法とコンピュータ08(第5/6回) 法適用5 体系化ルール 法とコンピュータ08(第5/6回) 法適用5 体系化ルール 慶大法学部 2008/5/27 吉野一
前回:事例問題3bを通じた契約法原理の発見 創設(発見) 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3b 4/9に契約成立
事例3bを解くために学生が回答した体系化ルールの分析
回答例1( ) 法的正当化の推論 出来事 Case3b 契約成立←承諾効力発生 申込効力発生←申込到達15(1) 創設 契約成立←承諾効力発生 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3b 4/9に契約成立
回答例2( ) 法的正当化の推論 出来事 Case3b 契約成立←申込と承諾 申込効力発生←申込到達15(1) 創設 契約成立←申込と承諾 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3b 4/9に契約成立
回答例3( ) 法的正当化の推論 出来事 Case3b 契約成立←申込と承諾の合致 申込効力発生←申込到達15(1) 回答例3( ) 創設 契約成立←申込と承諾の合致 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3b 4/9に契約成立
回答例4( ) 法的正当化の推論 出来事 Case3b 契約成立←申込&承諾効力発生 申込効力発生←申込到達15(1) 創設 契約成立←申込&承諾効力発生 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3b 4/9に契約成立
回答例5( ) 法的正当化の推論 出来事 Case3b 契約成立←申込効力発生&承諾効力発生 申込効力発生←申込到達15(1) 創設 契約成立←申込効力発生&承諾効力発生 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3b 4/9に契約成立
回答例6( ) 法的正当化の推論 出来事 Case3b 契約成立←有効な申込と有効な承諾 申込効力発生←申込到達15(1) 創設 契約成立←有効な申込と有効な承諾 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3b 4/9に契約成立
回答例7( ) 法的正当化の推論 出来事 Case3b 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 創設 契約成立←承諾到達 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3b 4/9に契約成立
その他の回答例( )
回答例の分析・評価
第5回課題: 別の事例3cを通じた契約法原理の発見 前回の事例3bに対して、事例を3cに入れ替えて問題解決を試みる。 事例問題3cは配布してあり、前もって読んでおくことをお願いしてあるので、それを前提に授業を進める。
(参考:第4回課題:「契約成立」の例を事例を変えてさらに考える) 事例3cにおいて「4/9に契約が成立した」という結論が出てくるかどうか検討せよ。 ①まず「事実のメモ」を前回の模範解答を参考に作成せよ。 ②次に適用法条を挙げよ。 ③正しい結論が出てくるためのルールを検討し追加せよ。すなわち、上述の「体系化の解釈が追加される法的推論の構造」の法原則のところに来るべきルールを、次の「体系化ルールの創設」の最上位の青で囲まれた空欄を埋めるルールを書きなさい。 提出方法: 電子メールに当該のルールを書いて送付する。 件名のところに「法とコンピュータド第5回課題」と必ず記入すること。 氏名と学籍番号およびメールアドレスは必ず記入すること 締め切り 授業の終わりまで、または木曜日まで
①事例の3cは3bと事実の態様のどこが違うか?
事例問題3cの事実の要約 事例3cはTKCの第4回の教材にアップロードしてある。 事実のメモ:(詳細版は別紙) (1)4月1日、ニューヨークの農業機械メーカー安西の販売責任者ストロックが、日本商社バーナードのハンブルク支店の購入責任者ブラックに対して、申し込みの手紙を発信した。手紙の内容は、安西がバーナードに農業耕作機械一式(トラクターとレーキからなる)を売る、トラクターの代金は5万ドル、安西はその機械をバーナードに5月10日までに引き渡す、バーナードは代金を安西に5月20日までに支払う、機械はアメリカの貨物船で運ぶ、というものであった。 (2)4月8日、 4月1日の安西の販売責任者ストロックの手紙はバーナード社ハンブルク支店の購入責任者レブラックに届いた。 (2a) これより前4月7日、安西の販売責任者ストロックはバーナードのハンブルク支店に、「ハンブルク支店 御中」として、「4月1日付けの申入れは撤回する」とFAX送信した。 (3)4月9日、バーナードの購入責任者ブラックは安西の販売責任者ストロックにFAXをした。「申し込みは承諾。但し、日本のコンテナ船で運ばれたし。」 (3c)4月10日、バーナードの販売責任者ブラックは、アンザイの販売責任者ストロックに、4月7日のストロックからの申入れ撤回のFAXは宛先が「ハンブルク支店御中」となっていたため販売責任者の手元に10日になって届いたことを伝えた。ブラックは9日付けのFAXににより契約は成立していると考え、商品の手配を催促した。
②事例の3bにおいて行った体系化のそれぞれ解釈ルールの創設で妥当な解決が証明されるか? 回答例1では妥当な解が証明されるか? 回答例2では妥当な解が証明されるか? 回答例3では妥当な解が証明されるか? 回答例4では妥当な解が証明されるか? ・・・・・
③どのような体系化の解釈ルールを定立すればよいか?
今回課題: 3cにおける体系化ルール 法的正当化の推論 出来事 Case3c 申込効力発生←申込到達15(1) 創設 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/7にAの撤回通知がBに到達した 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3c 契約成立?
3bの回答例1(29名)を3cに当てはめると? 法的正当化の推論 出来事 Case3c 契約成立←承諾効力発生 創設 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/7にAの撤回通知がBに到達した 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3c 妥当な結論か? 契約成立 何が妥当な解か?
3bの回答例2(3名)を3cに当てはめると? 法的正当化の推論 出来事 Case3c 契約成立← 申込&承諾 創設 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にAの撤回通知がBに到達した 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3c 解が導出できない! ?
3bの回答例3(4名)を3cに当てはめると? 法的正当化の推論 出来事 Case3c 契約成立← 申込&承諾の合致 「合致」とは何か? 創設 「合致」とは何か? 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にAの撤回通知がBに到達した 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3c 解が導出できない! ?
3bの回答例4(4名)を3cに当てはめると? 法的正当化の推論 出来事 Case3c 契約成立← 申込&承諾効力発生 「申込」とは何か? 創設 「申込」とは何か? 申込効力発生←申込到達15(1) 「申込」だけでよいか? 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にAの撤回通知がBに到達した 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3c 妥当な解が導出できない! 契約成立
3bの回答例5(3名)を3cに当てはめると? 法的正当化の推論 出来事 Case3c 契約成立← 申込効力発生&承諾効力発生 創設 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にAの撤回通知がBに到達した 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3c これが妥当な解! ¬契約成立 論証が成り立つためには?
3bの回答例5は正しいか? 法的正当化の推論 出来事 Case3c 契約成立← 申込効力発生&承諾効力発生 申込効力発生←申込到達15(1) 創設 申込効力発生←申込到達15(1) 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/9にAの撤回通知がBに到達した 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3c この結論を証明するには ルールが足りない 4/9に契約成立 ¬契約成立
体系化ルールの回答例5に次のルールを追加 法的正当化の推論 出来事 Case3c 契約成立←→ 申込効力発生&承諾効力発生 創設 ¬申込効力発生←申込撤回効力発生 申込効力発生←申込到達15(1) 申込撤回効力発生 ← 申込撤回可能&撤回到達 承諾効力発生←承諾到達19(2) 意思表示←申込or承諾 申込撤回可能 ← 申込到達前または同時 15(2) 法的正当化の推論 意思表示到達←郵便受けに入る 意思表示到達←電話で言う 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/7にAの撤回通知がBに到達した 4/9にBは電話で「承諾する」と言う 出来事 Case3c ¬契約成立
証明の論理構造 ルール: 契約成立←→ 申込効力発生&承諾効力発生 申込効力発生←申込到達 1 5(1) 意思表示←申込or承諾 契約成立←申込効力発生&承諾効力発生 ¬契約成立← ¬(申込効力発生&承諾効力発生) ¬契約成立← ¬申込効力発生or ¬承諾効力発生 申込効力発生←申込到達 1 5(1) 意思表示←申込or承諾 意思表示到達←郵便受けに入る 4/9にBは電話で「承諾する」と言う ¬申込効力発生←申込撤回効力発生 申込撤回効力発生 ←申込撤回可能&撤回到達 申込撤回可能 ←申込到達前または同時 15(2) 事実: 申込の通知が4/8に郵便受けに入る 4/7にAの撤回通知がBに到達した
体系化の解釈が追加される法的推論の構造 法的正当化の推論 法的発見の推論 法原則 法規 解釈(判例) 法概念の常識 解釈(事例向き) 創設 法原則 法の目的 法規 創設 解釈(判例) 法概念の常識 視線の往復 法的正当化の推論 創設 解釈(事例向き) 法的発見の推論 認定された事実 創設 記述された事実 出来事 具体的妥当性 創設 法的決定
法的三段論法 大前提:法 小前提:事実 ⇒ 結論:法的判断 法 法的正当化の推論 事実 法的判断