第14回 物流コスト管理 物流コストに含まれるものは? その算定方法は? どれくらいなのか?
【物流コストの分類と把握(管理会計)】 財務会計は社内外に財務状況を説明するためのもので、管理上必要な情報は不足している。例えば、荷物を一個運ぶのに要する費用。そこで、会社独自に計算を行われる。 領域別分類 調達/社内/販売/返品/回収・廃棄のなどに分類 機能別分類 輸送/保管/荷役/流通加工などに分類 主体別分類 自家 物流(社内の人件費、設備、車両、機器等が含まれ、把握困難)/ 支払 物流(外部委託、把握容易)に分類 変固別 変動費(従量によって変化)/固定費(設備等へ投資) 協力企業 ⇒ 製造業者 ⇒ 卸売り ⇒ 小売り (部品・材料の調達) (調達・返品) (調達・返品)
【算定マニュアル】 法律で定められていないが、ある程度の基本的な方法は確立しておいた方がいい。理由は、経営改善と適正な取引価格を設定する必要があるからである。 多数の官庁や団体が物流コスト算定マニュアルを作成(参考資料) ・「物流コスト算定マニュアル」1975年 中小企業庁 ・「物流コスト算定統一基準」1977年 運輸省 ・「物流コスト算定マニュアル」1992年 通商産業省 ※これらによって、ベンチマーク(理想的なターゲット水準)を示すことができる。 ※滅茶苦茶な経営をされて、倒産が相次いだり、価格に不当に転嫁されるのを防ぐ
【運賃料金の体系(事後届け出制:設定・変更後30日以内に届け出)】 (宅配や引っ越しなど一般消費者向けは店頭などで表示義務があるが、企業間の取引には表示義務はない。) (A)トラックの運賃体系 ① 貸し切り 運賃:トラックのサイズと時間(距離)で決定 ② 積合せ 運賃(複数荷主利用):基準運賃(割引や割増)に諸料金などを付加(ボックスチャーター便はパレット単位で計算) ③(トラック貸し切りの場合の)引っ越し運賃: 総額 表示義務 ④宅配便料金:30㎏以下の1口1個の貨物運賃(サイズや重量で計算) ⑤メール便運賃: 信書 以外のカタログなどポスティング(投かん)する
【運賃料金の体系(続き)】 (B)鉄道コンテナの運賃体系(一 コンテナ を占有した場合) 発送料+運賃(一トン当たり輸送キロと賃率)+到着料+諸料金 ※各種の割引や割増、さらにサービス料金が加わる。 (C)寄託(きたく;預かり物)貨物倉庫料金( 事後届出 制) 保管料:スペース(サイズまたは重量)、時間経過、物品の管理 荷役料:入庫や出庫の作業量に応じて算出(級地制;都心部は割高) ※港湾運送では特別作業の料金が加算される。 (D)その他の委託料金 センターフィー方式(物流センターを通過した商品の金額への対価) 個 建て方式(商品一個あるいは1ケース当たり料金)
【物流コスト(原価)の計算方法】 (A)財務会計では正確に物流コストを把握できないので、物流コストを計算するための管理会計が必要となる。 ① 損益計算書 に、売上原価、販売管理費、一般管理費、営業外費用、特別損失などがあるが、会社ごとに範囲がバラバラで、個別の費用に分解することが難しい(特に、人件費は多様なものが含まれる)。 ②設備や商品に投資した費用には、金利を計算すべきだが、社内金利は計算されていない(現実との乖離)。 (B)物流原価計算:「物流コスト算定マニュアル」(通商産業省)が一般的 経理 データから物流関係費用を抜出し、該当項目に分類 ※同じ人が複数の業務をしている場合、仕事量の割合から費用を配賦する。
【物流コスト(原価)の計算方法(続き)】 (C)トラックの原価=人件費+車両費+運航費+税金+保険料 +施設費+一般管理費+その他費用 ※トラックのサイズ別にコストを算定し、大型化あるいは小型化すべきかを検討。 ※トラックドライバーの一人当たりコストを算出し、 仕事量 を調節(管理目的)
【在庫水準の問題(最適水準はバランスで決定)】 在庫 にかかる費用は会社の負担を増やし、会社の抱えるリスクを大きくするが、財務諸表(財務会計)上はわからない。その主な理由は以下の2つ。 在庫は 資産 (売れることが前提に考えられている)として扱われている。 不動在庫の 評価損 や廃棄損が過少に見積もられている。 そこで、考えられたのが 在庫金利 (年間や一日)という考え方。 在庫金利=在庫保有コスト/在庫金額 (費用発生) ※在庫保有コスト=資本コスト+保管コスト+在庫リスク+税金 さらに、在庫量、拠点数、配送頻度、物流品質など企業側がコントロールできる全てのものは、適正水準があり、過剰も過少でも良くない。