メチレンブルーの大気圧パルス放電分解特性

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メチレンブルーの大気圧パルス放電分解特性 2007年 放電学会 年次大会 平成19年11月15日  芝浦工業大学(豊洲校舎) メチレンブルーの大気圧パルス放電分解特性 Decomposition characteristics of methylene blue in an aqueous solution using a pulsed-discharge plasma at atmospheric pressure 生 駒 晋*  宮 崎 泰 至  佐 藤 孝 紀  伊 藤 秀 範(室蘭工業大学) Shin Ikoma*, Yasushi Miyazaki, Kohki Satoh and Hidenori Itoh (Muroran Institute of Technology)

有機化合物の効果的な分解処理に期待ができる はじめに 背景 有機化合物(ベンゼン,トリクロロエチレン等)で汚染された水を促進酸化法で処理する方法が注目されている 促進酸化法 様々な方法により発生させたO3やOHラジカル等の酸化剤を用いて水溶液中の有害有機化合物を分解する ・パルス放電   ・紫外線照射   ・光触媒酸化   ・超臨界水酸化    パルス放電 高エネルギー電子によって化学的に活性な種が生成される(1) 水上でパルス放電を発生させることでO3に加えて,酸化ポテンシャルの高いOHやH2O2などが生成される(2) 高エネルギー電子による直接分解反応 紫外線や衝撃波が発生する(1) (2) 有機化合物の効果的な分解処理に期待ができる [1] M.A.Malik et al.:Plasma Sourse Sci. Technol. 10 (2006) 497.            [2] P.Lukes et al.:J. Phys. D: Appl. Phys. 38 (2005) 409.

本研究の目的と最近の報告 目的 パルス放電を用いて液中の有機化合物を分解し,その分解特性を調査する 目的  パルス放電を用いて液中の有機化合物を分解し,その分解特性を調査する 比色分析を行うため有機染料の1つであるメチレンブルーを分解対象とし,放電形態および放電中の生成物がメチレンブルー分解に与える影響を調査した メチレンブルー分解に関する最近の報告 Pawlat et al.[1]           水溶液中でのパルス放電におけるパルス繰り返し周波数およびガス流量がメチレンブルー分解に及ぼす影響を調査している Georgescu et al.[2]     溶液にO3をバブリングした状態でパルス放電によるメチレンブルーの分解を行い,O3が メチレンブルーの分解に効果的である 放電形態がメチレンブルー分解に及ぼす影響の調査 針数の変化がメチレンブルー分解に与える影響 バックグラウンドガスの組成がメチレンブルー分解に及ぼす影響の調査 N2:O2=100:0,80:20,20:80,0:100 Ar:O2=100:0,90:10,80:20,20:80,0:100 [1] J.Pawlat et al.:Acta Physica Slovaca 55 (2005) 479.                [2] N.Georgescu et al.:Proceedings of GD 2006 F05 (2006) 497.   

実験装置 Fujikura Ltd. 5D2V 17W sement resistor, Meggitt CGS 100pF/m 50m 5nF   MAX-ELECTRONICS Co, Ltd LS40-10R1  Vmax ±40kV Imax ±10mA needle-plate electrodes gap length dmm gap length 1mm pulse repetition frequency 20pps   Yokogawa Electric Corporation DL1620 1GS/s 1msec/div N2 :99. 99% O2 :99. 5% Ar :99. 99%

測定方法 Laser 比色分析 測定装置 detector レーザ 検量線 25ppm 10ppm 1ppm 濃度の違いによる溶液の色の濃淡を利用して分解を簡単に判断できる 測定装置 レーザ detector PMA Hamamatsu Photonics K.K. PMA-11 wavelength range:200~950nm 検量線 Laser

針数の変化がメチレンブルー分解に及ぼす影響 実験条件および実験内容 針数の変化がメチレンブルー分解に及ぼす影響 溶液量:70g メチレンブルー初期濃度:10ppm 充電電圧:+14kV 繰り返し周波数:20pps 放電照射時間:60min 濃度測定時間:0, 7, 15, 30, 45, 60min ギャップ長:4mm ガス圧:大気圧 ガスの組成:N2:O2=80:20 ガスの流量:6L/min 針数:1, 4, 42, 88本

針数の変化による放電形態の変化 1needle 4needles 42needles 88needles

針数の変化がメチレンブルー分解に及ぼす影響 針数が1本の場合を除いてO3濃度の増加とともに分解率が高くなる O3が分解に寄与している O2 + e → 2O + e O2 + O + M → O3 + M 分解率 88本 > 1本 > 針数1本の場合・・・ 42本 > 4本 液面付近の水分子からOHが生成され,分解に寄与する H2O + e → OH + H

針数の変化による放電形態の変化 O3 OH O3 OH 液面上に放電が広がることでOHが生成され,メチレンブルー分解に寄与する 1needle 88needles O3 O3 OH O3 OH O3 OH OH 針数1本および針数4本 液面上に放電が広がることでOHが生成され,メチレンブルー分解に寄与する 気相中の放電でO3が生成され,メチレンブルー分解に寄与する 針数88本および針数42本 気相中の放電でO3が生成され,メチレンブルー分解に寄与する 液面上に放電が広がることでOHが生成され,メチレンブルー分解に寄与する

バックグラウンドガスの組成がメチレンブルー分解に及ぼす影響 実験条件および実験内容 バックグラウンドガスの組成がメチレンブルー分解に及ぼす影響 溶液量:70g メチレンブルー初期濃度:10ppm 充電電圧:+14kV 繰り返し周波数:20pps 放電照射時間:60min 濃度測定時間:0, 3 , 7, 12, 15, 30, 45, 60min ギャップ長:4mm ガス圧:大気圧 ガスの組成:N2:O2=100:0,80:20,20:80,0:100 Ar:O2=100:0,90:10,80:20,20:80,0:100 ガスの流量:6L/min 針数:4本

> > N2-O2混合ガス中での分解 + 100% 72% 50% O3, Oによる分解 N2(A)からのOHの生成 最も分解率が悪い 放電照射15分後の分解率 N2-O2 mixture in pure O2 in pure N2 > > 100% 72% 50% O3, Oによる分解 N2(A)からのOHの生成 最も分解率が悪い + OHによる分解 in pure O2 O2 + e → 2O + e O2 + O + M → O3 + M H2O + e → OH + H

[1] P.Lukes et al.:J. Phys. D: Appl. Phys. 38 (2005) 409. N2-O2混合ガス中での分解 放電照射15分後の分解率 N2-O2 mixture in pure O2 in pure N2 > > 100% 72% 50% O3, Oによる分解 N2(A)からのOHの生成 最も分解率が悪い + + OHによる分解 in pure N2 N2(A) +H2O → OH + N2 +H[1] H2O + e → OH + H [1] P.Lukes et al.:J. Phys. D: Appl. Phys. 38 (2005) 409.

> > N2-O2混合ガス中での分解 + 100% 72% 50% O3, Oによる分解 N2(A)からのOHの生成 最も分解率が悪い 放電照射15分後の分解率 N2-O2 mixture in pure O2 in pure N2 > > 100% 72% 50% O3, Oによる分解 N2(A)からのOHの生成 最も分解率が悪い + OHによる分解 in N2-O2 mix N2(A) +H2O → OH + N2 +H O2 + e → 2O + e O2 + O + M → O3 + M H2O + e → OH + H

N2-O2混合ガス中での分解 in N2-O2 メチレンブルー分解率の低下 N + O3 → NO + O2 NO + O3 → NO2 + O2 O3を分解する反応 N + O → NO NO + O → NO2 O3の生成を妨げる反応 N2-O2混合ガスでは,N2単体,O2単体と比較して分解率が低くなった NOxが多く生成された NOxの生成にO3,O,N2が消費される 酸化剤がH2Oからの解離によって生成されるOHのみとなる メチレンブルー分解率の低下

Ar-O2混合ガス中での分解 O3以外の物質の分解への寄与=準安定励起状態のAr原子(43P2,43P0) NOxがO3の生成を抑制していた 作用エネルギー密度11[J/(ppm・g)] NOxがO3の生成を抑制していた O3濃度が減少しても分解率は,ほぼ一定である Ar=100%のときO3は最も低くなっているが分解率は上昇している O3以外の物質の分解への寄与=準安定励起状態のAr原子(43P2,43P0)

作用エネルギー密度10[J/(ppm・g)] Ar-O2混合ガス中での分解 Ar-O2混合ガス中で分解に寄与すると考えられるものは・・・・ Ar準安定励起原子,OH 電子衝突によるOHの生成量はガスの組成によらず一定であると考える H2O + e → OH + H 低酸素濃度時・・・ Ar*の分解への寄与が支配的である Ar準安定励起原子 Ar準安定励起原子(43P2,43P0)と水分子の反応によってOHが生成される    H2O + Ar* → OH + H + Ar 作用エネルギー密度10[J/(ppm・g)] Ar*がベンゼン環を分解する[1] [1]後藤ら:IEEJ Trans. FM, Vol.126, No.5, pp.321-327 (2006)

まとめ メチレンブルー水溶液上にパルス放電を発生させ,電極構成およびバックグラウンドガスの組成を変化させ,その分解特性を調査した 針数の変化による放電形態の違いがメチレンブルー分解に及ぼす影響 気相中に放電が広がることでO3が多く生成され,水面上に放電が這うことでOHが多く生成される 針数が多い場合には,OおよびO3が主に分解に寄与する。また,針数が少ない場合にはOHおよびH2O2が分解に主に寄与している バックグラウンドガスの組成がメチレンブルー分解に及ぼす影響 O2ガス中では,効率よくOおよびO3が生成されるため分解率が上昇する N2ガス中では,N2の準安定励起分子(N2(A3Σn+))がOHを生成し,メチレンブルーを分解する N2-O2混合ガス中ではNOxが生成されるため,O3の生成が妨げられ分解率の低下をまねく Arガス中の放電では,Arの準安定励起原子(43P2,43P0)がOHを生成し,これが分解を促進する Ar* + H2O → OH + H

パルス電圧・電流・電力波形 power negative 最大電流 : -70A 最大電圧 : -23kV パルス幅 : 500ns パルス電圧・電流・電力波形  power negative 最大電流 : -70A 最大電圧 : -23kV パルス幅 : 500ns 瞬間的な電力は最大で約 1.5 [MW]  1pulse当たりの注入エネルギーは約0.7 [J/pulse] (14J/s)  電極構成やバックグラウンドガスの種類によらず一定 

針数の変化がメチレンブルー分解に及ぼす影響 針数が1本の場合を除いてO3濃度の増加とともに分解率が高くなる O3が分解に寄与している O2 + e → 2O + e O2 + O + M → O3 + M 分解率 88本 > 1本 > 42本 > 4本 液面付近の水分子からOHが生成され,分解に寄与する H2O + e → OH + H 2OH → H2O2

針数の変化による放電形態の変化 OH H2O2 直後に界面のメチレンブルーを分解 1needle OH H2O2 放電が液面に広がることで,気相と液相の界面でOHおよびH2O2の生成が促進される H2O + e → OH + H 2OH → H2O2 界面付近でのOHおよびH2O2の生成 直後に界面のメチレンブルーを分解

実験条件および実験内容 ギャップ長の変化がメチレンブルー分解に及ぼす影響 溶液量:70g メチレンブルー初期濃度:10ppm 充電電圧:+14kV 繰り返し周波数:20pps 放電照射時間:60min 濃度測定時間:0, 7, 15, 30, 45, 60min ガスの組成:N2:O2=80:20 ガスの流量:6L/min 針数:4本 ギャップ長:1, 4, 7, 10mm

ギャップ長の変化が分解に及ぼす影響 1mm 4mm 7mm 10mm 93% 分解率は2通りの傾向を示した 87% d=1mmのときに分解率は6%程度上昇した 87% d=1mmのときは,ほかの条件と比較して水面上に大きくプラズマが広がった 液面での放電の広がりと分解率に関係性は見られるが,分解率の変化に顕著に現われてはいない

バックグラウンドガスのガス組成が分解に与える影響 in pure O2 H2O + e → OH + H   2OH → H2O2   O2 + e → 2O + e  O + O2 + M → O3 + M  N + O3 → NO + O2  NO + O3 → NO2 + O2 N + O → NO NO + O → NO2 BGガスをO2単体としたためO3およびOが効率よく生成される H2Oの解離により生成されたOHおよびH2O2 メチレンブルー分解にはO3,Oが関係する  

バックグラウンドガスのガス組成が分解に与える影響 in pure N2 H2O + e → OH + H   2OH → H2O2   O2 + e → 2O + e  O + O2 + M → O3 + M  N + O3 → NO + O2  NO + O3 → NO2 + O2 N + O → NO NO + O → NO2 BGガスにO2が存在しないためO3が生成されない   酸化剤としてOHおよびH2O2のみが存在する N2(A) + H2O → OH + N2 + H OH,H2O2,N2(A)がメチレンブルー分解に関係する  

バックグラウンドガスのガス組成が分解に与える影響 in N2-O2 H2O + e → OH + H   2OH → H2O2   O2 + e → 2O + e  O + O2 + M → O3 + M  N + O3 → NO + O2  NO + O3 → NO2 + O2 N + O → NO NO + O → NO2 N2-O2混合ガスでは,N2単体,O2単体と比較して分解率が低くなった NOxが多く生成された NOxの生成にO3,O,N2が消費される 酸化剤がH2Oからの解離によって生成されるOHおよびH2O2のみとなる メチレンブルー分解率の低下

バックグラウンドガスのガス組成が分解に及ぼす影響 作用エネルギー密度11[J/(ppm・g)] Ar-O2混合ガス中では,N2-O2混合ガス中よりも高い分解率が得られた O3濃度が減少しても分解率は,ほぼ一定である Ar=100%のときO3は最も低くなっているが分解率は上昇している O3以外の物質の分解への寄与?

バックグラウンドガスのガス組成が分解に及ぼす影響 O2の混合比を小さくしていっても分解率が上がっている オゾン濃度は,O2の混合比の減少とともに減少する O3以外の物質が分解に寄与していることが考えられる Ar準安定励起原子,OH,H2O2 電子衝突によるOHおよびH2O2の生成量はガスの組成によらず一定であると考える H2O + e → OH + H 2OH →H2O2 Ar準安定励起原子 Ar準安定励起原子(43P2,43P0)からのOHの生成,それに引き続きH2O2が生成される    H2O + Ar* → OH + H + Ar 2OH → H2O2 Ar(Ar*)がベンゼン環を分解する[1] 作用エネルギー密度10[J/(ppm・g)]