情報通信システム(2) http://www10. plala. or 情報通信システム(2) http://www10.plala.or.jp/katofmly/chiba-u/ 2019年4月23日 火曜日  午後4時10分~5時40分 NTT-TX Corp. 加藤 洋一.

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情報通信システム(2) http://www10. plala. or 情報通信システム(2) http://www10.plala.or.jp/katofmly/chiba-u/ 2019年4月23日 火曜日  午後4時10分~5時40分 NTT-TX Corp. 加藤 洋一

FFT(Fast Fourier Transform)の実際的応用 FFTは信号解析のための主要なツールのひとつです。信号解析手法の一端に触れ、考え方に慣れることが目標です。 例年は、3回分の講義ですが、既修者が多いようですので、要点のみお話しします。 資料にはなるべく丁寧に式の展開を記述しましたが、講義では適宜とばして説明します フーリエ級数 > フーリエ変換 > 標本化定理 > ディジタルフーリエ変換(DFT) > 高速フーリエ変換(FFT)の順に説明します まずはじめにちょっとしたFFTのデモを行います。

最初の段階として周期的信号を扱います 「周期的信号」とは同じ波形が繰り返される信号のこと 繰り返しの周期はT(本講義では単位は秒、1/Tは1秒当たりの振動数、つまり「周波数」となる) この区間と同じ形の信号が(無限の昔から)永遠に繰り返されている。 t 3T/2 5T/2 T/2 0 -T/2 T

フーリエ級数 Gcalcで「波」について確認 (Fourier1.gcd Phase and Amplitude, Frequency)

フーリエ級数 上式は、周期関数(周期的信号)がサイン波とコサイン波の足し合わせで表せることを示している。では、T/nの周期のサイン波の振幅 an、コサイン波の振幅 bn をどのように決めれば良いか求めてみよう。 その前に、三角関数の積分のおさらいを少々。。。

三角関数の積分(基本)

三角関数の積の積分(sinとcos) 周期がT/n(n>0)のSinとCosの掛けあわせの積分は、積分範囲が-T/2からT/2(つまり一周期)のときは0になる(0からT、Tから2Tでも同じ)

三角関数の積の積分(cosとcos) 周期がT/n(n>0)のCosとCosの掛けあわせの積分は、積分範囲が-T/2からT/2のとき、 n=mのときはT/2になる それ以外の時は0になる (積分範囲が0からT、Tから2Tでも同じ)

周期がT/n(n>0)のSinとSinの掛けあわせの積分は、積分範囲が-T/2からT/2のとき、 n=mのときはT/2になる それ以外の時は0になる (積分範囲が0からT、Tから2Tでも同じ) Gcalcで見てみよう (Fourier1.gcd: Integral)

フーリエ級数(anの導出)

フーリエ級数(anの導出)

フーリエ級数(bnの導出)

フーリエ級数(bnの導出)

フーリエ級数まとめ 数学的な厳密さには欠けるところもあります。詳しくは専門書をどうぞ。

周期1、振幅0.5の「のこぎり」波のフーリエ級数を求める。 フーリエ級数例題 周期1、振幅0.5の「のこぎり」波のフーリエ級数を求める。 のこぎり波を聞いてみよう。 ちょっといやな音だ。。。

フーリエ級数例題(のこぎり波)

フーリエ級数例題(のこぎり波) Gcalcで確認Fourie1.gcd Saw Shape

フーリエ級数例題(のこぎり波)

のこぎり波の級数を書き下すと。。。 n=8まで合算したところ A -A -T/2 T/2

具体的な例 440Hz (「ラ」の音です)ののこぎり波をフーリエ級数展開します。振幅を10,000とし、周期は、1/周波数ですので、約2.27msecとなります(WaveGeneで確認)。 -1.13 1.13 3.41 2.27 -3.41 -2.27 msec -10000 10000 時間 振幅 saw_fourie.pyというプログラムで、左記のようなサイン波を順に加えてwaveファイルを作ってみました。加えるサイン波、そのサイン波を加えた波、の順で録音されています。n=20まで加算し、その後、正確なのこぎり波を録音しました。 440Hzのサイン波成分の振幅 = 6366.19772368 880Hzのサイン波成分の振幅 = -3183.09886184 1320Hzのサイン波成分の振幅 = 2122.06590789 2640Hzのサイン波成分の振幅 = -1591.54943092 5280Hzのサイン波成分の振幅 = 1273.23954474 :

もうひとつ具体的な例:三角波 A -A 周期=T T/2 -T/2 振幅 時間 Gcalc: triangle

閑話休題:奇関数と偶関数 -1.13 1.13 3.41 2.27 -3.41 -2.27 msec -10000 10000 時間 振幅 奇関数[ f(x)=-f(-x)]であるのこぎり波はsinの項だけを含み、偶関数[ f(x)=f(-x)]である三角波はcosの項だけを含む。 これは、sinが奇関数であり、cosが偶関数であることに起因している。 A -A 周期=T T/2 -T/2 振幅 時間 周波数1,2,3,4のコサイン波 周波数1,2,3,4のサイン波

フーリエ級数まとめ 周期的に繰り返す信号は、その繰り返しの周波数(基本周波数)の整数倍のサイン波とコサイン波の全てに重みをかけたものの和に展開できる。 t T/2 3T/2 -T/2 0 -3T/2 T 1 基本周波数= 繰り返しの周期 1周期の平均値 重みb1と基本周波数サイン波をかける 重みa1と基本周波数コサイン波をかける 重みb2と基本周波数X2サイン波をかける 重みa2と基本周波数X2コサイン波をかける 重みb3と基本周波数X3サイン波をかける 重みa3と基本周波数X3コサイン波をかける : 全て加える :

フーリエ級数の複素表現(の準備、オイラーの公式)

テイラー展開

テイラー展開

テイラー展開 Gcalcで確認してみよう fourier1.gcd: Tayler アニメで表示

テイラー展開(オイラーの公式の証明)

複素指数関数の性質 Imaginary part (j) C Real part B A D

フーリエ級数の複素表現

フーリエ級数の複素表現 というシンプルな式で表せる (次のページの用意)

フーリエ級数の複素表現

フーリエ級数の複素表現

複素フーリエ級数の例題 幅kT、振幅1/kのステップ関数

複素フーリエ級数の例題 Gcalcで確認 fourier1.gcd: Step Shape これはどういう意味か?基本周期Tの1/nの波を全て同じ量だけ(つまり振幅が同じ)足し合わせると、周期Tのインパルスとなる。逆にいうと、インパルスは、全ての周期の波を等しく含んでいる。

フーリエ変換 c0 cn c2 c1 cn+1 ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 周波数 f0 2f0 3f0 ・・・・・・・・・

フーリエ変換 c0 cn c2 c1 cn+1 ・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・ 周波数 f0 2f0 3f0 ・・・・・・・・・

T0を無限大にするということは… t 3T/2 5T/2 T/2 0 -T/2 T フーリエ変換では信号は周期的である必要はない

フーリエ逆変換

フーリエ変換対 フーリエ変換 信号の強度(振幅) 周波数成分の大きさ(複素数) フーリエ逆変換 f(t) F(f) t f 時間 周波数

フーリエ級数 フーリエ変換 フーリエ級数とフーリエ変換の違い 対象は周期関数(信号) T→∞としたので、対象は周期関数に限らない 変換結果(フーリエ係数)Cnは離散的( Cnは数列であり、連続量ではない) 変換結果は連続で、周波数の関数となる。 さて、フーリエ級数も、フーリエ変換もこのままでは、実際の役には立たない(これは極論です。理論的な解析には役に立ちます)。というのは、実際に観測する信号 f(t)は初等関数で表されるようなものではないので、積分が簡単には計算ではできないからです(「アナログコンピューター」というのもあることはありますが。。。)。 「使える」形のフーリエ変換は、ディジタル計算が行える「離散フーリエ変換」です。離散フーリエ変換にたどり着くまで、もう少しの辛抱、です。

補足:マイナスの周波数? 三角関数では、どちらも同じに見える。 指数関数では、マイナスの周波数は回転が逆 t t -1Hz 1Hz

フーリエ変換の例題(1) f(t) ステップ関数:時刻-0.5から0.5までの間だけ値が1、その他の期間は値が0 t F(f) f 1 0.75 0.5 0.25 f -10 -5 5 10 時間的には、有限時間(-0.5 =< t =< 0.5)にしか存在しない(0ではない)f(t)が、無限に続く無数の周波数の波から成り立っている、ということになる。 フーリエ級数のときの結果と比較 fourier1.gcd: Step Shape

フーリエ変換の例題(2) F(f) 周波数が0.5より上では値が0、ということは、「帯域制限」されている、ということである。 f f(t) 1.5 1.25 1 0.75 0.5 周波数が0.5より上では値が0、ということは、「帯域制限」されている、ということである。 0.25 f -1 -0.5 0.5 1 f(t) t 周波数帯域は制限されているが、信号は無限の時間存在する (「信号が無限の時間存在する」。。なんだか「無理」がありそうな感じですね。。。)

フーリエ級数やフーリエ変換は、信号の時間領域での表現を、周波数領域での表現に変える変換 時間領域と周波数領域 信号の時間領域での表現 信号の周波数領域での表現 t f(t) 信号強度 周波数成分の大きさ F(f) 1 0.75 0.5 時間 周波数 0.25 f -10 -5 5 10 フーリエ級数やフーリエ変換は、信号の時間領域での表現を、周波数領域での表現に変える変換 両者は同じ現象を異なる視点で見ているだけ(逆変換可能な変換である) 信号強度と周波数成分の大きさは複素数

人間の耳は「位相」を聞き分けることができるか? ちょっと息抜き 人間の耳は「位相」を聞き分けることができるか? 近接した2つの周波数のサイン波を同時に鳴らすと? WaveGenを使って実験します。

標本点の間の値は保存しなくても大丈夫なのだろうか?上記の例では、標本点を「滑らかに」つないでいけば元の波形になるように見える。 標本化定理 標本化間隔 アナログ信号 ディジタル信号 標本化 時間 時間 標本点の間の値は保存しなくても大丈夫なのだろうか?上記の例では、標本点を「滑らかに」つないでいけば元の波形になるように見える。 時間 時間 しかし、上記の例ではうまくいきそうにない。

標本化定理(サンプリング定理)の導出 周波数 -W W 周波数制限された信号を考える。つまり、-W<f<W以外の区間では、 F(f)は0。本来はF(f)は複素数だが、上図は便宜上実数のように書いてある。 さらに、便宜的に、 F(f)は、周期2Wで繰り返すとする(下記)。 便宜的に繰り返した部分 便宜的に繰り返した部分 -3W -W W 3W この関数をフーリエ級数で展開する(普通、フーリエ級数は、時間領域の信号を対象にする。周波数領域の関数であるF(f)をさらにフーリエ級数で展開する、というのはちょっと奇妙な感じだが、もちろん、数学的には問題ない)。

標本化定理(サンプリング定理)

標本化定理(サンプリング定理) 不要

標本化定理(サンプリング定理) 最大の周波数成分が WHz に制限されている信号 fw(t) を時間間隔 1/2W でサンプルした場合、そのサンプル系列(つまりディジタル信号)から元の 連続信号 fw(t) を完全に再現できる。 例:人間が聞くことができる音の周波数は、20Hzから20KHzといわれている。音楽CDでは、44.1KHzで音楽をサンプルし、ディジタルデータとして保存している。即ち、2W=44.1KHzなので、W=22.05KHzとなる。理論的には、音楽CDは22.05KHzまでの周波数を含む信号を完全に再生できる(もちろん実際には理論どおりにはいかないので、大体20KHz程度までの音を再生できるようである)。 ところで、 1/44.1KHz=22.676マイクロ秒。即ち、音楽CDは連続信号である音楽を22.676マイクロ秒ごとにサンプルし、そのサンプル値のみを保存している。

標本化定理(完全再現の方法)

標本化定理(完全再現の方法) Gcalcで確認 標本化定理が成立するには、元の信号が周波数Wに制限されている必要がある。この条件は、一般的な音声信号、音楽信号、映像信号では普通に達成できる。たとえば、音楽の場合、人間の耳に聞こえる周波数の最大値は決まっているなど。 標本化定理は、アナログ信号とディジタル信号の関係を規定する最も重要な法則である。 サンプリング定理,ナイキストの定理,とも呼ばれています

標本化定理(完全再現の確認) 信号のグラフと、サンプル値から再生された信号のグラフは、両端を除き、よく一致している。両端のさらに外側では信号値は0と考えられるが、そこで、「急に」値が変化するため、W以上の周波数成分が存在する。このため、両端ではうまく再生できないこととなる。 (Sampling.demをgnuplotで表示)

標本化定理(完全再現ができない場合) W=100Hzにもかかわらず、上記信号は120Hzの成分を含んでいる。この場合は、再生信号とオリジナル信号との誤差が大きくなることがわかる。