基礎物理学 担当:田中好幸(薬品分析学教室)
ディメンジョン (7ページ) P7の「ディメンジョン」の説明が、物理的に正確な 説明となるが、、、 実質的には 「ディメンジョン」≈「単位」 と考えてほぼ問題ない。 P7の「次元」の説明の脇に 「ディメンジョン」≈「単位」 と記載しておいて下さい。
ディメンジョン (P7) 1 P7の「ディメンジョン」の説明が、物理的に正確な 説明となるが、、、 実質的には、「ディメンジョン」≈「単位」 最も基本的な単位系 : 距離(m)、質量(kg)、時間(s) MKS単位系(基本的な物理量) 距離(m)、質量(kg)、時間(s)、温度(K)、物質量(mol)、 電流量(A)、カンデラ(cd) 国際単位系(通称SI)
ディメンジョン (P7) 2 P7の「ディメンジョン」の説明が、物理的に正確な 説明となるが、、、 実質的には 「ディメンジョン」≈「単位」 例えば、速度 = 距離(m)÷時間(s) = 距離(m)/時間(s) 従って、速度の単位(ディメンジョン)は m/s。 より専門的には、m•s-1 もしくは m s-1 と表す。 (m•s-1 = m•(1/s) =m/s; • はかけ算の意味) P5 表0.1の横に記載
ディメンジョン (P7) 2 一般に、• が「かけ算」の意味になるのは変数(文字) の時。数字のかけ算では「×」を使います。 2 × 4 2 • 4 例えば、速度 = 距離(m)÷時間(s) = 距離(m)/時間(s) 従って、速度の単位(ディメンジョン)は m/s。 より専門的には、m•s-1 もしくは m s-1 と表す。 (m•s-1 = m•(1/s) =m/s; • はかけ算の意味) P5 表0.1の横に記載
補足 10nを表す接頭語 1012 T (テラ) 109 G (ギガ) 106 M (メガ) 103 k (キロ) 10-3 m (ミリ) 10-6 μ (マイクロ) 10-9 n (ナノ) 10-12 p (ピコ) 103 k (キロ) 102 h (ヘクト) 101 da (デカ) 10-1 d (デシ) 10-2 c (センチ) 10-3 m (ミリ) キロキロとヘクト出か(デカ)けたメートルと、弟子(デシ)に連 られてセンチ、ミリミリ
補足2 なぜ乗数(10nの”n”)が3の倍数ごとに名前がついているか 1012 T (テラ) 109 G (ギガ) 106 M (メガ) 103 k (キロ) 10-3 m (ミリ) 10-6 μ (マイクロ) 10-9 n (ナノ) 10-12 p (ピコ) 英語 one ten hundred one one ten hundred thousand thousand thousand million k M 日本語 一 十 百 千 一 十 百 千 一 一 十 百 千 万 万 万 万 億 億 億 億 兆
べき乗表記を使う理由(有効数字) 測定値の末尾の桁は目見当(末尾の桁には誤差がある) 数学では: 1.0 km = 1000 m と書いても良いが、 物理や化学では: 1.0 km = 1000 mとは書けない 1.0 kmは2桁の精度しかない = 0.1 km (= 100 m) の桁には誤差がある 1000 mは4桁の精度があると宣言していることに 相当(1 mの桁のエラーしかないという意味) 物理や化学では: 1.0 km = 1.0×103 m がより正しい。
有効数字を決める要因1 測定値の平均値を扱う場合(教科書P6の説明) 標準偏差の一番上の桁が平均値の有効桁数を決める 計算上、平均値が161.4 cm、標準偏差(平均値からのば らつきの指標)が 1.2 cmとなったとき 平均値 = 161 ± 1.2 cm などと表記する 個数 158.6 – 159.4 cm ヒストグラム 159.4 – 160.2 cm 160.2 – 161.0 cm 68.3% 161.0 – 161.8 cm 161.8 – 162.6 cm 162.6 – 163.4 cm 163.4 – 164.2 cm
有効数字を決める要因2 測定値の平均値を扱う場合(教科書P6の説明) 標準偏差の一番上の桁が平均値の有効桁数を決める 計算上、平均値が161.4 cm、標準偏差(平均値からのば らつきの指標)が 1.2 cmとなったとき 平均値 = 161 ± 1.2 cm などと表記する 教科書P6 図0.3はヒストグラムを細かくしたものに相当
1章 運動
速さが同じでも、西向きに走った場合と東向きに走った場合で、結果(たどりつく場所)が異なりますよね。これをどのように表したら良いでしょう? 変位 速さが同じでも、西向きに走った場合と東向きに走った場合で、結果(たどりつく場所)が異なりますよね。これをどのように表したら良いでしょう?
皆さん、速度には正(+)の速度と負(−)の速度があるのをご存知ですか? 変位 皆さん、速度には正(+)の速度と負(−)の速度があるのをご存知ですか?
変位 変位(座標)を定義するための三要素 0点(原点) + − 正負の向き 単位(目盛) + − 正負の向き -3 -2 -1 1 2 3 (m) 単位(目盛) (総)移動距離と変位の違い(教科書P13, 図1.12) プールを泳ぐ人の変位のグラフ(教科書P13, 図1.13)
変位 変位(座標)を定義するための三要素 0点(原点) + − 正負の向き 単位(目盛) グラフを描くときの必須要素と基本的に同じ! + − 正負の向き -3 -2 -1 1 2 3 (m) 単位(目盛) グラフを描くときの必須要素と基本的に同じ! 0点(原点) 正負の向き 単位(目盛) → 軸ラベル(軸が表す物理量の種類)
変位を用いた速度 変位(座標)を定義するための三要素 0点(原点) + − 正負の向き 単位(目盛) + − 正負の向き -3 -2 -1 1 2 3 (m) 単位(目盛) 変位(座標)を使って速度を表すと、正の速度と負の速度 + − -3 -2 -1 1 2 3 (m) 正の速度(正の方向への運動) 負の速度(負の方向への運動)
等速直線運動 変位 一定速度 v0 = v0 (一定値) 移動時間 + − D v0 = D = v0•t (比例) t 傾き 直線(比例) + − D -3 -2 -1 1 2 3 (m) v0 = D = v0•t (比例) t 傾き 直線(比例) [m] 比例:縦軸との切片が0の一次関数 200 D 傾き = v0 Y = aX + b 20 [s] t d-tプロット(変位-時間プロット)
等速運動でない運動:瞬間の速度 D-tプロット(変位-時間プロット) 接線 v(t)を時刻tでの速度(瞬間速度)とする D(t) d1 [m] v(t)を時刻tでの速度(瞬間速度)とする D(t) d1 d1 v(t) = = 接線の傾き t1 t1 t [s] 拡大 D(t)の時刻tでの微分と等しい D(t): 時刻tでの変位
等速運動でない運動:平均速度 D-tプロット(変位-時間プロット) 平均速度 v D(t) d1 d1 平均速度 = t1 t1 t [m] 平均速度 v D(t) d1 d1 平均速度 = t1 t1 t D(t): 時刻tでの変位 始点と終点を結んだ直線の 傾きに等しい
等速直線運動:変位(移動距離) 変位 一定速度 v0 = v0 (一定値) 移動時間 + − D v0 = D = v0•t (比例) t + − D v0 = D = v0•t (比例) -3 -2 -1 1 2 3 (m) t [m/s] 水平な線 t = t1の時 D = v0•t1 v0 v 移動距離(変位)Dは左のv-tプロットの t1 [s] t v0 v0•t1 の面積と等しい v-tプロット(速度-時間プロット) t1 移動距離Dを求めることは、D-tプロットの下の面積計算と等しい
等速運動でない運動 v-tプロット(速度-時間プロット) v(t) 変位(移動距離)は面積に等しい t 拡大 v(t)の積分と等しい [m/s] v(t) 変位(移動距離)は面積に等しい t [s] 拡大 v(t)の積分と等しい v(t): 時刻tでの速度(瞬間速度) (v(t)の時間積分)
等加速度直線運動 v-tプロット(速度-時間プロット) 直線(比例) v(t) 傾き = a(加速度) v(t)の微分に等しい t 速度変化 [m] 200 v(t) 傾き = a(加速度) v(t)の微分に等しい 20 [s] t 速度変化 200−0(m•s-1) 200(m•s-1) a(加速度) = = = 移動時間 20−0(s) 20(s) = 10 m•s-2 加速度は一般にaで表す。
等加速度直線運動 v-tプロット(速度-時間プロット) v(t)の微分に等しい 直線(比例) v(t)自身がD(t)の微分 v(t) [m/s] v(t)自身がD(t)の微分 200 v(t) 傾き = a(加速度) a(加速度)はD(t)の二次微分 20 [s] t 速度変化 200−0(m•s-1) 200(m•s-1) a(加速度) = = = 移動時間 20−0(s) 20(s) = 10 m•s-2 単位時間当たりの速度上昇率 加速度は一般にaで表す。
等加速度直線運動 v-tプロット(速度-時間プロット) 直線(比例) 左のv-tプロットのように時刻0秒の 初速度 v0 = 0 m•s-1の時 [ms-1] 200 v(t) 傾き = a(加速度) v(t) = at = 10(m•s-2)t(s) = 10t 20 [s] t [ms-1] 左のv-tプロットのように時刻0秒の 初速度 v0 = 50 m•s-1の時 直線(一次関数) 250 v(t) 傾き = a(加速度) v(t) = at + v0 = 10(m•s-2)t(s) + 50(m•s-1) = 10t + 50 50 20 [s] t
等速運動でない運動 v-tプロット(速度-時間プロット) v(t) 変位(移動距離)は面積に等しい t 拡大 v(t)の積分と等しい [m/s] v(t) 変位(移動距離)は面積に等しい t [s] 拡大 v(t)の積分と等しい v(t): 時刻tでの速度(瞬間速度) (v(t)の時間積分)
等加速度直線運動:変位 v-tプロット(速度-時間プロット) 変位D(t) (移動距離) v(t) の時間積分 v(t) の面積 t [m] 変位D(t) (移動距離) v(t) の時間積分 at v(t) t [s] の面積 t = D(t) = (1/2)×t×v(t) [m] a/2 v(t) = at を代入 D(t) D(t) = (1/2)×t×at = (1/2)at2 1 [s] D(t) は t の二次関数 t
等速運動でない運動:瞬間の速度 D-tプロット(変位-時間プロット) 接線 v(t)を時刻tでの速度(瞬間速度)とする D(t) d1 [m] v(t)を時刻tでの速度(瞬間速度)とする D(t) d1 d1 v(t) = = 接線の傾き t1 t1 t [s] 拡大 D(t)の時刻tでの微分と等しい D(t): 時刻tでの変位
等速運動でない運動:平均速度 D-tプロット(変位-時間プロット) 平均速度 v D(t) d1 d1 平均速度 = t1 t1 t [m] 平均速度 v D(t) d1 d1 平均速度 = t1 t1 t D(t): 時刻tでの変位 始点と終点を結んだ直線の 傾きに等しい
重力加速度 (経験則) 物体が落下すると、速度を増しながら落ちていく =この物体は加速度を有している この加速度を重力加速度という。 =この物体は加速度を有している この加速度を重力加速度という。 なぜだろう? 地球には重力があり、物体を引っ張り続けている。 引っ張る=力が働き続けている。
重力加速度 逆に重力がなくなったら、物体はどうなるだろう? 引っ張り(外力=加速の原因)がなくなることに相当。 物体は落下することもなく、その場に居続けると考え られる。ただし、地球の重力を切ることはできないの で、それを見ることはできないのだが、、、、、
重力加速度:速度&変位 (経験則) 物体が落下すると、速度を増しながら落ちていく =この物体は加速度を有している =この物体は加速度を有している この加速度を重力加速度 (g) という。 観測によれば、物体の落下速度は時間に比例する。 (厳密には一次関数の関係) v = gt (Eq. 1) 一定の割合で速度が変化する =等加速度運動 1 落下距離 D は速度の積分なので D = gt2 (Eq. 2) 2
重力加速度:変位(確かめ算) 速度→変位(移動距離)は積分(基本的に) 変位(移動距離) →速度は微分(常に正しい) 1 v = D’ = ( )’ = (1/2)g(t2)’ = (1/2)g(2t) = (1/2)•2gt gt2 2 = gt たしかにv = gt (Eq. 1) に戻った。 g = 9.8 m•s-2 (定数!!!!!!!) gが定数のため、v = gt (Eq. 1) は等加速度運動。
等加速度運動 重力による運動 (g: 重力加速度) 速度(v) vs 時間(t): v-t 関係式 v = gt (Eq. 1) 1 変位(D) vs 時間(t): D-t 関係式 D = gt2 (Eq. 2) 2 Eq. 1 は等加速度運動の v-t 関係式と同じ 一般の等加速度運動の加速度をaとすると等加速度運動では 速度(v) vs 時間(t): v-t 関係式 v = at (Eq. 3) 1 変位(D) vs 時間(t): D-t 関係式 D = at2 (Eq. 4) 2 註:教科書では加速度をbとしているがあまり見ない表記な ので、私の資料では加速度はaに統一します。
ベクトル ベクトルとは 「大きさ」と「方向」(2種類)をもつもの 矢印の向き = 「方向」 長さ = 「大きさ」
ベクトルの例 ベクトルとは 「大きさ」と「方向」(2種類)をもつもの 矢印の向き = 「方向」 長さ = 「大きさ」 「大きさ」と「方向」といわれて思い出すものは? 速度 加速度 変位 ベクトルの代表例
ベクトル:変位 変位 基準点 (出発点) 到達点2 到達点1 正の方向 長さ(大きさ) 10 m 10 m 負の変位 正の変位 -10 m
2章 力と運動
ニュートンの運動の3法則 運動の第一法則 外力を受けない時 外力の和が0を含む 運動の状態は変化しない 静止している物 静止状態のまま 動いている物 等速直線運動 (当初速度を維持して運動し続ける)
ニュートンの運動の3法則 運動の第二法則 F = ma ニュートンの運動方程式 F: 力(物体に作用する外力)(ベクトル量)
ニュートンの運動の3法則 運動の第三法則 作用反作用の法則 F1:物体Aが物体Bに及ぼす力 (作用) 物体A 物体B (作用) 物体A 物体B F2:物体Bが物体Aに及ぼす力 (反作用) F2 F1 |F1| = |F2| (力の大きさ(絶対値)が等しい) F1 と F2 の向きが反対
重力加速度:力(重力) 運動の第二法則 F = ma ニュートンの運動方程式 F: 力(物体に作用する外力)(ベクトル量) 重力 = 質量 × 重力加速度 F(N) = m(kg) × g(m•s-2)
力の合成 平行四辺形をかいて 合力 力のベクトルの起点から 対角線を書く F2 F1
力の合成 平行四辺形をかいて 合力 力のベクトルの起点から F2 対角線を書く F1 3つ以上の力の合力 1,2の合力 F12 2つの力の合力を求める F1 その合力とその他の力の 合力を求める F3 残りの力の数分この作業 を行う
力の合成 平行四辺形をかいて 合力 力のベクトルの起点から F2 対角線を書く F1 3つ以上の力の合力 1,2の合力 F12 2つの力の合力を求める F1 その合力とその他の力の 合力を求める F123 F3 1,2,3の合力 残りの力の数分この作業 を行う
力の分解 力を分解したい方向に直線を描く 力 元の力が対角線になるように直線 を描いて平行四辺形をつくる F2 平行四辺形の各辺のうち元の力 の起点を通る辺が分解された力の ベクトル 一般に、物体が移動する方向や、物体が置かれている面に対 して垂直な方向に力を分解することが多い。 (このように力を分解したほうが便利なことが多いため) 力を分解する方向は任意にとれるため、分解の方法は一つで はない
ベクトルの分解 x y ベクトル a を、x軸とy軸 に沿ったベクトルに分解 しなさい。 a
力の分解 ベクトルvを、a軸、b軸にそって分解しなさい。 b ベクトルv a
力の分解 ベクトルvを、a軸、b軸にそって分解しなさい。 力 F2 F1
ニュートンの運動の3法則 運動の第三法則 作用反作用の法則 F1:物体Aが物体Bに及ぼす力 (作用) 物体A 物体B (作用) 物体A 物体B F2:物体Bが物体Aに及ぼす力 (反作用) F2 F1 |F1| = |F2| (力の大きさ(絶対値)が等しい) F1 と F2 の向きが反対
垂直抗力・摩擦力 W : 質量mの物体に働く重力 N : 机が物体を押し返す垂直抗力 N W = mg W = −N (運動の第三法則より) f : 物体を押す外力 f F : 机と荷物の摩擦力 N F = μ|N| μ : (静止)摩擦係数 F 机 静止時 f = −F (運動の第三法則より) 物体が止まっている時、μ : 静止摩擦係数 物体が動いている時、μ’ : 動摩擦係数
斜面での垂直抗力・摩擦力 質量m(kg)の物体に働く力には、どのようなものがあるでしょうか? 全て図に書き入れてください。 θ
斜面での垂直抗力・摩擦力 W : 質量mの物体に働く重力 N : 斜面が物体を押し返す垂直抗力 F : 机と荷物の摩擦力 N F 物体が静止している場合、 運動の第三法則より Wsinθ θ Wcosθ N = −Wcosθ θ θ F = −Wsinθ W
宿題 分力:直角三角形の各角度の求め方 ? ? θ A 分力: 斜面に平行に下る方向の力 = mg•sinθ となる ことを証明しなさい。
伝達事項 分力:直角三角形の各角度の求め方 基本原理 ? θ2 ? θ θ3 θ1 θ1 θ1 θ4 θ1 = θ2 θ1 = θ3 θ1 = θ4 θ + 90 + θ5 = 180°より θ = 90 − θ5 Eq. 1 θ5 θ5 θ6 + 90 + θ5 = 180°より θ6 = 90 − θ5 Eq. 2 θ5 θ θ6? Eq. 1、Eq. 2より θ6 = θ
伝達事項 分力:直角三角形の各角度の求め方 基本原理 ? θ θ2 ? θ θ3 θ1 θ1 θ1 θ θ4 θ1 = θ2 θ1 = θ3 θ1 = θ4 θ + 90 + θ5 = 180°より θ = 90 − θ5 Eq. 1 θ5 θ6 + 90 + θ5 = 180°より θ6 = 90 − θ5 Eq. 2 θ6 θ θ θ6 Eq. 1、Eq. 2より θ6 = θ θ
伝達事項 分力: 斜面に平行に下る方向の力 = mg•sinθ の理由? m: 物体の質量 g: 重力加速度 F2 F3 F1 物体にかかる重力F1 = mg θ F3 θ θ F2: 斜面に平行に下る力 F3: 斜面を垂直に押す力 F1 sinθ = F2/F1 F2 F1 θ F2 = F1sinθ = mg•sinθ cosθ = F3/F1 F1 θ F3 = F1cosθ = mg•cosθ F3
3章 仕事とエネルギー
仕事(定義) 摩擦力に逆らって床の上の物体を力F (N)で距離d (m)移動するの に必要な仕事量W (J) は、以下のように定義される。 仕事 (J) = 力(N)×距離(m) = F(N)•d(m) = F×d(N•m) = Fd (J) 仕事 W = Fd (J)
仕事(定義) ゆっくりと床の上の質量 m kg の物体を距離 d m 持ち上げるのに必要な仕事量 W を求め る。重力加速度は g (m•s-2)とする。 h(m) 力(N) 仕事 (J) = 力(N)×距離(m) m(kg) ここで力(N)とは、重力に逆らって持ち上げる力 |重力に逆らって持ち上げる力(N)| = |(重力(N))| 重力F = −mg N 重力(N) = (質量(kg))×(重力加速度(m•s-2)) 仕事 (J) = 重力に逆らって持ち上げる力(N)×距離(m) = (質量(kg))×(重力加速度(m•s-2))×距離(m) W (J) = m(kg)g(m•s-2)h(m) = mgh (kg•m2•s-2) = mgh (J)
位置エネルギー(重力ポテンシャル エネルギー) 床の上の h(m)の位置にある m(kg)の物体が持 つ重力ポテンシャルエネルギー U(J)を求める。 重力加速度は g のままとする。 h(m) F = mg(N) 重力ポテンシャル エネルギーU(J) = (質量(kg))×(重力加速度(m•s-2))×高さ(m) U = m(kg)g(m•s-2)h(m) = mgh (kg•m2•s-2) = mgh (J) 組み立て単位が仕事と同じ 単位は「J」となる
位置エネルギー(重力ポテンシャル エネルギー) 床の上の h(m)の位置にある m(kg)の物体が持 つ位置エネルギー U(J)を求める。重力加速度 は g のままとする。 h(m) F = mg(N) U = m(kg)g(m•s-2)h(m) = mgh (kg•m2•s-2) = mgh (J) 位置エネルギー U J は、床の上の m kg の物 体を h m 持ち上げるのに必要な仕事量 W と 等しい。 h(m) W = m(kg)g(m•s-2)h(m) = mgh (J) U(J) = W(J) 即ち、物体は仕事量W (J)を受け取って、位置 エネルギーU (J)を得たと考えられる。 F = mg(N)
運動エネルギー 速度 v (m/s) で進む質量 m kg の球がある。この球がもつ 運動エネルギー K (J)を求める。重力加速度は g とする。 v(m•s-1) 運動エネルギーK (J) = (1/2)×(質量(kg))×(速度(m•s-1))2 K = (1/2)m(kg)v2 (m•s-1)2 = (1/2)mv2 (kg•m2•s-2) = (1/2)mv2 (J) K(J) = (1/2)mv2 (J)
重力ポテンシャル エネルギー ⇔ 運動エネルギー 速度 v (m/s) で進む質量 m kg の球がある。この球がもつ 運動エネルギー K (J)を求める。重力加速度は g とする。 K = (1/2)m(kg)v2 (m•s-1)2 = (1/2)mv2 (kg•m2•s-2) = (1/2)mv2 (J) v(m•s-1) K(J) = (1/2)mv2 (J) 床面から h(m) の高さにある物体の位置エ ネルギー U J は U = mgh(J)。 この物体を自由落下させると速度を増しな がら落下する (等加速度運動)。 h(m) 位置エネルギーが運動エネルギーに変換さ れた。 v(m•s-1)
力学的エネルギー保存則 UH = mgh(J) 床面から h(m) の高さにある物体の位置エ ネルギー U J は U = mgh(J)。 KH = 0 (J) この物体を自由落下させると速度を増しな がら落下する (等加速度運動)。 h(m) 位置エネルギー U が運動エネルギー K に 変換された。U と K は互いに交換可能 即ち、 UH = KL v(m•s-1) mgh(J) = (1/2)mv2(J) UL = 0 (J) KL = (1/2)mv2(J) 全エネルギー E は E = UH + KH = UL + KL = 一定 (力学的エネルギー保存則)
運動エネルギー ⇔ 仕事 K1 − K0 = W 外力を加えて初速度 v0 (m/s) を速度 v1 (m/s) に変化させた時 W(J) K1 − K0 = W K0 = (1/2)mv02 K1 = (1/2)mv12 速度変化 v0 → v1 (m/s) による運動エネルギー変化 K1 − K0 は 外力による仕事 W に等しい。 K1 > K0 の時 W > 0 (仕事Wにより運動エネルギー K ↑) K1 < K0 の時 W < 0 (始状態→終状態で K ↓) (運動エネルギーから仕事Wを取り出した)
加速度、力、仕事(エネルギー) 単位 m•s-2 N J 文字変数 a F W 変位 速度 加速度 力 仕事 (エネルギー) 加速度×質量 力×距離
加速度、力、仕事(エネルギー) ∫ F dx 力一定 の時 変位に 対する 積分 dx dv 加速度×質量 dt 力×距離 dt 変位 速度 仕事 (エネルギー) 単位 m m•s-1 m•s-2 N J (= N•m) 文字変数 x v a F W (E or U or K)
エネルギー:安定性についての考察 床面から h(m) の高さにある物体と床面 にある物体ではどちらが安定か? UH = mgh(J) 答: 床面にある物体のほうが安定。 理由: 床面にある物体のほうが壊れない。 h(m) 位置エネルギーを有している分だけ高エ ネルギー状態 (=仕事をするポテンシャル を有している)。 v(m•s-1) UL = 0 (J) 位置エネルギー: ポテンシャルエネルギーの一種 化合物でも、高エネルギー状態の化合物は不安定 (反応活性が高いため、化学反応を起こして別化合物になる = 元の化合物は徐々に消失する)
化学におけるエネルギー 化合物A 高エネルギー (反応活性が高い) 仕事ができる (= 化学反応を起こせる) 。 化学反応を起こして別化合物になる。 ΔE(J) = 元の化合物は徐々に消失する。 = 化合物として不安定 = 反応剤として適している。 化合物B 低エネルギー (反応活性が低い) 仕事ができない (= 化学反応を起こせない) 。 = 元の化合物のまま存在し続ける。 = 化合物として安定 = 薬剤化合物 (最終産物) として適している。
化学におけるエネルギー 化合物B 外からエネルギー (仕事W) を加えて、 高エネルギー化合物へと変換 |W(J)| 化合物A 化合物A + |W(J)| → 化合物B 化合物A → 化合物B − |W(J)| 化合物A 高エネルギー化合物から低エネルギー 化合物への変換でエネルギー (仕事W) が生成 |W(J)| エネルギー (仕事W):熱 (発熱)、光、高エ ネルギー化合物の生成 化合物B 化合物A → 化合物B + |W(J)| 化学反応で生じたエネルギー (仕事W) の多くは熱エネルギーへ。
エネルギーの可換性 エネルギー: (エネルギー保存則) 運動エネルギー モーター 100%変換 発電機 ポンプ 電気エネルギー 位置エネルギー 水力発電 太陽 電池 電灯 スピーカー マイク 光エネルギー 音のエネルギー 熱エネルギー (エネルギーの最終出口)
全エネルギー 全エネルギー = ポテンシャルエネルギー + 運動エネルギー これ以外のエネルギーがない よって、力学的エネルギーは保存される。 位置エネルギー(重力ポテンシャルエネルギー)は 数あるポテンシャルエネルギーの一つ 重力ポテンシャルエネルギー + 運動エネルギー 全エネルギー
ポテンシャルエネルギー 位置エネルギーは数あるポテンシャルエネルギーの一つ 位置エネルギー:重力場中のポテンシャルエネルギー m1•m2 重力(重力場に発生する力) F = G r2 m1: 物体1の質量, m2: 物体2の質量, r: 物体間距離, G: 重力定数 電場エネルギー(電位):電場中のポテンシャルエネルギー q1•q2 クーロン力(静電相互作用のもと) F = k r2 q1: 物体1の電荷, q2: 物体2の電荷, r: 物体間距離, k: 比例定数
重力と重力加速度 位置エネルギーは数あるポテンシャルエネルギーの一つ 位置エネルギー:重力場中のポテンシャルエネルギー m1•m2 重力(重力場に発生する力) F = G r2 m1: 物体1の質量(kg), m2: 物体2の質量(kg), r: 物体間距離(m), G: 重力定数(kg-1•m3•s-2) ここでm1に地球の質量M1、r に地球の半径Rを代入すると M1•m2 M1 F = G = (G ) m2 = gm2 = m2g (= mg) R2 R2 M1 即ち、重力加速度は g = (G ) R2
公式 g: 重力加速度; t: 時刻; 加速度: a; (自由落下)速度 v = gt (v = at) 1 1 (自由落下)距離 D = 2 2
√ 公式 速度 v = at (自由落下)速度 v = gt 距離 D = 2 1 at2 (自由落下)距離 D = 2 1 gt2 力 F = ma 万有引力 F = G m1•m2 r2 摩擦力 F = μN 重力 F = mg 復元力 F = −kx 回転運動 接線方向速度 v = rω 向心加速度 a = rω2 単振動振動数 fv = m k √ 2π 1 振動数(周波数) f = 1/T 仕事 W = Fd 運動エネルギー K = 2 1 mv2 位置エネルギー U = mgh v: 速度(m•s-1); g: 重力加速度(m•s-2); t: 時刻(s); D or d: 距離(m); a: 加速度(m•s-2); F: 力(N); m: 質量(kg); N: 垂直抗力(N); μ: 摩擦係 数(無次元); r: 半径(m); ω: 角速度(rad/s); T: 周期(s); f: 振動数(s-1 or Hz); x: 変位(m); k: バネ定数(N•m-1); W: 仕事(J); h: 高さ(m); G: 重力定数(kg•m3•s-2)
予習項目 地球の周りをまわっている人工衛星の周回運動を無理矢理止め たらその後人工衛星はどうなるか答えなさい。
4章 周期運動 回転運動
等速円運動 周期 T (s):1周まわるのにかかる時間(秒) 振動数(周波数) ν (Hz または s-1): 単位時間(1秒)あたりの回転数 θ 1 ν (Hz or s-1(回転/s)) = T 角速度 ω (度•s-1): 単位時間(1秒)あたりの回転角度(度(°)) 360 (度) 1周の角度 (度) ω (度•s-1) = = T (s) 1周まわるのにかかる時間(s) 時間 t (s) 後の回転角θ (度): 回転角θ (度) = ω(度•s-1) × t(s) = 角速度(度•s-1) × 時間(s)
等速回転運動:接線方向速度 12秒間で1周の角速度ωで物体が等速回転している。 y 円周上を進む速さ(m•s-1) 1周の長さ(m) = x 周期(s) r 2πr(m) = = 2πrν (m•s-1) T(s) 短時間では 接線方向の速さ(m•s-1) = 円周上を進む速さ(m•s-1) = 2πrν (m•s-1)
周波数と周期 1秒あたりの回転数(周波数): ν (Hz (s-1)) 1周するのにかかる時間(周期): T (s) 接線方向の速さ(m•s-1): 2πrν (m•s-1)
重力と重力加速度(訂正) 位置エネルギーは数あるポテンシャルエネルギーの一つ 位置エネルギー:重力場中のポテンシャルエネルギー m1•m2 重力(重力場に発生する力) F = G r2 m1: 物体1の質量(kg), m2: 物体2の質量(kg), r: 物体間距離(m), G: 重力定数(kg-1•m3•s-2) ここでm1に地球の質量M1、r に地球の半径Rを代入すると M1•m2 M1 F = G = (G ) m2 = gm2 = m2g (= mg) R2 R2 M1 即ち、重力加速度は g = (G ) R2
等速回転運動:y軸投影 (y座標) 12秒間で1周の角速度ωで物体が等速回転している。 y y r y = r•sinθ ぽいぞ ω 9 x 3 6 t / s r −r
等速回転運動:y軸投影 12秒間で1周の角速度ωで物体が等速回転している。 y y r y = r•sin(ωt) r ω θ 9 12 x x 3 6 t / s θ = ωt r•sinθ = r•sin(ωt) −r ω = 360(度)/12(s) = 30(度/s) y = r•sin{30t}
等速回転運動:x軸投影 (x座標) 角速度ωで物体が等速回転している。 r•cosθ = r•cos(ωt) y x r x = r•cos(ωt) r ω θ x t / s θ = ωt −r
等速回転運動:x, y座標 (x, y) = (r•cos(ωt), r•sin(ωt)) 角速度ωで物体が等速回転している。 y x = r•cos(ωt) y = r•sin(ωt) r ω θ (x, y) = (r•cos(ωt), r•sin(ωt)) x θ = ωt r•sinθ = r•sin(ωt) 半径 = √y2+x2 = √(r•sin(ωt))2 + (r•cos(ωt))2 = √r2 ((sin(ωt))2 + (cos(ωt))2) = √r2 = r
単振動 等速回転運動:x軸投影 12秒間で1周の角速度ωで物体が等速回転している。 y r ω θ x θ = ωt 真横(y軸方向) x θ = ωt 真横(y軸方向) から見ると 単振動 x
等速回転運動:向心力 アドバンスト 角速度ωで物体が等速回転している。 y 向心力を F とするとx軸方向の力 FX は FX = -−Fcos(ωt) (eq.1) Fcos(ωt) r x軸方向の変位xは F ω x = r•cos(ωt) (eq.2) θ x θ = ωt cos(ωt) = x/r (eq.3) eq.3をeq.1に代入すると FX = −Fcos(ωt) = −F(x/r) = − (F/r)x FX = −Cx (Cは定数: C = F/r) 単振動 この式から x軸方向の力は変位xに比例 x
4章 周期運動 単振動
単振動:バネの動き 重り 質量 m (kg) L Δl Δl 2Δl 3Δl Δl Δl W =mg W =2mg W =3mg バネの伸び x (m): 重りの数 (= 重りにかかる重力 W (N)) に比例
単振動:バネの動き 重り 質量 m (kg) L F Δl Δl 2Δl 3Δl Δl W Δl バネの伸び x (m): 重りの数 (= 重りにかかる重力 W (N)) に比例 作用反作用の法則: バネが重りを引っ張る力 (復元力) F (N)は重力 W (N)と向きが反対で同じ大きさの力 → F (N) = −W (N)
単振動:バネの動き 重り 質量 m (kg) L F Δl Δl 2Δl 3Δl Δl W Δl バネの伸び x (m): 重りにかかる重力 W = −F (復元力) に比例 F(N) = −kx = −k(N/m)•x(m) フックの法則 註:バネが重りを引っ張る力 (復元力) F (N)はバネののびる向きと反対
等速回転運動:向心力 アドバンスト 向心力を F とするとx軸方向の力 FX は y FX = −Cx (Cは定数: C = F/r) Fcos(ωt) r この式から x軸方向の力は変位xに比例 F ω θ 裏を返すと x θ = ωt 軸方向の力が変位xに比例、かつ、 移動方向と力が逆向きの時 FX = −Cx 単振動 x 軸上で単振動する!
バネによる重りの伸縮振動は単振動!!!になる 単振動:バネの動き 重り 質量 m (kg) L F Δl Δl 2Δl 3Δl Δl W Δl バネの伸び x (m) (= 変位) → −F (復元力) に比例 F(N) = −kx = −k(N/m)•x(m) ただし k (N/m) はバネ定数 フックの法則 バネによる重りの伸縮振動は単振動!!!になる
単振動:バネの動き Δl 上限 F0 平衡位置 W F F = 0 振幅: r 下限 x t = 0 t = Δt t = 2Δt 平衡位置 W F F = 0 振幅: r 下限 x t = 0 t = Δt t = 2Δt t = 3Δt t = 4Δt 重り [定義] 平行位置からのバネの伸び: x (m) (= 変位) 質量 m (kg) F(N) = −kx = −k(N/m)•x(m)
単振動:バネの動き t / s 出典: http://www.mars.dti.ne.jp/~stamio
単振動:バネの動き x = −r•cos(ωt) ω: 単振動と周期が同じ回転運動の角速度 x / m r 振幅: r t / s −r t / s −r 周期: T (s) t / s 振動数 ν(s-1) = 1/T(s) 周期 T(s) = 2π(=360°)(rad)/ω(rad/s) 出典: http://www.mars.dti.ne.jp/~stamio
公式 速度 v = at (自由落下)速度 v = gt 距離 D = 2 1 at2 (自由落下)距離 D = 2 1 gt2 力 F = ma 万有引力 F = G m1•m2 r2 摩擦力 F = μN 重力 F = mg 復元力 F = −kx 振動数(周波数) ν = 1/T 仕事 W = Fd 運動エネルギー K = 2 1 mv2 位置エネルギー U = mgh v: 速度(m•s-1); g: 重力加速度(m•s-2); t: 時刻(s); D or d: 距離(m); a: 加速度(m•s-2); F: 力(N); m: 質量(kg); N: 垂直抗力(N); μ: 摩擦係 数(無次元); r: 半径(m); ω: 角速度(rad/s); T: 周期(s); f: 振動数(s-1 or Hz); x: 変位(m); k: バネ定数(N•m-1); W: 仕事(J); h: 高さ(m); G: 重力定数(kg•m3•s-2)
連絡事項 これまでの講義資料を薬品分析学教室のHPに載せました。 講義資料ページ http://p.bunri-u.ac.jp/lab05/lecture/lecture_index.html もしくは 薬品分析学教室HP http://p.bunri-u.ac.jp/lab05/ 薬品分析学教室HP中の「講義関係」のリンクをクリック 修正版やアップデートしたファイルがアップされることもあります ので、時々チェクしてみて下さい。