「建築構法」 1回目の授業 木造住宅の構造の変遷 平成29年4月17日(月) 今岡 克也.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
新診断ソフト 木耐博士Sについて エイム株式会社. □ はじめに 耐震診断方法の変更に伴い、木耐博士も新 しく開発することになりました。
Advertisements

基盤構造研究室(担当茂木) 10TC005 新田裕恭, 10TC010 内海満希, 10TC040 田中優 希 建設工学科棟2号館の耐震診断.
阪神淡路大震災( H 7年)での住宅の被害状況 総社市役所建設部建築住宅課 ℡0866-92-8289 昭和 56 年以前建築の木造住宅は,まずは耐震診断を !! 熊本地震( H28 年)での住宅の被害状況.
平成25年11月11日 発刊 A5版 196ページ オールカラー み り ょ く 呉市の生い立ち 明治35年( 1902 年) 宮原村,和庄村,荘山田村,二 川町が 合併して 呉市が誕生 昭和 3年 (1928 年) 吉浦町,警固屋町,阿賀町 昭和16年 (1941 年) 広村,仁方町と合併 昭和31年.
山元町 345 丁目町内会 自主防災訓練 横浜市中消防署 山元町消防出張所 所長 竹内 良 様 災害図上訓練 横浜市中区 避難対象区域図の 根拠について.
ケムリガエシ梁の継ぎの状況 (追っかけ大栓継) 工事のようす. 牛梁+大黒柱の仕口 牛梁の継手(台持継) だいもちつ ぎ.
木造住宅の耐震補強への取り組み 名古屋工業大学社会開発工学科建築系 助教授 井戸田 秀樹 ■ 名古屋工業大学「東海・東南海地震防災合同プロジェクト」
第4回  親子・孫3代で使える木造住宅で 人生トータルコストダウンの家づくり 監修 一般社団法人住まい教育推進協会.
筋交い付の柱のN値法 ・教科書 図解「建築の構造と構法」  p.48~53.
既存木造住宅の耐震性能と 耐震補強効果に関する実験的研究
4-1 鉄骨造建物の耐震安全性 4-2 鉄骨造建物の被害例 4-3 鉄骨造建物の耐震診断と補強 4-4 鉄骨造大空間構造の耐震設計
OPEN (2日間限定) kawai.co (株式会社河合工務店)
旧高野家常時微動調査 07TC040 小山梨紗 07TC076 本郷博之.
図解「建築の構造と構法」 72~79ページ 必携「建築資料」 22~23ページ
2.災害公営住宅の概要     完成イメージ ◇ 入谷地区の完成イメージ 集合住宅 戸建住宅 ◇ 名足地区の完成イメージ 集合住宅 戸建住宅 13.
図解「建築の構造と構法」 156~161ページ 必携「建築資料」 56~65ページ
図解「建築の構造と構法」 156~161ページ 必携「建築資料」 56~65ページ
08TC005 岩田靖央 08TC048 二階堂圭太 08TC065 松山幸司 指導教員 茂木秀則准教授
東京女子大学 現代社会学部 コミュニケーション特論C(社会) 災害情報論 第2回 阪神・淡路大震災の教訓
・ダムを効率的に建設する技術 ・既存のダムを有効利用する技術.
柱崩壊と梁崩壊 (塑性設計の話) 第3部 その2 塑性設計の注意点 第4回岐阜建築鉄骨技術交流会 (かんたん構造講義)
能力開発セミナーのご案内 木造住宅における性能表示 (構造の安定編)コース コース番号 日 程 受講料 定員 講 師 PH06
住宅における緑のカーテンの 温熱環境緩和効果の実測
・図解「建築の構造と構法」 26~33ページ ・必携「建築資料」 16 ~19ページ
回想写真集.
G r u n d a g e 東海サッシュ硝子株式会社 です。 よろしくお願いします。 会場の皆様 こんにちは!!
木造住宅の 常時微動観測 05TC012 押野雅大 05TC021 川村潤也.
伝統木造建築物の耐震診断・補強法の開発と推進
一緒に羽ばたきませんか? 商工会議所 マッチングプラザ.
はじめて学ぶ建物と火災 第1章 建物火災に対する安全 第2章 火災は意外と多い ー 火災の実態 第3章 ものが燃える ー 火災の現象
半地下水処理施設基礎への適応事例 マルフジエンジニアリング(株)       渡邉 哲也.
建築構法 第9回 2014/6/16 「建築構法」 8回目の授業 鉄筋コンクリート 構造の変遷 平成28年6月6日(月) 今岡 克也.
イソタンシステム 発泡ウレタン断熱・防水システム 特徴 用途 断熱と防水を同時に実現 軽量 工期短縮 結露防止 簡単な屋根補修
歴史的環境と共存するニュータウンのあり方
× △ ○ 3大構造の比較 大空間が作れるか? 木構造 鉄筋コンクリート構造 鋼構造
工事写真用台紙 写真貼付け 写真貼付け 住宅ストック循環支援事業用 補助事業者名 共同事業者名 写真No 工事箇所 対象工事内容 写真No
福井地震 02T3020B 亀山 由佳.
安全な除雪作業をするためのチェックリスト
鉄筋コンクリート構造の施工 ・図解「建築の構造と構法」    98ページ   114~115ページ ・必携「建築資料」   施工工程:68~69ページ.
「地震保険及び建物構造の 基礎知識と支払査定基準の解説」
図解「建築の構造と構法」 72~79ページ 必携「建築資料」 31~32ページ
鉄骨造の床スラブと階段 ・図解「建築の構造と構法」 床スラブ:145ページ 階段: 146ページ ・必携「建築資料」
日本建築史  ~日本の住居の移り変わり~.
旧高野家常時微動調査 07TC040 小山梨紗 07TC076 本郷博之.
豊田市 K邸の新築工事 (5/10).
壁式鉄筋コンクリート構造 ・図解「建築の構造と構法」    116 ~119ページ ・必携「建築資料」     76~77ページ.
「建築構法」 1回目の授業 住宅構造の変遷 平成28年4月18日(月) 今岡 克也.
開口部・開口材料 野口貴文.
・ガイダンス ・建築構法の変遷 ・住宅構造の変遷
鉄骨構造の特徴 Steel Frame Structure
鉄骨構造の接合方法 ・図解「建築の構造と構法」    132 ~137ページ ・必携「建築資料」    108~111ページ.
鉄筋コンクリート構造の材料(2) ・図解「建築の構造と構法」     93~97ページ ・必携「建築資料」   材料:78~81ページ.
木材利用による業務用施設の断熱性能効果検証事業
老後の生きがいある里山生活のための自然エネルギー利用・快適住宅
電話/Eメール/当社HP申込フォームより 締切は イベント前日  17時
鉄筋コンクリート構造の特徴 ・図解「建築の構造と構法」 84~90ページ ・必携「建築資料」 ラーメン構造:74~75ページ
江戸時代に築かれた木製・石積用水路の築造技術にかかる考察
構造物の常時微動計測 ~難波田城公園~ 基盤構造工学研究室 小田 優介 川満 大輔.
サンプル様邸新築工事 ご提案シート 休日を楽しむ、癒しの家 サンプル建設 深森 庄司.
鉄骨鉄筋コンクリート構造 Steel framed Reinforced Concrete
在来軸組木造住宅例 の設計図書 ・図解「建築の構造と構法」    20~25ページ.
空き家地域貢献活用 現状図と課題(必要改修箇所)
都市型建築の効果的な耐震補強・改修法の開発と推進
1948年福井地震レポート 00t3032j   荒瀬 公三.
× × × 耐震補強フレーム FRAME+ (フレームプラス) 地震から家族を守る「フレームプラス」
・課題の説明 ・柱の引抜耐力(N値)の計算 ・内壁と天井 ・床と階段
建築構法の変遷と分類 教科書 p.10~15.
建築構法の変遷と分類 教科書 p.10~15.
水道施設のあらまし 配水池編 みんなで配水池のことを 学んでみましょう! 作成日 平成27年3月17日 改 訂
0,000 ○○駅 徒歩 0 分 0/0 0LDK 00.00㎡ モデルハウス 現地販売会開催 ○○市○○町 0-0-0
Presentation transcript:

「建築構法」 1回目の授業 木造住宅の構造の変遷 平成29年4月17日(月) 今岡 克也

環濠集落と竪穴式住宅 新石器時代(前3世紀~2世紀頃) 住宅跡 環濠 約 120 m 横浜市の大塚遺跡:約115棟の竪穴式住宅跡

竪穴式住居の遺跡 ・地面から80cmほど掘り下げ、  柱を地中に埋める(掘立柱) ・主な道具は、磨製石器(斧オノ)

竪穴式住宅の構造 柱と桁・梁の接合は、 縄や皮などでしばる 垂木を放射状に架け 棟木を3本材で支える 棟木 垂木 桁 梁 むねぎ たるき けた 桁 梁 柱と桁・梁の接合は、 縄や皮などでしばる 垂木を放射状に架け 棟木を3本材で支える

竪穴式住宅の特徴 ① 約 80cm 掘り下げて丸太柱を埋める ② 柱と桁・梁などの接合は縄等でしばる ③ 栗などの硬くて腐りにくい木材を使用 ④ 垂木を放射状に掛け,藁や茅を葺く ⑤ 木材の樹皮も屋根葺き材に使用

高床式住宅の特徴 水田稲作を行うために 川辺の低地に移動 ほぞと栓の穴 頭貫 柱のほぞを 梁に挿す 梁のほぞを柱に 挿して 栓をする

高床式住居の復元例 三内丸山遺跡(青森市)

母屋と庇 母屋の外周部に 1間(1.82 m)幅の 庇(広縁)を造る 母屋の梁間を2間 (3.64 m)にすれば 桁行は拡張が可能 も や ひさし 母屋と庇 母屋の外周部に 1間(1.82 m)幅の 庇(広縁)を造る 1.82 m 3.64 m 1.82 m 梁 間 母屋の梁間を2間 (3.64 m)にすれば 桁行は拡張が可能 桁 行

寝殿造の例 畳 外壁は 蔀戸 しとみど 庇 庇 母屋

寝殿造の特徴 ① 礎石の上に掘立ての丸い柱 ② 板敷きの床で,人が座る場所に畳 ③ 屋根裏には天井を張らない ④ 開放的な大空間 →多目的に利用 ⑤ 南側に庭園を造り広縁と一体化

室町時代の市場町 水路 (排水用) 周囲を塀で囲み 自衛していた 井戸

銀閣寺の東求堂(1486) 書院造の例 角柱 なげし 長押 引違戸 畳 (四畳半) 同仁斎 ふすま 付書院 襖

書院造の特徴 ① 柱は正方形(角柱),梁は長方形 ② 畳敷きの床(間取りの基準化) ③ 水平な板で天井を張る ④ 襖や引違戸で部屋を仕切る ② 畳敷きの床(間取りの基準化)  ③ 水平な板で天井を張る ④ 襖や引違戸で部屋を仕切る ⑤ 床の間に付書院と違棚

江戸初期の農家造の住宅 大黒柱

農家造の構造と平面 住宅の中央に 大黒柱等を設ける 変形田の字型平面 小黒柱 大黒柱 田の字型平面

農家造の特徴 ① 屋根が茅葺や板葺が多い ② 東側に土間があり,厩(うまや)を兼ねる ③ 田の字型の平面で,西端には床がある ④ 南側には縁側があり,北側にはない ⑤ 土間の北側に流しやかまどがある

明治中期の都市住宅の例 1890年(明治23年)建築 約130㎡ 夏目漱石の借家 ・瓦葺きの寄棟屋根 ・土間がなくなる ・座敷が南で茶の間は北 ・台所は玄関に近い

明治の都市住宅の特徴 ① 屋根が瓦葺き ② 南側に縁側と客間がある ③ 2階は狭く,子供部屋などに利用 ④ 台所が玄関に近い ← 水道の未発達 ⑤ 便所が離れた場所にある ←汲取り式

電気(電灯)とガスの普及 大正 昭和 電灯の 普及 薪(たきぎ)から プロパンガスへ ガス炊飯釜 の特許 ガス焚き 風呂釜の販売 関東大震災

(上)水道の普及 昭和 13年 井戸水から 水道水へ

台所の変化 板の間 土間 カマド・井戸 → ガス・水道

便所の変化 汲取式 水洗式 フタ 水によって 臭気を遮断 臭気が入るため 屋外に設置 S字トラップの発明

昭和初期の中廊下型住宅 西側に玄関,南面に縁側と座敷と茶の間

中廊下型住宅の特徴 ① 南側に居間と広縁などを配置する ② 他の部屋を通らずに移動できる ③ 応接として洋間を設ける ④ 台所・風呂・便所などを北側にする

平成からの木造住宅の特徴(1) ① 鉄筋コンクリート製のべた基礎 →床下の湿気を防ぎ、木材の腐朽防止 ② 屋根や外壁の軽量化(耐震性向上)   →床下の湿気を防ぎ、木材の腐朽防止 ② 屋根や外壁の軽量化(耐震性向上)    →土葺き瓦屋根や土壁を使用しない ③ プレカット工場で木材を機械で加工 ④ 柱・梁などの接合部は金物で補強する

平成からの住宅の基礎 べた基礎 柱の引抜き防止用 アンカーボルト 土台用の アンカーボルト

平瓦やスレート葺きの屋根 とサイディングの外壁 外壁は、開口部(窓など)の面積が少ない

プレカットによる接合部の加工 ほぞ(大入れ蟻掛け) ほぞ穴 羽子板ボルト 用の穴

2階の根太レス床と梁の接合部 羽子板ボルト

平成からの木造住宅の特徴(2) ⑤ 2階床を厚い合板で作成(根太レス工法) → すぐに床上で作業可能に ⑥ 四隅等を通し柱から管柱へ   → すぐに床上で作業可能に ⑥ 四隅等を通し柱から管柱へ   →  耐震性と施工性を向上させる ⑦ 四隅等に耐震壁をバランス良く配置 →  耐震性を強化させる

2階の管柱と小屋梁 小屋梁 管柱の ほぞ 根太レス床:すぐに作業ができる

筋交い入り壁の配置例 ▽:片側の 筋交い ▼:タスキ掛 の筋交い 耐力壁の 長さ(cm) 四隅の 耐力壁