オープンソースの諸問題 於: OSSAJ オープンソースビジネスセミナー 2005 年 5 月 30 日(月) 風穴 江(かざあな こう) TechStyle 編集長、コラムニスト

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オープンソースの諸問題 於: OSSAJ オープンソースビジネスセミナー 2005 年 5 月 30 日(月) 風穴 江(かざあな こう) TechStyle 編集長、コラムニスト

TechStyle ── 自己紹介に代えて  オープンソースビジ ネスのクオリティマ ガジン  「 Open Source Business Review 」を提供中

Contents  「オープンソース」のおさらい  オープンソースの現状  オープンソースに関する懸念  ビジネスモデル  品質  知的財産権

オープンソース  「オープンソース」は造語 → 1998 年 2 月に作られた比較的新しい言 葉  最初から明確な定義がある → 「 the Open Source Definition 」  ソフトウェアを不特定多数で共同開発する、 という手法 → 「伽藍とバザール」によって着目  オープンソースライセンス → 共同開発のためのライセンス

オープンソースの対義語  対義語は「クローズドソース」ではない! → 「 Open 」と「 Close 」の安易な想像 ……  あえて言うなら対義語は「プロプライエタ リ」 → プロプライエタリ= proprietary (独占 の)  不特定多数による開発=誰の専有物でもない → 緩やかな「共有」状態 → だから対義語は「独占」状態

オープンソースの定義(主なもの)  再配布が自由に行える  ソースコードが提供される  派生ソフトウェアの作成および配布 を自由に行える こうすることで、不特定多数による共同開発 がスムーズに行える、というライセンス

オープンソースの特徴 1. 誰も独占できない → 著作権が放棄されているわけでないが、 利用や再配布などが明確に許諾されている 2. 自由に利用できるので、テストやプロトタ イプ作成をしやすい 3. ソースコードレベルで改良、改造できる 4. 共同開発なので、自分 1 人ですべてを抱え 込まなくても良い

オープンソースのメリット(1)  エンドユーザーにとって 誰も独占できないので、ベンダロックされない サポートサービスを自由に選択できる 自由に利用できるので、試用しやすい  SIer にとって 誰も独占できないので、ベンダロックされない 技術力さえあれば、自由に改造、改良できる 自由に利用できるの、試用しやすい

オープンソースのメリット(2)  メーカーにとって すべてを自分で抱え込まなくても良いので、 開発コストを削減できる(自分の力が及ばな いところは、誰かの支援を期待することがで きる) 実現可能性は、自分の技術力にだけ依存する (技術さえあれば何でもできる) 既存のソフトウェアを再利用したり、参考に したりすることで、開発に役立てることがで きる

オープンソースの現状  オープンソースへの関心は高まってきてい る  ビジネスの局面でも、もはや「知らない」 では済まされない  しかし、「オープンソース」ということだ けで大成功した企業はない  オープンソースには、まだまだ課題が存在

オープンソースに関する懸念  ビジネスモデル 「サービスで儲ける」と言われても ……  品質 「無保証」? セキュリティ:「見せる」ことへの不安  知的財産権 侵害可能性についての不安 ライセンスの有効性は?

ビジネスモデル  王道( royal road )は、まだ見つかってい ない  ライセンスビジネスを行えないわけではな いが、ライセンスを「独占」することに よって利益を最大化することはできない  所詮、ビジネスは、他ではできない「何 か」が勝負  オープンソースは「打ち出の小槌」や「魔 法のランプ」ではない  しかし、「ハサミ」として使いようはある

品質  オープンソースは「無保証」が基本?  「無保証」で提供されているが、「保証して はいけない」というわけではない  開発する人と、保証する人が、別々であり得 るのがオープンソースの特徴  ソースコードを「見せる」ことは、必ずしも セキュリティ上の問題とはならない  ソースコードを検証できないソフトウェアの セキュリティを信頼することの方が難しい

知的財産権  オープンソースは「無法地帯」?  ソースコードが明らかにされるので、オー プンソースは「ごまかし」がきかない  むしろ、オープンソース開発では権利関係 にナーバスになるという面もある  特許には「文殊の知恵」で対抗  ライセンスが多種多様なのは仕方がない