電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 5/7, 5/14講義分 静電場、静磁場での扱い 山田 博仁.

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電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 5/7, 5/14講義分 静電場、静磁場での扱い 山田 博仁

Maxwellの方程式 物質中の電磁場を規定する基本法則 ファラデーの電磁誘導則 アンペール・マクスウェルの法則 電場に関するガウスの法則 磁場に関するガウスの法則 SI国際単位系 E(x, t): 電界 or 電場 (V/m) H(x, t): 磁界 or 磁場 (磁場の強さ) (A/m) D(x, t): 電束密度 (C/m2) 変位電流 B(x, t): 磁束密度(磁場) (Wb/m2) ie(x, t): 伝導電流密度 (A/m2) re(x, t): 真電荷密度 (C/m3)

変位電流 Maxwellが変位電流を導入した訳は ? 時間変動のない定常電流において実験的に見出されていたAmpereの法則(微分形) をそのまま時間変動する電流と磁場との関係に拡張したとすると、 となる。 両辺の発散をとると、 ベクトル恒等式 従って、 となる。 式(2)は明らかに、電荷保存則(電流連続)の式 と矛盾する。 この矛盾を避けるためにMaxwellは、式(1)を次式のように拡張した。 この項を変位電流(displacement current)と呼ぶ この式で両辺の発散をとると、 となり、電荷保存則(電流連続)の式と一致する。

静電場、静磁場での基本方程式 静電場、静磁場では、Maxwell方程式において、時間微分項がゼロとなる。 静電場における 基本方程式 静磁場における 基本方程式

静電場、静磁場 全ての物理量が時間 t に依存しない時、Maxwell方程式は以下のように電場、 磁場に対して各々独立な方程式系に分離できる 静電場に関する基本法則 媒質中での電磁場を扱うための構造関係式 定常電流による静磁場の基本法則 電荷も電流も時間的に不変である限り、電気と磁気は別々の現象と見なせる 当初は、電気力(クーロン力)と磁力とは全く別のものだと考えられていたが、 Maxwellがこれら二つの力を電磁力として統一した。(力の統一理論)

力の統一理論 (余談) 物質間に働く4つの基本的な力(相互作用) 長距離 短距離 10-15m 力の働く距離 1m 1010m 強い 弱い 102N 1N 10-40N 力の強さ 量子色力学 大統一理論 強い相互作用 核力 電磁力(ローレンツ力) 摩擦力 弱い相互作用 核力 電弱統一理論 電気力(クーロン力)と磁力の統一(マクスウェル) 重力 天体間引力 ニュートン 万有引力 慣性力 超弦(ひも)理論? 一般相対性理論(アインシュタイン)

静電場 静電場の基本方程式 何故なら、ベクトル恒等式より、 第(1)式より、以下の静電ポテンシャルf(x)が定義できる 第(3)式の関係を用いて、上式を第(2)式に代入すると、以下のポアソン方程式を得る (局所的な電荷密度分布とその周りの電位を関係付ける) 上記ポアソン方程式の無限遠方でゼロとなる解は、 教科書 P20、式(2.34) 上式を(4)式に代入することにより、電場E(x)が求まる 教科書 P8、式(2.4)

静電ポテンシャル f の意味 山の等高線 f(x) スカラー量 山の斜面の勾配 E(x) ベクトル量 {Ex(x), Ey(x), Ez(x)} 山の等高線(スカラー量)と斜面の勾配(ベクトル量)とは同じ情報(地形)を伝えている 等高線に相当するのが静電ポテンシャル(電位) f であり、電位の勾配が電場 E (ベクトル量)である 静電ポテンシャルはスカラーなので、スカラー・ポテンシャルとも呼ばれている

静電場 微分形式でのガウスの法則 (局所的な電荷密度分布とその周りの電束密度の発散を関係付けている) 両辺をある体積 V について積分する dS V S n D(x) re(x) Gaussの定理 積分形のガウスの法則

球状電荷分布の周りの静電場 誘電率が e、半径が a の球内に電荷が密度 r で一様に分布している。球の中心Oより r だけ離れた点Pにおける電場を求めよ 電場に関するガウスの法則 V n dS (局所的な電荷密度分布とその周りの電束密度の発散を関係付けている) a O P r 構造関係式 S E(x) (局所的な電荷密度分布とその周りの電場の発散を関係付ける式) ガウスの定理 (r > a) 電荷分布が球対称だから、 電場は球の中心から放射状 (r ≤ a)

球状電荷分布の周りの静電場 電場に関するガウスの法則 を用いて求めた解 (r > a) (r ≤ a) が を満足することを確認しておく必要がある 極座標で考えると、電場は半径(r)方向成分のみ、つまり Eθ , Eφ = 0 (r > a) (r ≤ a) 極座標の回転(rotation)は、 で与えられる 従って、 を満足している

静磁場 静磁場の基本方程式 何故なら、ベクトル恒等式より、 第(2)式のガウスの法則から、磁場B(x)はベクトル・ポテンシャルA(x)を用いて と書ける 第(3)式の関係を用いて、上式を第(1)式に代入し、ベクトル公式を用いると以下の式を 得る A(x) B(x) の関係がある(クーロンゲージ)時上記の式の解は、 V ie(x’)d3x’ 教科書 P107、式(7.46) 上式を(4)式に代入することにより、磁場B(x)が求まる 教科書 P93、式(7.7) Biot-Savartの法則

静磁場 微分形式でのアンペールの法則 (局所的な電流密度分布とその周りの磁場の回転を関係付けている) dS ie(x) S dr C n(x) H(x) 両辺をある面 S について積分する Stokesの定理 Ie H(x) Hθ(r) 積分形式でのアンペールの法則 r 2πr Hθ(r) 直流電流 Ie から距離 r だけ離れた点での磁場の接線成分の 大きさ Hθ(r) は ? 従って、

静磁場 積分形のアンペールの法則 から得られるのは、磁場の接線成分の 大きさのみ その他の成分(Hr, Hz)はどうなのか?                  大きさのみ その他の成分(Hr, Hz)はどうなのか? それを決めるのが 円柱座標の発散(divergence)は、 で与えられる もし、直線電流が無限に長いのなら、磁場の電流方向依存性はゼロのはず さらに円対称性より、磁場の円周方向依存性もゼロである より、 いかなる場所 r においても を満足させることができるのは、 の場合のみである。

静磁場 さらに、電流が流れる方向が z 方向のみであれば、 より、 の z 方向成分以外はゼロとなる。 円柱座標系において       は以下で与えられるので、 即ち、 および を満たさなければならない。 このことより、磁場の z 方向成分は空間のあらゆる場所において一定でなければならない。もし電流が流れていない場合、或いは電流から無限に遠い場所において磁場の z 方向成分がゼロであれば、空間の至る所で Hz はゼロとなる。 従ってその場合、磁場は接線方向成分のみであり、

磁場は存在するか? 一様な電流 無限に長い導線の中を電流が一様に流れている場合、 導線の中に磁場は存在するか? 無限長導線

磁場は存在するか? 無限空間に電流が一様に流れている場合、磁場は存在するか? 一様な電流 無限空間の中のある点を原点にとり、円柱座標で考えると z r θ だから、任意の場所 x において、 無限空間 だから B = 0 即ち、磁場は存在しない

磁場は存在するか? 空間内をある一方向に電流が分布を持って流れている場合、磁場は存在するか? 分布を持った電流 電流分布の中心のある点を原点にとり、円柱座標で考えると だから、任意の場所 x において、 z r θ だから 即ち、磁場は存在する

磁場は存在するか? 一様な電流 無限に長い導線の中を電流が一様に流れている場合、 導線の中に磁場は存在するか? 導線の中心のある一点を原点にとり、円柱座標で考えると iz = const (r < a) iz = 0 (r > a) a は導線の半径 だから、任意の場所 x において、 z r θ だから 即ち、磁場は存在する 無限長導線

ベクトル・ポテンシャルとは何か? ベクトルポテンシャル A は何者? (両辺の rotation をとってみる) E と B がベクトルポテンシャル A を通して互いに関係付けられている A の空間分布に渦があると B が生じ、A が時間的に変化すると E が生じる A の時間変化は、単位電荷を持つ粒子に働く力に等しい つまり A は、Newton力学における運動量 P に対応 従って、Maxwellは A を「電磁気的運動量」と呼んでいた (ただし、後で習う電磁波の運動量とは違うので要注意) 単位電荷を持つ粒子がその位置にやってきたときに粒子が得る運動量のこと 電磁波の運動量とは違う !!

ベクトル・ポテンシャルは実在か? ローレンツ力では、Eや B は単位電荷の粒子に働く「力」として定義された E、Bの代りに静電ポテンシャル(電位)f とベクトルポテンシャルAを使うこともできる 単位電荷を有する粒子は、電場 E で加速されると電位差 f 分だけのエネルギーを得る また、磁場 B の中を通ると、ベクトルポテンシャル A 分だけの運動量を得る つまり、 E と B は、荷電粒子に力を及ぼす電磁気現象 f と A は、荷電粒子のエネルギーや運動量に変化をもたらす電磁気現象

アハラノフ・ボーム(AB)効果 ローレンツ力は であるから、 A B 電場 E も磁場 B も存在しなければ、荷電粒子 q に電磁的な力は及ばない 右の実験では、電場Eは存在せず、ソレノイドコイルが十分に長ければ、その外に磁場Bも存在しない 従って、コイルの外側を飛行する電子に電磁的な力は及ばないはず ところが、アハラノフとボームは、コイルの外側を飛行する2本の電子線の間には次式で与えられる位相差Dfが生じることを予言した 周回積分は、2本の電子線の飛行経路で、 面積積分はそれによって囲まれる面積で Stokesの定理 つまり、ソレノイドコイルの中の磁束に比例した位相差が生じるという

アハラノフ・ボーム(AB)効果の観測 これを1980年頃に実験的に確かめたのが、日立製作所の外村 彰氏 四角いドーナツ状の微小なパーマロイ薄膜のサンプルを作り、ホログラフィー電子顕微鏡で観察した 外村 彰氏 このことは、磁場Bが無くても、ベクトルポテンシャルAが存在すれば、電子の波動関数に影響が及ぶことを示唆 リングの中と外で、干渉縞に位相差が現れている つまり、AB効果は確かに存在することを裏付けている より詳しく知りたい方は、 以下の電子情報通信学会のWebページをご参照 観測した電子線ホログラフィーによる干渉縞 ホログラフィー電子顕微鏡 http://www.ieice.org/jpn/books/kaishikiji/200012/20001201-1.html

AB効果の検証実験から分かったこと ・ 電場Eや磁場Bは、ローレンツ力により、荷電粒子に直接的に力を及ぼし、その運動経路を変える ・ しかし、例え電場Eや磁場Bが無くても、ベクトルポテンシャルAが存在すれば、電子の運動に影響を及ぼす(AB効果の実験より) ・ ベクトルポテンシャルAは、荷電粒子の波動関数の位相に影響を及ぼし、その運動を変えることができる このことは、 ・ 電場Eや磁場Bよりも、スカラーポテンシャルϕやベクトルポテンシャルAの方がより本質的な物理量であることを示唆しているのではないか ?

極座標、円柱座標での勾配・発散・回転 極座標系 円柱座標系

レポートについて 第1回目のレポート問題を出題(Webに掲載)しました。提出期限は5/21(火)です。 (提出期限を過ぎての提出は、成績評価の対象にはしません。)