多国籍企業理論 内部化理論. 世界経済システムと企業行動 自由貿易 自然的な 市場の不完全性 関税、 NTB 、など 政府による貿易障壁 MNE 効率的内部市場 競争的国際市場.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
第5章第5章第5章第5章 競争的な市場が望ましくない場合. ①公益事業のかかえる問題 市場の失敗 ・問題が競争では解決しない ・競争状態の到達点が望ましい状態と 言えない 費用逓減産業問題 ( 自然独占問題 ) 圧倒的コスト優位のため市場が競 争的にならず、自然と独占状態になる 産業.
Advertisements

経常収支とは?  一国の国際収支を評価する基準の一つ。  この 4 つのうち、 1 つが赤字であっても他で賄え ていれば経常収支は黒字となる。 貿易収支 モノの輸出入の 差 所得収支 海外投資の収益 サービス収支 サービス取引額 経常移転収支 対価を伴わない 他国への援助額 これらを合わせたものが経常収支.
現代世界経済をとらえる Ver.5 © 東洋経済新報社 1 第 6 章 多国籍企業と直接投資 グローバリゼーションを担う巨大企業群.
市場機会の発見・評価・選択.
第2章競争戦略 梶田 真邦 桑原 雪乃 斉藤 晋世.
甲南大学『ミクロ経済学』 特殊講義 新旧産業組織論と ネットワーク・エコノミックス 2Kyouikukatudou/3Hijyoukin/2000/Konan2000.html 依田高典.
M.E.ポーターの競争戦略論 M.E.ポーターの競争戦略論は、「競争優位」に関する理論的フレームワークを提示した基本的理論である。SCPパラダイムという考えをもとに持続的な競争優位を確立するための戦略である。 SCPとは、市場構造(structure)、企業行動(conduct)、業績(performance)の略語であり、市場構造と企業行動が業績を決めるという考えである。
事業システム分析の基本テンプレート 氏名 この分析の詳細については、加護野忠男・井上達彦『事業システム戦略』有斐閣僚、
第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
流通と営業.
<キーワード> 景気循環 総需要・総供給モデル
第三章要約 りんご.
ミクロ経済学の基礎 経済学A 第1回 畑農鋭矢.
経済原論II  ミクロ経済学入門 2016年度 麻生良文.
多々納 裕一 京都大学防災研究所社会システム研究分野
法と経済学研究 2016年度 麻生良文.
5 国際貿易の構造と理論 ーーグローバル化と貿易理論ーー
現代の経済学B 伊東光晴「ケインズ」第3回 一般理論の骨組み(ii) 現代資本主義とケインズ経済学 京大 経済学研究科 依田高典.
6 需要、供給、および政府の政策.
第7章 途上国が「豊か」になるためにすべきこと
私的財と公共財 非排除性と需要の共同性 コモンズの悲劇
日本租税総合研究所 国際課税委員会 Discussion Material グローバルプランニング事例
イントロダクション.
第7章 市場と均衡.
3章 なぜ政府が必要なのか 渡辺真世.
マクロ経済学 II 第9章 久松佳彰.
第7章 どのように為替レートを 安定化させるのか
(景気が良くなり)ハンバーガーの需要が拡大すると
製品ライフサイクルと マーケティング戦略.
地方公共財とクラブ財.
4 国際通貨 1 国際通貨の基礎理論 2 国際通貨の機能と選択 3 管理通貨制度下の国際通貨 国際金融2002(毛利良一)
国際経済3 多国籍企業 6-1.直接投資と多国籍企業の現状 6-2. 多国籍企業と直接投資の理論 6-3. 多国籍企業とM&A・国際提携
経営学Ⅰ 競争優位.
第12章 外部性.
経済原論IA 第11回 西村「ミクロ経済学入門」 第12章 市場機構の限界 京都大学経済学部 依田高典.
手に取るように金融がわかる本 PART6 6-11 09bd139N 小川雄大.
特殊講義(経済理論)B/初級ミクロ経済学
<キーワード> 景気循環 総需要・総供給モデル
資源ナショナリズムについて 2012/01/20 長谷川雄紀.
経営学総論 ガイダンス Thursday, April 15, 2004
市場の失敗と政府の役割 経済学A 第8回 畑農鋭矢.
世界金融危機とアジアの通貨・金融協力 日本国際経済学会関東支部研究会2010年1月9日.
生産要素への需要と生産要素価格: 労働市場・資本市場・土地の市場
法と経済学2(5) 製造物責任制度とルールの中立性
導入段階.
経済学とは 経済学は、経済活動を研究対象とする学問。 経済活動とは? 生産・取引・消費 等 なぜ、経済活動を行うのか?
国際貿易の外観.
市場経済 商品を買 いたい人 商品を売 りたい人 市場 (いちば) 外国と交易し, 商品範囲を広げる 商人は 利得を拡大 客の要望 が増大.
経済原論IA 第9回 西村「ミクロ経済学入門」 第8章 企業の長期費用曲線と 市場の長期供給曲線 京都大学経済学部 依田高典.
V. 開放経済のマクロ経済学.
市場の失敗と政府の役割 経済学A 第9回 畑農鋭矢.
VI 短期の経済変動.
V. 開放経済のマクロ経済学.
第8回講義 マクロ経済学初級I .
11 公共財と共有資源.
顧客関係性マネジメント.
9 応用:国際貿易.
管理的側面 管理者に必要な経営知識 経営学の基本 ②環境と戦略と競争優位.
16.独占的競争.
中級ミクロ経済(2004) 授業予定.
業種レベルでのCAGEの枠組み ○国ごとの差異のインパクトは業種ごとに違う ⇒企業は自分の業種を考慮すべき ①文化的な隔たり・・言語、宗教性、民族性 ②制度的な隔たり・・関税、国内調達規制 ③地理的な隔たり・・物理的な隔たり ④経済的な隔たり・・所得水準.
国際経済の基礎9 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2007年11月22日
丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2006年6月29日
第4章 プライマリー・マーケットにおけるCBA
労働市場 国際班.
跡見学園女子大学マネジメント学部 国際経済学
第7章 不完全競争 市場経済の基本的なメカニズムは,健全な経済を維持する上で欠かせないものである。
都市・港湾経済学(総) 国民経済計算論(商)
イノベーションと異文化マネジメント(P17~P35) 質問・コメント・問題提起
マーケティング・チャンネル戦略.
Presentation transcript:

多国籍企業理論 内部化理論

世界経済システムと企業行動 自由貿易 自然的な 市場の不完全性 関税、 NTB 、など 政府による貿易障壁 MNE 効率的内部市場 競争的国際市場

自然的な市場の不完全性 公共財に関する価格の設定: たとえば、知識、情報など 公共財に関する価格の設定: たとえば、知識、情報など 取引コスト: 買い手の不完全性 取引コスト: 買い手の不完全性 品質管理 契約締結の困難性

知識の基本的性質 正規の市場において価格設定が困難 正規の市場において価格設定が困難 最終財ではなく中間財の形態が多い 最終財ではなく中間財の形態が多い 企業特殊的なため消散リスクが発生 企業特殊的なため消散リスクが発生 外部市場より内部市場を選好

公共財とは何か 定義:ある一人がその財を消費(使用) するこ とによって、その他の当事者の 消費が妨 げられないこと。 定義:ある一人がその財を消費(使用) するこ とによって、その他の当事者の 消費が妨 げられないこと。 例:知識 灯台の光、道、橋 例:知識 灯台の光、道、橋 所有権が確立し、外部性が克服されると、 私有財となる。 所有権が確立し、外部性が克服されると、 私有財となる。

非自然(人為)的市場の不完全性 政府規制: たとえば、関税、外国為替管理、対外直 接投資( FDI) 規制など。 政府規制: たとえば、関税、外国為替管理、対外直 接投資( FDI) 規制など。

自由貿易か多国籍企業化か 外部環境要因である市場が完全(参入・ 退出が自由)であれば、企業は、国際ビ ジネスへの参入方式として、自由貿易を 選好する。 外部環境要因である市場が完全(参入・ 退出が自由)であれば、企業は、国際ビ ジネスへの参入方式として、自由貿易を 選好する。 外部環境に自然的市場の不完全性、また は人為的市場の不完全性(関税、 NTB な どの政府規制)あれば、企業は、その内 部に市場を作ろうとする(内部化)。 外部環境に自然的市場の不完全性、また は人為的市場の不完全性(関税、 NTB な どの政府規制)あれば、企業は、その内 部に市場を作ろうとする(内部化)。

市場の不完全性パラダイム ( ハイマー ) 企業は市場の代替する 技術提携では優位性から生じる収益を 享受できない 構造的市場の失敗 / 取引コスト ①外国企業は、投資を生かすためには、 現地企業に優る優位性を保持しなけ ればならない ②この優位性を販売する市場は不完全 でなければない

ハイマーの MNE 分析の視点 米国企業は各地に存在するが、負債は米 国以外、有価証券と現金は米国に存在す る 相互投資 : 米向け証券投資、米国か FDl 米国の FDl の大半が製造業特定産業だけが FDl を行っている 相互投資が同一産業内に存在 FDI の根拠として企業優位性に着 目

C. キンドルバーガー 「独占的優位」 製品市場における完全競争からの乖離 要素市場における完全競争からの乖離 規模の経済性 : 水平・垂直統合 外部要因の存在:規制・奨励策等 完全競争の否定 経済安定性、寡占性の追求

ハイマー理論の評価 1. 優位性の命題を提示し、 FDl を資本 移動理論から産業組織論へ展開 2. 市場の不完全性を提示

ハイマー理論の限界 ①初期の FDl には有効だが、グローバ ル化することが企業に優位性を与え る理論に欠如 ② MNE を独占利潤の追求者と捉えた ため、取引司ストに対する効率の追 求者という概念が欠如 ③優位性を所与にしている短期理論な ため、優位性の獲得について言及し ていない

コースの取引コスト論 取引費用の概念 1. 価格メカニズムを通して生産を「組織化」する上で、関連価格が何で あるか発見するためのコスト 2. 個々の取引契約の交渉と締結のためのコスト 3. 短期契約では両当事者にはたすべき義務の内容が明瞭に特定できない ことから起こるコスト 4. 市場を利用するところからくる資源配分の不確実性 5. 市場取引に対する課税、割当、価格統制などの諸規制 ( これは市場で の交換取引と、企業内で組織化される同じ取引が政府や規制権をもつ 他の団体によってしばしば別個に扱われるということで、間接税など が例にあげられる。 ) 市場に媒介される交換経済の中に、なぜ、この市場メカ ニズムを排除する『企業』が出現するのか、そしてこの 企業の均衡規模は何によって決定されるか。

取引コスト論による企業理論 企業が拡張をめざす条件 1. 組織化コストが少なくなればなるほど、そして、これらのコストが組 織化された取引の増大と共に上昇するのが緩慢であればあるほど。 2. 企業者のミスがより少なく、組織化された取引上の増大と共にそのミ スの増大がより少なくなるにつれて。 3. 比較的大きな企業の生産要素の供給価格上の低下 ( あるいは上限がよ り少なくなる ) がより大きくなるにつれて。 企業の均衡規模の決定 追加的な取引を企業内に組織化するコスト > 企業が同じ取引を市場で行った場合のコスト … 市場取引 < 他の企業に内部化される場合のコスト … 吸収合併

ウィリアムソン内部組織の失敗 ①コントロールの喪失 → システム上の合理性 VS サブグループの合理性 ②官僚的偏狭性 → 企業規模の拡大化に伴い、組織の階層化が促進 → 経営者の調整上の負担と情報・指令が伝達する過程にノイズ を発生

内部化理論の背景 ハイマー 企業特殊的優位性を用いた市場の不完全 性パラダイム コース・ウイリアムソン 取引費用、市場の組織化(内部化コス ト)の概念

内部化優位性 (バックレー) 生産をコントロールし計画する能力 価格差別化による市場利潤の極大化 双方独占市場の回避 市場取引で生じる知識移転に伴う不確実 性の回避 政府の干渉の回避

内部化の理由 企業は、巨額の資金を投入し、研究開発 を行って開発した新製品に体化されてい る知識ノウハウやスキルの消散(dis sipation)リスクを最小にする ためには、当該製品を輸出(自由貿易) するのが最も望ましい。 しかし、2つの貿易障壁(市場不完全 性)が存在するとき、そして知識が公共 財化することを回避するために内部化を 図る。

内部化とは 内部化とは、外部市場に代えて、企業の内 部に独自の市場を形成することを指す。 企業が垂直統合を図ったり、あるいはライ センシングではなく、海外直接投資を選 好するのは、そのためである。 内部化こそ企業が多国籍化をする最大の 理由である、と主張するのが内部化モデ ルである。 その最右翼の論者:アラン・ラグマン。

「内部化」の定義 ラグマン 内部化とは、企業内に市場を作り出すプロ セスである。きぎょうの内部市場は、結 果のある正規(または外部)市場に代替 し、資源配分と流通の問題を経営管理命 令を用いて解決する。 企業の内部価格は、企業の組織活動を円滑 化し、内部市場と同じように効率的に機 能することを可能にする。

内部化利益 市場の不完全性パラダイムを取引費用 に転換し取引費用の克服をもって内部 化利益とする 市場取引における不確実性 中間財市場における外部市場の非効率 知識に関する不確実性 政府規制

内部化費用 企業規模拡大による経営上の刺激の創出 外部市場を個別に内部化するための規模 の経済性の喪失 情報システムの管理費用および経営能力 の必要 内部化リスクの発生

内部化と統合 ケイブス 水平統合型MNE 知識占有/情報偏在と買い手の不確実性 垂直統合型MNE コントロールの維持/取引コストの最小 化 多様型MNE リスク・プーリング

内部化モデルの限界 分析対象が1社 外部化・内部化の二分法 市場の失敗を外生的要因に仮定 内部化コストの分析不足 企業家精神、イノベーション等の概念不足 外国市場供給方式選択 静学モデル 新しいタイプの FDI への理論的限界

市場参入に関する ハーシュ・モデル C=本国での財の通常コスト C*=受入国となる海外での財の通常コスト M*=輸出マーケティング・コスト (関税等を含む) A*=多国籍企業が海外で事業を営むことに伴う 追加的コスト D*=知識消散コスト

市場参入条件 1 C+M*<C*+A* C+M*<C*+D* であれば、企業は輸出を選好。 2 C*+A*<C+M* C*+A*<C*+D* であれば、企業はFDIを選好。 3 C*+D*<C*+A* C*+D*<C+M* であれば、企業はライセンシングを選好。

動態的な市場参入方式の順序 時間 0 輸出 直接投資 ライセンシング A B S1S1 S2S2

動態的な市場参入方式の順序 時間 0 輸出 直接投資 ライセンシング A B S1S1 S2S2

内部化モデルによる 市場参入方式の説明 輸出( E ) 対外直接投資( FDI ) ライセンシング( L )

海外市場参入方式 輸出国/本国/ Home Country 輸入国/受入国/ Host Country 輸出 FDI ライセンス

FDI意思決定プロセスのフ ローチャート 自由貿易障壁 ( 人為的市場の不完全性 ) NO 輸出 Yes 知識の消散リスク (自然的市場の不完全性) 対外 直接投資 NO ライセンス 供与 Yes