1 構造計算の基礎用語 (材料力学の話) 第4回岐阜建築鉄骨技術交流会 (かんたん構造講義) 第 2 部 その 1 久米構造設計室 久米純一.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 設計基礎コース もう一度学ぶ材料力学の基礎 座屈 ( Buckling ) 長軸に軸方向圧縮力を作用させると、ある荷 重で急に軸が曲がる。 この急に曲がる荷重条件を探る。 X の位置での曲げモーメントは たわみの微分方程式は.
Advertisements

「設計論」 というほどのものではないが・・・ コンクリート工学研究室 岩城 一郎. 設計とは? (広辞苑) せっ‐けい【設計】 (plan; design) ある目的を具体化する作業.製作・工事 などに当り,工費・敷地・材料および構 造上の諸点などの計画を立て図面その他 の方式で明示すること.「ビルの.
●モールの応力円 (土質力学編) (圧縮正) γz ・土中応力=土かぶり圧(γz)+ 荷重qによる伝達応力
鉄筋コンクリート構造、:2011版 旧:鉄筋コンクリート(1)
藤井大地(リーダー) 榛葉 亮(設計担当) 原田卓哉(設計担当) 大年政弘(作成担当) 吉冨健志(作成担当)
第2章 機械の強度と材料 機械の必要条件 ★壊れない ★安全である ★正しく機能する そのためには・・・ ★適切な材料を使う
ガセットプレートの欠陥 Carl R. Schultheisz.
円形管における3次元骨組解析への適用事例 平成16年9月17日 (株)アイエスシイ 犬飼隆義.
5章 許容応力度 本文 pp8-14 解説 pp 構造用鋼材 : 許容曲げ応力度式の変更等
SolidWorksとSolidWorks SolidWorks Simulationを使ったストラクチャの設計、テスト、構築
第2章 機械の強度と材料 機械の必要条件 ★壊れない ★安全である ★正しく機能する そのためには・・・ ★適切な材料を使う
・力のモーメント ・角運動量 ・力のモーメントと角運動量の関係
小梁(単純梁)のメンバーを 計算してみます
設計基礎コース   もう一度学ぶ材料力学の基礎          
RC構造の破壊形態 コンクリート工学研究室 岩城 一郎 このサイバーキャンパスをご覧の皆さん,こんにちは.
せん断力を受ける 鉄筋コンクリート部材 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
基礎力学および演習 予定表( 版) 回数 月日 内容 1 4/ /5 2 4/ /9 3 4/21
柱崩壊と梁崩壊 (塑性設計の話) 第3部 その2 塑性設計の注意点 第4回岐阜建築鉄骨技術交流会 (かんたん構造講義)
建築構造演習 座屈実験(第二回) 鋼構造研究室.
建築構造演習 座屈実験(第3回) 鋼構造研究室.
建築構造演習 座屈実験(第1回) 鋼構造研究室.
・図解「建築の構造と構法」 26~33ページ ・必携「建築資料」 16 ~19ページ
セラミックス 第9回 6月18日(水) セラミックスの物性.
コンクリートと鉄筋の性質 コンクリート工学研究室 岩城一郎.
コンクリートの強度 (構造材料学の復習も兼ねて)
構造力学Ⅰ(シラバス) 建築物,橋などの構造設計の際に必要となる, [ , ]などの構造[ ]が [ , , ]などの[ ]を受けたときに
使用限界状態 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
硬化コンクリートの性質 弾性係数,収縮・クリープ
ひび割れ面の摩擦接触を考慮した損傷モデル
建築構造演習 座屈実験(第3回) 鋼構造研究室.
せん断力図(SFD)と 曲げモーメント図(BMD)
応力-ひずみ関係 断面積A,長さLの物体に,(軸)力Pが作用した際,ΔLだけ伸びた(あるいは縮んだ).
構造力学の構造 構造力学Ⅰ復習.
今日の学習の目標 ① 荷重ー変形量線図を理解しよう。 ② 応力ーひずみ線図を理解しよう。 ③ 比例限度・弾性限度・降伏点・引張り強さ・
応力図(断面力図).
材料強度学の目的 機械とは… 材料強度学 外部から力を加えて、人に有益な仕事をするシステム 環境 力 材料 材料の破壊までを考える。
H30.2.5破壊実験フィンクトラスの改良点 初代フィンクトラス 改良型フィンクトラス.
信頼性設計法を用いた構造物の 崩壊確率の計算
応力(stress, s, t ) 自由物体図(free-body diagram)において、外力として負荷荷重P が作用したとき、任意の切断面で力の釣り合いを考慮すると、面における単位面積あたりの内力が存在する、それを応力といい、単位は、Pa(N/m2) で表す。面に垂直に働く垂直応力、s と平行に働くせん断応力、
鉄骨構造の特徴 Steel Frame Structure
リングの回転成形の 近似3次元有限要素シミュレーション 塑性加工研究室 平松直登 一般化平面ひずみを用い た近似3次元FEM
パイプ風鈴の振動理論 どの様な振動をしているか。周波数は何で決まるか。 (結論) ・振動数は棒の長さLの二乗に反比例する。
鉄筋コンクリート構造の材料(2) ・図解「建築の構造と構法」     93~97ページ ・必携「建築資料」   材料:78~81ページ.
第1回、平成22年6月30日 ー FEM解析のための連続体力学入門 - 応力とひずみ 解説者:園田 恵一郎.
4章:曲げモーメントを受ける部材 キーワード:非線形挙動、断面解析、終局耐力、 等価応力ブロックによる塑性解析、
鉄筋コンクリート構造の特徴 ・図解「建築の構造と構法」 84~90ページ ・必携「建築資料」 ラーメン構造:74~75ページ
コンクリート構造物の設計法 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
たわみ角法の基本式 長さl,曲げ剛性EIのラーメンの一部材ABが中間荷重を受けて,移動,変形したときの材端モーメントMAB,MBA (時計回りが+)は,
鉄筋コンクリートとは? 鉄筋とコンクリートという異なる2種類の材料が双方の短所を補うことにより,一体となって外力に抵抗するもの.
曲げを受ける鉄筋コンクリート部材 (状態III)
対象:せん断補強筋があるRCはり(約75万要素)
建築構造演習 座屈実験(第1回) 鋼構造研究室.
建築構造演習 座屈実験(第3回) 鋼構造研究室.
1.5層スペースフレームの 接合方法に関する研究
第22回講義の要点 断面諸量 コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
問14(第1回):鉄筋コンクリートに関する次の記述のうち、正しいものの数を数字で答えよ. a
ここでは、歪エネルギーを考察することにより、エネルギー原理を理解する。
6章:せん断力を受ける部材     キーワード: せん断破壊(shear fa****)、 斜めひび割れ、 急激な破壊 設計:せん断耐力>曲げ耐力.
鉄筋コンクリートはりの 曲げ耐力の算出 コンクリート工学研究室 岩城一郎.
大型ホイールのディスク成形における 有限要素シミュレーション 有限要素 シミュレーション 工具と素材形状の最適化 材料の歩留り向上
第5回 斜投影と等角投影 ★立体図を作図する! ★三面図から立体の形状を読みとる。.
第2部 その2 荷重の種類・応力・変形の関係 主に応力に関するあれこれ -設計しながら考えていること- 第4回岐阜建築鉄骨技術交流会
コンクリート構造物の 力学を学ぶために コンクリート工学研究室 岩城 一郎.
「土質・基礎構造」 4回目の授業 地盤内応力 平成31年 5月 6日(月) 今岡 克也.
自動車ホイールのディスク成形に おける肉厚分布を持つ円環の加工 加工能率低下 図 ディスク成形 塑性加工研究室 中川原 大助 スピニング
構造力学Ⅰ(シラバス) 建築物,橋などの構造設計の際に必要となる, [トラス,ラーメン]などの構造[骨組]が
問題14(11.曲げモーメントを受ける部材):  次の図は,曲げモーメントを受ける鉄筋コンクリート断面(単鉄筋長方形断面)の仮定を示したものである.この図の記述について,間違っているものを解答群から一つ選べ. a. 図中のうち,Ⅰ:弾性解析(全断面有効)では,ひび割れ前の純弾性状態に対して,用いられる断面仮定であり, 
本時の目標 いろいろな立体の表面積を求めることができる。
骨組の静定 ・不静定 まとめ ・構造物全体に対して判定式 2k<=>n+s+r (k: 節点数,n: 支持力数,s: 部材数,
Presentation transcript:

1 構造計算の基礎用語 (材料力学の話) 第4回岐阜建築鉄骨技術交流会 (かんたん構造講義) 第 2 部 その 1 久米構造設計室 久米純一

2 これから説明すること 高校の物理では 作用力 F 反作用力 F’ ここまでしか習わない F = -F’ 構造計算では 荷重 支点反力 ここで何が おきているのか = 応力

3 構造計算の目的 その1 物体に力がかかる 力を増していくと やがて壊れる いつ壊れるか知りた い

4 物体の中の力関係 断面積 A (mm 2 ) 荷重 P (N) 1mm 2 の部分をとりだしてみる かかっている力 = P / A シグマ → 応力度 σ 材料の強さ → 許容応力度 f 例 SS400 f = 156 N/mm 2 長期 かかっている力材料の強さ 応力度 σ ≦ 許容応力度 f なら 安全

5 構造計算の目的 その2 物体に力がかかる 力を増していくと 変形する どれだけ変形する か 知りたい

6 物体の中の変形 断面積 A (mm 2 ) 荷重 P (N) 1mm 3 の部分をとりだしてみる かかっている力 = P / A → 応力度 σ 材料の硬さ → ヤング率 E 例 SS400,SM490,SN400 E = N/mm 2 1mm 3 の部分の変形 = σ/E 全体の変形 = σ/E * L L (mm)

7 応力と変形の関係 変形 = 応力度/ヤング率 δ = σ / E 変形は応力度に比例する 応力度、変形のどちらかが分かれば、他方も分かる 応力度、変形のどちらで考えても良い

8 体積が変化する変形 応力(変形)は 2 種類ある 体積が変化しない変形 (fs は許容せん断応力度 ) (G はせん断弾性係数 ) 引張、圧縮応力度 σ( シグ マ ) σ ≦ f 引張、圧縮変形 δ( デルタ ) δ = σ /E せん断応力度 τ( タウ ) τ ≦ f s せん断変形 δ = τ / G

9 モデル化 これまでは、物体をかたまりのまま考えました が このままでは扱いにくいので 細長い線材に置きかえて考えます これをモデル化と言います

10 曲げモーメント、捩りモーメン ト 圧縮力 C 引張力 T ( 軸方向力 N ) せん断力 Q 曲げモーメント M 捩りモーメント M T 線材にモデル化すると、応力は次のようになりま す

11 代表的な応力の公式 P w P w MQMQ ( l は梁の長さ )

12 曲げモーメントの扱い 圧縮 引張 曲げモーメントは 下図のように圧縮応力度と引張応力度に分解できる 応力度 σ ≦ 許容応力度 f の式が使える! σ= M/Z (Z は断面係数 ) (H 型鋼などでは圧縮、引張とも同じ値 ) 同様に、捩りモーメントは、せん断応力度に分解できます。

13 細長い柱の注意点 (1) 細長い柱の場合太短い柱の場合 P A P 「座屈」と言う σ= P/A σ ≦f σ= P/A σ ≦f ではうまくいかない そこで...

14 細長い柱の注意点 (2) P L L 柱の中間に座屈止めを入れると 座屈を起きにくくできる 座屈長さを短くす る 細長い柱では、 細長比 λ に応じて f を低減する → f c λ= κ * L / i κ :柱の両端の状態によって決まる係数 L :柱の長さ i:断面2次半径 σ ≦ fc で、これまでと同じように検討できる 注)座屈は圧縮がかかったとき起きます。引張りでは起きません。

15 fc の計算式

16 細長い梁の注意点 L 座屈は梁に曲げモーメントがかかったときにも起きる 細長比 λ に応じて許容応力度 f を低減 → f b λ= L / i b 中間に座屈止めを入れるのが有効 LL

17 fb の計算式

18 傾いた梁の注意点 梁を横倒しに傾けると Z が減りま す θ 傾いた梁の Z は、 次の式で計算 できます。 傾斜角度と Z の関係

19 非対象断面の梁の注意点 C型、L型、コ型、などの左右非対称の鋼材を梁に使った 場合、図1のように回転を起こし、十分な強度が出ません。 ( ボードで回転を拘束されている母屋などは除きます ) 図1 非対称梁の回転考慮した Z の略算法 フランジの1片を切り取った H 型鋼の例 ① 縦の板材を中心と考える。その 板は全断面有効 ② 中心に対して、左右対称に付け られた横向きの板も全断面有効 ③ 中心に対して、非対称の横向き の板は幅 1/4 の部分だけが有効 ④ 有効な部分だけで構成された断 面の Z を単純計算する 回転の効果を考慮した Z を正しく計算するのは難しいのですが、 略算としては、次の方法で計算できます。

20 断面2次モーメント I 断面の形によって決まる、曲げ変形のしにくさを 表す数値を 断面2次モーメント I と言います 代表的なたわみの公式 P δ δ w δ P w ( l は梁の長さ ) δ L L

21 断面2次モーメント I の公式 B D D D D X x1x1 x2x2 x3x3 I は足し算できます。 h2h2 h1h1 I 以下の方法で複雑な形の I,Z を計算できます。 ① ② ③ A1A1 A2A2 A3A3 A 1, I 1 e1e1 D B d oo o o

22 断面係数 Z の公式 H 型、 C 型などは鋼材の規格表を見てください。 注) Z は足し算できません。 形などの Z の計算方法は、後で説明します。 B D D D B D D d

23 練習問題 次の梁断面の I および Z を求めなさい ① ② ③ A 1 = 60*30 = 1800 cm 2 A 2 = π*10 2 = cm 2 数字の単位は cm X X = 1800* * = 32.1 cm I 1 = 30*60 3 /12 = cm 4 I 2 = π*20 4 /64 = 7853 cm 4 e 1 = = 2.1 cm e 2 = = 12.1 cm I = * ( * )= cm 4 Z 1 = /32.1 = cm 3 ( 下側 ) Z 2 = /27.9 = cm 3 ( 上側 ) e2e2 e1e1 A 1, I 1 A 2, I 2 参考 穴のない四角断面の Z = cm 3

24 どの断面がどの力に強いか 強いための条 件 圧縮 ◎◎ × △△ i が大きい 上下左右対称 引張 ○○○○○ A で決まるので どれも同じ 曲げ ( 破壊 ) ○○× ◎△ Z と i b が大きい 左右対称 曲げ ( 撓み ) ○○× ◎△ I が大きい 左右対称 捩り ◎◎ × △△ i が大きい 同じ断面積 ( トン数 ) のときの比較

25 参考文献 日本建築学会/鋼構造設計基準/丸善 飯野 富士雄/のれん力学(巨大地震から高 層・超高層建築を救う)/朝日新聞社

26 どの断面がどの力に強いか 根拠数字 ○318*7.9 A=77.1 □205*205*8 A=75.2 L200*200*2 0 A=76.0 H396*199*7 *11 A=71.4 H396*199*7 *11 A=71.4 強いための条 件 圧縮 i ◎ 11.0 ◎ 9.8 × 3.90 △ 4.50 △ 4.50 i が大きい 上下左右対称 引張 ○○○○○ A で決まるので どれも同じ 曲げ Z ( 破壊 ) ○ 762 ○ 676 × 197 ◎ 999 △ 145 Z と i b が大きい 左右対称 曲げ I ( 撓み ) ○ 9300 ○ 7230 × 2820 ◎ △ 1450 I が大きい 左右対称 捩り i ◎ 11.0 ◎ 9.8 × 3.90 △ 4.50 △ 4.50 i が大きい 同じ断面積 ( トン数 ) のときの比較

27

28