台湾における代行決定制度と課題 黄詩淳 准教授(法学) 国立台湾大学 2016/12/03.

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台湾における代行決定制度と課題 黄詩淳 准教授(法学) 国立台湾大学 2016/12/03

1.台湾における障害者に関連する代行決定 原則: 民法の政権後見制度 特別法: 医療法 ホスピス緩和ケア法 精神保健福祉法

2. Adult Guardianship in Civil Code 禁治産宣告から(1931 民法) 成年後見まで(2008民法) 二種類の保護: 後見と支援 後見契約を行う(永続的代理権) は現在議論中.

(1) 後見制度 台湾では、後見人は全権を与えられている. 後見人は“代理決定” 制度であり、できるだけ早く改 正の必要性が ある. 後見人制度の下では、被保護者の法的能力はすべて否定され ている. 後見人は 非保護者の代わりに “法的行為”にかかわるすべての 決定ができる法的代理人に. 決定基準はわかりにくい. 条項1112の被後見人の意図を尊重する 被後見人の利益を考慮する≒条項 1101のお金の諸問題における最善の利益 後見人は“代理決定” 制度であり、できるだけ早く改 正の必要性が ある.

(2) 支援制度 支援者は不動産の貸付、担保、贈与、売買など重要 なお金に関する事柄に関して能力がある. 支援者は被保護人の法的能力を否定しない. 許可なしの金融行為の効果は無効に保留されている (Schwebende Unwirksamkeit). 裁判所は許可を必要とする行動のカテゴリー高めることができるが 絞り込むことはできない. 民法は、許可する力を行使しながら追従するものを標準定義してい ない.

台湾における後見人の事例数 Year 裁判所で解決された後見人件数 (または禁治産) (α) Αの内, 後見人(または禁治産)の開始件数(β) Βの内, 裁判所によって許可された後見人(または禁治産)の件数 βの内, 裁判所によって許可された支援件数 許可率 2008 3,862 3,102 2,062 N/A 66.47% 2009 3,992 3,696 2,430 3 65.83% 2010 4,530 4,163 2,477 481 71.05% 2011 4,485 4,443 2,724 524 73.10% 2012 5,952 4,666 2,806 537 71.65% 2013 7,573 5,031 3,048 577 72.05% 2014 7,911 5,214  3,169  668 73.59%  2015 8,208 5,428  3,385  653 74.39% 

3. 特別法における代行決定 医療契約は成年後見人が被保護者の代わりに交わすこ とができる。 しかし、医療契約締結後、すべての医療を患者に向け て行われる。従って、医師は詳細な説明を提供し、患 者からインフォームドコンセントを得ることが義務づ けられています。被保護者の代わりに成年後見人は医 療的治療をうけるために同意できません。 それにも関わらず、患者が医療的治療を受けることに 対して承諾できない場合(患者が意識不明の時)、他 の誰からか同意を受けることが必要になります。 どのような状況下の時、同意を得る権利があるので しょうか。

医療的治療(侵襲的処置) 台湾の医療法によると、医療機関は、いかなる処置 を始める前に、患者の同意を得る必要性がある。 患者が同意書をサインできない時以外、法定代理人、 配偶者、親戚や任意の関係者に署名することができ る 問題:もし代行決定者が異なる考えがあったらどう する? 実際、(医師が治療の必要性があることを考えた場合)、代行決定 者のいずれか一人からの同意があればよい。In practice, (when the physician considers the treatment is necessary,) the consent from any one surrogate is sufficient.

終末期ケア 台湾は、一般的な遺書を認識しません。唯一の例外 は、ホスピス緩和ケアの場合だけ。 終末期患者は、患者がホスピス緩和ケア、DNRまた は延命治療を選択することとして事前ケア指示を行 うことが許可されている。 法的能力を持つすべての人は、このような事前指示 を書くことができて、事前にヘルスケア・エージェ ントを指定することができる。

意識不明となった終末期患者は、事前指示と医療代 理人を持っていない場合はどうすればよいのか? 患者の “近親者” が患者に代わって決定を出してよ い. 優先順位は以下の通り: 配偶者 成人した子供と孫 親 兄弟 祖父母 曾祖父母、ひ孫または血族 3親等内の方 姻族1親等内の方 医療法では、一人だけの同意があればよい。

措置入院(精神保健法) 精神保健法は1990年に成立、2007年に改正. 重度患者の擁護者  措置入院(精神保健法) 精神保健法は1990年に成立、2007年に改正. 重度患者の擁護者 重度患者: 精神科の専門家によって奇妙な考えや現実から 切り離された奇妙な行動が診断され、確定された患者で あり、結果として自らのことを管理できない。 重度患者全員、擁護者が必要である。 擁護者は患者の後見人、配偶者、親、家族の方による互選によっ て選ばれる. 擁護者の力は電気ショック療法や他の特別な治療に同意すること =代行決定。措置入院は加わっていない。

措置入院(強制入院制度) 緊急入院(Para. 2 Art. 41) 5日以下 緊急入院の際、2日以内に2名の精神科医が評価(強 制評価)を完成させなくてはならない。 精神保健評価委員会によって決定が審査される。

委員会は、精神科の専門家、心理学者、ソーシャル ワーカー、看護師、作業療法士、患者の権利を促進 する組織の代表者や弁護士からの7人のメンバーで 構成されている。 重症患者または擁護者は緊急入所または強制入院を 中止するために裁判所に請願する権利がある。 強制入院は最大60日間続く。 強制的な入院患者の数が有意に減少した (図 2参照)。

図2: 強制入院と地域治療の数 2005-2014 強制入所 強制地域治療

4. 結論 台湾の成年後見制度が被保護者の法的能力を奪うの は、明らかに障害者権利条約と矛盾します。しかし、 台湾の人々の懸念は無能力の廃止と人に合わせたサ ポートが、口座取引の保障に影響を与える可能性が ある。 台湾におけるすべての代行決定は監視の欠如が生じ ている. 財政面の代理委任状は徐々に受け入れられている。 一方、医療面の代理委任状はまだ開発中である.

ご清聴ありがとうございます.