当科における腰椎疾患に対する 治療の現状と外来管理の チェックポイント 福島医大整形外科 脊椎クリニック 恩田 啓
治療の現状
脊椎疾患手術の内訳 2009年 75例 45例
腰椎変性手術の内訳 腰椎椎間板ヘルニア 腰部脊柱管狭窄
1.腰椎疾患の診察(入院時ルーチン) 神経学的所見 安静時 歩行負荷後,伸展負荷後 画像検査 単純X-p, CT, MRI etc. 安静時 歩行負荷後,伸展負荷後 画像検査 単純X-p, CT, MRI etc. ABI(Ankle-Brachial Index)検査 残尿測定 エコーによる測定 精神医学的評価 BS-POP(医師用,患者用)etc
2.高位診断 神経根型間欠跛行 神経根ブロックによる高位診断 一時的でも症状(下肢痛)が消失することが手術を勧める上で必要条件 一椎間の障害に絞り切れない場合 ⇒多根ブロック
2.高位診断 馬尾型間欠跛行 神経学的所見と画像所見で高位診断 多椎間障害があり, 責任高位が絞り切れない場合 ⇒馬尾活動電位(CEAP)の測定
3. 手術療法 腰椎椎間板ヘルニア ①従来法(Love法に準ずる) ②内視鏡下ヘルニア摘出術
3. 手術療法 腰部脊柱管狭窄 ①選択的除圧術(従来法) ②筋肉温存型除圧術 ・MILD(muscle-preserving interlaminar decompression)法 ・棘突起縦割法 ③内視鏡下椎弓骨切り
4. 腰椎手術後の後療法と経過観察 翌日から離床 外固定なし 術後平均10日で退院 通院 術後1, 3, 6, 12カ月目 術後1, 3, 6, 12カ月目 それ以降は, 1年間隔 診察, 術後成績の評価
5. 手術以外の治療 退行性腰椎疾患による慢性腰下肢痛としびれの訴えに対して! 1. 薬物療法 ・鎮痛薬(オピオイド含む) ・抗うつ薬 ・鎮痛薬(オピオイド含む) ・抗うつ薬 ・Vit. B12薬, PG-E1薬, 抗てんかん薬 ・骨粗鬆症薬 ・Naチャンネルブロッカー 2. ブロック療法 3. 精神医学的異常があれば, 心身医療科とのリエゾンアプローチ 4. 理学療法
薬物療法 鎮痛薬 ①NSAIDS Cox-2選択的阻害剤で胃腸障害が減少したが, 心血管系イベントのリスクあり 高齢者には,long-actingよりshort-actingのものが調整しやすい 胃腸障害, 腎障害には特に注意 急性疼痛に対しては有用であるが, 慢性疼痛に対しては有効でないことが少なくない
薬物療法 ②ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液 下行性疼痛抑制系の活性化による鎮痛作用 循環改善作用,自律神経調整作用あり 異常感覚を訴える症例に使用 副作用が非常に少ない ③オピオイド 慢性非がん性疼痛に対して, リン酸コデインと塩酸モルヒネをよく用いる リン酸コデイン100倍散 塩酸モルヒネ散 NSAIDsで効果が不十分な場合に併せて使用 緩下薬を一緒に投与
薬物療法 ④抗うつ薬 下行性疼痛抑制系の活性化あるいはうつ状態自体の改善による二次的な疼痛軽減作用 従来の副作用が少ない, 第3世代(選択的セロトニン再取り込み阻害薬: SSRI)と第4世代(セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬: SSRI)が主流 患者に対して, うつ病の薬であるが, 疼痛に対して投与していることを十分に説明する事が肝要
薬物療法 ⑤抗てんかん薬 Vit. B12とPG-E1無効例のしびれに対して投与 鎮痛作用も認められる クロナゼパム(リボトリール®)がよく用いられる 半減期が長い(18~36時間とlong-acting)ため高齢者では,1日1Tを眠前から投与 主な副作用: 眠気, 倦怠感, めまい クロナゼパムが無効の場合は, ガバペンチン(ガバペン®)を併用 患者に対しては, てんかんの薬であるが, しびれに対して投与していることを十分に説明する事が肝要
2. ブロック療法 <下肢痛を認める場合> 仙骨硬膜外ブロック (抗凝固療法中の患者には原則禁忌) 無効例 腰仙部神経根ブロック
<下肢痛以外に腰痛を認める場合> 神経根ブロック 髄節性腰痛 神経根由来 (神経根性腰痛) 腰痛不変 腰痛消失 椎間関節由来 仙腸関節由来 股関節由来 疼痛消失 椎間関節ブロック (後枝ブロック) 疼痛不変 仙腸関節ブロック 非髄節性腰痛 股関節ブロック 腰部交感神経節ブロック 第2腰神経根ブロック
外来管理でのお願い
対象患者 ✔術後の経過観察中の投薬. ✔外来で保存療法中(投薬・硬膜外 ブロック)でADLがコントロール されている場合. されている場合. ✔理学療法が必要な場合. 先生方へ治療の協力をご依頼!!
✔疼痛の増悪 ✔神経症状の増悪 ✔患者の要望 当クリニックで対応させて 頂きます!!