中心市街地活性化の事例研究 福島彬仁 山本大晃.  この研究は現在日本全国で問題となっている中心市街地 の衰退に対して全国の自治体でどのような対策が行われ ているのかについて実際の事例を紹介し、その自治体に おいて中心市街地が直面している状況や活性化計画の特 徴、問題点について検討したものです。

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中心市街地活性化の事例研究 福島彬仁 山本大晃

 この研究は現在日本全国で問題となっている中心市街地 の衰退に対して全国の自治体でどのような対策が行われ ているのかについて実際の事例を紹介し、その自治体に おいて中心市街地が直面している状況や活性化計画の特 徴、問題点について検討したものです。  本題となる事例研究は別ファイルにて「事例 1 静岡県 の 2 都市の都市構造と活性化を目指す取組み」と「事例 2 TMO 構想に基づいた取組み」を紹介しています。  ここではまず全国の自治体が策定した中心市街地活性化 計画の背景として重要な、 1998 年に施行されたいわゆる 「まちづくり 3 法」について、その概要と特徴を説明し ていきます。

中心市街地の衰退の現状と まちづくり 3 法

中心市街地の衰退  現在、地方都市ではモータリゼーション の進展や郊外の大型商業施設の立地など を背景に、駅前などの旧来の中心市街地 が衰退し商店街のシャッター通り化や商 業施設の廃業などが深刻な問題となって いる。

中心市街地衰退の問題点には以下のよう なものが挙げられる  中心市街の商業の衰退  公共施設の郊外移転による都市機能分散  公共交通のネットワークの崩壊

まちづくり3法の制定 まちづくり 3 法とは地方都市において衰退の著し い中心市街地の活性化を図り1998年に施行 されたいわゆる ・中心市街地活性化法 ・改正都市計画法 ・大店立地法(2000年施行) の3法のこと

中心市街地活性化法(1)  正式には「中心市街地の活性化に関する法律」  国と地方が一体となって対策に取り組む仕組み  市町村が地域の関係者と協議の上、中心市街地 活性化のための「基本計画」を策定しそれを国 が認定する

中心市街地活性化法(2)  毎年 1 兆円規模の予算を配分 ↓ 積極的な財政出動による中心市街地衰 退の是正 ↓ 規制政策ではなく積極政策

具体的な予算の例(1)  日本政策投資銀行の中心市街地活性化事業 中心市街地の活性化に関する法律に基づき市町村が作 成し、内閣総理大臣の認定を受けた中心市街対活性化基 本計画において定められた中心市街地において行われる 事業への出融資を行う。 平成 20 年度予算計上は 6800 億円

具体的な予算の例(2)  まちづくり交付金 地域の歴史・文化・自然環境等の特性を活かした個性 あふれるまちづくりを実施し、全国の都市の再生を効率 的に推進することにより、地域住民の生活の質の向上と 地域経済・社会の活性化を図ることを目的とし、市町村 が作成した都市再生整備計画に基づき実施される事業の 費用に充当するために交付金を交付する。 平成 20 年度予算計上は 2660 億円

改正都市計画法  都市計画法は開発可能区域の指定(ゾーニン グ)や建蔽率、容積率の制限による規制政策  まちづくり 3 法における改正都市計画法では、新 たに種類・目的に応じて特別用途地区を市町村 が柔軟に設定できるようになった ↓ 規制の強化

大店立地法(1)  正式には「大規模小売店舗立地法」  大型店の新規出店について、店舗面積などの量 的な側面での商業調整ではなく、生活環境面 (交通、騒音、廃棄物、その他)のみから チェック ↓ 形としては規制政策だが・・・

大店立地法(2)  この大店立地法が施行される以前は「大規模小 売店舗法(大店法)」によって大型店の出店は 規制されていた  大店法では店舗面積において規制が設けられて いた  しかし店舗面積規制による地域の商業活動の調 整の限界や海外からの大型店進出という外圧に よって国は方針を転換

大店立地法(3)  大型店と地域社会との融和の促進を図ることを 目的とし店舗面積等の量的な調整は行わない大 店立地法が成立し、これに伴って大店法は廃止 ↓ 規制緩和へ

以上まちづくり 3 法についてまとめると  中心市街地活性化法 → 財政出動  改正都市計画法 → 規制強化  大店立地法 → 規制緩和 というようにまちづくり 3 法は大店立地法 だけが中心市街地保護の観点から逆の方 向を向いていることがわかる

 つまり「まちづくり 3 法」とは、大手流通業者や 米国などのからの圧力によって起こった大店法 から大店立地法への移行による地元商業者への ダメージを和らげるために制定された補完的な 法体系と言える。  中心市街地活性化法と改正都市計画法によって プラスの効果があったとしても大店立地法によ るインパクトが大きければ中心市街地の衰退は 止まらないということである。

施行後の状況  大店立地法への移行によってやはり郊外の大型 店舗出店が相次ぎ中心市街地の衰退はより深刻 になったと言える。  そのため 2006 年に中心市街地活性化法、都市計 画法が改正され国による一層の支援と規制強化 が盛り込まれた。  その後 2008 年のリーマンショックで郊外の大型 店舗出店は落ち着いた。

まとめ  「まちづくり 3 法」は中心市街地活性化のために制定さ れたというより、規制緩和による中心市街地衰退を和ら げるための「次善の策」という側面が強い。  本当に中心市街地の衰退を食い止めたいならば国は再び 規制強化を行うべきである。  実際に中心市街地の再生を実現するためには各自治体が 中心市街地活性化法と改正都市計画法をどれだけ上手く 利用し計画を実行できるかに懸っている。

参考文献  中心市街地活性化法の概要と支援策について  平成21年度中心市街地活性化関係予算について  中心市街地の活性化に関する法律  都市計画法

 大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律  大規模小売店舗立地法