東大アタカマ望遠鏡(TAO) 光学系検討の現状報告 東大天文センター・木曽観測所 宮田 隆志 田中 培生 山室 智康 お話する内容 宮田 隆志 田中 培生 山室 智康 お話する内容 □どんな望遠鏡にするのか? □パラメータの相互関係 □パラメータの選択 □設計の例
どんな望遠鏡にするのか? □ 赤外線用の望遠鏡 □ 広視野の望遠鏡 □ シンプル・メンテナンスが少ない望遠鏡
どんな望遠鏡にするのか? 赤外線用の望遠鏡 高地(5000m以上)という条件を最大限に生かす → (熱)赤外での性能重視 光学系という観点から ◎ 瞳を副鏡に置く ◎ 熱放射源を光路中に置かない ◎ 振動副鏡 ← Chopping
どんな望遠鏡にするのか? 広視野の望遠鏡 観測の効率(D2×Ω)を高める 光学系という観点から ◎ Fを明るくする ◎ 補正系を組む ← 大型のレンズを用いた透過系
どんな望遠鏡にするのか? シンプル・メンテナンスが少ない望遠鏡 高地での作業量を減らす 少ない人数で運用可能 安定した運用・dead timeを少なく 光学系という観点から ◎ 光学系は1種類に → 副鏡や補正系の交換は行わない
どんな望遠鏡にするのか? シンプルな望遠鏡 副鏡は1つ 赤外性能重視 振動副鏡=小さな副鏡 広視野 明るいF=大きな副鏡 すべてを完全に満足する事はできない
パラメータの相互関係 一般論 主鏡は6.5m、F 1.25 これは固定と思う まずは決めるべき望遠鏡のパラメータ パラメータの相互関係 一般論 主鏡は6.5m、F 1.25 これは固定と思う まずは決めるべき望遠鏡のパラメータ Caseegrainか Gregorianか? Ritch-Cretienか Classicalか? 最終F値
CassegrainかGregorianか? パラメータの相互関係 CassegrainかGregorianか? Cassegrain Gregorian Cassegrain Gregorian コマ収差 同じ 非点収差・湾曲 少し良い 少し悪い 湾曲の補正 難しい 楽 軸ずれコマの出安さ 同じ
CassegrainかGregorianか? パラメータの相互関係 CassegrainかGregorianか? Cassegrain Gregorian M2サイズ 小さい 大きい M1-M2距離 小さい 大きい M2直径 M1-M2間距離 M2サイズ F値 F値
Ritchy-CretienかClassicalか? パラメータの相互関係 Ritchy-CretienかClassicalか? Classicalと RCでの コマの強さ (視野30‘と固定) RCはコマフリーであり、単一Fの望遠鏡ならRCが有利 ただし、他のFではコマが大きい Classicalは複数Fで使用するのなら有利 コマ補正が必要なので補正系は像面から遠くに置く → 補正系は交換がたいへん
パラメータの相互関係 最終F値 □ 視野とF値の関係 最終F値を決めるのに考慮すべき要素 = 視野、M2サイズ、収差 最終F値 最終F値を決めるのに考慮すべき要素 = 視野、M2サイズ、収差 □ 視野とF値の関係 広視野をやるには焦点面近くに補正系が必要 補正系のサイズは製作上の問題からMAXがある 例えば 可視 φ70cm (Silicaだけなら100cm?) 近赤外 φ30cm → 視野の物理サイズは固定になるので、視野広さは F値によって決まってしまう。
パラメータの相互関係 最終F値 視野との関係 視野の直径 F値 → Fが明るいほうが広視野には有利
パラメータの相互関係 最終F値 M2サイズとの関係 Fが明るいとM2は大きくなる = 振動副鏡は難しくなる → 振動副鏡を考えるとFは暗めに F値 Fが明るいとM2は大きくなる = 振動副鏡は難しくなる → 振動副鏡を考えるとFは暗めに
パラメータの相互関係 最終F値 収差との関係 非点の スポット径 コマの スポット径 F値 F値
パラメータの選択 “赤外線用の望遠鏡” → M2は小さくすべき ◎ Cassegrain ◎ Fを暗めにとるべき “赤外線用の望遠鏡” → M2は小さくすべき ◎ Cassegrain ◎ Fを暗めにとるべき “広視野望遠鏡” → 明るいF ◎ なにしろFを明るく (◎ Gregorianの方が補正系を組みやすいので少し有利) “シンプルな望遠鏡” → M2などの交換はなし ◎ ClassicalではなくRCにすべき ◎ Fは単一
パラメータの選択 “Cassegrain望遠鏡” シンプルな望遠鏡 副鏡は1つ RCタイプでコマを取る 赤外性能重視 振動副鏡 F暗め 副鏡は1つ RCタイプでコマを取る 赤外性能重視 振動副鏡 F暗め 広視野 F明るめ F値 F=15 F=5 F値の落としどころは?
パラメータの選択 Fを具体的に決める 振動副鏡 どのぐらいのサイズまで振れるか? → 大きさの他に重さが重要 材質候補 振動副鏡 どのぐらいのサイズまで振れるか? → 大きさの他に重さが重要 材質候補 ガラス系(Zerodurなど)、ベリリウム、SiC ベリリウム ○密度が低い(1.81g/cm3)、 ○硬いので薄くできる ×高価で製造が難しい SiC ○硬いので薄くできる ×高価 とりあえずは軽量化Zerodurを想定する
パラメータの選択 Fを具体的に決める 50% lightweightedならF15以上 80% ならF12以上にすれば振れる Aspect比を固定(7)して考える M2の慣性モーメント M2の重さ F値 F値 50% lightweightedならF15以上 80% ならF12以上にすれば振れる
パラメータの選択 Fを具体的に決める 視野は? F12ならば 可視像面湾曲補正なしで φ44arcmin 可視像面湾曲補正ありで 可視像面湾曲補正なしで φ44arcmin 可視像面湾曲補正ありで φ30arcmin 近赤外 φ13arcmin D2Ωで考えると φ44’ → 64000‘2m2 SupCam より5%だけ大きい
設計の例 Cassegrain Ritchy-Cretien タイプ 主鏡 直径 6.5m F値 1.25 副鏡 振動副鏡 直径 935mm 副鏡 振動副鏡 直径 935mm 厚さ 135mm 重さ 50 kg (lightweighted 80%) 最終F値 12.0 Plate Scale 2.65 arcsec/mm = 380μm/arcsec 補正系 可視(湾曲補正無し)用 φ1m 視野 φ44’ 可視(湾曲補正あり)用 φ70cm φ30’ 近赤外用 φ30cm φ13’
設計の例 望遠鏡パラメータ 副鏡 直径 935mm 曲率半径 2511mm コニック係数 –1.542461 厚さ 135mm 望遠鏡パラメータ 副鏡 直径 935mm 曲率半径 2511mm コニック係数 –1.542461 厚さ 135mm 重量 ~50kg 6998mm 主鏡 直径 6.5m 曲率半径 16250mm コニック係数 –1.003381 Backfocus 4000mm
設計の例 可視補正系(湾曲補正無し) 像面湾曲 R=1766.5mm 1650mm 10mm離れると 30umの焦点移動 Silica
設計の例 可視補正系(湾曲補正無し) スポットダイアグラム 0.42micron 0.55micron 0.90micron 視野中心 R=13arcmin R=20arcmin 1辺100um
設計の例 近赤外補正系 1030mm 180mm BaF2 CaF2 CaF2 BaF2 S-FPL53 CaF2 S-TIH14 Silica 180mm
設計の例 近赤外補正系 スポットダイアグラム J-band H-band K-band 視野中心 R=2.4arcmin 1辺200um
設計の例 配置のアイデア 可視用補正系は 近赤外補正系も ナスミスに固定 ナスミスに固定? ナスミス1 ナスミス2 可視広視野装置 配置のアイデア 可視用補正系は ナスミスに固定 近赤外補正系も ナスミスに固定? ナスミス1 可視広視野装置 ナスミス2 近赤外広視野装置 第三鏡の回転・ 抜き差しで 装置交換 ベントカセ その他の装置 カセグレン焦点 中間赤外装置
コメント F/15 AO副鏡 現在Stewardが開発中のAO副鏡 F/15(サイズ D=640mm) コマ径だけで言えば Classical RC F/12 コマ径だけで言えば Classicalと同程度
まとめ TAO光学系の概念 赤外仕様・広視野・シンプルが柱 しかし、完全に仕様を満足する解はない 特にF値の選択で相反する 赤外仕様・広視野・シンプルが柱 しかし、完全に仕様を満足する解はない 特にF値の選択で相反する RC-Cassegrain F12の望遠鏡案 赤外振動副鏡を搭載可能で、かつ最も広視野 副鏡サイズ935mm 視野 可視φ44arcmin 近赤外φ13arcmin → この考え方でもう少し仕様をつめるか?