調達物流におけるポートフォ リオ理論の適用 流通情報工学課程 2003752 盧 麗穎. 1 目次 1.目的 2.リスクとリスクマネジメント 3.調達物流におけるポートフォリオ理論 の適用 4.モデルを用いた検討 5.結論.

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調達物流におけるポートフォ リオ理論の適用 流通情報工学課程 盧 麗穎

1 目次 1.目的 2.リスクとリスクマネジメント 3.調達物流におけるポートフォリオ理論 の適用 4.モデルを用いた検討 5.結論

2 需要地 供給地 枝 (リン ク) 輸送機関 商品・荷 物 ・衝突 ・転覆 ・脱線 ・墜落 ・爆発 ・火災 ・渋滞 ・遅延 等 ・汚損 ・擦損 ・破損 ・ 曲損 ・盗難 ・不着 ・漏れ ・ネズミ食い ・自然消耗 等 環境 ・地震 ・噴火 ・台風 ・洪水 等 政治的 ・戦争 ・内乱 ・テロ ・ストライキ ・暴動・騒動 ・規 制・政策 等 ・倒産 ・加工ミス ・万引 き ・機器の故障、破 損 ・数量不足 等 調達物流におけるリスク

3 リスクへの対応方法 ★リスク回避 : リスクにさらされている人、モノ、事業等に一 切関係しない、リスクとの関係がなくなるようリスクそのものを 排除、除去する ★損失の予防 : 損害が発生する可能性(発生頻度)を少なくす ること。 例:事例データベースによるリスク感性の向上 ★リスク保持 : リスクを受け入れ、自らの費用で損失を 埋め合わせること。 例:家計の積立預金 ★リスクの移転 ・・・ ヘッジング、インシュアリング、 分散 例:業務の外部委託、 保険、 ポートフォリオ理論

4 ポートフォリオ理論 リスクの定量化 経路にお け る標準偏 差 全体の収益に対しての標準偏差をリスクとして捉え る 全体の 期待収益 Pi : i 番目の収 益 になる発生確 率 ポートフォリオ理論は、最適なリスク管理を数量的 に分析することと定義される。 ri : i 番目 の収益

5 リスクの意思決定

6 モデルの構築 調達物流におけるリスクを考慮して、調達先や調達量の意 思決定におけるモデルを構築する。 目的関数は販売店における利益とリスクとする。 Eij = S 工場 -( C 工場 + C 輸送 )= Dij * Spi -( Dij * Cpi + Dij * Cti ) Eij :工場 i における遅れる確率 j の時販売店の収益 販売店 工場 C 輸送 = Dij * Cti C 輸送 :輸送における費用(円) Cti :工場から販売店までの輸送費(円 / 個) C 工場 = Dij * Cpi C 工場 :工場 i における調達費用 (円) Cpi :その工場での仕入れ単価(円 / 個) S 工場 = Dij * Spi S 工場 :工場 i における需要の売上高 (円) Sp :販売店における商品の売格(円 / 個) Dij = Di - Tij *r*3 65 Dij :工場 i における遅れる確率jの時 の需要量(個 / 年) Di :工場 i における需要量(個 / 年) Tij :遅れる確率jの時の遅れる時間 数(時間) r:販売店における単位時間の販売 量(個 / 時間)

7 モデルの定式化 工場 i からの調達による収益 ( 円 ) 販売店おける収益 ( 円 ) 販売店における標準偏 差 工場 i における遅れ る確率jの時の利 益 ( 円 ) 工場 i における遅れ る時間jの発生確 率 (%) 工場 i における 調達割合 ( % ) 工場 i ,jにお ける相関係数

8 モデルの設定条件 工場と販売店についての設定 工場の遅れる時間と確率についての設定 工場間の相関係数についての設定 ρ=0.5 、 ρ=0 、 ρ=- 0.25

9 検討項目 基本的な傾向の確認 相関係数の影響の確認 調達先数の影響の確認 相関係数と調達先数の影響の検討

10 相関係数の影響の確認

11 調達先数の影響の確認 ( ρ=0 )

12 検討項目 基本的な傾向の確認 相関係数の影響の確認 調達先数の影響の確認 相関係数と調達先数の影響の検討

13 相関係数と調達先数の影響の検 討 (ρ = 0.5)

14 相関係数と調達先数の影響の検 討 (ρ = 0)

15 相関係数と調達先数の影響の検 討 (ρ = -0.25)

16 結論 ○ 調達物流における遅延リスクを考慮するとしたモデル の構築を行うことができた。 ○ ポートフォリオ理論を用いてリスクを考慮した調達先 や調達量の選定が可能であることがわかった。 ○ 相関係数別と調達先数別に検討を行った結果、分散化 によりどの程度リスクを軽減できるかは、相関関係の影 響が大きいことが確認できた。また、調達先数を増やす ことによって、よりリスクの分散効果が得られることも 確認できた。 ○ 効率よくリスクの分散効果を得るため、ただ単純に調 達先数を増やすのだけではなく、なるべく負の相関をも つ調達先を組ませればよいとわかった。

17 ご清聴ありがとうございまし た。

18 相関係数の影響の確認 リスク最小

19 モデルの設定条件 ― 調達先が 3 つ

20 企業の海外進出 撤退企業の 増加 撤退理由 ・現地パートナーとのトラブル ・販売の不振 ・優遇措置の廃止や規制・課税の変 化 ・現地の情勢 海外進出の増大 リスクを考慮すべきで ある

21 物流にもたらす変化 複雑化、多様化、多段 階

22 5 つの調達先からなるポート フォリオ リスク最 小

23 5 つの調達先において、調達先数別 に相関係数が正、ゼロ、負の時の最 小分散ポートフォリオ

24 相関係数についての設定 相関係数 ρi,j ρi,j ={ 0.5 , 0 , }

25 目的 本研究においては、調達物流における遅延 リスクを対象とし、ポートフォリオ理論の適 用可能性を検討することを目的とする。 また、調達物流におけるポートフォリオ理 論の適用にあたって、 ・調達先同士の連動度合を示す相関係数の影 響 ・組入れる調達先の数の影響 について検討することも目的とする。

26 リスクについて リスクの定義: 一般的なリスクとは、事態の確からし さとその結果の組合せ、または事態の発生 確率とその結果の組合せと示されている。 ( JIS Q 2001 より) ex) 暮らしのリスク: 環境リスク、リストラ、交通事故、災害等 企業のリスク: 財産リスク(火災・爆発、自然災害等) ビジネスリスク(金利や為替変動等)、 賠償責任リスク(不祥事、知的財産権利侵害等) ポリティカルリスク ( ストライキ、テロ・戦争等 )

27 リスクマネジメントについて リスクの認識 直面しているリスクを洗い出す リスク評価 定量可が可能なリスクの量を推計する リスク管理テクニックの選択 ・リスク回避 ・損失の予防 ・リスク保持 ・リスクの移転 ・・・ ヘッジング・インシュアリング・分散化 実行 リスクマネージメントシステムを実行する 再評価 リスクマネージメントシステムの評価を行い再検討を行う

28 ポートフォリオ理論( portfolio theory )とは、 最適なリスク管理を数量的に分析すること。 ポートフォリオ理論では、どのようなリスク選択を行 えば効用が最大化できるかを主として検討する。 一般的には、リスクとリターンのトレードオフ の中で、どのような選択を行うかが問題となる。 ポートフォリオ理論

29 モデルの計算結果 計算項目工場 1 工場 2 工場 3 年間売上高 ( 円 ) 128,772,000124,830,000126,144,000 年間経費(円) 69,536,88049,932,00056,764,800 機会損失 ( 円 / 年 ) 2,628,0006,570,0005,256,000 期待収益 ( 円 / 年 ) 56,607,12068,328,00064,123,200 工場 1 工場 2 工場 3 期待収益率 (%)43 . 9654 . 7450 . 83 標準偏差 (%)6 . 0911 . 639 . 76 諸費用についての計算結果 期待収益率と標準偏差の計算結果

30 最小分散ポートフォリオ リスク最 小 工場 1 から 100 % 工場 3 から 100 % 工場 2 から 100 %

31 3 つの調達先における相関係数が正、 ゼロ、負の時の最小分散ポートフォ リオ 相関係 数 ρ 調達割合 期待収益率 最小リスク (標準偏 差) w1w2w3 ρ>0ρ>090 % 0%0% 10 % 44 . % 6 . % ρ=0ρ=060 % 20 % 47 . % 4 . % ρ<0ρ<050 % 20 % 30 % 48 . % 0 . % 最大値: 48 . % 最小値: 0 . %

32 計算結果 計算項目工場 1 工場 2 工場 3 工場 4 工場 5 年間売上高 ( 円 ) 128,772, ,830, ,144, ,086, ,458,00 0 年間経費(円) 69,536,88049,932,00056,764,80078,485,22062,879,280 機会損失 ( 円 / 年 ) 2,628,0006,570,0005,256,0001,314,0003,942,000 期待収益 ( 円 / 年 ) 56,607,12068,328,00064,123,20050,286,78060,636,720 工場 1 工場 2 工場 3 工場 4 工場 5 期待収益率 (%)43 . 96%54 . 74% 50 . 83%38 . 66% 47 . 57% 標準偏差 (%)6 . 09%11 . 63% 9 . 76%3 . 83%7 . 99% 諸費用についての計算結果 期待収益率と標準偏差の計算結果

33 調達先 5 つからなるポートフォ リオ 初期値についての設定 遅れる時間と確率の設 定 相関係数の設定

34 ① 5 つの調達先の中、いずれの 2 つからなるポートフォリオ

35 ② 5 つの調達先の中、 3 つから なるポートフォリオ

36 今後の課題 ・ 数値に関して、架空な数字を用いて検討を 行った結果、傾向を見ることができたが、モデ ルを構築する時、企業の実データを用いた上、 輸送手段や輸送距離などの項目についてより詳 しく値を設定することができたら、よりよいモ デルとなると考える。