1 銀河系力学構造の 構築について 上田晴彦 ( 秋田大学 ) 郷田直輝, 矢野太平 ( 国立天文台 ) 竹原理論物理学研究会 2011年6月7日 ホテル大広苑.

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1 銀河系力学構造の 構築について 上田晴彦 ( 秋田大学 ) 郷田直輝, 矢野太平 ( 国立天文台 ) 竹原理論物理学研究会 2011年6月7日 ホテル大広苑

2 1 はじめに 位置天文(アストロメトリ) 天体の位置・速度の情報を求め、銀河系内の星の 地図を作る 地球の大気の影響を受けない宇宙からの観測が必要! (地 上では 0.03 秒角が限界) ヒッパルコス衛星(1989~1993年) 1ミリ秒角( 秒角)の精度 1 秒角=1 /3600 度

4 10 マイクロ秒角レベルへの挑戦 位置天文学は GAIA 時代に突入 打ち上げ 予定 : 2012 ミッショ ン終了予定 : 2017 目的: これまでで最も大きく、かつ正確な銀河 系の 3次元地図の作成

5 JASMINE (Japan Astrometry Satellite Mission for INfrared Exploration) 日本の赤外線探査による位置天文衛星計画 Nano-JASMINE (2011 年 or2012 年初頭) 50 ㎝級衛星 日本初の位置天文観測衛星(観測精度~ 3 ミリ秒角 ) (ヒッパルコス衛星に次ぎ世界でも二番目) 赤外線領域における 世界初の全天位置天文カタログ

6 2 銀河系力学構造と位相分布関数 スペースアストロメトリにより、膨大な数の星の位置 と 速度が求まる ⇒ 銀河の力学構造の決定が可能に!! 位相分布関数 f(x,v,t) は力学構造を記述する基本量 ⇒ しかし位相分布関数は観測からは直接求まらない。 なぜ求まらな い?

7 必要な情報 我々の銀河の全ての構成要素(重力物質)を表現 する位相分布関数 スペース・アストロメトリ 観測された星の位相分布関数のみ得られる!! アストロメトリ・データから、重力物質全体の位 相分布関数をどのように構築していくか、という 理論的な研究の必要性

8 銀河系の位相分布関数を決定することを考える。 ⇒ 銀河系の力学的時間尺度は宇宙年齢に比べ 十分に短いことを考慮する 基本的仮定:銀河系の構造は定常状態 ただし現実的には銀河は非定常であるかもしれない。 ⇒ ずれが小さいと期待できるので、定常状態か らの 摂動として計算可能

9 銀河系の構造が定常であると? ⇒ ほぼすべての星の軌道は規則的 強いジーンズの定理 位相分布関数は3つの孤立積分(作用変数)の 関数 ⇒ f(J 1,J 2,J 3 ) J は位相分布関数をコンパクトに表現する際に有用

10 1)銀河系の重力ポテンシャルを仮定 A) Logarithmic potential (Disk 部分 ) B) Ferrers potential (Bulge 部分 ) 3 銀河系力学構造構築の全体像

11 2)仮定したポテンシャルのもとで J ⇔ x,v を評価 位相分布関数のコンパクトな表現はモデル作りに有 用 であるが、弱点も存在する f model は J の関数 ⇒ f model (J) f obs は (x,v) の関数 ⇒ f obs (x,v) もし我々が J ⇔ x,v の変換を知らなければ、モデル と 観測の結果を比べることが出来ない。 仮定したポテンシャルのもとで、作用変数 J とx、 vとの 変換を求めることは、とても重要

12 3)重力物質の位相分布関数の作成 仮定したポテンシャルのもとで、初期条件を変え た テスト粒子の軌道を多数計算。 ポアソン方程式 を通して、密度 分布を計算 各々の軌道をある重みで足し上げる ⇒ 密度分布を再現できるような重みを求める ⇒ 位相分布関数 f( J )、f(x、v) を推 定

13 4)観測データから重力物質の位相分布関数を 推定 観測データは、明るさや色で選択された特定の星の み の情報を含む ⇒ 選択効果が働いている!! ・星の初期質量関数や形成史に関する知識? ・ダークマターに関する知識?

14 5)両者の比較 一般に食い違うので、より近くなるようポテン シャルの パラメータを変更 ⇒ かなりの試行錯誤が必要?

15 Φ(x) を仮定 made-to-measure 法で f(J) を決定 全ての重力物質 の DF を推測 比較 J ⇔ x,v を評価 改良! Syer & Tremaine (1996)

16 ご清聴ありがとう ございました