卵巣腫瘍（１） 良性卵巣腫瘍と境界悪性腫瘍 女性生殖器コース講義 Ovarian tumor - Benign Ovarian tumors and Borderline malignant tumors -

行動目標 １．代表的な良性卵巣腫瘍が列挙できる２．良性卵巣腫瘍の治療法が説明できる３．ホルモン産生腫瘍の種類と特徴が列挙できる４．症例から卵巣腫瘍の診断ができる５．境界悪性腫瘍が列挙できる

卵巣 腹腔内臓器 拇指頭大 卵巣・卵管・腹膜に発生する腫瘍 ミューラー管由来腫瘍 直接的検査が困難 正常卵巣は触知されない

卵巣腫瘍の臨床的特徴 １．卵巣に腫瘍が発生する頻度は 5-7% （ 精巣の腫瘍発生頻度より高率 ） （ 精巣の腫瘍発生頻度より高率 ） ２．無症状であることが多く偶然に発見されること が多い ３．新生児頭大を越えると一般的に自覚症状出現 ４．自覚症状は下腹部不快感・軽度の下腹痛程度 Silent Organ

卵巣腫瘍と急性腹症 急性腹症：急激に発症する腹部激痛 １．卵巣腫瘍の茎捻転 ( torsion ) - 卵巣の支持組織 ？ - 卵巣と骨盤（骨盤側靭帯） - 卵巣と子宮（子宮側靭帯） ２．卵巣腫瘍の破裂 ( rupture ) - 特に油性内容（成熟嚢胞性奇形腫）

卵巣腫瘍の組織分類 発生起源による組織分類 １）表層上皮性間質腫瘍 Surface epithelial stromal tumors Surface epithelial stromal tumors ２）性索間質性腫瘍 Sex cord stromal tumors Sex cord stromal tumors ３）胚細胞性腫瘍 Germ cell tumors Germ cell tumors ４）その他 Others Others 最も多い 最も多い 若年者に多い ホルモン産生腫瘍が多い

卵巣腫瘍の悪性度分類 良性腫瘍 ( benign tumor ) 境界悪性腫瘍 ( borderline tumor ) ( tumor of low malignant potential ) 悪性腫瘍 ( Malignant tumor )

卵巣腫瘍の術前良悪性診断 １．画像診断 （ CT ・ MRI ・ B-scope ) ２．腫瘍マーカー 充実性腫瘍の 80% は悪性腫瘍 画像診断においては充実部分の証明が重要 画像診断においては充実部分の証明が重要 確定診断は摘出組織の病理診断

腫瘍マーカー 卵巣腫瘍 腫瘍マーカー 表層上皮性間質性 糖鎖抗原 コア蛋白関連 CA125 母核糖鎖関連 STN 基幹糖鎖関連 CA 19-9 性索間質性 性索間質性 胚細胞性 胚細胞性 estrogen, testosterone AFP, hCG, SCC AFP, hCG, SCC

卵巣腫瘍の悪性度分類 良性腫瘍 ( benign tumor ) 境界悪性腫瘍 ( borderline tumor ) ( tumor of low malignant potential ) 悪性腫瘍 ( Malignant tumor )

代表的な良性卵巣腫瘍 １．表層上皮性間質性腫瘍 漿液性嚢胞腺腫 serous adenoma 漿液性嚢胞腺腫 serous adenoma 粘液性嚢胞腺腫 mucinous adenoma 粘液性嚢胞腺腫 mucinous adenoma２．胚細胞性腫瘍 成熟嚢胞性奇形腫 mature cystic teratoma 成熟嚢胞性奇形腫 mature cystic teratoma３．類腫瘍病変 子宮内膜症性嚢胞 endometrial cyst 子宮内膜症性嚢胞 endometrial cyst

代表的な良性卵巣腫瘍 １．良性表層上皮性間質性腫瘍 漿液性嚢胞腺腫 serous adenoma 漿液性嚢胞腺腫 serous adenoma 粘液性嚢胞腺腫 mucinous adenoma 粘液性嚢胞腺腫 mucinous adenoma

漿液性腺腫と粘液性腺腫 漿液性腺腫 粘液性腺腫 漿液性腺腫 粘液性腺腫 単房性 多房性 T1 : low T2 : high T1 : high – low T2 : high hetero CA 125 CA 19-9,STN,CEA

漿液性腺腫 T1 強調 T1 強調 T2 強調

粘液性腺腫 T1 強調 T1 強調 T2 強調

代表的な良性卵巣腫瘍 ２．良性胚細胞性腫瘍 成熟嚢胞性奇形腫 成熟嚢胞性奇形腫 mature cystic teratoma mature cystic teratoma

成熟嚢胞性奇形腫 １．若年女性に多い ２．脂肪・毛髪・歯牙・軟骨・皮膚組織など含 む ３．脂肪成分の証明・石灰化像の証明 ４． 15% 程度に両側性発生が認められる ５．悪性転化 malignant transformation ６．悪性転化では扁平上皮癌の発生が最多 ７．悪性転化診断には SCC 測定が有用 ７．悪性転化診断には SCC 測定が有用

代表的な良性卵巣腫瘍 ３．類腫瘍病変 子宮内膜症性嚢胞 Endometrial cyst Endometrial cyst Tarry cyst Tarry cyst Endometrioma Endometrioma Ovarian endometriosis Ovarian endometriosis

内膜症性嚢胞 １．内容は血液 （ 新鮮なものから古いものま で ） ２．血液は新鮮度によって MRI の信号強度が 変化 ３．貯留内容が古い血液でチョコレート様のた め チョコレート嚢胞あるいはタール嚢胞と称 される チョコレート嚢胞あるいはタール嚢胞と称 される

境界悪性腫瘍 １．病理組織学的所見から診断される ２．遠隔転移も少なく発育も緩慢で予後良好 ３．漿液性・粘液性腫瘍が最も多く境界悪性腫 瘍 全体の 94% を占める 全体の 94% を占める 一般的に良性腫瘍と同様の臨床経過を示すが、 時に悪性腫瘍と同様の臨床経過をとる卵巣腫瘍 時に悪性腫瘍と同様の臨床経過をとる卵巣腫瘍 卵巣癌の手術進行期分類に準じて進行期決定

境界悪性腫瘍の進行期分布 （ 日本産科婦人科学会治療年報： 2005 ）

主な境界悪性腫瘍 表層上皮性間質性腫瘍 漿液性嚢胞性腫瘍・粘液性・類内膜性・明細胞性嚢胞性腫瘍 ブレンナー腫瘍（増殖性：良性も悪性もある） 性索間質性腫瘍 顆粒膜細胞腫（境界悪性のみ）セルトリ間質性腫瘍（中分化型：良性も悪性もある） 胚細胞性腫瘍 未熟奇形腫（ G1 ・ G2 : 悪性もある - 神経成分 ) カルチノイド（境界悪性のみ）

代表的ホルモン産生腫瘍 １ ．莢膜細胞腫 Theca cell tumor 良性腫瘍 エストロジェン産生 良性腫瘍 エストロジェン産生 ２．顆粒膜細胞腫 Granulosa cell tumor 境界悪性腫瘍 エストロジェン産生 境界悪性腫瘍 エストロジェン産生 ３．セルトリ間質細胞腫瘍 Sertoli-stromal tumor 良性・境界悪性・悪性（分化度により分類） 良性・境界悪性・悪性（分化度により分類） テストステロン産生 テストステロン産生 性索間質性腫瘍 Sex cord / stromal tumor

まとめ １．卵巣腫瘍は組織学的に表層上皮性間質性・ 性索間質性・胚細胞性・その他に分類され る． 性索間質性・胚細胞性・その他に分類され る． ２．卵巣腫瘍は悪性度から良性・境界悪性・悪 性に 分類される． ３．卵巣腫瘍は自覚症状に乏しく腹腔内臓器で ある ため早期診断・術前良悪性確定診断が困難 ． ため早期診断・術前良悪性確定診断が困難 ． ４．卵巣腫瘍は急性腹症の原因となる場合があ る．

卵巣腫瘍の診断と治療 １．良悪性診断２．治療法３．機能温存４．予後 Over treatment / Under treatment Laparotomy / Laparoscopy 妊孕能 / 内分泌機能 生命 / 生活 QOL

自習課題 １． 卵巣腫瘍の貯留内容による MRI 信号の特 徴 を調べる（ MRI による卵巣腫瘍の組織推 定 ） を調べる（ MRI による卵巣腫瘍の組織推 定 ）２． ホルモン産生腫瘍の整理 産生ホルモン・悪性度 産生ホルモン・悪性度 婦人科画像診断講義参照 試験問題として頻繁に出題されている