すべての職員が知っておくべき 究極ミニマム 「医療安全基礎講座」 ( 60分バージョン) 佐野厚生総合病院 院長 奥澤星二郎
目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 Ⅴ これだけは伝えたい 5つの要点
目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 Ⅴ これだけは伝えたい 5つの要点
ミスのない医療は すべての人の望み 患者側、医療者側とも
医療安全管理者とは 病院全体の 安全管理業務の 中心となる職員 何かあったら遠慮なく 私に相談してください
みんなの連携が安全を支える 医師・看護師・薬剤師・技師・・・だけでなく、 看護補助者、ケアワーカー、委託業者 など みんなの連携が安全を支える 医師・看護師・薬剤師・技師・・・だけでなく、 看護補助者、ケアワーカー、委託業者 など 医療専門職でない方々を含めて 病院業務に関わる すべての人たちが 安全管理の基本を 理解し、協力する
目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 Ⅴ これだけは伝えたい 5つの要点
インシデントとアクシデントとは ●インシデント = ヒヤリ・ハット ●アクシデント = 医療事故 業務中に ひとつ間違えたら事故になりそうな ●インシデント = ヒヤリ・ハット 業務中に ひとつ間違えたら事故になりそうな 「ヒヤリ」としたり「ハッ」とした経験 ●アクシデント = 医療事故 医療施設(病院など)で発生する人身事故 医療行為と直接関係ないもの(転倒など)、 患者だけでなく、職員の被害も含む
医療事故 医療ミス ●医療ミス = 医療事故の一部 アクシデント(医療事故)のうち、 患者取り違え、誤診、誤薬投与など、 ●医療ミス = 医療事故の一部 アクシデント(医療事故)のうち、 患者取り違え、誤診、誤薬投与など、 医療従事者の過失によるもの(医療過誤) 医療事故 医療ミス
ヒヤリ・ハット報告件数の年間推移 増加 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 ヒヤリ・ハット報告件数の年間推移 増加 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 年報より
平成25年度ヒヤリ・ハット報告の内訳 全60.9万件 最も多い 多い 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 年報資料より
医療事故報告件数の年間推移 年々増加している! H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 医療事故報告件数の年間推移 年々増加している! H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 年報より
平成25年度 医療事故報告の内訳 全3,049件 多い 最も 多い 薬剤7.6%少ない (転倒・転落等) 平成25年度 医療事故報告の内訳 全3,049件 薬剤7.6%少ない 多い 最も 多い (転倒・転落等) 日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業 年報資料より
医療ミスを根絶できない理由 1 ヒューマンエラーは 人間の本質的欠陥 2 医療現場は ミスが起こりやすい環境
「人は誰でも間違える」 改善できない欠陥であり、 医療ミスの要因とされている 2000年 米国医療の質委員会・医学研究所で提言 2000年 米国医療の質委員会・医学研究所で提言 人は忘れやすく、過去から学べない 改善できない欠陥であり、 医療ミスの要因とされている
医療の世界でも 日常生活と同じように ヒューマンエラーが 茶飯事に起きている
ヒューマンエラーが いまだ改善されていない! 発生しやすい環境因子とは ・多忙 ・多重業務(同時に複数業務を兼任すること) ヒューマンエラーが 発生しやすい環境因子とは ・多忙 ・多重業務(同時に複数業務を兼任すること) ・職員・部署間の連携不足(セクショナリズム) ・5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)の不備 ・その他 現代の医療界が抱える課題 いまだ改善されていない!
医療ミスの特徴 1 単純な確認ミスが多い 2 同じようなミスを繰り返す 3 医療の複雑性 医療訴訟
1 単純な確認ミスが多い 医療ミスは高度なシステム不備によって 生じる特殊な事故と思われがちであるが そうではない。 痛ましい医療事故ほど、 1 単純な確認ミスが多い 医療ミスは高度なシステム不備によって 生じる特殊な事故と思われがちであるが そうではない。 痛ましい医療事故ほど、 日常生活で生じるような 「うっかりミス」が要因で あることが多い。
2 同じようなミスを繰り返す 最近1年間だけでも、 「確認ミス」が主因と思われる 重大な医療事件が後を絶たない!
「確認ミス」が主因となった最近の医療事件 1 「確認ミス」が主因となった最近の医療事件 1 1. 小児取り違え幹細胞移植ミス 2014年1月8日報道 国立○○研究センター 主治医の勘違い 初歩的で単純な確認ミス 2. 後期研修医 造影剤誤投与で患者死亡 2014年4月18日報道 国立○○研究センター 禁忌造影剤を脊髄注射 単純な確認ミス 3. 心電図のアラーム気付かず患者死亡 2014年4月23日報道 県立○○医療センター 夜勤看護師 ナースステーション不在 確認ミス 4. 乳がん誤診による不要な切除手術 2014年6月16日報道 ○○市民病院 病理検体を別患者のものと取り違え 確認ミス
「確認ミス」が主因となった最近の医療事件 2 「確認ミス」が主因となった最近の医療事件 2 5. 過剰のモルヒネ投与後、患者死亡 2014年11月18日報道 ○○市民病院 看護師が鎮痛剤とモルヒネを勘違い 確認ミス 6. カリウム製剤誤静注により患者死亡 2014年11月20日報道 ○○市立病院 看護師が混注すべき薬剤を静注 確認ミス 7. 筋弛緩剤誤投与により患者死亡 2014年12月31日報道 ○○医療センター 薬剤師が抗菌薬を似た名前の筋弛緩剤と取り違え 確認ミス 過去から学べず、 同じ過ちを繰り返している!
3 医療の複雑性 医療訴訟 医療は不確実で、不治の病も多い。 たとえ「医療ミス」はなくても、合併症などが 生じると、診療行為が結果的に患者に 3 医療の複雑性 医療訴訟 医療は不確実で、不治の病も多い。 たとえ「医療ミス」はなくても、合併症などが 生じると、診療行為が結果的に患者に 大きな障害を来すことがあるのが現状。 悪い結果は、患者側に医療者への不信感 をもたらし、時に 「医療ミス」 と誤解され、 医療訴訟へ発展することがある。
目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 Ⅴ これだけは伝えたい 5つの要点
Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 1 ハインリッヒの法則 2 スイスチーズ理論 3 環境システムの整備
1 ハインリッヒの法則 医療事故を含めて すべての労働災害における 重要な経験則
医療ミスの発生要因について ハインリッヒの法則から言えることは 日頃から 何度も 安全業務を怠り続けると そのうちの一件が事故になるのです
日頃から、一人ひとりが 決められた安全マニュアルを守り、 正しく作業することが、医療ミスを 防止する第一歩となります! ご協力をお願いします 医療ミスの発生要因について ハインリッヒの法則から言えることは 日頃から、一人ひとりが 決められた安全マニュアルを守り、 正しく作業することが、医療ミスを 防止する第一歩となります! ご協力をお願いします
2 スイスチーズ理論とは チーム医療による 事故防止の 基本的な概念です
スイスチーズには いくつも穴が開いています 「人は誰でも間違える」と言うように 個人のミスは どうやっても なくすことは できません
赤棒が看護師さんのチーズの穴を 通るようにヒューマンエラーは起きて しまうと言われています では どうしたら ミスを防止 できるので しょうか?
この医師は 別のスイスチーズを 持っています よくご覧ください! 前の人の チーズとは 穴の開き方が 違っています
1つ目のチーズの穴を通った 業務ミスは 位置の違う 2つ目のチーズの穴を 通らなければ そこで 防止される のです
さらに 穴の開き方の違う 3枚目のチーズがあれば ミスの穴は さらに 通りにくく なります。
もしも 赤棒のミスが 2枚のチーズの穴を 通っても 3枚目のチーズで 防止することが できるのです
個人のミスは 業務過程で 複数の職員が協力して防ぐことが基本です どんな業務も 1人で行ってはいけません 別の職員に確認してもらうことが大切です 実際 多くの業務マニュアルは スイスチーズ理論に従って ミスが起きにくいように 複数の職員が連携して 確認できるように 整備されています
ヒューマンエラーを できるだけ減らすことは 一人ひとりの職員が それぞれのチーズの穴を できるだけ小さくする ことです。 日頃から プロ意識を持って マニュアルを守り 安全業務を行うことが 大切です
3 環境システムの整備 ● 環境因子はヒューマンエラーの発生に 大きく影響する ● 忙しく煩雑な医療現場では ミスが起こりやすい 3 環境システムの整備 ● 環境因子はヒューマンエラーの発生に 大きく影響する ● 忙しく煩雑な医療現場では ミスが起こりやすい 環境システムの改善のためには 「間違えやすい」という人間特性を 考慮した安全体制の構築が要点
環境改善のポイント 5S活動 5つのS(エス)とは 1 整理 (せいり) 2 整頓 (せいとん) 3 清掃 (せいそう) 環境改善のポイント 5S活動 5つのS(エス)とは 1 整理 (せいり) 2 整頓 (せいとん) 3 清掃 (せいそう) 4 清潔 (せいけつ) 5 しつけ 分かりやすい表示や作業工程の少ない 手順など、間違えにくい環境作りに努める 「もの」 の5Sから 「業務」 の5Sへ もの・情報が 対象 ひとが対象
環境改善ポイントは 5S活動 5S後 5S前 ナースステーション 机の上
目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 Ⅴ これだけは伝えたい 5つの基本
医療安全は 「互いを思いやる心」から始まる ●他人を思いやる心配りを忘れない 医療の使命とは 「目の前の患者さんを救うこと」 ●他人を思いやる心配りを忘れない 患者・家族・同僚職員など、視野を広く、 自分の周りに困っている人がいないか、 いつも気を配る 医療の使命とは 「目の前の患者さんを救うこと」
目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 目 次 Ⅰ ミスのない医療の大切さ Ⅱ 医療ミスはなくならない Ⅲ 知ってほしい 防止対策の基本 Ⅳ 安全を支える医の心 Ⅴ これだけは伝えたい 5つの要点
これだけは伝えたい5つの要点 1 すべての医療は患者が本人であることの 確認から始まる 2 円滑なチーム医療が事故を未然に防ぐ 3 医療安全には思いやりのある接遇が 必須である 4 環境整備 5S活動の徹底・業務の5S 5 医療安全の前では全職員が平等である 当たり前の業務を当たり前にこなす
② もうひとつの確認法(生年月日、ID番号等) 1 すべての医療は患者が本人であることの 確認から始まる 患者取り違えミスは 重大な医療事件に発展しやすい! ●具体的な患者確認の基本は ① + ② ① 患者からフルネームで名乗ってもらう ② もうひとつの確認法(生年月日、ID番号等) 職員から患者への名前の呼びかけは 「患者誤認」 を生じやすく、適切な「確認作業」とは言えない。
一人ひとりが スイスチーズの 1枚として働き、 密接に連携して 事故を防止する 患者も含めた全員参加型の安全体制 2 円滑なチーム医療が事故を未然に防ぐ 業務に関わるすべての人が協力する体制作り 一人ひとりが スイスチーズの 1枚として働き、 密接に連携して 事故を防止する 患者も含めた全員参加型の安全体制
3 医療安全には思いやりのある接遇が 必須である 思いやりのハートを輝かせ、 自分の周りに困っている人がいないか、 いつも気を配る
4 環境整備 5S活動 5S活動の徹底 「きれいな職場にミスはなし」 「もの」 から 「業務」の5Sへ 例 薬剤部 調剤業務
5 医療安全の前では全職員が平等である 医療事故を防止するためには 職場のセクショナリズムをなくし 全職員が互いを思いやり 平等で謙虚な心構えを持つことが 大切である
ミスのない医療は すべての人の望み ご清聴ありがとうございました