目 次 1 青空油圧の財務対策 2 2 銀行からの提案に対して 5 3 リスク対策シート 11

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目 次 1 青空油圧の財務対策 2 2 銀行からの提案に対して 5 3 リスク対策シート 11 目   次 1 青空油圧の財務対策 2 (1)解説(青空油圧の財務リスクについて) 3 (2)解答例(社内での対策) 4 2 銀行からの提案に対して 5 (1)【提案1】私募債プランに対して 6 (2)【提案2】証券化プランに対して 7 (3)【提案3】取引信用保険プランに対して 8 (4)【提案4】手形割引プランに対して 9 (5)「銀行からの提案」の比較) 10 3 リスク対策シート 11 (1)青空油圧の主要リスク 12 (2)景気変動リスク 13 (3)為替変動リスク 14 (4)割賦債権回収リスク(信用リスク) 15 (5)在庫管理リスク(余剰在庫リスク) 16 (6)技術力低下リスク 17 (7)品質管理リスク 18 (8)労働争議リスク 19 (9)工場火災等リスク 20 (10)環境問題リスク 21 (11)海外情勢リスク(カントリーリスク) 22 (12)新規事業リスク(設備投資リスク) 23 (13)部品在庫管理リスク 24 4 ケーススタディー プラスα(その一) 25 (1)実習① 26 (2)解答例 27 (3)状況悪化のシナリオ例1 28 (4)状況悪化のシナリオ例2 29 5 ケーススタディー プラスα(そのニ) 30 (1)実習② 31 (2)解答例 32 6 ケーススタディー プラスα(その三)   33 (1)実習③ 34 (2)解説(割引率の考え方) 35 (3)解説(株主資本コスト) 36 (4)解答例 37 (5)解答例(補足) 38 1

1 青空油圧の財務対策

(1)解説(青空油圧の財務リスクについて) 信用力の低いチャーター業者に対する過大な与信 逆鞘の危険性 調達金利5~8%程度の青空油圧が貸倒比率3.5%のチャーター業者に金利10%で与信 信用調査・評価能力の欠如 従来は信用力の高い優良顧客との取引のみ チャーター業者の中でも信用力に応じた金利設定をすべき 資金繰り、資金調達に関する意識、経験の欠如 良好の財務体質(“無借金経営”)が長く続いたため危機感が乏しい 資金回収努力の欠如 債務不履行したチャーター業者からの回収努力の欠如

ノンバンク(リース会社、信販会社等)の利用 (2)解答例(社内での対策) 取引先の与信管理の厳格化 貸倒先からの回収努力の徹底 下取価格相場から50%程度の回収率は期待できる ノンバンク(リース会社、信販会社等)の利用 ノンバンクを仲介することでチャーター業者の信用リスクを遮断 割賦販売に関わる事務手続きの負担からも解放される レンタル事業への参入(子会社、合弁、M&A) 自己勘定での損失対策(自家保険) 損失の平準化には有効 ただし、通常の保険と異なり税務メリットはなし 増資、自己資本の充実 新規事業自体は有望であり、新株引受権付社債(CB,WB)も選択肢として有効 Ref 《顧客の選別・管理》

2 銀行からの提案に対して

コミットメントライン(融資枠予約契約)等の利用 (1)【提案1】私募債プランに対して 金利上昇リスクは抑えられる バランスシートは膨らんだまま 資産効率、財務体質健全化への貢献度は小さい コミットメントライン(融資枠予約契約)等の利用 必要な時のみ資金を引き出せる契約と結び流動性を確保しつつ、バランスシートの肥大を防止

債権を現金化でき、バランスシート圧縮効果は高い 様々な証券化方法があり、ニーズにあったスキーム構築が可能 (2)【提案2】証券化プランに対して 債権を現金化でき、バランスシート圧縮効果は高い 投資家に割賦債権(チャーター業者)の信用リスクを移転 様々な証券化方法があり、ニーズにあったスキーム構築が可能 特定債権法を利用すれば比較的容易に対抗要件を取得可能 青空油圧自身がサービサー(資金回収業者)を務めることで、コスト抑制、顧客との関係維持可能 リボルビング型の証券化スキームを使えば小ロットでの証券化対応が可能。 劣後債の投資家が少なくオリジネーター自身が保有する場合が多い 資産担保証券(ABS)はロウリスク・ロウリターンの優先部分からハイリスク・ハイリターンの劣後部分まで数種類の債券に分けて発行し、投資家のリスク許容度に応じて販売されるのが一般的。 日本では、ハイリスク・ハイリターンの債券投資家が少なく、例え高いリターン(年利10~30%)が期待できても、債務不履行の可能性もある劣後債券を購入する投資家は少ない。 結果的に、オリジネーター(青空油圧)が最劣後を保有するケースが多い。その場合、債務者(チャーター業者)の信用リスクを完全に切り離したことにならず、信用リスクは残る。 ただし、実務上の問題

保険金は損金参入可能で税務メリットを享受可能 債権の現金化はできず、資金調達手段とはならない 保険金交渉の手間がかかる (3)【提案3】取引信用保険プランに対して リスクを保険会社に移転することが可能 保険金は損金参入可能で税務メリットを享受可能 債権の現金化はできず、資金調達手段とはならない 保険金交渉の手間がかかる 保険金(=実損額)の確定に手間がかる 債務者(チャーター業者)からの回収努力が課せられる 保険会社に対する信用リスクを抱える 債務者(チャーター業者)の信用リスクからは解放されるが、新たに保険会社の信用リスクが発生 保険会社による保証対象の限界 保険会社でも信用力がきわめて低い事業者に対する保証は避けるため、最も信用力の低い取引先のリスクは引き続き保有する必要がある。

割引できる取引先が信用力の高いところに限られる 信用リスクの移転効果は薄い (4)【提案4】手形割引プランに対して 最も容易かつ迅速に債権の現金化が可能 割引できる取引先が信用力の高いところに限られる 信用リスクの移転効果は薄い 手形割引した取引先(チャーター業者)の債務不履行時には遡及(リコース)される。 ただし、他の債務と比べて手形決済のインセンティブは高い

各手法ともメリット、デメリットがありニーズに応じた選択が必要 (5)「銀行からの提案」の比較 各手法ともメリット、デメリットがありニーズに応じた選択が必要 【銀行からの4つの提案の比較】 私募債発行 証券化 取引信用保険 手形割引 現金化 (資金調達効果) 迅速な資金調達 が可能 時間はかかるが 現金化は可能 無し 迅速、容易に現金化可能 バランスシート 圧縮効果 原則、全割賦債権のオフバランス化可能 無し(リスクキャピタルは削減) 有り(但し偶発債務が残る) 信用リスク 移転効果 理論上は投資家へ移転可能 原則、保険会社へ移転(保険会社のリスクが残る) 偶発債務で遡及(リコース)可能性有り その他留意点 金利上昇リスク、逆鞘リスク等への対策 実際は劣後部分を 自ら保有するケースが多い 保証対象が限られる 割引対象が限られる

3 リスク対策シート (注)リスク重大度の「(発生確率×影響度)」は実習「リスクの把握とその活用」の解答例に従っています。 3 リスク対策シート (注)リスク重大度の「(発生確率×影響度)」は実習「リスクの把握とその活用」の解答例に従っています。      発生確率ランク                      影響度ランク        3(高):3年以内に1度以上               3(大):10億円以上、社外へ影響        2(中):3から0年に1度                  2(中):1億円以上、全社の問題        1(低):10年以上に1度                 1(小):1億円未満、個別部署の問題

(1)青空油圧の主要リスク(実習「リスク把握とその活用」より) 影響規模ランク 3 (大) 2 (中) 1 (小) (低) (高) 発生確率ランク ⑥品質管理 ⑤技術力低下 ①景気変動 ④在庫管理(余剰) ②為替変動 ③割賦債権回収 ⑦労働争議 ⑧大規模工場火災 ⑩海外情勢 ⑨環境問題

(2)景気変動リスク リスクの内容 中型クレーンの売上等、事業が景気に左右されるリスク リスクの重大度(発生確率×影響度) 景気悪化時に売上が減少するがポートフォリオ効果で影響はある程度抑えられる。(ランク2×1) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 景気の影響を受けやすい事業からの撤退。 収益機会を失い、非現実的。 低減 景気悪化時に需要が拡大する事業と縮小する事業の組合わせ(リスクの中和) 海外市場での事業拡大。 他社との提携、共同事業の推進。 上手く事業ポートフォリオを構築できれば極めて有効。 国内景気変動の影響は薄れるが海外市場リスク、カントリーリスク等が生じる。 有効だが共同事業の難しさは生じる。 移転 景気の影響を受けやすい部門(製造、営業等)のアウトソーシング化で固定費を減らす。 長期販売契約等による売上の安定化。 損益分岐点を下げる効果はあるが、好況時の収益機会を減らす。 有効だが相手先の信用リスク発生。 保有 適切な事業戦略の策定によるリスクの最小化。 (通常の経営活動) 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) 事業売却。 リスクはなくなるが、収益機会も失う。 コストカット、リストラによる経費節減。 製品在庫の処分によるロスカット。 一時的な止血効果はあり。 一時的な損失は出るが財務体質改善効果あり。 事業再編、事業戦略の再検討。 適用するリスク対策 1.景気悪化時に需要が拡大する事業と縮小する事業の組合わせ(リスクの中和) 2.海外市場での事業拡大。 3.景気の影響を受けやすい部門(製造、営業等)のアウトソーシング化で固定費を減らす。 リスク削減目標等 売上(または利益)の変動率を抑える。EaR等の指標を使って目標値を定める。

(3)為替変動リスク リスクの内容 為替変動(円/米ドル)に海外売上が左右されるリスク リスクの重大度(発生確率×影響度) 円高時に輸出額(中古クレーン販売価格)が低下し売上を大きく損なう恐れ。(ランク2×2~3) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 輸出市場からの撤退、円価格での取引に限定。 為替リスクとともに、輸出による収益機会もなくなる。 低減 輸出比率を一定限度に抑える。 輸出にあたって価格条件を設ける。 輸入比率拡大、現地事業開始等により外貨使途を増す 為替リスクは減らせるが、収益機会も減少。 実際に外貨使途があれば極めて有効。 移転 為替先物予約、為替オプション 無料だが為替収益機会は失う。 ヘッジ可能だがコスト高。 保有 外貨での資金運用開始、外貨運用担当者を置く。 コストはかかるが収益(損失)機会も拡大。 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) ロスカットルール (円高が進めば輸出停止、為替予約を実行等) 一時的な損失は出るが財務体質改善効果あり。 先物契約の実行、オプションの実行 先物は逆効果(損失)もあり、オプションは効果大。 相場が回復するまで含み損を抱えた外貨を保有、 相場回復時に外貨を円転。 表面上低コストだが資金運用機会喪失。損失拡大の危険有り。 適用するリスク対策 1.短期的にはブローカとの取引は円建てとする。 2.中期的には為替先物予約を取り入れる。 3.長期的には輸入品利用、中国事業による外貨使途を増やす。 リスク削減目標等 短期的には為替リスクゼロ。長期的には外貨ポジション(残高)を資本の○○%以内にとどめる。

(4)割賦債権回収リスク(信用リスク) リスクの内容 チャーター業者に対する与信(割賦債権)が膨らみバランスシートを圧迫するリスク リスクの重大度(発生確率×影響度) 巨額の与信残高があり事業に与える影響は非常に大きい。(ランク3×2) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 割賦販売制度の停止。 信用リスクは減らせるが売上減も大。 低減 割賦販売比率を下げる。 個々の顧客に対する与信額を下げる。 信用リスクは減らせるが売上の減少も予想される。 移転 債権証券化。 保証契約(取引信用保険等)の利用。 信販業者、リース業者の利用。 投資家に信用リスクを全て移転できれば効果は大きい。 保証料、手数料等が低価に抑えられれば効果大、ただし、保険会社、リース会社等の信用リスクが生じる。 保有 信用調査、与信管理の厳格化。 リース子会社の設立、合弁等。 人材教育等のコスト負担は大きいが効果あり。 収益力が向上する可能性あるが、リスクが増える危険性も残る。 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) 不履行時債権に対する回収業務の実行。 不良債権の転売によるロスカット。 下取価格水準から見て効果大。 一時的な損失は出るが財務体質改善効果あり。 保証契約等の実行による損失カバー。 効果大。ただし、手続きは煩雑。 信用力悪化企業への経営協力。 場合によっては有効だが依然としてリスクは大きい。 適用するリスク対策 1.信用調査、与信管理の厳格化 2.債権回収業務の徹底。 3.債権証券化等の金融技術の利用を検討。 リスク削減目標等 与信残高を総資産の○○%まで引き下げる。

(5)在庫管理リスク(余剰在庫リスク) リスクの内容 商品が売れず完成品が積み上がって財務体質が悪化するリスク リスクの重大度 (発生確率×影響度) 受注生産に近い形態で販売チャネルも複数あるので大きな問題は起きにくい。(ランク1×1) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 受注生産に特化。 リスクは減らせるが、販売機会を失う可能性あり。 低減 在庫の圧縮。 製品ライン(種類)の絞込み。 バランスシートは改善するが、好況時に品切れリスク生じる。 在庫管理は容易になるが、営業力低下の恐れあり。 移転 製造ラインの外部化を進め、社内で保有する在庫を極力減らす。 在庫リスクは減らせるが取引先の信用リスクは増大。 保有 部品生産等の内製化、協力会社との関係強化などで契約から納入までの期間の短縮。 事業の効率性が高まり有効だが、体制整備の負担大。 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) 在庫に応じて、値引きも含めた適切な販売政策を実行し在庫を適正水準に保つ。 一時的な損失は出るが財務体質改善効果あり。 在庫を保有して売上拡大を待つ。 損失は回避できるが、財務体質悪化、製品陳腐化のリスクあり。 適用するリスク対策 1.部品生産等の内製化、協力会社との関係強化などで契約から納入までの期間の短縮。 2.在庫に応じて、値引きも含めた適切な販売政策を実行し在庫を適正水準に保つ。 リスク削減目標等 在庫(棚卸資産)の比率を総資産の○○%程度に保つ。

(6)技術力低下リスク リスクの内容 ベテラン技術者の流出などで、技術力が低下し競合優位を失うリスク リスクの重大度 (発生確率×影響度) リスクの重大度 (発生確率×影響度) リストラ等によるベテラン社員の減少で懸念される問題。(ランク2×2) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 汎用技術のみ使用し、研究開発や特殊な技術を要する分野からは撤退。 事業の競争力自体が失われ非現実的。 低減 技術者、研究者に対する処遇の改善。 技術者、研究者の採用拡大。研究開発費の増額。 技術力強化には貢献するが、事業の採算性は低下の恐れ。 移転 研究開発部門の外部化。研究開発部門の分社化。 効果小。企業規模から見ても非現実的。 保有 技術・研究成果評価システムを作り、技術者、研究者へのインセンティブを高める。 社内の教育研修システムを充実し、技術の継承を徹底する。 双方とも効果的だが、システムを有効に機能させるのは難しい。 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) 他社から優秀な技術者、研究者をヘッドハント。 短期的には効果あるが人的摩擦の懸念等あり。 他社から購入する特許権で技術優位性を確保。 短期的には効果あるが長期的に事業を発展させられるかは疑問あり。 適用するリスク対策 1.技術・研究成果評価システムを作り、技術者、研究者へのインセンティブを高める。 2.社内の教育研修システムを充実し、技術の継承を徹底する。 3.技術者、研究者に対する処遇の改善。 リスク削減目標等 技術者、研究者の定着率(在職年数)の向上。実用化製品の拡大(年間○○以上)など。

(7)品質管理リスク リスクの内容 不良品の発生から最悪の場合は製品リコール等を引き起こすリスク リスクの重大度 (発生確率×影響度) リスクの重大度 (発生確率×影響度) 可能性は低いが、大きな問題が生じるリスクあり。(ランク1×2~3) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 OEM等に特化し、自社ブランドでの製品販売停止。 事業形態自体を再検討する必要がある。影響は低下するが責任は残る。 低減 品質管理システムの強化。 取引先、顧客等に品質管理モニターを置き、常時第三者の目がチェック、フィードバックしてもらう。 人材、コストの負担は発生するが効果あり。 移転 保険(生産物賠償責任保険等)の利用。 コスト大、金銭的損失のカバーは可能だが信用回復等は困難。 保有 品質管理運動(QC運動)の推進。 上手く機能すれば効果大。 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) 不良品製造の原因究明、社内外への迅速な説明。 不良品の早期回収及び補償。 再発、二次損失を抑え、信頼回復に有効。 信頼維持のために不可欠。 保険金額の交渉、受取による損失カバー。 経済的損失をある程度回復可能。 適用するリスク対策 1.品質管理システムの強化。 2.取引先、顧客等に品質管理モニターを置き、常時第三者の目がチェック、フィードバックしてもらう。 3.不良品製造の原因究明、社内外への迅速な説明。 リスク削減目標等 不良品発生率を1年以内に○○%低減。人身事故に繋がるような製品瑕疵の撲滅。

(8)労働争議リスク リスクの内容 ストライキ等により操業停止に追い込まれるリスク リスクの重大度 (発生確率×影響度) リスクの重大度 (発生確率×影響度) リストラ等を背景に問題の芽は出ており、場合によって生じる可能性あり。(ランク2×2) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 組合結成資格のある社員の雇用を最小限とし、その他の社員や外部委託等で業務を進める。 労働争議が生じる可能性はほぼ回避できるが、忠誠心の欠如などその他のリスクが大きく非現実的。 低減 リストラ、賃金カットなど組合員の不満を生むような対策を避ける。 経営陣に協力的な組合の結成を促すなど、組合の切り崩しを図る。 本質的対応策とは言えず、コストの肥大等その他のリスクが生じる可能性大。 混乱を招く危険性もあり、あまり現実的ではない。 移転 人事評価、給料査定等を外部業者(人事コンサルタント等)に委託して中立性、透明性を向上させる コスト負担大。ある程度、理解を得られリスクを減らす効果はあるが運用は難しい。 保有 社員や労働組合との対話の強化、人事評価等の透明性の向上、事業方針の明確化等により理解を得る。 難しく困難な取組だが、本質的かつ最も有効。 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) 取引先、顧客等へ状況を説明して理解を求める。 組合との交渉により早期解決を目指す。 負担は大きいが必要不可欠。 弁護士、コンサルタント等の専門家に仲介を依頼。 コスト負担大だが、交渉のスムーズ化は期待できる。 争議に怯まず経営陣の主張を貫き組合の理解を待つ。 機会損失は極めて大きいが、本質的解決の可能性あり。 適用するリスク対策 1.社員や労働組合との対話の強化、人事評価等の透明性の向上、事業方針の明確化等により理解を得る。 2.人事評価、給料査定等の一部を外部業者に委託して中立性、透明性を向上させる。 3.争議発生時は取引先、顧客等へ状況を説明して理解を求める。 リスク削減目標等 労働争議の発生をなくす。(アンケート調査等による)社員、組合の会社に対する不満度の低下。

(9)工場火災等リスク リスクの内容 火災等により社員、近隣住民、工場設備等が被害を受けたり、操業停止に負いこまれるリスク リスクの重大度 (発生確率×影響度) 発生頻度は低いが甚大な損害が生じる可能性あり。(ランク1×3) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 工場等の設備を保有せず、業務の外部化を徹底する。 火災事故リスクはなくなるが、事業外部化によるリスク、収益機会低下等がありえる。 低減 建物の耐火性を高める。火災報知機、消火設備等の充実。 避難訓練、消火訓練等の実施。 コストはかかるが効果あり。 比較的コスト小さく効果あり。 移転 火災保険の購入。 コストかかるが経済的損失は填補可能。 保有 火災損失に備えた引当金(自家保険)設定。 コストは低い(節税効果なし)。 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) 迅速な消火活動、避難誘導。消防署等への迅速な通報。危険物の搬出。 火災原因の究明。地域社会等への事情説明、謝罪。 即時対応は被害軽減のために有効。 負担は大きいが信用回復、再発防止のため必要 保険金額の交渉、受取による損失カバー。 経済的損失をある程度回復可能。 引当金の取崩による損失カバー。 損失の平準化効果あり 適用するリスク対策 1.建物の耐火性を高める。火災報知機、消火設備等の充実。 2.避難訓練、消火訓練等の実施。 3.火災保険の購入。 リスク削減目標等 火災発生件数をゼロに抑える。

(10)環境問題リスク リスクの内容 有害物質の流出等で環境汚染を引き起こすリスク リスクの重大度 (発生確率×影響度) リスクの重大度 (発生確率×影響度) 製造物から見て可能性は低いが甚大な損害が生じる可能性あり。(ランク1~2×2) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 工場等の設備を保有せず、業務の外部化を徹底する。 環境汚染等リスクは減らせるが、収益機会低下等のリスクが生じる。 低減 環境に有害な物質等の特定、管理の徹底。 環境マネジメントシステム(ISO14000等)の導入。 コストはかかるが、必要不可欠。 コストはかかるが、効果は大きい。 移転 環境汚染対策の保険利用。 環境関連の規制の緩い国、地域に生産機能を移転。 CO2排出権等の活用。 コスト負担大きく、引受先も少ない。 有効かもしれないが、道義的問題あり。 コスト大だが有効。利用できる分野は限られる。 保有 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) 問題が生じた工場、設備等の閉鎖。 新規のリスクは抑えられるが過去の責任は残る。 即時汚染物質等排除、環境回復、被害者への補償等。 原因の究明。地域社会等への事情説明、謝罪。 負担は大きいが必要不可欠。 負担は大きいが信用回復、再発防止のため必要 保険金額の交渉、受取による損失カバー。 問題が生じた工場、設備等の売却。 経済的損失はある程度回復可能。 適用するリスク対策 1.環境に有害な物質等の特定、管理の徹底。 2.環境マネジメントシステム(ISO14000等)の導入。 3.即時汚染物質等排除、環境回復、被害者への補償等。 リスク削減目標等 環境規制以上の目標を設定し、常時遵守する。

(11)海外情勢リスク(カントリーリスク) リスクの内容 海外市場における政治、経済情勢により事業活動が阻害されるリスク リスクの重大度 (発生確率×影響度) 海外事業の比率は小さく可能性は低いが、損害が生じる可能性はある。(ランク2×1~2) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 海外での事業活動を一切行わない。 カントリーリスクは無くなるが事業機会失う可能性あり。 低減 進出国の事情、商習慣、法制度等に関する、調査、各分野の専門家の採用等により対応力を高める。 現地の企業との提携、合弁等。 海外資産の削減、賃貸、リース等の有効活用。 適切に行えば効果大。 提携/合弁先のリスクあるが、効果は期待できる。 非常時対策として有効。 移転 海外での事業を商社等の外部に委託。 貿易保険等の活用。 進出初期の手段として効果的。 効果あり。 保有 積極的に投資を行い事業を拡大する。 他の対策との併用が望まれる。 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) 海外事業の閉鎖、海外からの撤退。 ロスカット、リスク遮断として有効。 海外事業の縮小、一時操業停止等。 短期的には有効、ただし再拡大、操業再開等は困難。 保険金額の交渉、受取による損失カバー。 海外事業の売却。 経済的損失はある程度回復可能。 現地での問題等解決(政府との交渉等)。 政治力、コスト負担等が必要だが有効。 適用するリスク対策 1.進出国の事情、商習慣、法制度等に関する、調査、各分野の専門家の採用等により対応力を高める。 2.現地の企業との提携、合弁等。 3.貿易保険等の活用。 リスク削減目標等 海外事業部門の収益変動を抑えつつ、事業を拡大する。

(12)新規事業リスク(設備投資リスク) リスクの内容 多額の設備投資で開始した新規事業の収益性が低い、あるいは不安定になるリスク リスクの重大度 (発生確率×影響度) 事業活動に常時つきまとい、企業価値に直接影響する重大なリスク。(ランク2×3) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 新規事業見送り。 損失の可能性は無くなるが、事業先細りの懸念大。 低減 入念な事前調査の上で投資決定。 ジョイント・ベンチャー形式の投資。 事故、災害発生等に備えて保険購入。 予測精度は高まるが、時間、費用の負担あり。 投資額(リスク)減るが収益も減少。パートナーリスク有り。 保険料の見返りに、事業の一部についてリスク削減。 移転 当該事業を行う他社買収、資本提携(M&A)。 生産委託等により製品調達ルートを確保。 投資額の範囲にリスク限定可能だが、投資先のリスク有。 リスク抑えられるが収益機会も減少、信用リスク等が発生。 保有 最適な意思決定により投資に対するリターン最大化を図る。 通常の事業活動。リスク資本に対するリターン最大化を追及。 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) 事業中止、延期等(ロスカット)。 投下資本は無駄になるが、追加損失(リスク)なし。 事業規模縮小(リストラ)。 損失(リスク)は減らせるが、収益機会も低下、リストラコスト、モラールダウンリスク有。 事業、設備の売却。 損失(リスク)は分離可能だが、収益機会も喪失。 事業継続による収益追求。 適用するリスク対策 1.適切な事業計画のもとに投資を行う。 2.事前調査を入念に行う。 3. リスク削減目標等 最大予想損失○○億円のもとに、○○年後に○○億円の営業利益計上を目標とする。

(13)部品在庫管理リスク リスクの内容 部品の供給を協力メーカーへの依存し、部品供給が途絶えて生産ラインの効率が落ちるリスク リスクの重大度 (発生確率×影響度) 過去の実績から可能性は低いが、増産時等に供給力不足に陥る危惧はある。(ランク1×1) リスク対策の分類 考えられる対策 効果、費用等 事前対策 回避 部品等の内製化。 他社への依存は回避できるが、生産コスト上昇。 低減 協力メーカー(取引業者)の拡大。 在庫上積み。 依存度は下がるが、業者発掘、教育コスト大。既存業者との関係希薄化。品質低下の恐れ。 供給ストップへの対応効果大だが在庫コストも大。 移転 生産全体を他社に委託し、完成品のみ購入。 保険(費用・利益総合保険等)購入により供給ストップによる損失を填補。 部品依存リスクは無いが、完成品依存リスク生じる。 保険料高い。金銭的カバーできても信用力は低下。 保有 協力メーカーの買収。協力メーカーとの関係強化(人材派遣等)。 コストは大きいが、依存リスク低減効果は大。 発生時対策 (緊急時対策) 及び 事後対策 (復旧対策) 在庫品から出荷。 部品供給ストップした製品出荷停止、代替品を納入 製品納入が遅れた取引先への謝罪、説明、補償。 有効だが、在庫コスト大。 出荷先の信用失うリスク大。 コスト大だが、信用低下を抑えるために必須。 他の部品メーカーに依頼。 品質の不安大。 自社で部品を生産。 コスト大、品質の不安も大。 適用するリスク対策 1.協力メーカーの拡大。 2.協力メーカーとの関係強化。 3.在庫品残高管理の徹底。 リスク削減目標等 協力メーカーからの供給停止期間を最悪でも○月以内とする。加えて○プラス0.5ヶ月の在庫残高を維持する。

(中型クレーン事業追加投資計画(資料1)の問題点) 4 ケーススタディー  プラスα(その一) (中型クレーン事業追加投資計画(資料1)の問題点)

(1)実習① 経営者の立場に立って中型クレーン事業の追加投資計画について考えてください。 事業価値評価(資料1)を見て担当者に確認すべき点、さらに検討を要求すべき点はありませんか?

事業価値の占める残存価値の比率が高い。10期目以降はオペレーティング・プロフィットが横ばいになるという仮定は現実的か? (2)解答例 予想営業利益につき、バリュードライバーを抽出していくつかのシナリオを描き、それぞれに基づく事業キャッシュフローを計算して分析すべきではないか? 素案では、ベースケースしか示されておらず、最悪シナリオが見えない。   追加投資ケースで、40億円を投資した後、追加的な設備投資を一切見込まないというのは、現実的な想定か? 特に、第10期以降横這いと見ているオペレーティング・プロフィットを維持できるのか? リースを活用するなどの手段により、追加投資ケースと同じ設備を取得しながら、さらに事業価値が高まるという手法はないか? すくなくとも、リース活用のシナリオでの事業価値は算出すべき。 事業価値の占める残存価値の比率が高い。10期目以降はオペレーティング・プロフィットが横ばいになるという仮定は現実的か? Ref 追加投資後、状況悪化した場合のシナリオ例(P28,P29)

(3)状況悪化シナリオ例1(割賦販売比率上昇) 割賦販売比率が50%(予想)から70%に上昇したと想定 事業価値が244.2億円から155.8億円に低下 最悪で年間約67億円の資金流出(第6期) 【割賦販売比率悪化のシナリオ)】 (注)資料1の追加投資ケースの条件のうち割賦販売比率(50%→70%)のみ変更した場合の試算結果

黒字転換後キャッシュフローはほぼ半減(第8~10期) (4)状況悪化シナリオ例2(販売台数低下) 販売台数が当初予想の60%に減少したと想定 事業価値が244.2億円から91.5億円に低下 黒字転換後キャッシュフローはほぼ半減(第8~10期) 【販売台数低下のシナリオ)】 (注)資料1の追加投資ケースの条件のうち4期目以降の販売台数のみ、予想の60%(40%減)に変更した場合の試算結果

5 ケーススタディー  プラスα(そのニ) 〈青空油圧のリスク処理、リスク対策〉

(1)実習② 青空油圧の事業活動において、意識的、あるいは、無意識に採用されているリスク処理、リスク対策を挙げて、どのような効果を上げているか議論してください。

(2)解答例 リスクの種類 リスク対策の具体的内容(本文中の記述) 効果 景気変動リスク 「景気低迷を背景に、人員の抑制は避けれず現在は約400名体制に縮小」(P1) リスクの低減 海外情勢リスク 「成長著しい中国や東南アジアに対しては、商社ルートの輸出に頼っているの..........販売機能は皆無に等しい」(P2) リスクの回避 技術開発リスク 「絞り込まれた製品分野での高い技術力......が青空油圧の強み」(P3) リスクの集約 労働争議リスク 「社長自ら交渉の場に臨み、ストライキ決行の直前で和解を得ている」(P4) 信用リスク 財務リスク 「顧客の多くが一流会社であるので、過去に支払いが滞ることはなく、.........基本的に無借金経営を実践していることである」(P5) 経営リスク (なにもしないリスク) 「既存事業を続けているだけでは企業としての発展はないと経営陣は判断した。このような状況を打破するため、.........スタートした」(P6) リスクの保有 戦略リスク 「外部コンサルティング・ファームにも協力を求め.........徹底的に分析した。(P6) リスク情報の収集 「第一に、既存のコア技術は中型クレーンに応用........ 活用できること」(P6) 「生産規模を一気に拡大させ........シェア拡大を狙うという戦略でもある」(P12) 「建設機械の場合、公共投資に支えられている面があるため、民間生産設備財とは異なる動きをする。.......収益安定化につながると考えたわけである」(P12) リスクの中和 火災リスク 「防火管理体制を整備し、.......従来から火災保険は付保されているが、近年出た、新しい商品も社内で検討されている」(P20) リスクの移転

6 ケーススタディー  プラスα(その三) 〈資本コストの考え方〉

資本コストと保険コストを比較するための設問(ケースP19参照) (1)実習③ 資本コストと保険コストを比較するための設問(ケースP19参照) (A社)資産75億円、負債50億円、株主資本25億円     保険で25億円のリスクを外部移転 (B社)資産100億円、負債50億円、株主資本50億円 保険は利用せず A社、B社ともROA10%、負債コスト4%、税率50%と仮定 (設問1)A社の保険料が3%の時、A社のROEはB社のROEより高水準になりますか? (設問2)A社の保険料が10%になったら、それぞれのROEはどうなりますか?

DCF法と割引率 現状生産体制維持の場合の割引率 追加投資を行った場合の割引率 (2)解説(割引率の考え方) 事業から発生する将来のキャッシュフローを現在価値(NPV)で評価して事業価値を算出するやり方がDCF法 NPV算出の際に使われる割引率は使用する資金の調達方法(コスト)によって異なる 加重平均資本コスト(WACC)にもとづいて割引率を設定するのが一般的 現状生産体制維持の場合の割引率 割引率=(株主資本コスト)=10% (前提) “無借金経営”の前提のもとに全額株主資本でまかなっている 追加投資を行った場合の割引率 割引率=[(借入金比率)×(税引後借入金コスト)]+[(株主資本比率)×(株主資本コスト)]      =[(40/440)×(1-0.5)×8%]+[(400/440)×10%]      =9.5% (前提) 株主資本:400億円、 借入金利(10年):8%、 税率:50%

CAPM理論にもとづきリスク・リターンにもとづき要求されるリターン (3)解説(株主資本コスト) CAPM理論にもとづきリスク・リターンにもとづき要求されるリターン 株主資本コスト=(リスクフリーレート)+(マーケットβ)×[(マーケット全体のリターン)-(リスクフリーレート)]           =4%+1.5×(8%-4%)           =10% (前提) リスクフリーレート:    4%        (通常は国債の金利)       マーケット全体のリターン:8%       (通常は株式市場インデックスのリターン、TOPIX、日経225等)       マーケットβ        :1.5       (株式市場全体に対する当社株の変動性の大きさ)   (注)日本株に関しては「マーケット全体のリターン」、最近10年あまりヒストリカル・データはマイナスを記録することが多く、   そのままCAPM理論に適用するのは無理があるという指摘が多い。   現在は投資家(特に機関投資家)が日本株投資の際に想定する期待収益率の平均値を使うなど、ケース・バイ・ケースで   設定されることが多い模様。

保険を利用(リスク移転)したA社の方がROE高い(設問1) 保険料が高額(10%)になると; (4)解答例 保険を使わないB社のROEは8.0% B社のROE={(100×10%-50×4%)×(1-0.5)}/50=8.0% 保険料が3%の場合のA社のROEは9.5% A社のROE={(75×10%-50×4%-25×3%)×(1-0.5)}/25=9.5% (>8.0%) 保険料が10%の時のA社のROEは6.0% A社のROE={(75×10%-50×4%-25×10%)×(1-0.5)}/25=6.0% (<8.0%) 保険料が低額(3%)ならば;  保険を利用(リスク移転)したA社の方がROE高い(設問1) 保険料が高額(10%)になると;  保険を利用(リスク保有)したB社の方がROE高い(設問2)

しかし、A社の方が自己資本を低く抑えた分レバレッジ効果大 (5)解答例(補足) A社とB社のリスク許容度は同水準 しかし、A社の方が自己資本を低く抑えた分レバレッジ効果大 【A社のバランスシート】 【B社のバランスシート】 資   産 75億円 負  債 50億円 資   産 100億円 負  債 50億円 資  本 資  本 25億円 保険によるオフバランス資本効果25億円 A社は実質50億円(=自己資本25億円+保険効果25億円)のリスク許容度が有る。