の商法 形式的意義の商法は、実質的意義の商法の中心となる制定法であるが、その中には実質的意義の商法には該当しない規定も含まれる。他方で、実質的には企業というべき存在であるが、形式的意義の商法における商人(企業)の定義に当てはまらないため、形式的意義の商法の対象とされないものも存在する。 形式的意義の商法 会社法(総則)

4 形式的意義の商法と実質的意義の商法との関係 4 形式的意義の商法と実質的意義の商法との関係 商法Ⅰ講義レジュメNo.01 実質的意義の商法の中心をなすのが形式的意義の商法であると言えるが、次の2点で両者は一致しない 原始産業:実質的には企業といえるが、商法の対象外とされている ただし、会社法の対象にはなる 絶対的商行為(501条):行為主体が企業であるか否かとは無関係に、行為自体の性質により商法の対象とされる 絶対的商行為は、行為自体が非常に高い営利性をもつため、営業として反復継続的に行うつもりでなく、たまたま一度だけ行った場合でも商行為として商法の規定が適用される(もっとも、中には企業しか行い得ない行為もある)。

5 商法と民法の関係 共通点: 「私人間の生活関係を規律する私法」 5 商法と民法の関係 共通点: 「私人間の生活関係を規律する私法」 商法は企業に特有な生活関係を対象とするが、民法はこれに限らず一般の市民の生活関係を規律の対象とする。それ故、民法は「私法の一般法」と呼ばれ、商法は民法に対して「特別法」という関係にある。

(例:商事法定利率、商事債権の消滅時効 ) 商法は、民法の一般制度の特殊化された形態を規定 (例:商業使用人、代理商) 商法Ⅰ講義レジュメNo.01 6「特別法は一般法を破る」(優先関係) 商法は、民法の個々の規定を補充・変更 (例:商事法定利率、商事債権の消滅時効 ) 商法は、民法の一般制度の特殊化された形態を規定 (例:商業使用人、代理商) 商法は、民法にはない特殊な制度を創設 (例:商業登記、商号、商業帳簿 ) ・特殊な制度について商法7条 小商人について解説 法務省令=商法施行規則3条  「営業用財産とは、最終の営業年度に関する貸借対照表に計上した額」が「50万円」未満の商人

「会社法」との関係 株式会社など「会社」は商法上の「商人」の一つ 従来、「会社法」という名称の法律はなく、「商法」の第二編、有限会社法などを「会社法」と呼んでいた⇒H17年6月、新たに「会社法」が制定された 旧商法総則(第一編)、商行為(第三編)の規定は、全ての商人に共通して適用されていた 平成18年5月より新たに「会社法」が施行されることにより、旧商法第二編は削除(商行為法が第二編となる)、有限会社法は廃止され、商法総則の規定中、会社に関しては「会社法」に規定される