1 経済学-第 14 回 年金③ 2008 年 7 月 11 日
2 日本の公的年金制度 ( 続 ) 制度上の問題点 ( 続 ) 国民年金第 3 号被保険者問題 離婚のリスクと年金分割
3 日本の公的年金制度 ( 続 )
4 制度上の問題点 ( 続 )
5 国民年金第 3 号被保険者問題
6 国民年金第 3 号被保険者制度 (← 第 12 回 ) 国民年金第 3 号被保険者 =第 2 号被保険者 ( 被用者 ) に扶養される配偶者 +年収 130 万円未満 → 配偶者本人 : 保険料負担なし ( 保険料ゼロ ) ⇔国民年金 ( 基礎年金 ) 給付
7 国民年金第 3 号被保険者問題 保険料負担すべき論 ①専業主婦世帯は生活水準が高い ②女性の就労に抑制的 ← 年収 130 万円以上になると 可処分所得 ( 手取り収入 ) 減少 … 資料 14-1 ⇒労働時間調整 → 保険料負担回避 ( =年収の壁 130 万円 )
8 保険料負担必要なし論 ①専業主婦本人は所得がない ( 少ない ) ②育児や介護などの「内助の功」を評価 → 国民年金 ( 基礎年金 ) 給付 ③保険料負担 → 保険料未納者が増加? 第 3 号被保険者制度=専業主婦世帯を基礎 ⇔働く女性の増加 → 家族形態の変化 ∴共稼ぎ世帯>専業主婦世帯 … 資料 14-2 ⇒共稼ぎ世帯からの不満
9 第 3 号被保険者制度見直しの方向性 第 3 号被保険者に保険料負担? cf. 現行制度の保険料負担と年金給付の考え方 → 世帯単位での公平 =世帯全体の収入が同額であれば 保険料負担 : 共稼ぎ世帯=専業主婦世帯 年金給付 : 共稼ぎ世帯=専業主婦世帯
10 共稼ぎ世帯 夫の月収 :30 万円+妻の月収 :30 万円=世帯収入 :60 万円 夫の保険料 :4.5 万円+妻の保険料 :4.5 万円=世帯保険料 :9.0 万円 → 月収 30 万円 × 約 15 %= 4.5 万円 夫の年金 :16.7 万円+妻の年金 :16.7 万円=世帯年金 :33.4 万円 → 厚生年金 10.1 万円 ( 平均賃金 :30 万円 ) +国民年金 6.6 万円 専業主婦世帯 夫の月収 :60 万円+妻の月収 :0 円=世帯収入 :60 万円 夫の保険料 :9.0 万円+妻の保険料 :0 円=世帯保険料 :9.0 万円 →60 万円 × 約 15 %= 9.0 万円 夫の年金 :26.8 万円+妻の年金 :6.6 万円=世帯年金 :33.4 万円 → 厚生年金 20.2 万円 ( 平均賃金 :30 万円 ×2→ 報酬比例 ) +国民年金 6.6 万円
11 → 第 3 号被保険者に保険料負担 → 世帯単位での公平が崩れる =世帯全体の収入が同額であれば 保険料負担 : 共稼ぎ世帯<専業主婦世帯 年金給付 : 共稼ぎ世帯=専業主婦世帯
12 年収 65 万円以上の専業主婦 → 第 2 号被保険者として厚生年金に加入? ⇒保険料負担 ( 本人負担 ): 総報酬 × 保険料率<国民年金保険料 → 労使折半 年金給付 : 国民年金+厚生年金 ⇔事業主の厚生年金保険料の負担増 → 反対論 ( 特に,流通業界や外食産業 )
13 専業主婦の離婚のリスク 婚姻時 保険料負担 : ゼロ 年金給付 : 国民年金 ※被用者 ( 第 2 号被保険者 ) 死亡時 : +被用者の厚生・共済年金の 4 分の 3 離婚時 保険料負担 : 第 1 号被保険者の保険料 年金給付 : 国民年金のみ??
14 離婚のリスクと年金分割
15 離婚時の年金分割制度の導入 (2007 年 4 月~ ) → 夫の厚生・共済年金を離婚後の夫婦間で分割 =夫の厚生・共済年金の一部を妻に
16 合意分割 (2007 年 4 月~ )… 資料 14-3 婚姻期間中の保険料納付記録 ⇒夫婦間で分割 → 年金給付に反映 ①適用対象 : 第 2 号被保険者 / 第 3 号被保険者 ②保険料納付記録の多い側から少ない側に ※分割割合 : 多い側の最大 50 %まで =少ない側が多い側を上回る分割 → 不可 ③分割割合 : 夫婦間の合意による ④合意に至らない場合 → 家庭裁判所の審理による決定
17 3 号分割 (2008 年 4 月~ )… 資料 14-4 第 3 号被保険者期間中の 第 2 号被保険者の保険料納付記録 (2008 年 4 月~ ) ⇒自動的に 2 分の 1 に分割 → 年金給付に反映 ⇔第 3 号被保険者期間中の 第 2 号被保険者の保険料納付記録 ( ~ 2008 年 3 月 ) → 合意分割 … 資料 14-3 ⇔第 2 号被保険者同士の夫婦 → 合意分割 … 資料 14-3
18 年金分割 → 専業主婦の離婚のリスクは? 離婚時 保険料負担 : 第 1 号被保険者の保険料 年金給付 : 国民年金 +婚姻中の夫の厚生年金分割 =自動的に 2 分の 1 に分割 ⇒離婚時の所得保障 ( =離婚時の備え )
19 参考資料の出典等 資料 14-1… 中小企業庁『中小企業白書 平成 12 年版』 資料 14-2… 内閣府『男女共同参画白書 平成 19 年版』 資料 14-3… 社会保険庁「離婚時の厚生年金の分割制度について」 資料 14-4… 社会保険庁「離婚時の厚生年金の分割制度について」
20 第 15 回の予定 まとめと試験 16:20-16:30 授業の総括 16:30-17:30 前期セメスター試験
21 前期セメスター試験 日時 :2008 年 7 月 18 日 ( 金 ) 16:30-17:30 ( 試験時間 60 分 ) 場所 :751 教室 範囲 : 授業で説明した内容+レポートの課題 形式 : 穴埋め+論述 ( 記述 ) →2007 年度の問題を参照 ( ホームページにも掲載 ) 持込み : 制限なし
22 成績評価 ( 第 1 回の再説 ) 試験 :70 %+ホームワーク :30 %のウェイトで 総合評価 ホームワークの提出期限 : 第 15 回の授業日 (7 月 18 日 )
23 レポート ( ホームワーク ) の課題 ① 2007( 平成 19) 年に実施された所得税改正について説明し,それに対す るあなたの意見・感想を述べなさい。 ② 2004( 平成 16) 年以降の「配偶者特別控除の一部廃止」について説明し, それに対するあなたの意見・感想を述べなさい。 ③ 2008( 平成 20) 年度から導入された住民税 ( 地方税 ) における「ふるさと 納税」制度について説明し,それに対するあなたの意見・感想を述べ なさい。 ④ 2004( 平成 16) 年度に実施された「消費税の事業者免税点制度の改正」 について説明し,それに対するあなたの意見・感想を述べなさい。 ⑤ 2008( 平成 20) 年 5 月 1 日以降の「ガソリン税の暫定税率復活」について 説明し,それに対するあなたの意見・感想を述べなさい。
24 ⑥ 2008( 平成 20) 年度から導入された「後期高齢者医療制度」について, 与党が検討している改善策 ( 見直し案 ) の内容を説明し,それに対する あなたの意見・感想を述べなさい。 ⑦ 2006( 平成 18) 年 4 月の介護保険制度改正について説明し,それに対す るあなたの意見・感想を述べなさい。 ⑧公的年金の運営方法である「社会保険方式」と「税方式」について 説明し,あわせて,「日本においては、国民年金 ( 基礎年金 ) 部分を税 方式とすべきである。」という見解に対するあなたの意見・感想を述 べなさい。 ⑨近年における国民年金 ( 基礎年金 ) 保険料の未納問題への対応策につい て説明し,それに対するあなたの意見・感想を述べなさい。 ⑩国民年金第 3 号被保険者問題について説明し,それに対するあなたの 意見・感想を述べなさい。