高齢者虐待の種類 「高齢者虐待」の定義 身体的 虐待 介護・世話の 放棄・放任 (ネグレクト) 心理的 虐待 性的 虐待 経済的 虐待.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
医療重視から暮らし重視に 転換したスウェーデンの認知症ケア 次世代にどんな社会を残すか ホスピタリティ☆プラネット 藤原瑠美 ©RUMI Fujiwara Hospitality 2013 All Rights reserved.
Advertisements

介護支援サービス(ケアマネジメント) 要援護者やその家族がもつ複数のニーズと社会資源 を結びつけること。 要援護者の生活の質を高めること。 保健,医療,福祉,住宅等の各種公的サービスだけ でなく,家族、ボランティア,近隣等の支援とも調整 し,在宅生活を支えていくもの.
児童虐待防止に関する研修. 児童虐待相談対応件数 (中央及び幡多児童相談所) 約4.4 倍 児童虐待とは 親または親に代わって養育に携わっている大人 等 (不適切な関わ り) 18歳未満の子ど も 心や身体を傷つけたり、健全な成長や発達を損な う 児童虐待 マニュアル P1.2 参照 気づく.
パーソンセンタードケアの構成要 素 ① アルツハイマー病の人々の Personhood 人 格は、失われるのではなく、次第に隠さ れていく ② すべての場面で、アルツハイマー病の 人々の Personhood 人格を認める ③ ケアと環境を、個人に合わせる ④Shared decision making.
1 STAS-J 導入プロセスと 看護師への影響 宮城千秋(沖縄県立精和病院) 神里みどり(沖縄県立看護 大学)
はじめに 近年、飲酒が関与する重大な交通事故が発生しており、未成 年の時からのアルコールについての正しい教育がより重要と なってきている。 タバコは学校において健康被害等の防煙教育が徹底されてき ているが、アルコールは喫煙と異なり健康を促す側面もあり全 否定できないため防酒教育導入の難しさがある。しかし、一方.
カウンセリングナースの 実践 と評価 不知火病院 カウンセリングナース 不知火病院 カウンセリングナース 国崎孝子 国崎孝子.
34-2 今 日 の ポ イ ン ト今 日 の ポ イ ン ト 現代社会とストレスと糖尿 病 1.1. ストレスによる 血糖コントロールへの影響 2.2. QOL障害によるストレ ス 3.3. 糖尿病とうつ 4.4. ひとことアドバイス 5.5.
演習のまとめ 平成 26 年度埼玉県障害者虐待防止・権利擁護研修(Aコース). 当事者の想いは・・・? グループワークのまとめ① 当事者の想いは・・・? ・訴え出るとさらに虐待がエスカレートするのではな いかという不安、報復への恐怖 ・「お世話になっているから」という負い目 ・「自分が悪いのだ」と思いつめてしまう.
2012 年 6 月 9 日 新潟県立看護大 学 認知症ケアの倫理 <Ⅳ時限 16 : 00 ~ 17 : 30 > 日常ケアに潜む 倫理的ジレンマに “ 気づき ” ⇒ “ 解決 ” する ― 倫理コンサルテーション ― 箕岡真子 東京大学大学院医学系研究科 医療倫理学分野 客員研究員 箕岡医院 内科医師.
設置者・管理者の責務② ~職員の育成指導等~ 平成 26 年度 青森県障害者虐待防止・権利擁護研修 公益社団法人 日本社会福祉士会 平成 26 年度障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修から.
第5章 子どもは心をどのように 理解するか? 道案内 (5) 子供は人の心をどう認識するか 1 準備 (0) 授業を始める前に (1) 発達心理学とはどんな学問か? (2) なぜ発達心理学を学ぶのか? 2 知覚の発達 (3) 子供に世界はどう見えるか 3 認知の発達 (4) 子供はものごとをどう認識するか.
安心おたっしゃ訪問事業 杉並区保健福祉部 高齢者在宅支援課.
養介護施設従事者等による 高齢者虐待防止について
「高齢者虐待」の定義 高齢者虐待の種類 身体的 虐待 心理的 虐待 性的 虐待 経済的 虐待 介護・世話の 放棄・放任 (ネグレクト)
第5章 子どもは心をどのように理解するか?.
企業における母性健康管理体制の現状と課題についてお話いたします。
Ⅱ 訪問介護サービス提供プロセスの理解 Ⅱ 訪問介護サービス提供プロセスの理解.
事例要因分析から改善へ ~安全な与薬を目指して~ 全員で指差し呼称 ヨシ!!
アンケート② 病棟体制.
東京経営短期大学 経営総合学科 准教授 玉田 和恵
私たちはどうして虐待をしてしまうのか? 誰もが利用者の生活が豊かになることや社会参加を願って福祉の仕事に就いていると 思います。初めから虐待しようなんて思って仕事に就いている人はいないはずです。 ○愛情というエネルギーはとても大きい →自分の思うようにいかないと怒りになります。 ○自己欲・支配欲のエネルギーはとても大きい.
職場における人権擁護について ~ハラスメントのない職場づくりを目指して~
家族の介護負担とメンタルサポート (part II)
保健学習の進め方・指導案の書き方 さいたま市立三橋小学校   豊島  登.
平成27年度 障害者虐待防止権利擁護研修 施設コース
虐待防止の内部研修の実施方法.
趣旨  平成22年4月1日厚生労働省(医政発0401第17号) 各都道府県知事にあて発令された文章を受けて 県内各施設における医療的ケアを実践的に 指導できる看護職員を養成することを目的
平成27年度 埼玉県障害者 虐待防止・権利擁護研修
地域包括ケアの第一手としての住環境整備の実際
施設ケアプラン MDS-RAPs NPOふくし@JMI 社会福祉士 小 湊 純 一.
Ⅲ.サービス開発の方法.
管理者の基本心得研修テキスト 2010年5月28日 主催:久保経営労務管理事務所.
独立行政法人国立病院機構 舞鶴医療センター認知症疾患医療センター 川島 佳苗
介護予防サービス・支援計画表 記入のポイント.
患者とかかわる際に 行うこと・行わないことの指針
- 事例から知る,個人情報の公開による被害 -
【ポイント】 第1章「高齢者虐待に対する考え方」では、
第2回 福祉の現在・現在 厚生労働省(2018) 障害者白書 厚生労働省(2016) これからの精神保健福祉のあり方に          関する検討会資料.
高齢者虐待や不適切なケアを 防ぐためには (未然防止)
高齢者の権利擁護のための 研修プログラム 概要版
介護職に求められる 認知症の人の排泄ケア 〇〇事業所 平成30年〇月〇日 講師:〇〇〇〇.
介護支援専門員 ケアマネジャー サービス担当者会議.
高齢者虐待や不適切なケアが 起こってしまった時は(事後対応)
東京経営短期大学 経営総合学科 准教授 玉田 和恵
「“人生の最終段階における医療” の決定プロセスに関するガイドライン」
平成26年度 埼玉県障害者虐待防止・権利擁護研修
「アセスメント」とは? B チーム支援ガイド Bー2 宮城県総合教育センター
輝いて、自宅で ~終わりよければすべてよし~
心のバリアフリー研修 基本プログラム例C 00:00.
平成23年度 身体拘束廃止施設見学資料.
天理市第1号訪問事業 (短期集中予防サービスC)について
高齢者の権利擁護のための研修 5 神奈川県 平成26年9月 平成28年11月改訂
受診したがらない患者さんへの対応 【患者さんが受診を嫌がっているが、それほど強硬ではない場合】
ネットへの書き込みと その責任 これから第6回グループ検討会の発表を始めます。 ご指導よろしくお願いします。 1.
4.「血液透析看護共通転院サマリーVer.2」
平成25年度 障害者虐待防止法に係る 大阪府の対応状況について
生活支援 中央研修 H26.9.4(木)~5(金) 品川フロントビル会議室 H26.9.6(土)~7(日) JA共済ビルカンファレンスホール
資料「裁判例に見る体罰」を引用した 体罰事故防止研修 埼玉県教育委員会
「直接支援チーム」とは? B チーム支援ガイド Bー1 宮城県総合教育センター
トピック6 臨床におけるリスクの理解と マネジメント 1 1.
【ポイント】 第1章「高齢者虐待に対する考え方」では、
ワークライフバランス ~働く女性がキャリアアップのしやすい社会を目指す~
若年性認知症の人への支援 若年性認知症支援コーディネーター これらの支援を一体的に行うために を各都道府県に配置
CDP企画 ES攻略!!内定を獲る自己分析(2日目)
タウンモビリティを通じて.
タイプ別ストレス対処法.
未病はなぜよくならないのか? 医療者の問題 ① 未病をみることができない ② 健診に携わる医師や総合内科医の不足 ③ 患者さんとの意思疎通力の不足 患者さんの問題 ① 未病の概念をしらない ② 「薬」に対する絶大な信仰心.
プレゼン資料(進行者用・研修者用)   校内研修会 教師自身の望ましい自己表現.
大津市自立支援協議会人材育成部主催 大津合同中堅研修 「中堅さん!一緒に学ぼう!2018」 私の研修ネタ ~高齢者虐待防止研修の場合~
Presentation transcript:

高齢者虐待の種類 「高齢者虐待」の定義 身体的 虐待 介護・世話の 放棄・放任 (ネグレクト) 心理的 虐待 性的 虐待 経済的 虐待

高齢者虐待の考え方 ① 報道などで顕在化した高齢者虐待以外にも、 気付かれていない虐待がありうる 厚生労働省の統計 ・相談・通報件数: 962 件 ・市町村が虐待と判断した件数: 221 件 ・うち有料老人ホーム・特定施設における虐待: 38 件 (厚生労働省:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく 対応状況等に関する調査結果(平成 25 年度)) 気付かれていない虐待 意図的な虐待が表面化していないもの 意図していないが結果的に虐待となっているもの 「緊急やむを得ない」場合以外の身体拘束

高齢者虐待の考え方 ② 明確な「暴力」「虐待」の言動の周辺には、 「適切ではない言動」が予兆として存在する ことが多い 「虐待である」とは言い切れない「適切ではない言 動」 「適切ではない言動」が見えていれば、隠れたとこ ろ(個室など)では「虐待」があるかもしれない 「適切ではない言動」を放置しておくと、エスカ レートするおそれがある

高齢者虐待の考え方 ③ 「暴力」は「犯罪」であるという認識の下、 決定的な虐待は見逃してはならない 「未熟なケア/適切ではない言動」⇒「虐待行為」 は、連続しているケースが多い しかし、決定的な虐待=暴力=犯罪は、決して見逃 してはならない 犯罪を犯罪として認め、報告する勇気

高齢者虐待の考え方 適切なケア 不適切な言動 / 未熟なケア グレーゾーンの言動 虐待の言動 暴力 決して見逃してはならない 「暴力」は「犯罪」 連続性や予兆が あることが多い ※作成にあたり、 柴尾慶次氏(社会医療法人慈薫会) 作成の資料を参考にした。

高齢者虐待の考え方 ● 「適切ではない言動」から考える 介護事業所の職員による高齢者虐待の問題は、 「適切ではない言動」から連続的に考える必要 虐待が顕在化する前には、表面化していない虐待や、 その周辺の「グレーゾーン」行為がある さらにさかのぼれば、ささいな「適切ではない言動」 が放置されることで、蓄積・エスカレートする可能性 「適切ではない言動」の段階で発見し、 「虐待の芽」を摘む取り組みが求められる

介護事業所による高齢者虐待の実態 ● 高齢者虐待の行為を受けた利用者の特徴 認知症の人の割合が高く、意思疎通の難しさ等の関連 する問題がある ● 高齢者虐待の行為を行った職員の特徴 介護従事者全体の割合と比較すると、 「男性」「 30 歳未満」の割合が高い (出典:厚生労働省『平成25年度高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する 法律に基づく対応状況等に関する調査結果』,2015) ・行動・心理症状( BPSD )の存在 ・特に攻撃的言動や介護への強い抵抗がある場合 !

各職員が虐待行為や適切ではない言動を 防ぐために何をすべきか 1. 暴力など明らかな虐待行為は、犯罪であり、 即時報告 2. 適切ではない言動を見て見ぬふりをしない 3. 一人で抱え込まず、一人の責任にせず、 「チームケア」を行う 4. 「認知症ケア」の専門性を高める 5. ストレスマネジメント 各職員が気を付ける不適切な言動の対策

ストレスが背景にある適切ではない言動 ストレスマネジメント

ストレス自己診断チェックリスト 労働者の疲労蓄積度 自己診断チェックリスト (厚生労働省)

ストレスが生じた時にどうするか 意識して休養をとろう 自分に役立つストレス対処をしよう 必要なら他人に助けてもらっていい (例)どうしても難しいときにはケアを代わってもらう (それでもうまくいかない時は)何かいつもとは違 うことを試しにやってみよう ストレスの自己診断とその対応

事例に基づく検討・演習

「介護への抵抗」の事例 有料老人ホームに入所中のAさん(アルツハイマー型認知症)は、 排泄介助の際に拒否が強く、なかなか汚れた下着を交換できません。 スタッフBさんは日頃からAさんの介助に入るのが憂鬱でした。 他のスタッフに対しても同じなのですが、介助に入ると毎回決まっ て「汚れてもいないのに何するんだ!」と不機嫌になり、「誰か助 けて!」「私をいじめる!」と大きな声でわめくのです。 “汚れたままでは不快だろう”“早く交換してあげなくては”というス タッフの思いに反してAさんは手足をバタバタさせながらスタッフ の腕を払いのけ、抵抗を繰り返すばかりです。 スタッフBさんは自分に向けられた行為が認知症による症状なのだ と思いながらも、こみ上げてくる怒りとの葛藤で自分の感情を抑え るのが精一杯でした。

スタッフ B さんに求められる対応 チーム・ホームに求められる対応 あなただったらどうしますか? 考えてみよう

(まず、スタッフ B さんに求められる対応) ストレスマネジメントの視点

ケアを行う体制を改善する 職員の性格と介助時のストレス ⇒上司や先輩、同僚が日ごろから積極的に声をかけ、 悩みを聴く 職員個人だけの問題にしない ⇒特定の職員個人だけの問題にしてしまわず、職員 全体の問題として考える。 チーム・組織のあり方

ケアを行う体制を改善する 職員間の情報共有・意思疎通の方法を工夫す る ⇒情報共有・意見交換の機会を設けることは、介護 サービスの重要な要素 ⇒ルールや手順を決めて行い、管理者やリーダーは ときには教育的に関わっていく チーム・組織のあり方

ケアの内容や考え方を見直す アセスメント:入居者の心理を推測する ⇒対応に困る「問題行動」と考えずに、行動には理 由があると捉え、本人の視点から考える ケア:アセスメントに基づいたケア ⇒アセスメントの過程を職員全体で共有し、ケアの 意思統一を ⇒直接的な対応だけでなく、生活全般におけるケア のあり方を考える ケアマネジメント

認知症に伴う行動・心理症状の対応 「その行動には理由がある」と捉え、本人 の視点から考える。 ケアを提供する環境やスタッフの対応自体 が、「行動・心理症状」の背景やきっかけ になっていないかを考える。 認知症ケア

「不穏」の事例 認知症がある利用者Cさんは、昼食を終えると、「下に行く」と 言ってホーム内を歩き回り、スタッフKさんは一緒に歩き対応しま すが、「とにかく行かないと」というばかりで、しまいには大声で 泣き出します。 原因を探ろうとしますが、意思疎通も難しくなってきている中でた だ「行く」の一点張りなため、なかなかCさんの背景がつかめませ ん。 そのため対症療法的な一緒に歩くということしかできなく、落ち着 くまでにもかなりの時間がかかります。 ほぼ毎日このような状況なため、Cさんが歩き始めると、Kさんの 中で「またか・・・」と思うようになり、そのような気持ちが態度 にも出てくるようになってきました。

ストレスマネジメントの視点

「手薄な状況」の事例 有料老人ホームFの2階フロアでは、個別ケアを重視する観点から、 スタッフが1対で1で散歩に連れていくプログラムを行っています。 しかし、残されたスタッフMさんは、業務を進めながら、残る利用者 の対応を2人でこなさなければならないプレッシャーがあります。 食事の準備に追われていると、利用者のGさんは数分おきに「トイレ に連れて行って」とやって来ます。 常時見守りを必要としている転倒リスクの高いHさんも落ち着きなく 立ったり座ったりを繰り返しています。 Hさんを残してフロアを離れることに不安を感じつつ、Gさんをトイ レに誘導し、急いで戻るとHさんがよろけながら歩いていました。 スタッフMさんは、余裕を失い、強い口調でHさんを叱責してしまい ました。