・抑うつ:ゆううつ、悲しみ、苦しみなどが持続する感情 喪失に伴っておきることが多い ・不 安 :存在がおびやかされたときにおこる感情 ふるえ、動悸など、不快な自律神経症状を伴う がん患者の精神症状 - 抑うつ・不安の定義 - 大熊 2002
がん患者の心理的反応 - 時間経過と適応 - 0 2週2週 3 ヶ月 通常反応 ストレス (e.g. 告知、再発、病状進行など ) 大うつ病ー重い抑うつ 適応障害ー不安・抑うつ 適 応
大うつ病、適応障害の有病率 - 国立がんセンター がんの部位症例数 有病率 % / 5% 13% / 4% 5% / 4% 35% / 7% 19% / 9% 18% / 5% 適応障害大うつ病 進行肺がん 初回治療前 全病期頭頚部がん 初回治療前 早期肺がん 術後 1 か月間 再発乳がん 診断後 3 か月 終末期がん 死亡前約 2 ヶ月 術後乳がん 外来通院中 17% 9% 19% 23% 42% 28% 合計
大うつ病、適応障害がもたらす影響 ・自殺の最大の原因 ・ QOL の全般的低下 ・家族の精神的負担増大 ・治療コンプライアンスの低下 ・入院期間の延長 ・身体症状の増強 Colleoni, Lancet 2000 Henriksson, J Affective Dis 1995 Grassi, J Pain Symptom Manage 1996 Cassileth, Cancer 1985 Prieto. J Clin Oncol 2002 Lloyd-Williams 2004 様々な面に負の影響を来たす
意欲・興味低下 抑うつ気分 自責感 希死念慮 焦燥感 ・制止 大うつ病エピソードの診断 - アメリカ精神医学会基準 - 睡眠障害 食欲低下 倦怠感 思考・集中力低下 抑うつ気分、意欲・興味低下のいずれかを含む5症状が2週間持続 → 大うつ病
①ストレス因子に反応して情緒面(不安・抑う つ)または行動面の症状が出現 ②機能面の著しい障害 ③他の I 軸診断を除外 適応障害の診断 - アメリカ精神医学会基準 - 大うつ病と正常反応の中間に位置する連続的な病 態
Handbook of Psychiatry in Palliative Medicine Wilson et al.2000 がん患者における大うつ病・適応障害の特徴 適応障害 うつ病 ソーシャル サポート低下 身体機能低下 身体症状 (痛み・倦怠感) 多要因が関与する
大うつ病、適応障害への対応 適応障害 大うつ病 薬物療法 精神療法社会・環境 適宜 必須 ほぼ必須 対応 必要に応じて 身体症状緩和 必要に応じて
不安や抑うつを有する患者さんに対して、心の負担について話 すことは決して恥ずかしいことではないことを伝え(感情表出の 促進)、患者の声にしっかりと耳を傾け(傾聴) 、批判・解釈す ることなく(評価や価値判断をせず)あるがままを受けとめる (受容) 。医療者は患者の言葉に対して肯定的に接し(支持)、 そのうえで適切な情報を提供し、現実的な範囲で保証を与える (保証)。 これらの過程を通して、患者さんを理解し、患者さんの感情と 苦しみは今、まさに正しく理解されつつあると言語的、非言語的 に伝わることが治療的に働く。 支持的精神療法
支持的精神療法 - 例 - 私はもうダメなんです・・・・・・・ A. そんなこと言わないで、もっとがんばりましょうよ(激励型) B. そんなこと心配しなくてもいいんですよ(説得型) C. どうしてそんな気持ちになるんですか?(調査型) D. つらいことが重なると、そんな気持ちにもなりますね(支持型) E. もうダメなんだな --- と、そんな気がするんですね(支持型) F. すみません、今忙しいので、後で来ます(逃避型) がん患者の精神症状への対応 - 精神療法 -
適応障害・不安に対する薬物療法 アルプラゾラム ロラゼパム 一般名 初期投与量臨床用量 留意点 ブロマゼパム ( mg/ 日) 抗うつ効果 座剤あり クロナゼパム エチゾラム グルクロン酸抱合 抗けいれん 鎮痛補助 半減期 長 短 眠気、ふらつきに留意し、少量より使用 抑うつ症状に対する薬物療法は大うつ病に準じる
進行がん患者の大うつ病に対する薬物治療 アルゴリズム - 国立がんセンター 大うつ病診断( DSM-IV ) 大うつ病重症度評価 軽症中等症 - 重症 経口摂取 (可)(可) ( 不可 ) (可)(可) Clomipramine SSRINon-TCATCA Clomipramine SNRI 副作用プロフィールによる使い分け Alprazolam Psychostimulant 有効無効
アルプラゾラム フルボキサミン 一般名 大うつ病の薬物療法 初期投与量臨床用量 留意点 パロキセチン ミルナシプラン メチルフェニデート セルトラリン ( mg/ 日) 神経過敏 眠気、ふらつき 嘔気、代謝阻害 嘔気、排尿障害 クロミプラミン (注射剤) 便秘、口渇、せん妄、 起立性低血圧
がん患者の大うつ病 / 適応障害の簡便なスクリーニング - つらさと支障の寒暖計 - 気持ちのつらさ 最高につらい つらさはない 生活支障度 最高に生活に支障がある 支障はない この 1 週間の気持ちのつらさを 平均して寒暖計の中の最も当て はまる数字に ○ をつけて下さい 2. その気持ちのつらさのために この 1 週間どの程度、日常生活 に支障がありましたか? カットオフ つらさ4点以上 かつ 支障3点以上 感度82%、特異度82% Akizuki, JPSM 2005
推奨される大うつ病、適応障害のマネージメント 簡便な スクリーニング (繰り返し施行) プライマリーチームによる評価 主治医、看護師など 中等度以上の 抑うつ 精神科医 / 心理士に紹介 軽い抑うつ 様子観察 The National Comprehensive Cancer Network Psychosocial Distress Practice Guideline, 2003