土地利用マイクロシミュレーションのための 年代の違いを考慮した世帯別転居行動分析 関西大学大学院理工学研究科 社会資本計画研究室 金崎 智也.

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土地利用マイクロシミュレーションのための 年代の違いを考慮した世帯別転居行動分析 関西大学大学院理工学研究科 社会資本計画研究室 金崎 智也

研究背景 政策立案や代替案を比較検討する際、都市モデルを用いることで街の変遷を 予想し、政策議論をより充実させることができる。 2 ……… 2000 年 2005 年 2030 年 政策導入 5 年ごとに シミュレー ション 5年間に各世帯において 転居が行われるかどうか? 政策導入なし 政策導入あり まちの姿の違いが 政策導入による効果 まちの姿の違いが 政策導入による効果 人口動態や 経済情勢の変化 人口動態や 経済情勢の変化 世帯属性や住宅属性が 世帯の行動選択に与える影響は 時間的に変化? 世帯属性や住宅属性が 世帯の行動選択に与える影響は 時間的に変化?

研究の目的と方法 研究の目的 転居行動の実態を把握するとともに、年代の違いによる 転居行動の変化を明らかにする。 研究の方法 2011 年実施富山市アンケート調査を用いて 1.クロス集計結果 転居行動に影響を与えている要因の考察。 2.二項ロジットモデルによる行動選択の推定 世帯の行動選択へ影響を与えている要因を明らかする。 3

転居行動の実態 主な転居理由 ▫ 持家居住世帯:持家の購入 ( 22.1%) ,親からの独立 ( 16.6%) 住宅の広さに対する不満 ( 23.8%) ,結婚 ( 13.2%) ▫ 借家居住世帯:持家の購入 ( 55.9%) ,出産・子育て ( 11.8%) 住宅の広さに対する不満 ( 25.5%) 転居パターン別延べ床面積の変化 4  主に面積増加  持家⇒持家  借家⇒持家  借家⇒借家  主に面積減少  持家⇒借家 図1.持家から持家へ転居した世帯の延べ床面積分布

非集計二項ロジットモデルによる分析 二項ロジットモデルの選択確率は選択肢間の効用差に依存している ため、効用関数形を線形とすると次式のように表せる。 5 平成 20 年住生活総合調査より、就職や結婚・出産などの世帯のライフサイクルに関わる転居理由が多い ことから「世帯主年齢、世帯人数」、住宅の老朽化から「築年数」、住宅の狭さから「延べ床面積」、 不便性に対する耐久を示すものとして「居住年数」を変数設定している。 住宅の広さに対する不満 を転居によって解消 ⇒符号は「+」と 予想できる 住宅の広さに対する不満 を転居によって解消 ⇒符号は「+」と 予想できる

推定結果「持家居住世帯」 6 表 2. 二項ロジットモデル推定結果「持家居住世帯」 判断年次 1995 年 2000 年 2005 年 係数( t 値)係数( t 値)係数( t 値) 世帯主年齢 ×10 -3 (-0.57) 9.271×10 -4 (0.07) 5.308×10 -4 (0.04) 世帯人数 1.810×10 -1 (1.45) 1.770×10 -1 (1.62) 2.272×10 -1 ** (2.23) 築年数 5.930×10 -2 ** (3.70) 7.310×10 -3 (0.45) 3.924×10 -2 ** (2.62) 延べ床面積 ×10 -3 ** (-5.60) ×10 -2 ** (-7.54) ×10 -2 ** (-9.78) 居住年数 ×10 -2 (-0.68) 6.622×10 -3 (0.39) ×10 -2 (-1.06) 定数項 ** (-3.69) ** (-3.38) ** (-2.33) 尤度比 ※ ** : 5% で有意 1995 年 と 2000 年 年 と 2005 年 年 と 2005 年 3.46 パラメータの差の検定 1995 年 と 2000 年 年 と 2005 年 年 と 2005 年 0.91 ・延べ床面積 ・築年数 ◆延べ床面積の解釈 住宅価格の代理変数として 機能している可能性が高い ◆延べ床面積の解釈 住宅価格の代理変数として 機能している可能性が高い

推定結果「借家居住世帯」 7 表 3. 二項ロジットモデル推定結果「借家居住世帯」 判断年次 1995 年 2000 年 2005 年 係数( t 値)係数( t 値)係数( t 値) 世帯主年齢 2.821×10 -2 ** (2.13) 1.351×10 -2 (1.17) ×10 -3 (-0.32) 世帯人数 2.024×10 -1 (1.54) 2.690×10 -1 ** (2.21) 4.758×10 -1 ** (3.74) 1人当たり 延べ床面積 ×10 -3 * (-1.89) ×10 -2 ** (-2.95) ×10 -2 ** (-4.61) 居住年数 ×10 -2 (-1.40) ×10 -3 (-0.62) 3.329×10 -2 ** (2.00) 定数項 ** (-2.62) ×10 -1 (-1.26) ×10 -1 (-1.31) 尤度比 ※ * : 10% で有意, ** : 5% で有意 1995 年 と 2000 年 年 と 2005 年 年 と 2005 年 2.75 パラメータの差の検定 1995 年 と 2000 年 年 と 2005 年 年 と 2005 年 1.49 ・ 1 人延べ床面積 ・世帯人数 ◆延べ床面積の解釈 家賃の代理変数として機能し ている可能性が高い ◆延べ床面積の解釈 家賃の代理変数として機能し ている可能性が高い

推定結果 世帯の行動選択に影響を与えている要因 ▫ 持家居住世帯:延べ床面積,築年数 ▫ 借家居住世帯:1人当たり延べ床面積,世帯人数 年代による影響の変化 ▫ 延べ床面積,1人当たり延べ床面積のパラメータが年代によって 変化しており、 1990~1994 年と 2000 ~ 2004 年では与える影響が変化 していると考えられる。 「変数:延べ床面積」の符号の解釈 ▫ 負を示すことから、より高い効用を受けるためには面積差が0になるよ うな転居あるいは面積を減少させるような転居をすることになる。 ⇒延べ床面積そのものを示しているのではなく 世帯にかかる負担(住宅価格や家賃)の代理変数として 機能している可能性が高い。 8

まとめ 住宅の広さによる世帯行動選択への影響の変化を 確認 ⇒年代の違いを考慮したシミュレーションが必要 世帯は「住宅の広さに不満」を抱きながらも住宅選択 時に住宅価格や家賃などを考慮することで、結果的に 延べ床面積を維持あるいは減少させるような転居が行 われると予想される。 9

課題 将来推計のシミュレーションを行う際、パラメータ をどのように設定するべきか? 持家からの転居における1次取得者と2次取得者の サンプルの区別の必要性 住宅価格や地価等の変数の導入 世帯人員の変動の考慮 10

11 【附録】

富山市の概要 平成 17 年 4 月 1 日 7 市町村の合併により新「富山市」が誕生。 持家戸建志向 自動車依存型社会 12 人 口 : 421,953 ( 人 ) (旧富山市: 324,372 人) 世 帯 : 159,151 ( 世帯 ) (旧富山市: 128,001 世帯) 転 居 率 : 13.3% (全国値 10.7% ) ※転居率=(転居人口)/(常住者人口-転入人口) 持家比率 : 71.6% (全国平均: 62.1% )全国 2 位 土地所有率 : 69.9% (全国平均: 50.9% )全国 2 位 乗用車保有台数 1.73 台/世帯 (全国平均 1.11 台/世帯) 人 口 : 421,953 ( 人 ) (旧富山市: 324,372 人) 世 帯 : 159,151 ( 世帯 ) (旧富山市: 128,001 世帯) 転 居 率 : 13.3% (全国値 10.7% ) ※転居率=(転居人口)/(常住者人口-転入人口) 持家比率 : 71.6% (全国平均: 62.1% )全国 2 位 土地所有率 : 69.9% (全国平均: 50.9% )全国 2 位 乗用車保有台数 1.73 台/世帯 (全国平均 1.11 台/世帯) 転居とは「一の市町村の区域内において住所を変更することをいう」(住民基本台帳法) 転居率は国勢調査「現住市区町村による5年前の常住地」を参考にしているため、5年間での転居割合である。 図1.富山県富山市の位 置

富山市アンケート調査概要 13 調査の概要 調査地域旧富山市,旧婦中町 抽出方法無作為抽出 調査時期 H22 年 11 月~ H23 年 1 月 調査方法郵送配布,郵送回収 抽出率 10% 配布数 14,070 世帯 回収数 有効回答数 5,089 世帯( 36.2 %) 4,487 世帯( 32.5 %) ※有効回答とは現在の居住地区が判 明しているもの 調査項目 世帯属性(世帯人数,性別,年齢,職業,通勤・通学先,交通手段,自分専用自動車の有無,続柄) 現在の住宅 (住所,住宅の種類や属性,居住地選択理由,不満な点,地域のつながり,将来の不安,転居意向) 前回の住宅(引っ越し経験の有無,住所,住宅の種類や属性,住宅選択理由,現在の住宅への転居理由) 将来の転居について(転居予定,転居理由・時期,希望住宅タイプ,) 居住・交通政策について (世帯自動車保有台数,都心部来訪頻度,交通政策について,住宅助成事業の認知)

使用データの特性1「持家居住世帯」 判断年次 1995 年 2000 年 2005 年 サンプル世帯数 転居世帯 (転居率) 47 (6.6%)51 (6.2%)65 (6.9%) 平均 標準 偏差 平均 標準 偏差 平均 標準 偏差 世帯主年齢 世帯人数 築年数 人当たり 延べ床面積 延べ床面積 居住年数

使用データの特性2「借家居住世帯」 判断年次 1995 年 2000 年 2005 年 サンプル世帯数 転居世帯(転居率) 82 (35.2%)133 (51.6%)129 (46.4%) 平均 標準 偏差 平均 標準 偏差 平均 標準 偏差 世帯主年齢 世帯人数 人当たり延べ床面積 延べ床面積 居住年数

「居住状況の変化」 16 【平成 20 年住生活総合調査】