新潟県 25年後の医療 2035年の日本医療を考える ワーキンググループ.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
年金制度 地域文化3回生 渡邉 裕貴. 目次 日本の年金制度の現状 日本の今後 政策提言 シミュレーション 参考文献 論点.
Advertisements

関西学院大学 村田ゼミ 立論 衣斐、岸田、鈴木、高田、長谷川、大森、藪本、村上. 立論① 非正規雇用を廃止し正規化 により、賃金収入が増加。
09ba390l 山村美帆. 内需不振の正体 地方圏 青森県では、バブル崩壊期の 90 年代前半には増加していた個人所得と小売 販売額が、戦後最大の好景気となった時期である 00 年代前半からみるみる 減少し始めた。この間に起きた構造変化とは? この就業者の減少こそが 00~05 年の個人所得、小売.
少子高齢化社会と年金 澤崎 下村 戸田 山川 中京大学総合政策学部 大森ゼミⅱ. 労働力の枯渇 生産年齢人口の減少 参照 平成 25 年度総務省「人口統計」 現状 高齢者を労働力として活躍させよう.
高年齢者における雇用開発の分析 国際経済学部 国際経済学科 4年 大貫 宣弥 2004/10/23.
少子高齢化 高橋香央里 加藤裕子 松本結 海老澤優.
 公的年金・定年  引き上げの是非 小瀬村  柏嶋 阿部  藤田.
最低賃金1000円の是非.
労働市場マクロ班.
後期高齢者医療制度に関するQ&A Q1 後期高齢者医療制度は、なぜ創設されるのですか? ○ ○
森町まち・ひと・しごと 人口ビジョン概要 15/08/31【資料1】 森町人口ビジョン(抜粋) 総合戦略へ向けた、現状・課題の整理(案)
生きがいのもてる高齢者が イキイキと暮らす上田市へ
小樽市における 将来的必要医療・介護病床数 ~行政資料による簡易シミュレーション~
新潟県 25年後の医療 2035年の日本医療を考える ワーキンググループ.
実証分析の手順 経済データ解析 2011年度.
新生児医療の現状   全国と滋賀県 1997年7月25日、県立小児保健医療センターで行われた乳幼児健診従事者研修会での講演に使用したスライドです。 (滋賀医科大学小児科 青谷裕文 作成) ? 新生児は減っているのか? 未熟児は増えているのか? 未熟児はどれくらい助かるのか? (全国では?滋賀県では?)
第8章 家計部門でいま起こっていること.
疫学概論 コウホート生命表 Lesson 7. 生命表 §A. コゥホート生命表 S.Harano,MD,PhD,MPH.
なぜ貧しい国はなくならないのか 第2章 貧困は減っているのか
国と熱海市における人口ビジョン・総合戦略の構成(イメージ)
第6講 「人口の波」が語る日本の過去半世紀、今後半世紀
離 島医療をサポートしてます 最 玄 僻 ~島の医師 戻ってきた~ ご存知ですか 佐賀大学医学部総合診療部は
後期高齢者は、どのような医療が受けられるのですか?医療の内容が制限されるようなことはありませんか?
新潟県の自殺の概要 (平成23年) 新潟県精神保健福祉センター 【人口動態統計と警察統計の違い】
[ パパは何でも知っている (FATHER KNOWS BEST)] NTV 1958年8月~1964年3月
日本の少子化問題:その原因と対策 ~県別のパネルデータでの分析~.
『大阪府人口ビジョン(案)』の概要 ■はじめに ■人口の将来見通し(シミュレーション) ■大阪府の人口の潮流 c ■基本的な視点
中国の少子高齢化問題 バートルゼミ 萩原・小原・前田・澁谷  1.
大阪府の将来推計人口の点検について 平成26年3月 大阪府政策企画部企画室計画課
わが国の産婦人科医の現状 平成26年医師歯科医師薬剤師調査の結果を踏まえて
14・文化の偏差と変化  青山・文化人類学.
自治医科大学附属 さいたま医療センター 救急部 2014年8月 八坂 剛一.
~三重県(地方)と名古屋市(都市)の比較検討から~ 三重県産婦人科医会2) 愛知県産婦人科医会3) 三重大学4)
基調報告 「産婦人科勤務医の就労環境の実態 ー日本産婦人科医会調査から」
第48回日本神経学会 PZZ-301 神経学資源の国内分布 池田正行1) 2) mail adresss goo
高年齢者における雇用開発の分析 国際経済学部 国際経済学科 4年 大貫 宣弥 2004/10/23.
第2回 福祉の現在・現在 厚生労働省(2018) 障害者白書 厚生労働省(2016) これからの精神保健福祉のあり方に          関する検討会資料.
第9回(第12回) 女性・中高年・障害者とスポーツ
一般住民と比較した米国透析患者の標準化自殺率比(SIR) 表.一般住民と透析患者の年齢階級別死亡者数
がん検診受診率向上のための 情報提供の工夫
がん患者の期待に応えるがん対策推進基本計画の策定のために 参考資料 (死亡率試算図表)
おさらい 現在、日本では 1日○人のスピードで エイズ感染者が増えている。.
平成15年度総合がん対策推進モニタリング調査
5.社会指標比較→統計はあるが、実態分かりにくい
「地域分娩環境確保の方策」 その1 海野信也 「周産期医療の広場」
人口統計 人口静態統計:人口の規模、構成 人口動態統計:出生・死亡などの人口再生産 人口移動統計:人口の移動 人口の推計:コーホート変動.
循環式に関して より微粒化が求められる昨今、ビーズミルを複数回通過させる粉砕、分散処理が多くなっている。
* 07/16/96 人口分析ワークシートの見方・使い方 兵庫県企画県民部統計課      芦谷 恒憲 *
歯科健診で、 健康寿命を延ばそう! (健診概要)
勤務医の労働環境改善と ドクターフィーについて
大阪府の将来推計人口について 2018年8月 大阪府政策企画部企画室計画課
三大生活習慣病の死亡率の推移 宮崎県では昭和57(1982)年以降、がんが死亡原因の第1位となっています。
衛生委員会用 がん対策討議用スライド.
医師のキャリアパスの観点からみた 医師養成数の考え方
研究の背景 教育環境の変化 臨床研修必修化 国立大学独法化 診療環境の変化 国立病院独法化 医療費抑制政策 少子高齢化 いわゆる“医療崩壊”
疫学概論 情報の要約 Lesson 3. 情報の要約 (率、比、割合) S.Harano,MD,PhD,MPH.
「産婦人科医療改革 公開フォーラム」平成26年1月26日
「産婦人科医療改革 公開フォーラム」平成26年1月26日
マンション購入者アンケート 社会福祉学科  1回生 D組 .
我が国の自殺死亡の推移 率を実数で見ると: 出典:警察庁「自殺の概要」
(6)分布と変化①総人口 分析の 視点 ①総人口の分布(H22) ②総人口の分布の変化(=H22-H12)
日医総研の手法を活用した 将来推計人口に基づく 医療介護需要試算の一例
<労働需供の推移に影響する要因> 企業の人事制度は、その時々の経済情勢や社会情勢によって左右される。
厚生白書 人口減少社会の到来と少子化への対応 971221 波多野宏美.
疫学保健統計 ~テスト対策~ 群馬医療福祉大学 看護学部 2年 ○○○優衣.
新医師確保総合対策のポイント 【医師数に関する全体状況】 【 対 策 】 短期的対応 19年度概算要求への反映
企業はもちろん、 行政も、NPOも、地域も、 「経営」が求められる時代。 自治とは、自分(たち)で決めて、 自分(たち)で担うこと。 日本には、担う力があるのに、 決める力が弱い。 →判断できる材料の共有が重要。
秋田の現状 離れられない、学べない 平成23年度「拡大医療改革委員会」兼 「産婦人科医療改革 公開フォーラム」
「産婦人科医療における格差是正に向けて」
衛生委員会用 がんの健康講話用スライド.
Presentation transcript:

新潟県 25年後の医療 2035年の日本医療を考える ワーキンググループ

日本の人口は減少傾向 1869万人 人口(千人) 30年間

医師の年齢分布(日本) 平成22年度医学部(日本全国)定員:8931人 75歳 医学部定員増の 結果

医師の年齢分布(日本) 平成22年度医学部(日本全国)定員:8931人 50歳 75歳 25年後(2035年)に 見込まれる医師数の 増分

人口減少と医師増 本当でしょうか? 日本の人口は約1億2千万、25年後には15%減 医師数は20%ほど増えそうです(前スライドの目分量) これが正しいと: 2035年、医師一人当たりの人口は、2010年の 75%になります。 100人診ていた医師は、75人診れば良くなります 日本の医療の状況は良くなりそうです 本当でしょうか?

人口は減るだけでしょうか? 人口の減少だけではなく年代別人口(年齢分布)が 変わることにも注意が必要です。 http://www.census.gov/

新潟県の状況

新潟県の人口:今後25年の推移 49万人減 (2010年人口の20%) 新潟県も人口は減少傾向にあります。

新潟県の人口:年齢分布の変化 2010年 2035年 男性 女性 人口ピラミッドの劇的な変化!! 男性 女性 国立社会保障・人口問題研究所の試算より http://www.ipss.go.jp/

25年後を数学で予測する 人口シミュレーション:基本的概念 各地域において、世代別、男女別に計算: 5年後の人口 = 現在の人口 X (生存率 + 移動率) 新潟県 人口分布の変化 団塊の世代 団塊ジュニア 人口(人) 出生数の減少 超高齢者社会 推移が分かるよう 折れ線グラフで 表示

60歳以上高齢者の推移予測 1.06倍 60歳以上の人口は それほど変化しない (総人口は20%減少する ので割合は高くなる)

75歳以上(後期高齢者)人口の推移予測 1.32倍 75歳以上の人口は かなり増加する (総人口は20%減少する ので割合はさらに高くなる)

死亡数の予測結果 人口は減少するにも関わらず 死亡数は増加する 高齢者の死亡数が 著しく増加する 死亡数(人) 死亡数(人) 死亡数(人) (注)死亡数は5年分の累計

後期高齢者死亡数 1.5倍 新潟県における後期高齢者(75歳以上)の死亡数は、 2035年には、2010年の 1.5 倍になる。 (注)高齢化に伴い、がん、認知症などの患者数も増大することが予想される。

新潟県医師の年齢別分布(2010年) 医師数(人) 年代別医師数(日本全国)と特徴は同じ ・ 若い医師が多い(1990年代までの医学部定員増加による効果) ・ 年配の医師は少ない

新潟県医師数のシミュレーション 医師数は19%増加 2010年医師数年齢分布 2035年医師数年齢分布 シミュレーションにより 男性(シミュレーション) 2010年医師数年齢分布 2035年医師数年齢分布 女性(シミュレーション) シミュレーションにより 2010年と2035年の医師数が比較可能になる 2010年医師総数(75歳未満):3854人 に対して、シミュレーションの結果 2035年医師総数(75歳未満):4592人 と予測される。 2035年 2010年 医師数は19%増加

OECD:人口千人あたり医師数 2010年新潟県 2035年新潟県 人口:2,365,817 人 医師:3,845人 人口千人当たり医師数:1.63 2035年新潟県 人口:1,874,597 人 医師:4,592人 人口千人当たり医師数:2.45 改善するように見える。 本当にそうでしょうか?

医師の年齢分布 2008年舛添厚労大臣時代の 医学部定員増の効果 医師の高齢化 OECD 指標は、若い医師も高齢医師も同じ1人。働き方の違いは考慮されていない。

医師の働き方は年齢と共に変わる 男性 女性 20代85時間 20代78時間 60才58時間 70代40時間 年齢と共に勤務時間は減少。開業医率、管理職率も上昇する。 若手医師の過剰な勤務時間も問題。EU、USAには労働時間制限あり。

実は、 新潟県は、OECD指標が2010年の 1.63 から2035年には 2.45 に改善する試算結果 しかしながら、2010年、2035年共にこの値は日本全体でのOECD指標より下、47都道府県中43位(2010年、2035年共に)です 2010年日本全体では 2.00 2035年日本全体では 3.14

新潟県25年後の医療は? (注)対労働時間は、1000時間当たりの指標。 2010年に比べ、2035年では、医師一人に対する高齢者数、死亡数はさほど 変化しない。しかしながら、後期高齢者死亡数に対する指標は2〜3割悪化 する。他県と比較して全体的に悪化率は低いが、右にあげた日本の平均値と 比べると、各指標共に2010年の段階ですでにかなり悪いことが分かる。 (注)高齢者比で対労働時間とは、医師の労働1000時間あたりの高齢者数を表す。また、高齢者比で 対医師数は、医師一人当たりの高齢者数を表す。医師の診療科、勤務医、診療所は区別していない。 実際に死亡時に見取る医師はある程度診療科が絞られてくることに注意されたい。見取ることの多い 診療科を希望する医学生が少なくなると指標はもちろん悪化するがそれは反映されていない。

2035年新潟県の医療を2010年の 日本平均並にするには(1) 医師の労働時間を増やし、労働力をまかなう 医師がたくさん働く2035年の新潟県 若い医師は 週100時間 の労働 高齢医師も 週70時間 の労働 若い医師は 週168時間 の労働 若い医師は 週250時間 の労働 日本の平均 一週間は168時間しかないのに、168時間や250時間も働けるはずがない。 医師を増員せずに2010年の日本の平均並みの医療は新潟では実現しない。

2035年新潟県の医療を2010年の 日本平均並にするには(2) 医師を増員する(医学部定員増)ことにより、労働力をまかなう 医学部定員を増やした2035年 医学部定員 50%増 医学部定員 100%増(2倍) 医学部定員 200%増(3倍) 日本の平均 地域医療を担う医学部を 新設するレベル (注)高齢者に対する医療のありかたに変化が必要 という見方も出来る。

まとめ 新潟県の人口は今後25年間で 20% 減少する。一方、医師数は 18% 増加する。このことにより、人口千人当たりの医師数は 1.63 から 2.45 に改善する。これは「医師数は足りている」という根拠の一つとしてあげられている。 しかしながら、人口の年齢分布は大きく変化し(スライド9)、後期高齢者の割合は増大する(スライド12)。 また、人口減少にも関わらず、死亡数は増大し(スライド13)、特に、後期高齢者死亡数の増大は2010年の1.5倍にものぼる(スライド14)。 そこで、我々は、25年後の医師数、およびその年齢分布ををシミュレーションし、対高齢者、対死亡数、対後期高齢者死亡数の各指標において新潟県の医療が25年後どのように変化するかを予測した。 その結果、それらの指標は最大1.2倍近く悪化することが分かった。 しかしながら、新潟県の場合、悪化率よりも2010年における指標の悪さが問題となる。実際、全ての指標において、日本の平均を大きく下回ることが分かった(スライド21)。 新潟県の2035年の医療を上記3つの指標に従い2010年の日本平均並にするための手段として、2つのシミュレーションを行った。 労働時間の増大:医師は増員することなく労働時間を増やすことにより労働力を増す。結果としては、若手の医師が一週間休み無く働いても後期高齢者死亡数指標において2010年の日本の平均には届かないことが分かった。現在、医師の労働時間はスライド19にも示されているようにすでに超過勤務となっている。この是正が求められる中、医師の労働時間増大はあり得ないという結論に至った。 医師数の増員:医学部定員増を想定し、どの程度増員すれば2010年の日本平均並になるかをシミュレーションした。その結果、対死亡数指標においては100%の増員(すなわち定員を2倍にする)が必要、対後期高齢者死亡数指標においては200%の増員(定員3倍)が必要という結論を得た。これは、医学部を新設することで初めて達成できる増員である。

参考資料 勤務医の割合(新潟県) 加齢に伴い勤務医の割合は減少していく。スライド19では、加齢と共に医師の働き方が 変わるデータを示したが、それは病院勤務医のデータであったことに注意しなければ ならない。年配の医師が増えてもそれがイコール勤務医の増加とはならない。

参考資料 「新潟市」と「新潟県の新潟市以外地区」の比較 新潟市は1.5倍近く悪化する。新潟市以外の地区は20%程度の悪化度である。 しかしながら、指標の数値自体を見ると仙台以外の地区は仙台と比較すると 2倍以上悪いことが分かる。

参考資料 医師年齢分布(2010年)の比較 「新潟市」と「新潟県の新潟市以外地区」 「新潟市」と「新潟県の新潟市以外地区」の医師数(男性)は、それぞれ1504人、1768人で 大体同じ。しかしながら、その年齢分布はかなり違うことがわかる。新潟市の方が若手医師 が多いのに対して、新潟市以外の地区では50歳を超える医師の数がかなり多くなる。この 50歳を超える医師は、2035年には75歳以上となる。 従って、新潟市以外地区の医師年齢分布からは、この地区の医師数は現状のままの システムでは、大きく増加しないばかりか場合によっては減少してしまう可能性もある (高齢医師が引退する数が新たにこの地区に来る医師数を上回る可能性もある)。