単心室系疾患 Single Ventricle (SV)
一つの心室が両方の心房からの血流を 受ける先天性心疾患 (心房 - 心室結合異常の心疾患) By Van Praagh Am J Cardiol. 1964; 13: 単心室の定義
心臓発生学 心球部 原始心室 静脈洞 原始心房 動脈幹 D-loop 大・肺動脈 右室 左室 左右心房 左室 右室 総動脈幹 左心房 右心房 心筒 ( Heart tube ) 心ループ 房室管
心房 - 心室結合 最初の心房と心室の結合は、左心室とのみ結合している。 筋性心室中隔 心室間孔 総動脈幹
・左右心室の形成と発達 ・房室管の右側移動と右室への接続 左右心室の発達は拡張期に流入する血液量で決まる。 房室管が停止する位置で発育する心室が決まる。 両心室の発達機序 心室間孔 動脈幹円錐中隔
単心室の発生機序 ・完全な大きな心室 ・低形成な不完全心室 心房・心室結合の発生異常 一側心室への血流量の低下と その心室の低形成
心房-心室関係 RALA RVLV RALA RVLV 右室型単心室 Double Inlet RV (DIRV) 左室型単心室 Double Inlet LV (DILV)
単心室の外観 心臓を輪切りにして上から見ると 前からの外観 後からの外観 小さな右心室 D-loop の時 前 右左
主心室(左心室) 低形成心室(右心室) 僧帽弁 三尖弁 肺動脈 大動脈 左室型単心室 LV VSD
低形成左室 三尖弁 肺動脈 大動脈 心室中隔 右室型単心室 僧帽弁 前 後 VSD 左側から見ている
単心室系疾患 ・左室型単心室 ・右室型単心室 ・僧帽弁閉鎖症 ・三尖弁閉鎖症 ・純型肺動脈閉鎖症 ・内臓錯位症候群 ・左心低形成症候群
三尖弁閉鎖症僧帽弁閉鎖症 左室型単心室類似 右室型単心室類似 一側房室弁閉鎖症 肺動脈 全身 肺動脈 全身
単心室系疾患 の 循環生理
肺動脈 大動脈 単心室循環の特性 肺血管抵抗 体血管抵抗 並列循環 単心室 ・低酸素血症 ・心室の容量負荷増大 ・肺高血圧
単心室の自然予後 生後 1 ヶ月以内死亡: 50 % 生後 6 ヶ月以内死亡: 75 %
先天性心疾患根治術の定義 先天性心疾患根治術とは? 肺循環と体循環の分離 生体が要求する十分な心拍出量を,許容範囲内の体静 脈圧,及び肺静脈 ( 左房 ) 圧で拍出できること. 単心室系疾患の外科治療
先天性心疾患根治術の特殊性 解剖学的根治術 機能的根治術 解剖学的にも、血行動態的にも修復されて いること。(二心房二心室) 解剖学的にも、血行動態的にも修復されて いること。(哺乳類の心臓:二心室修復) 二心室修復にはなっていないが、 血行動態的に修復されていること。 単心室系疾患に対するフォンタン手術
(Functional repair) フォンタン手術 ポンプとして利用できる心室は一個しかない. 肺血管抵抗体血管抵抗 ≪ 唯一の心室は体循環のポンプとして使用する. 肺循環の血流は,どうするか? 体静脈圧(静水圧)と左房圧の圧差のみで流すしかない。 肺循環に使うか、体循環に使うか?
Fontan ( フォンタン)手術 単心室系疾患に対する機能的根治術
体静脈と肺動脈の直 接結合 肺血管抵抗 体血管抵抗 肺血管抵抗 体血管抵抗 並列循環から直列循環への大転換 肺静脈 体静脈 肺静脈 体静脈 肺動脈の心臓 からの分離 体静脈の心臓か らの分離
単心室 体静脈圧 左房圧 肺血管抵抗 体静脈圧 左房圧 肺血流量 = 体血管抵抗肺血管抵抗 Fontan 型手術の血行動態的適応条件 十分な肺血流が得られる条件 本来はここに右心室がある。 1. 肺血管抵抗が低い。 2. 左心房圧が低い。 体血流肺血流
Fontan 循環の特徴 二心室循環 Fontan 循環 左房 右心室で 汲み上げる 肺血管抵抗による障壁 汲み上げる ポンプがない 体静脈 静水圧 右心不全と同じ病態
【 Fontan 型手術適応の最重要条件】 術前 肺血管抵抗が低い ・術後急激に上昇する体 ( 中心 ) 静脈圧に体 静脈系が耐えられるか否か 術前の肺血管抵抗が低いことが最重要 ・より低い体静脈圧で十分な肺血流を維持 するためには、どのような条件が必要か
APC 法 Lateral Tunnel TCPC 法 心外導管型 TCPC 法 Fontan 吻合の色々 右心耳・肺動脈吻合法 現在の主流 体静脈系 - 肺動脈結合 右肺動脈
・右心房-肺動脈直接吻合 (APC 型 Fontan) ( Atrium-Pulmonary artery Connection) 右心房を介在
右心房 - 肺動脈吻合 右心房の収縮力に期待 三尖弁閉鎖 主肺動脈を単心室より離断 右心耳切開 単心室
APC 法の欠点 の血流は一端右房を経由して、 SVC, IVC 血流は一端右房を経由して肺動脈へ入る。 右房内圧の上昇 右房の拡大、 心房細動、右房内血栓
APC-Fontan の上大静脈造 影
( ATS 2002 ; 73 : ) フォンタン循環不全の右心房壁の病理 心房細動心房細動
さらなる肺血管抵抗の上昇 JACC Vol. 41, No. 12, 2003 Prevalence of “Silent” Pulmonary Emboli in Adults After the Fontan Operation
( JJTCS 2003 ; 56 : ) 心房細動非発生率 血栓塞栓非発生率 Years after APC Fontan
蛋白漏出性胃腸症 (Protein loosing enteropathy:PLE) 99m-HSA シンチグラフィー 原因:腸間膜静脈上昇による静脈うっ滞 低タンパク血症 全身浮腫
PLE を伴う Fontan 症例の累積生存率
( JJTCS 2003 ; 56 : ) APC 型フォンタンの遠隔期生存率 Years after APC Fontan これでは、まずいでしょ
上下大静脈-肺動脈吻合 (TCPC 型 Fontan) ( Total Cavo-Pulmonary Connection) 右心房を介さずに、 ・上大静脈は直接吻合 ( グレン吻合 ) ・下大静脈は人工血管を 介して吻合 ( 心外導管型 TCPC)
上大静脈の右肺動脈への直接結合 (グレン吻合法) 上大静脈 右肺動脈 上大静脈
人工血管による下大静脈の右肺動脈への結合 グラフト・右肺動脈吻合 グラフト・下大静脈吻合 下大静脈
TCPC-Fontan( 完 成) グラフト・右肺動脈吻合 グラフト・下大静脈吻合 グレン吻合
グレン吻合造影 右肺動脈圧 11 左肺動脈圧 11 上大静脈圧 11 グレン吻合による上大静脈からの血流
下大静脈-肺動脈グラフト造影 下大静脈圧 11 人工血管
TCPC 法の特徴 1.流路径の変化が少なく、一定の層流が得られるた め、エネルギー損失が少なく、より低い体静脈圧を 維持できる。 1. 流路径の変化が少なく、一定の層流が得られるた め、流れが滑らかなため、より低い体静脈圧を 維持できる。 大、不整脈の抑制が期待できる。 2.心房に高い静脈圧が加わらず、右心房が拡大せず 心房細動の抑制が期待できる。 4 CPC では に無関係に、画一的かつ単純な術式が施行できる。 3. 画一かつ単純な術式が施行できる。
遠隔期生存率の比較 Years after APC FontanMomths after TCPC Fontan 10 年 生存率: 93%10 年 生存率: 61%
それでも Fontan 手術は完成された手術ではない。 Fontan 循環を維持するために、 異常に高い体静脈圧を必要とする こと自体が致命的である。