薬の解説 主な呼吸器用薬 -鎮咳薬・去痰薬・気管支拡張薬-

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薬の解説 主な呼吸器用薬 -鎮咳薬・去痰薬・気管支拡張薬- The Japanese Respiratory Society 社団法人日本呼吸器学会 教育用DVD - DVDで学ぶ実践呼吸器病学 - Ⅱ-34 薬の解説 主な呼吸器用薬 -鎮咳薬・去痰薬・気管支拡張薬- 東京女子医科大学 第1内科 玉置 淳

内容 鎮咳薬 去痰薬 気管支拡張薬 参考文献

鎮 咳 薬

鎮咳薬 【はじめに】 咳嗽の原因は呼吸器・耳鼻科疾患のみならず, から や のものまで多岐にわたり,症状の強さも1日数回程度の軽いものから持続的な呼吸困難をきたす重篤なものまでさまざまである. 咳嗽の生理学的意義が気道内異物や分泌物を排除するための防御機構であることを考慮すると,鎮咳薬によってこれをむやみに止めるべきではない.しかし,咳をすることは大きなエネルギーの消費であり,症状が強く日常生活に支障をきたすような場合には,咳嗽を緩和させる手だてをとらなければならない. 心疾患 薬剤性 心因性 咳嗽は,呼吸器科を受診する患者が訴える症候のうち,最も頻度の高いものの1つである. 咳嗽の原因は多岐にわたり,その程度も軽症から重症までさまざまであり,持続期間によって急性咳嗽,遷延性咳嗽,慢性咳嗽に分類される. 咳嗽は,本来,気管支・肺における機械的防御機構としての役割を果たしているが,自覚症状が強い場合には鎮咳薬を用いることがある.

末梢性鎮咳薬は,気管支拡張,抗炎症,抗菌,去痰など他の主作用と関連して咳受容体の反応性を二次的に抑制する薬剤が大部分である. 中枢性鎮咳薬 【鎮咳薬とは?】 鎮咳効果を得るためには,咳嗽反射の経路のうちのいずれかをブロックする薬剤が必要である.一般に,このような鎮咳薬には咳中枢に作用する と咳受容体に働く がある. 末梢性鎮咳薬は,気管支拡張,抗炎症,抗菌,去痰など他の主作用と関連して咳受容体の反応性を二次的に抑制する薬剤が大部分である. 中枢性鎮咳薬 末梢性鎮咳薬 咳嗽は咳嗽反射(迷走神経反射や軸索反射)によって発生するものであり,鎮咳薬はその反射経路のいずれかに作用する薬剤である. 鎮咳薬には中枢性鎮咳薬と末梢性鎮咳薬があるが,狭義の鎮咳薬は中枢性鎮咳薬のことである. 狭義の鎮咳薬 = 中枢性鎮咳薬 5

【鎮咳薬の種類】 鎮咳薬 分類 代表的薬剤 (一般名) (商品名) 適応疾患 禁忌・重篤な副作用 中枢性鎮咳薬 (狭義の鎮咳薬) 麻薬性 . リン酸コデイン 非特異的 禁忌: 重篤な , 肝障害,喘息発作,痙攣, 急性アルコール中毒, 出血性大腸炎 副作用: 呼吸抑制,錯乱, 喉頭浮腫,薬物依存など 非麻薬性 リン酸ジメモルファン ヒベンズ酸チペピジン ノスカピン 塩酸クロペラスチン 車前草エキス アストミン アスベリン ナルコチン フスタゾール メジコン フスタギン 副作用: アスベリン:アナフィラキシー様症状,腹痛,嘔吐 メジコン:過敏症,呼吸抑制 リン酸コデイン 呼吸抑制 中枢性鎮咳薬には麻薬性のものと非麻薬性のものがあり,いずれも咳嗽の強い症例では疾患非特異的に用いられる. 麻薬性鎮咳薬にはリン酸コデインがある.これは非常に強力な鎮咳効果を発揮するが,表のような重篤な副作用も有するので注意を要する. デキストロメトルファン 6

【鎮咳に用いるその他の薬剤】 いわゆる末梢性鎮咳薬 , ,含嗽液,局所麻酔薬など. 鎮咳去痰配合薬 , ,含嗽液,局所麻酔薬など. 鎮咳去痰配合薬 濃厚ブロチンコデイン(桜皮エキス + コデインリン酸塩) セキコデ (ジヒドロコデインリン酸塩 + エフェドリン塩酸塩 + 塩化アンモニウム) アスドリン (メチルエフェドリン塩酸塩 + ジフェンヒドラミン塩酸塩) フスコデ (ジヒドロコデインリン酸塩 + dl -メチルエフェドリン塩酸塩 + クロルフェニラミンマレイン酸塩) アスゲン (マオウエキス + 安ナカ + 酸化マグネシウム +アセトアミノフェン +ロートエキス など) 去痰薬 気管支拡張薬 7

【中枢性鎮咳薬の適応と禁忌】 適応 中枢性鎮咳薬はあくまで一時的な対症療法 胸痛,頭痛,肋骨骨折などの合併症を伴う患者で,咳嗽のためQOLが著しく低下している場合に限る. 禁忌 重篤な肝障害 のある患者 湿性咳嗽を有する患者 喘息やCOPDで発作を起こしている患者 痙攣を起こしている患者 急性アルコール中毒 出血性腸炎 呼吸抑制 中枢性鎮咳薬は,咳嗽のためQOLが著しく低下している症例に限り,対症療法として一時的に用いるのみとする. また,本薬剤は,重篤な肝障害や呼吸抑制状態にある患者には禁忌であり,喀痰を伴う湿性咳嗽を有する症例においても,痰の喀出抑制による感染症の増悪をきたすことがあるので,原則として投与してはならない. 8

去 痰 薬 9

去痰薬は,このような気道過分泌に伴う症状を改善する ための薬剤である. 杯細胞 【はじめに】 気道粘液(喀痰)は粘液分泌細胞(気道粘膜の ,粘膜下腺の粘膜細胞と漿液細胞)によって産生され,気道腔の恒常性の維持と肺の防御に重要な役割を果たしている.しかし, 気道疾患において粘液糖蛋白の産生が増加すると,喀痰の が増し呼吸管理上の障害となる. 去痰薬は,このような気道過分泌に伴う症状を改善する ための薬剤である. 杯細胞 粘稠度 10

【COPDの末梢気道における粘液貯留】 去痰薬 0.4 GOLD Stage 4 Stage 3 Stage 2 Stage 1 & 0 0.3 luminal occlusion 0.2 r = 0.505, p < 0.001 0.1 2004年Hoggらは,COPD患者の手術切除肺における病理学的所見とGOLD (Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)の重症度との関連を検討している. それによれば,病態の進行との間に強い相関が認められたものは,細気管支における好中球,マクロファージ,リンパ球を主体とする炎症細胞浸潤,気道壁における組織量,粘液貯留による細気管支腔の狭小化などであったという.したがって, 気道粘液の分泌亢進は,COPDの重症度や予後に影響を与えるきわめて重要な因子の1つといえる. 0.0 20 40 60 80 100 120 FEV1 (% of predicted) (Hogg JC, Chu F, Utokaparch S, et al: The nature of small-airway obstruction in chronic obstructive pulmonary disease. N Engl J Med 2004, 350: 2645-53) 11

weighted mean difference (95% CI fixed) 去痰薬 【COPDにおける去痰薬の急性増悪予防効果 (meta-analysis)】 報告者 weighted mean difference (95% CI fixed) Allegra 1996 Banbolini 1980 Boman 1983 Bontognali 1991 Borgia 1981 Castiglioni 1986 Cremonini 1986 去痰薬を2か月以上投与 Grassi 1976 Grassi 1994 Grillage 1985 急性増悪の頻度は29%低下 Hansen 1994 日常生活が制限された日数の減少 Jackson 1984 McGavin 1985 抗菌薬を必要とした日数の減少 Meister 1986 Nowak 1999 またPooleらは,COPDにおける去痰薬の効果に関する無作為二重盲検比較試験のメタアナリシスを行っている. その結果,去痰薬の2か月間以上の投与により,COPDの急性増悪の頻度はプラセボ群と比較して29%減少し,疾患のために通常の日常生活が制限された病日数や抗菌薬の投与を必要とした日数も有意に低かったという. したがって,COPDに去痰薬を投与することは意義あることといえる.日本呼吸器学会のCOPDガイドラインでも本論文を紹介している(エビデンスB). Olivieri 1987 Parr 1987 Pela 1999 去痰薬が優位 プラセボが優位 Ramussen 1988 -1 -0.5 0.5 1 ( Poole PJ et al: Oral mucolytic drugs for exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease: systematic review. BMJ 2001, 322: 1-6) 12

粘液線毛輸送系を賦活化し痰の喀出を促進する. 粘液(ムチン)の性状を変化させ粘稠度を低下させる. ムチンの分泌を抑制する. 去痰薬 【去痰薬の奏功メカニズム3)】 粘液線毛輸送系を賦活化し痰の喀出を促進する. 粘液(ムチン)の性状を変化させ粘稠度を低下させる. ムチンの分泌を抑制する. の分泌を促進する. 肺サーファクタント 去痰薬による去痰効果は, 1.粘液線毛輸送系を賦活化し痰の喀出を促進する 2.ムチンの性状を変化させ粘稠度を低下させる 3.ムチンの分泌を抑制する 4.肺サーファクタントの分泌を促進する などの機序によりもたらされる. 13

去痰薬 【去痰薬の種類】 気道分泌促進薬 塩酸ブロムヘキシン(ビソルボン),桜皮エキス(濃厚ブロチンコデイン), ヒベンズ酸チペピジン(アスベリン),塩酸エプラジノン(レスプレン) 気道粘液溶解薬 1) システイン系薬剤 アセチルシステイン(ムコフィリン),メチルシステイン(ペクタイト), エチルシステイン(チスタニン) 2) 蛋白分解酵素 セラペプチダーゼ(ダーゼン),プロナーゼ(エンピナースPD), セミアルカリプロティナーゼ(ゼオエース) 3) 多糖類分解酵素 塩化リゾチーム(ノイチーム,レフトーゼ) 気道粘液修復薬 カルボシステイン(ムコダイン),フドステイン(クリアナール,スペリア) 気道潤滑薬 塩酸アンブロキソール(ムコソルバン) 界面活性薬 チロキサポール(アレベール) 表に現在市販されている主な去痰薬を示す.去痰薬は,その薬理作用から,気道分泌促進薬,気道粘液溶解薬,気道粘液修復薬,気道潤滑薬,界面活性薬に分類される. 14

【主な去痰薬の適応と重篤な副作用】 去痰薬 去痰薬 適応疾患 重篤な副作用 塩酸ブロムヘキシン 次の疾患の去痰: 急性気管支炎,慢性気管支炎,肺結核, 塵肺,術後の喀痰喀出困難 アナフィラキシー様症状 アセチルシステイン 次の疾患の去痰: 慢性気管支炎,肺気腫,肺化膿症,肺炎, 気管支拡張症,肺結核,嚢胞線維症, 喘息,上気道炎(咽喉頭炎) 次の前後処置: 気管支造影,気管支鏡検査, 肺癌細胞診,気管切開術 気道閉塞,気管支痙攣 カルボシステイン 次の疾患の去痰: 上気道炎(咽喉頭炎),急性気管支炎, 喘息,慢性気管支炎,気管支拡張症, 肺結核,慢性副鼻腔炎の排膿, 滲出性中耳炎の排液 Stevens-Johnson症候群,Lyell症候群, 肝機能障害,黄疸 フドステイン 次の慢性呼吸器疾患の去痰: 喘息,慢性気管支炎,気管支拡張症, 肺結核,塵肺,肺気腫, 肺非定型抗酸菌症, びまん性汎細気管支炎 塩酸アンブロキソール 次の疾患の去痰: 急性気管支炎,慢性気管支炎,喘息, 気管支拡張症,肺結核,塵肺, 術後の喀痰喀出困難, 慢性副鼻腔炎の排膿 表に,主な去痰薬の適応と重篤な副作用を示す.去痰薬は気道分泌の亢進するさまざまな急性・慢性呼吸器疾患が適応となる. 重篤な副作用としては,頻度は低いがアナフィラキシー,Stevens-Johnson症候群,Lyell症候群などに注意する必要がある. 15

気管支拡張薬 16

気管支拡張薬は,気道平滑筋を拡張させ気道収縮を改善 させる薬物. , , の3種類に大別 される. 【はじめに】 気管支拡張薬は,気道平滑筋を拡張させ気道収縮を改善 させる薬物. , , の3種類に大別 される. や など気道閉塞性疾患の呼吸管理において, その重症度に応じて使用されている. β2 刺激薬 テオフィリン製剤 抗コリン薬 喘息 COPD 17

気管支拡張薬 【気管支拡張薬の種類】 β2 刺激薬 クレンブテロール(スピロペント),マブテロール(ブロンコリン), フェノテロール(ベロテックエロゾル),プロカテロール(メプチン,メプチンミニ,メプチンクリックヘラー),イソプロテレノール(アスプール液), オルシプレナリン(アロテック吸入液),サルブタモール(サルタノールインヘラー,ベネトリン吸入液),サルメテロール(セレベントロタディスク, セレベントディスカス),ツロブテロール(ホクナリンテープ) テオフィリン製剤 テオフィリン(テオドール,テオロング,ユニフィル,アルビナ坐剤), アミノフィリン(ネオフィリン,ネオフィリン注),ジプロフィリン(ネオフィリンM注) 抗コリン薬 イプラトロピウム(アトロベントエロゾル),オキシトロピウム(テルシガン),チオトロピウム(スピリーバ吸入用カプセル) 18

交感神経β2 受容体に結合しアゴニスティックに作用する一連の薬物群 気管支拡張薬 【β2 刺激薬】 交感神経β2 受容体に結合しアゴニスティックに作用する一連の薬物群 気道平滑筋β2 受容体 → の活性化 → 細胞内 上昇 → 細胞内 濃度低下 → 筋弛緩 気管支拡張薬のうち最も強力 投与ルートは経気道(吸入薬),経口(経口薬),経皮(貼付薬) アデニル酸シクラーゼ cyclic AMP Ca2+ β2刺激薬は交感神経のβ2受容体に結合しアゴニスティックに作用する一連の薬物群である.気道平滑筋にはβ2受容体が存在し,本受容体がβ2刺激薬によって活性化されると,アデニル酸シクラーゼの活性化を介して細胞内cyclic AMP濃度が増加し,細胞内カルシウム濃度が低下することによって平滑筋細胞は弛緩する.β2刺激薬は最も強力な気管支拡張薬であり,薬理効果の発現もきわめて速いため,とくに気管支喘息の急性発作に対する寛解薬として広く用いられている. 本薬剤には吸入薬,経口薬,貼付薬などのさまざまな剤型があり,おのおの経気道的,経口,経皮的に投与される.このうち,最も一般的に用いられるのは定量噴霧式携帯用吸入器 (MDI)やネブライザーによる吸入である.本法は,気管支拡張薬を直接気道に到達させるのに最も合理的な手段であり,少ない投与量で気道局所における薬剤濃度が高くなるため強力な気管支拡張効果が得られ,しかも心刺激作用(心悸亢進,動悸,頻脈)や振戦などの副作用を最小限に抑えることができる. 19

【β2 刺激薬の作用時間4) (ヒト摘出気道平滑筋)】 気管支拡張薬 【β2 刺激薬の作用時間4) (ヒト摘出気道平滑筋)】 サルメテロール ホルモテロール フェノテロール テルブタリン サルブタモール アドレナリン イソプロテレノール 作用発現時間(分) 作用消失(分) 6.4 102 2.1 3.5 1.3 1.9 1.2 0.7 34 7.2 9.4 7.6 4.2 8 6 4 2 40 30 20 10 サルブタモール,テルブタリンなどの吸入β2薬は作用時間が短く,短時間作用性β2刺激薬といわれる.一方,サルメテロールやホルモテロールは気管支拡張効果の持続が12時間を超え,長時間作用性β2刺激薬と称される. ヒト気管支平滑筋を用いた in vitro の検討では,図に示すように,拡張作用の発現時間,消失時間ともに第1世代のβ刺激薬に比較してサルメテロールでは著しく延長していることがわかる. 20

【β2 刺激薬の使い分け】 長時間作用性β2 刺激薬 (LABA) サルメテロール(吸入),ツロブテロール(貼付) 喘息治療では として連用 気管支拡張薬 【β2 刺激薬の使い分け】 長時間作用性β2 刺激薬 (LABA) サルメテロール(吸入),ツロブテロール(貼付) 喘息治療では として連用 との併用が大切 コントローラー 吸入ステロイド (ICS) ICS受容体の核内移行を促進 LABA ICS β2 受容体数を増加 長時間作用性β2刺激薬 (LABA)の代表的なものにサルメテロール吸入やツロブテロール貼付があり,喘息の維持療法にコントローラーとして連用する.その際,吸入ステロイド(ICS)と併用することが大切であるが,これは,LABAがICS受容体の核内移行を促進し,逆にICSはβ2受容体数を増加させるように相補的に働くからである.一方,サルブタモールやプロカテロールの吸入は短時間作用性β2刺激薬(SABA)であり,これらは主に喘息発作時の頓用として使用されている.また,抗原曝露の前や運動誘発喘息の予防に使用しても有効である. 短時間作用性β2 刺激薬 (SABA) サルブタモール(吸入),プロカテロール(吸入) として頓用で使う 抗原曝露や運動誘発喘息の予防に用いる 発作治療薬 21

【β2 刺激薬の副作用】 手指振戦 頻脈,動悸 血糖上昇 低カリウム血症 悪心,嘔吐 頭痛 本薬剤単独の長期連用により: 気管支拡張薬 【β2 刺激薬の副作用】 手指振戦 頻脈,動悸 血糖上昇 低カリウム血症 悪心,嘔吐 頭痛 本薬剤単独の長期連用により: 耐性(β2 受容体数の減少) 気道過敏性亢進 気道炎症の増悪 喘息死のリスク増大 2刺激薬の副作用を示す.これには手指振戦,頻脈,動悸,血糖上昇,低カリウム血症,悪心,嘔吐,頭痛などがある. また,本薬剤を単独で長期連用すると, 2受容体が減少するための耐性,気道過敏性の亢進,気道炎症の増悪,喘息死リスクの増大などをきたすことが報告されている. したがって2刺激薬の単独使用は避け,吸入ステロイドを併用することが大切である.これは,グルココルチコイドが2受容体の数を転写レベルで増加させるからである. 22

気管支拡張薬 【テオフィリン製剤】 テオフィリンは気管支拡張作用を有する 誘導体であり,喘息やCOPDの治療に徐放剤(テオドール,テオロング,ユニフィル)が使用される. 注射薬として があり,急性の気管支攣縮に対して用いられることがある. 作用機序:いまだ不明な点が多い. cyclic AMP phosphodiesterase阻害 → cyclic AMP上昇 cyclic GMP phosphodiesterase阻害 → cyclic GMP上昇 G蛋白 (Gi) 阻害 → cyclic AMP上昇 アデノシンに拮抗 カテコラミンの遊離促進 電位依存性Ca2+チャネルの抑制 → 細胞内Ca2+濃度低下 histone deacetylase活性化 → 炎症性サイトカインの転写抑制 キサンチン アミノフィリン(ネオフィリン) テオフィリンは気管支拡張作用を有するキサンチン誘導体であり,β2刺激薬と同様,気管支喘息やCOPDの管理に徐放錠が広く用いられている. また,急性の気管支攣縮に対しては注射薬としてアミノフィリンも使用され,急速な気管支拡張をもたらす. テオフィリンの作用機序については,スライドに示すようなさまざまなメカニズムが想定されているが,いまだ不明な点が多いのが現状である. 最近では,気管支拡張作用よりも,むしろhistone deacetylase活性化に基づく炎症性サイトカインの転写抑制によって抗炎症効果を発揮することが注目されている. 23

【テオフィリン製剤の作用メカニズム】 の弛緩 気道平滑筋 輸送系の賦活 メディエーターの遊離抑制 粘液線毛 横隔膜筋力の増強 呼吸中枢刺激 気管支拡張薬 【テオフィリン製剤の作用メカニズム】 の弛緩 輸送系の賦活 メディエーターの遊離抑制 横隔膜筋力の増強 呼吸中枢刺激 血管透過性の抑制 気道平滑筋 粘液線毛 テオフィリン製剤の抗喘息・抗COPD作用の内容には,気道平滑筋の拡張作用のみならず,粘液線毛輸送系の賦活化,ケミカルメディエーターの遊離抑制,横隔膜筋力の増強,呼吸中枢刺激,血管透過性の抑制などの作用が知られている. これらの作用はそれぞれ慢性呼吸不全に基づく呼吸筋疲労,中枢性の睡眠時無呼吸症候群,うっ血性心不全などの病態に対しても有効とされている. 24

テオフィリンは主に肝臓で代謝されるが, その速さは個人差が大きい 気管支拡張薬 【テオフィリン製剤の副作用】 テオフィリンは主に肝臓で代謝されるが, その速さは個人差が大きい 血中テオフィリン濃度の上昇により以下の副作用が出現 悪心 嘔吐 頻脈,不整脈 . よって,定期的な薬剤血中濃度のモニタリングが必要 (5~15μg/mLを目安とする) 痙攣 テオフィリンは主に肝臓で代謝されるが,その速さは個人差が大きく,ときに血中テオフィリン濃度の上昇によって悪心,嘔吐,頻脈,不整脈,痙攣などの副作用をきたす場合がある. したがって,テオフィリンを投与している患者では定期的に薬剤血中濃度のモニタリングが必要であり,一般的には5~15μg/mLの血中濃度を目標として投与量を調節しなければならない. 25

アセチルコリンと受容体との結合を競合的に阻害 気道平滑筋拡張 気管支拡張薬 【抗コリン薬】 一般に, では副交感神経系のトーンが高い 抗コリン薬は副交感神経系に作用 気道平滑筋細胞の 受容体に結合 アセチルコリンと受容体との結合を競合的に阻害 気道平滑筋拡張 ムスカリン受容体サブタイプ(M1~M5受容体)のうち,気道平滑筋収縮に関わるものは 受容体 はM3受容体への選択性が高く,解離も遅い 気管支拡張効果が長時間持続する COPD ムスカリン M3 抗コリン薬は,副交感神経系に作用して,気道平滑筋に存在するムスカリン受容体に結合することにより,アセチルコリンと受容体との結合を競合的に阻害する薬剤である. ムスカリン受容体には現在5つのサブタイプが報告されているが,なかでも気道平滑筋細胞の収縮に関わっているものはM3受容体である. 従来の抗コリン薬(イプラトロピウム,オキシトロピウム)には,これらムスカリン受容体サブタイプに対する選択性がないため,気管支拡張効果は十分とはいえなかった. しかし,次世代の抗コリン薬である臭化チオトロピウムは,M3受容体への選択性が高く解離がきわめて遅い薬剤で,従来の抗コリン薬に比較して気管支拡張効果が長時間持続する. チオトロピウム 26

【抗コリン薬の適応と禁忌・副作用】 適応 イプラトロピウム,オキシトロピウム:喘息,COPDの気道閉塞症状に基づく諸症状の改善 気管支拡張薬 【抗コリン薬の適応と禁忌・副作用】 適応 イプラトロピウム,オキシトロピウム:喘息,COPDの気道閉塞症状に基づく諸症状の改善 チオトロピウム:COPDの気道閉塞症状に基づく諸症状の改善 禁忌 などの排尿障害 . 系薬剤に対する過敏症 重篤な副作用 心不全 上室性頻脈 期外収縮 前立腺肥大症 緑内障 アトロピン 抗コリン薬は,表記の疾患に対する適応があり,すべて吸入で使用されており,喘息に対してはβ2刺激薬に比較して気管支拡張作用の発現が遅く,効果自体もやや弱いため,標準的な維持療法としてはあまり用いられない. 一方,COPDの管理においては抗コリン薬は第1選択薬とされており,β2刺激薬と同等あるいはそれに優る気管支拡張効果をもたらす. なお,本薬剤の禁忌として緑内障,前立腺肥大,アトロピン過敏症が,重篤な副作用として心不全,上室性頻脈,期外収縮などがあるので注意を要する. 27

参考文献

参考文献 Hogg JC et al: The nature of small-airway obstruction in chronic obstructive pulmonary disease. N Engl J Med 2004; 350: 2645-53. Poole PJ et al: Oral mucolytic drugs for exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease: systematic review. Br Med J 2001; 322: 1-6. Barnes PJ: Current and future therapies for airway mucus hypersecretion. Novartis Found Symp 2002; 248: 237-49. Lofdahl CG et al: Long-acting β2-adrenoceptor agonists: a new perspective in the treatment of asthma. Eur Respir J 1991; 4: 218-26. 29