新学習指導要領に対応した 子どもの学びを高める授業づくり 新学習指導要領に対応した 子どもの学びを高める授業づくり 小学校算数 新しい学習指導要領は、2020年度から完全実施になります。 これまでの学習指導要領とどこが変わり、 どんな授業をしていくことが求められているのでしょうか。
1 新学習指導要領について 新学習指導要領は、 予測困難な時代を生きる子供たちに、 1 新学習指導要領について 新学習指導要領は、 予測困難な時代を生きる子供たちに、 「解き方があらかじめ定まった問題を効率よく解く」だけでなく、 「出会ったことのないさまざまな場面や変化に柔軟に対応できる力」を つけることを求めている。 また、PISA2015やTIMSS2015、全国学力・学習状況調査における 小学校での「基準量、比較量、割合の関係を正しく捉えること」や 「事柄が成り立つことを図形の性質に関連付けること」、 中学校での「学習意欲」や「数学的な表現を用いた理由の説明」の課題からも 改善を図っている。
中央教育審議会答申 別添資料4-1(平成28年12月) 算数・数学科において育成を目指す資質・能力の整理 中央教育審議会答申 別添資料4-1(平成28年12月) 【小学校】 知識・ 技能 ・数量や図形などについての基礎的・基本的な概念や性質などの理解 ・日常の事象を数理的に表現・処理する技能 ・数学的な問題解決に必要な知識 思考力・判断 力・表現力等 ・日常の事象を数理的に捉え、見通しをもち筋道を立てて考察する力 ・基礎的・基本的な数量や図形の性質や計算の仕方を見いだし、既習の 内容と結びつけ統合的に考えたり、そのことを基に発展的に考えたり する力 ・数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したり、目的に応 じて柔軟に表したりする力 学びに向かう力・ 人間性等 ・数量や図形についての感覚を豊かにするとともに、数学的に考えるこ とや数理的な処理のよさに気付き、算数の学習を進んで生活や学習に 活用しようとする態度 ・数学的に表現・処理したことを振り返り、批判的に検討しようとする 態度 ・問題解決などにおいて、よりよいものを求め続けようとし、抽象的に 表現されたことを具体的に表現しようとしたり、表現されたことをよ り一般的に表現しようとするなど、多面的に考えようとする態度 中央教育審議会答申では、 小学校算数科で育成を目指す資質・能力を 「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の 3つの柱に沿って明確化し、このように整理している。
あわせて、幼児教育から高等学校までの学校段階ごとに、 育成を目指す資質・能力が整理された。 これらを踏まえ、学習指導要領における算数科の目標が次のスライドである。
数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通し て,数学的に考える資質・能力を次のとおり育成す ることを目指す。 数学科の目標 数学的な見方・考え方を働かせ,数学的活動を通し て,数学的に考える資質・能力を次のとおり育成す ることを目指す。 数量や図形などについての基礎的な概念や原理・法則など を理解するとともに,事象を数学化したり,数学的に解釈し たり,数学的に表現・処理したりする技能を身に付けるよう にする。 数学を活用して事象を論理的に考察する力,数量や図形な どの性質を見いだし統合的・発展的に考察する力,数学的な 表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表現する力を養う。 今回の改定で、全教科(道徳科を除く)において、 「見方・考え方」を働かせることが、深い学びの鍵として重要になっている。 各教科の「見方・考え方」は、 “各教科等の学習の中で働き、鍛えられていくものであり、各教科等の特質に応じた物事を捉える視点や考え方“である。 数学的活動の楽しさや数学のよさを実感して粘り強く考 え,数学を生活や学習に生かそうとする態度,問題解決の 過程を振り返って評価・改善しようとする態度を養う。
算数・数学ワーキンググループにおける 審議の取りまとめ(平成28年8月26日)より 「数学的な見方・考え方」は、これまで観点の中等でも用いられてきたが、 今回の改訂における「数学的な見方・考え方」は、 「事象を数量や図形及びそれらの関係などに着目して捉え、論理的、統合的・発展的に考えること」と整理された。 算数・数学ワーキンググループにおける 審議の取りまとめ(平成28年8月26日)より
算数・数学ワーキンググループにおける 審議の取りまとめ(平成28年8月26日)より 「数学的な見方・考え方」を働かせながら、 知識及び技能を習得したり、習得した知識及び技能を活用して探究したりすることで、生きて働く知識となり、 ・技能の習熟・熟達 ・より広い領域や複雑な事象をもとに思考・判断・表現できる力 ・自らの学びを振り返って次の学びに向かおうとする力 などが育成され、 さらに「数学的な見方・考え方」が豊かで確かなものとなるとされている。 算数・数学ワーキンググループにおける 審議の取りまとめ(平成28年8月26日)より
資質・能力を育成していくためには、学習過程の果たす役割が極めて重要である。 今回の改訂では、数学的に考える資質・能力を育成する観点から、 主として日常生活や社会の事象に関わる過程〔現実の世界〕と数学の事象に関わる過程〔数学の世界〕の2つの問題発見・解決の過程を重視している。 〔左(青):現実の世界〕 日常生活の事象を数理的に捉え、数学的に表現・処理し、問題を解決したり、解決の過程や結果を振り返って考えたりすること。 〔右(赤):数学の世界〕 算数の学習から問題を見いだし解決したり、解決の過程や結果を振り返って統合的・発展的に考えたりすること。 ※発展的に考察・・・ものごとを固定的なもの、確定的なものと考えず、絶えず考察の範囲を広げていくことで新しい知識や理解を得ようとすること。 ※統合的に考察・・・異なる複数の事柄をある観点から捉え、それらに共通点を見いだして1つのものとして捉え直すこと。 これらの問題解決の過程の2つのサイクルが相互に関わり合って展開する。
また、問題発見・解決の過程に、育成すべき資質・能力を組み合わせたものが、 このスライドのような形となる。
資質・能力の育成のために重視すべき算数・数学の評価の在り方について(案) 算数・数学ワーキンググループ(平成28年5月13日) 問題発見・解決の過程と評価の場面を、 算数・数学ワーキンググループが示したものである。 資質・能力を育成するために、緑の枠内にあるような 「疑問や問いの気づき」「問題の設定」 「問題の理解、解決の計画」 「計画の実行」「解決したことの検討」 「解決過程や結果の振り返り」「新たな疑問や問いの気づき」が重要である。 例えば、 児童が自らが疑問や問いをもち、計画を立てて解決を試み、解決したことを検討し、 新たな疑問や問いをもつような学習が求められている。
2 算数・数学科の 授業づくりのポイント 新学習指導要領を踏まえ、子供の学びを高めるために、 2 算数・数学科の 授業づくりのポイント 新学習指導要領を踏まえ、子供の学びを高めるために、 今後、日々の授業をどのようにつくっていけばいいのか、ポイントを説明する。
資質・能力を育成できたかを適切に評価するための手立てを準備する。 授業づくりのステップ 1 育成すべき資質・能力を明確にする。 ・「何ができるようになるか」を意識した指導が求められ、活動を行うねらいやゴールイメージを明確にする。 ・「何ができるようになったか」を適切に把握するための評価の在り方が重要になる。(ねらいとまとめの整合性) 2 資質・能力を育成できたかを適切に評価するための手立てを準備する。 3 ・子供たちが能動的に学びに向かうような課題設定が重要になる。解決に向けた多様な見方や考え方が生まれるような課題、他者との学び合いによって解決できそうな課題を設定する。 多様な考えを引き出し、解決したいという意欲を高めるような課題を設定する。 4 学習する児童生徒の具体的な学びの姿を考え、多様な意見を認め、お互いに共有しながら解決に導くような場を設定する。 ・子供たちが主体となり、多様な表現を通じて対話し、それによって思考を広げ深めていくような授業への質的転換を図る。適切な学習形態を取り入れ、学び合いを活性化させる。 子供の学びを高める授業づくりのステップについて、 1~5の順番で授業づくりを行うことを説明する。 ※ 1と2を1つにして、大きく4段階となる。 1、2…本時の目標を設定し、そのゴールイメージを明確にする。 ねらいとまとめを設定し、整合性を図る。 3…子供たちが主体的(能動的)に学びに向かうような学習課題を設定する。 4…学習課題を解決するための手立てを設定する。 5…振り返りの場面の仕方を設定する。 実際の授業づくりでは、 この1~5が、途中で行ったり来たりして、修正を図りながら作られることになる。 5 ・一時間の授業だけでなく、単元を通じたまとまりの中で、子供たち自身が自らの学びを振り返って次の学びに向かうことができるような場面を適切に設定する。 学びの過程やその成果を振り返らせ、次の学びにつなげる手立てを工夫す る。
( ) 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 1 育成すべき資質・能力を明確に する。 1 育成すべき資質・能力を明確に する。 2 資質・能力を育成できたかを適 切に評価するための手立てを準備 3 多様な考えを引き出し、解決し たいという意欲を高めるような課 題を設定する。 4 学習する児童生徒の具体的な学 びの姿を考え、多様な意見を認め、 お互いに共有しながら解決に導く ような場を設定する。 5 学びの過程やその成果を振り返 らせ、次の学びにつなげる手立て を工夫する。 個々の教師の授業に対する チェックポイント 1 子供一人一人の理解度を 1単位時間の授業の中で評 価し、定着や習熟を図る時 間が確保されているか? 4 教師の指示や発問は的確で、子供に 伝わっているか? 音量、話し方も ( ) 3 授業内容は子供の実態に マッチしているか? (平均をやや下回る子供も 理解できる内容か?) 2 指導内容が精選されてお り、テンポや間に配慮して 授業を進めているか? 1~5の順番で行う授業づくりのステップに、県が示している 「分かる!できるまで教えよう!!」の授業に対する4つのチェックポイントを当てはめる。 チェックポイント1、3、2、1の順となり、 4の「教師の指示や発問は的確で、子供に伝わっているか?(音量、話し方も)」は、全ての段階で関わる。 ※ 4つのチェックポイントの1つの見方として説明する。 1 子供一人一人の理解度を 1単位時間の授業の中で評 価し、定着や習熟を図る時 間が確保されているか?
正答率の低いB問題 〈がい数とその計算〉 2 みやざき小学校学習状況調査から 正答率 ①73.9% (答) ②66.7% みやざき小学校学習状況調査から 正答率の低いB問題 〈がい数とその計算〉 2 これらのステップに沿った授業づくりを提案する。 この問題は、平成29年度みやざき小中学校学習状況調査5年生のB問題である。 (1)は、四捨五入をして、千の位までのおよその数にして計算することができるかどうかをみる問題である。 (答) ①2000+2000+2000+3000 ②9000 正答率 ①73.9% ②66.7% 無解答率 ① 6.3% ② 7.7%
2 正答率 無解答率 40.6% 10.2% みやざき小学校学習状況調査から (答) イ みやざき小学校学習状況調査から 2 (2)は、切り上げた場合の見積もりの結果を基に、目標に達しているかについて 判断できるかどうかをみる問題である。 正答率 無解答率 40.6% 10.2% (答) イ
2 正答率 無解答率 23.6% 22.4% みやざき小学校学習状況調査から (答)実際の数より小さい数にして和が みやざき小学校学習状況調査から 金曜日から来週月曜日までの間の募金の目標金がくは10000円です。 日曜日までの3日間で集まった金がくは、次の表のとおりです。 目標を達成するには、来週月曜日におよそいくらお金が集まればよいか、次のように考えました。 3日間で集まった金がくの合計を、次のように計算します。 目標の10000円に達するには、来週月曜日に3000円集まればよいはずです。 実際の数で計算しなくても、来週月曜日に3000円集まればよいことがわかるのはなぜですか。そのわけを、言葉と数を使ってかきましょう。 2 (3) (答)実際の数より小さい数にして和が 7000だから、集めた金がくの合計が 7000円以上であることはわかります。 だから、実際に足りない金がくは、 3000円以下です。つまり、月曜日に 3000円集めれば目標の10000円に達 するからです。 (3)は、概数を用いた見積もりの結果とそれに基づく判断を理解し、 3000円集めればよい理由を、言葉と数を用いて記述できるかどうかをみる問題である。 正答率 無解答率 23.6% 22.4%
・ 「切り上げ」、「切り捨て」、「四捨五入」の それぞれの方法で見積もった結果が、実際の数の 和とどのような関係になっているか、正しく捉え みやざき小学校学習状況調査から 正答率の低いB問題の分析 ・ 「切り上げ」、「切り捨て」、「四捨五入」の それぞれの方法で見積もった結果が、実際の数の 和とどのような関係になっているか、正しく捉え られていない。 ・ 見積もり方の知識・技能はあっても、目的に応 じた見積もり方の選択や、見積もり方を基に見積 もりの結果を判断することに課題が見られる。 ・ (3)の誤答について、「7000円集まっている から、3000円集めれば10000円になる」が考え られる。判断に必要な根拠を過不足なく記述する 力が十分でないのではないか。 正答率が低かった理由について分析すると、これらの課題が見えてきた。
〇 どの方法で概数にすればよいか、根拠を もって判断し、説明することができる。 (数学的な考え方) 本時の目標 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 1 育成すべき資質・能力を明確に する。 1 子供一人一人の理解度を1単位時 間の授業の中で評価し、定着や習熟 を図る時間が確保されているか? 本時の目標 〇 どの方法で概数にすればよいか、根拠を もって判断し、説明することができる。 (数学的な考え方) 「ステップ1 育成すべき資質・能力を明確にする。」については、 本問題は、「日常生活の場面で、見積もりの目的を明確にして、 どのような概数を用いることが適当かを考えたり、見積もりの結果を根拠にすると どのようなことが言えるのかを解釈・判断したりできるようにする」ことをねらっている。 そこで、本時の目標を、”数学的な考え方”を観点(現行の観点)として、 「どの方法で概数にすればよいか、根拠をもって判断し、説明することができる」と設定する。
〇 見積もりの結果と実際の数の和を、数直線で 表して、その大小関係から判断する。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 2 資質・能力を育成できたかを適 切に評価するための手立てを準備 する。 1 子供一人一人の理解度を1単位時 間の授業の中で評価し、定着や習熟 を図る時間が確保されているか? まとめ 〇 見積もりの結果と実際の数の和を、数直線で 表して、その大小関係から判断する。 実際の数の和は、切り上げて計算した結果より必ず小さくなるよ。 実際の数の和は、切り捨てて計算した結果より必ず大きくなるね。 「ステップ2 資質・能力を育成できたかを適切に評価するための手立てを準備する。」については、 まとめとして、 「見積もりの結果と実際の数の和を数直線で表して、その大小関係から判断する。」と設定し、切り上げたときと切り捨てたときの実際の数の和との関係を 児童のことばでまとめさせたい。
疑問や問いの気づき/問題の設定 2 父・・・2324円 母・・・2823円 私・・・1749円 弟・・・1988円 実際の値段 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 3 多様な考えを引き出し、解決し たいという意欲を高めるような課 題を設定する。 3 授業内容は子供の実態にマッチし ているか?(平均をやや下回る子供 も理解できる内容か?) 疑問や問いの気づき/問題の設定 2 実際の値段 「ステップ3 多様な考えを引き出し、解決したいという意欲を高めるような課題を設定する。」では、 前述の算数・数学ワーキンググループによる「問題発見・解決の過程」に則った学習過程を構成する。 (今後、「問題発見・解決の過程」を「学習過程」と記す) ※ 授業をつくる際、児童の経験則等も含めた反応を予想して組み立てることも必要であるため、スライドでは、予想される児童の反応も合わせて記載した。 「疑問や問いの気づき/問題設定」段階でのポイントは、以下の通り。 〔現実の世界〕の数学化では、日常生活や社会の事象の中で児童の興味・関心・意欲を高め、調べてみたくなる問題の設定。 〔数学の世界〕の数学化では、既習の知識が何であるかをポイントにして設定。 みやざき学力調査では、募金を集める問題であったが、 児童にとってさらに日常に感じる内容となるように、問題文章を変えるのもよい。 愛さんの家族 ・ 父 ・ 母 ・ 私(愛) ・ 弟 愛さんは、お母さんと 家族の洋服を買いに店に 行くことにしました。 予算は10000円です。 父・・・2324円 母・・・2823円 私・・・1749円 弟・・・1988円
疑問や問いの気づき/問題の設定 〇 見積もる前に、目的を明らかにする。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 3 多様な考えを引き出し、解決し たいという意欲を高めるような課 題を設定する。 3 授業内容は子供の実態にマッチし ているか?(平均をやや下回る子供 も理解できる内容か?) 疑問や問いの気づき/問題の設定 〇 見積もる前に、目的を明らかにする。 支払いのときに足りないと困るので、10000円で足りるか気になります。 愛さんと同じ場面だったら、みなさんは、どのようなことが気になりますか? ここでは、見積もりの目的を明らかにするために、買物の場面における児童の興味・関心や日常の経験を引き出すようにする。 児童は、買い物で「所持金で足りるか心配になった」等の経験があると考えられる。 今後、同じような場面で困らないように「学習したい」と思わせることを意識し、 児童の「なぜ?」「調べてみたい!」という動機を引き出す教師の発問が大切である。 また、児童の意欲や疑問をもとに、 「10000円で足りるかを確かめるにはどうしたらよいか」という問題の設定につなげる。 6000円以上買うと、抽選券がもらえるそうです。6000円以上か気になります。 実際の代金がいくらになるか気になります。
〇 数学を活用した問題解決に向けて、これまでの既 習事項等をもとに、構想・見通しを立てさせる。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 4 学習する児童生徒の具体的な学 びの姿を考え、多様な意見を認め、 お互いに共有しながら解決に導く ような場を設定する。 2 指導内容が精選されており、テン ポや間に配慮して授業を進めている か? 問題の理解、解決の計画 〇 数学を活用した問題解決に向けて、これまでの既 習事項等をもとに、構想・見通しを立てさせる。 問題の理解 買い物をしているときに、 正確に計算するのは、 ちょっと大変そうですね。 足りるかを調べるだけならば、この間学習した「見積もり」を 使えばいいんじゃないかな。 「ステップ4 学習する児童生徒の具体的な学びの姿を考え、多様な意見を認め、 お互いに共有しながら解決に導くような場を設定する」 1つは、学習過程の「問題の理解、解決の計画」段階にあたる。 これは、問題の読み取りと、見通しを立てる段階である。 これまでの既習事項や問題文をもとに、解決の計画(解決の見通し)を立てさせる。 まず、問題文から状況を把握させ、正確に計算することが難しそうであることを 認識させる。(問題の理解) 次に、どのような既習の内容が活用できそうかを話し合わせる。 この活動から、「見積もり」「概数」の言葉を児童から引き出したい。 正確に計算しなくても、 見積もりで確かめることができそうですね。 正確に計算しなくても、見積もれば、不足するかを確かめられる。
〇 数学を活用した問題解決に向けて、これまでの既 習事項等をもとに、構想・見通しを立てさせる。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 4 学習する児童生徒の具体的な学 びの姿を考え、多様な意見を認め、 お互いに共有しながら解決に導く ような場を設定する。 2 指導内容が精選されており、テン ポや間に配慮して授業を進めている か? 問題の理解、解決の計画 〇 数学を活用した問題解決に向けて、これまでの既 習事項等をもとに、構想・見通しを立てさせる。 解決の計画 がい数にして計算すればよさそうです。 でも、どんながい数にすればいいのだろう? では、代金が10000円で足りるかを考えます。どのように見積もればよいでしょうか。 学習指導要領で算数・数学科の教育内容の改善・充実について重視されている 言葉や数、式、図、表、グラフなどの数学的な表現を用いて、論理的に考察し表現する。 その過程を振り返って考えを深める学習活動を含む「解決の計画」を意識するとよい。 がい数にする方法は、 「四捨五入」「切り上げ」 「切り捨て」の3通りです。 どんな概数にすれば、 10000円で足りるかを確かめられるだろうか。
〇 概数で求めた合計金額を数直線上にかかせる。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 4 学習する児童生徒の具体的な学 びの姿を考え、多様な意見を認め、 お互いに共有しながら解決に導く ような場を設定する。 2 指導内容が精選されており、テン ポや間に配慮して授業を進めている か? 計画の実行、結果の検討 〇 実際に、3通りの概数にして計算させる。 〇 概数で求めた合計金額を数直線上にかかせる。 3通りの概数で計算する。 2324 → 2000 2823 → 3000 1749 → 2000 1988 → 2000 四捨五入 切り上げ 2324 → 3000 2823 → 3000 1749 → 2000 1988 → 2000 切り捨て 2324 → 2000 2823 → 2000 1749 → 1000 1988 → 1000 「ステップ4 学習する児童生徒の具体的な学びの姿を考え、多様な意見を認め、 お互いに共有しながら解決に導くような場を設定する」 2つ目は、「計画の実行、結果の検討」段階である。 「計画の実行」では、解決の計画で児童から出された 「3通りの概数にする方法を計算する活動」を教師が見守るとともに、 正しく3通りの概数を用いて判断できているかを見届けることも大切である。 概数で計算すると 2000+3000+2000+2000=9000(円) 概数で計算すると 3000+3000+2000+2000=10000(円) 概数で計算すると 2000+2000+1000+1000=6000(円)
概数で求めた合計金額(和)を数直線上に書き表す。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 4 学習する児童生徒の具体的な学 びの姿を考え、多様な意見を認め、 お互いに共有しながら解決に導く ような場を設定する。 2 指導内容が精選されており、テン ポや間に配慮して授業を進めている か? 計画の実行、結果の検討 概数で求めた合計金額(和)を数直線上に書き表す。 見積もり方とがい数の和について 2324+2823+1749+1988 5000 6000 7000 8000 9000 10000 11000 数直線であらわすと、3通りの方法で表した概数は、数値にずれが生じることが分かる。 実際の合計金額(和)と概数での和の数量の大小関係を、じっくりと検討させる時間を設定する。 切り捨て 四捨五入 切り上げ
実際の合計金額と比べると、どのようなことが言えるかを話し合う。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 4 学習する児童生徒の具体的な学 びの姿を考え、多様な意見を認め、 お互いに共有しながら解決に導く ような場を設定する。 2 指導内容が精選されており、テン ポや間に配慮して授業を進めている か? 計画の実行、結果の検討 実際の合計金額と比べると、どのようなことが言えるかを話し合う。 「結果の検討」段階では、 児童同士が対話をする場面を設定することにより、学習が深まる。 他の方法を考えさせたい場合や、 解決がうまく進まない児童への解決の糸口をつかませる手立てとなるからである。 また、どの方法が自分にとって分かりやすいかを判断する力も育成できる。 〇 一人一人に自分の考えをもたせる。 〇 場面に応じて、解決方法を選択できる判断力を培 わせる。
どの方法で概数にするのがよいか、まとめましょう。 実際の数の合計金額(和)は、 数直線のどこになりますか。 実際の数の合計金額(和)は 切り捨てて計算した結果の6000よりは必ず大きいし、 切り上げて計算した結果の10000よりは必ず小さくなると思います。 確かに今回は、四捨五入した結果9000に近いけれど、場合によっては9000をこえるときもあるよ。四捨五入が一番いいと言えるかな。 実際の数の和は 8884円だから、 四捨五入した結果が一番近いよ。 また、見積もりの結果と実際の数の合計金額(和)との大小関係を視覚的に 捉えさせる工夫も必要である。 切り上げた数で計算した場合、どの数も実際の数より大きい数で計算するため、 その和は、必ず実際の合計金額よりも大きな数になっていることを 児童の言葉でまとめさせたい。 10000円で足りるかを確かめるには、 どの方法で概数にするのがよいか、まとめましょう。
〇 目的に応じた見積もり方と、見積もりの結果を 振り返らせ、結果の解釈をさせる。 〇 見積もりの結果を基に判断させたり、説明させ 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 5 学びの過程やその成果を振り返 らせ、次の学びにつなげる手立て を工夫する。 1 子供一人一人の理解度を1単位時 間の授業の中で評価し、定着や習熟 を図る時間が確保されているか? 解決過程や結果の振り返り 〇 目的に応じた見積もり方と、見積もりの結果を 振り返らせ、結果の解釈をさせる。 〇 見積もりの結果を基に判断させたり、説明させ たりする活動で、数学的に洗練され、客観的で合 理的な説明に高め合う場とする。 「ステップ5 学びの過程やその成果を振り返らせ、 次の学びにつなげる手立てを工夫する」に関しては、 学習過程の「解決過程や結果の振り返り」と「新たな疑問や問いの気付き」にあたる。 「解決過程や結果の振り返り」段階では、 ここでは、3通りの方法で見積もった場合、実際の数の和と比べて どのような違いがあるかを、再度振り返り、自分の言葉で説明させるようにする。 ※ 切り上げた数で計算すると、実際よりいつでも大きくなる。 切り捨てた数で計算すると、実際よりいつでも小さくなる。 四捨五入では、実際の数に近いが、実際よりも大きいか、小さいかは場合によって違う。 四捨五入と切り上げの結果は一致する場合もあるが、四捨五入の結果が切り上げの結果より大きくなることはない。 等。 振り返りにより概念の形成等が促されます。児童が、次の課題に、本時の学習を活用できる力を付けることにもなります。
切り上げた数で計算すると実際の数よりも大きな数になることが分かりましたね。 数直線を見ながら、切り上げる方法以外に ついても考えをまとめてみましょう。 実際の数 四捨五入して計算すると、9000なので、合計金額はだいたい9000円になると分かります。 切り捨てて計算して6000なので、合計金額は6000より大きいと分かります。つまり、実際の合計金額は確実に6000円以上です。だから抽選券がもらえます。 日常の事象において、目的に応じてどのような見積もり方をしたらよいか判断できる ようにするためには、見積もった結果を正しく解釈できるようにする力が必要である。 3つの見積もりの結果と実際の数の和の大小関係について話合いを行い、 どんな場合に、どの見積もり方をするとよいかを検討させる場を設定することも 大切である。
新たな疑問や問いの気付き 〇 新たな疑問や問い(課題)を見出したり追究したり する場を設ける。 授業づくりのステップ 個々の教師の授業に対する チェックポイント 5 学びの過程やその成果を振り返 らせ、次の学びにつなげる手立て を工夫する。 1 子供一人一人の理解度を1単位時 間の授業の中で評価し、定着や習熟 を図る時間が確保されているか? 新たな疑問や問いの気付き 〇 新たな疑問や問い(課題)を見出したり追究したり する場を設ける。 ※ これらの活動を通して、学習内容の習熟を図れるように工夫すること も大切である。 見積もって計算したらよい場合は、どんな場面が考えられるだろうか。 最後に、「新たな疑問や問いの気付き」段階では、 学習を振り返って考察させたり、新たな問いを見出させたりする。 本時の学習である「見当付けの結果を基に判断したり説明したりする活動」を、 様々な学習内容の中で行う。 このような「問題発見・解決の過程」を取り入れた授業づくりに取り組んでいくことが大切である。
平成27年度 「全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた授業アイデア例」より ※このスライドは、平成27年度「全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた 授業アイデア例」の一部「見当付けの結果を基に、誤りを修正させる活動」である。 「見当を付ける」「計算や測定を行う」「結果を振り返って確かめる」の 一連の活動の参考になる。 平成27年度 「全国学力・学習状況調査の結果を踏まえた授業アイデア例」より
3 参考資料 各種学力調査の分析資料について紹介する。
みやざき学習状況調査分析 県教育研修センター →調査研究・結果 みやざき学習状況調査分析等が、 県教育研修センターのHPの調査研究・結果に掲載されている。
みやざき学習状況調査分析 県教育研修センター →調査研究・結果 →みやざき学習状況調査 みやざき学習状況調査の分析では、 設問ごとの県正答率と無解答率が掲載されている。
また、正答率が低かった問題についての分析や 指導のポイントをまとめたシートも掲載されている。
ありがとうございました。
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