各教科における 情報活用のあり方 富山大学教育学部附属教育実践総合センター 助教授 小川 亮
学校教育への影響
デジタル化の効果 劣化しない(半永久的に) ネットワークで送れる(速く正確に) ネットワーク上に保管できる みんなが情報を共有できる メディアを小さくできる
情報化社会とは 情報のデジタル化 デジタル情報のメディアとしてのPC デジタル情報とマルチメディア Virtual Reality による仮想空間 ネットワークによる流通
情報化と PC の相互促進
情報化の光の部分 (1)処理の高速性 (2)反復作業の処理(正確性) (3)コミュニケーションの機会の拡大 (4)知を外在化させる道具となる (5)可能性の拡大 ・ディスアビリティのための道具 ・人間の能力の拡張等 (6)効力感の向上 (7)アクセスできる(外在化された)知の増大
情報化の影の部分 (1)インターフェイス問題 (人間疎外や誤った認識を導く) (2)メディア(作業)への没頭 (3)ネットワーク上の犯罪行為 (4)ネットワーク上のめいわく行為 (5)情報を得る機会の不均等 (たとえば教育、就職など) (6)ストレスの増加 (7)ネットワーク・ハイによる不適応
教育における暗の効果 プライバシー侵害の可能性 不適切な情報への接触の可能性 新しい仕事の発生(負担の不平等)
教育における明の効果 個人の情報発信の環境が充実 ・個人がテレビ局や新聞社を持てる 情報を検索できる可能性の増大 情報活用の実践力を育てる環境 距離と時間を超えた教授学習の共同体
情報教育の3つの目的
情報教育とは 文部省「情報化の進展に対応した初等中等教育にお ける情報教育の推進等に関する調査研究協力者会議 」の第1次報告である「体系的な情報教育の実施に 向けて」 (1997) に情報教育の目標が示された。 「情報教育の手引き」 (1991) ではじめて情報教育の 言葉がつかわれた。
なぜ情報教育? 社会が情報化しているから 緊急時の通信網整備 ? 景気対策 ? 学校に学びの変革が必要だから 記憶再生から知識の共有・共創へ 問題解決する力、考える力 情報社会を創る力 子どもたちの世界を広げるため
なぜ情報教育? (USO) コンピュータの使い方を教えるため 理工系の学生を育てたいから モバイル機器を買わせたい CAI や CD-ROM を利用した教育が必要 コンピュータを売りたいから 教師がパソコンを使えるようにするため
「情報活用の実践力」 必要な情報を主体的に収集・判 断・表現・処理・創造する能力 受け手の状況などを踏まえて発 信・伝達できる能力 課題や目的に応じてインターネ ットやコンピュータを適切に活 用
「情報の科学的な理解」 情報活用の基礎となる情報手段の特 性の理解 情報を適切に扱い、情報活用を自己 評価・改善するための理論や方法
「情報社会に参画する態度」 社会生活の中で情報や情報技術が 果たしている役割や及ぼしている 影響の理解 情報モラルの必要性や情報に対す る責任について考え,望ましい情 報社会の創造に参画しようとする 態度
情報教育のカリキュラム 情報教育の目標を達成するために 総合的な学習の時間や 教科教育の時間の中で あるいは特別活動の時間の中で テーマ(課題)を中心に 学習活動を計画・展開する
情報活用の実践力
情報教育の体系的な実施 情報教育の科目 情報とコンピュータ 教科「情報」 総合的な学習の時間 教科教育
総合的学習の時間のねらい 各学校の創意工夫(規制緩和) 横断的・総合的な学習 児童生徒の興味・関心等に基づく学習 自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考 え、主体的に判断し、よりよく問題を 解決する資質や能力を育てる
総合的学習の時間のねらい2 情報の集め方、調べ方、まとめ方、報告や発 表・討論の仕方などの学び方やものの考え方 を身に付ける 問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取 り組む態度を育成 自分のあり方・生き方を見つめる(職業)
体系的な情報教育の枠組み
情報教育の実施 情報教育は総合的な学習の時間と各教科の中 で展開できる 情報教育の目標は「生きる力」の育成と強く 関連している 12年間の学びの中で行う
テーマ・教科と情報教育 テーマ 課題 教科目標 情報教育の 目標 何を育てるのかを明確にしていろいろな活動とクロスさせる 総合的な 学習の時間 教科教育
情報教育が育てる力 問題解決する力 自分で考える力 自分なりの情報戦略 生きる力 総合的な学習の時間との関連
情報教育のカリキュラム 学習課題を中心に、体験活動、収集活動、処 理活動、表現活動、交流活動の5つの活動を バランスよく展開する 期間を通してのバランスを重視する(個々の 授業で全部は無理) 学習者の発達段階や現時点の技能を考慮する
総合的な学習の時間における 情報教育カリキュラム 情報教育の教材パッケージ 身近なテーマ 10時間から20時間のカリキュラム 総合的な学習の時間で利用
教科教育と情報教育 各教科の目標の分析(学習指導要領) 情報教育の目標との対応の分析
情報教育を支援する活動 情報教育の手引き 教科教育
情報教育に関する情報 火曜の会のメーリングリストなど
情報教育の本質
中学校における問題点 教科担任制 思春期 競争社会への入り口 高校受験
問題点の克服 学年担任制やプロジェクト型の指導 自主性に学べるように子どもを鍛える 地域・家庭と連係した学習活動 競争社会の利点と欠点について公正に 判断できる生徒を育てる こころの教育と情報教育の適切な連係
まとめ 小学校における情報教育のカリキュラムは総合的 な学習の時間を中心に実施 情報教育の要素を全く含まない総合的な学習の時 間は本末転倒 小学校では情報活用の実践力に重点 情報教育はコンピュータの操作方法の指導ではな い
まとめ 各教科の学習においても情報活用の実践 力を育成 学習者の発達段階にあわせた指導計画 教師自らが、問題解決を自律的に行う態 度と能力を身につけることが、子どもの 情報活用の実践力の育成にとって必要で ある。 硬直化した教育体制を存続させながら、 新しい教師像を描くことは難しい