ひつじ書房代表取締役 松本功 Isao@hituzi.co.jp 2002.11.15 出版者から図書館への提案 ひつじ書房代表取締役 松本功 Isao@hituzi.co.jp
ひつじ書房の略歴 1990年におうふうから日本語学の専門出版社として独立(29歳) 1995年ホームページ、1997年独自ドメイン 1998年にT-Timeを書店で発売、投げ銭システム提唱、言語学出版社フォーラム結成 2000年ビジネス支援図書館推進協議会結成 2001年、『誰が本を殺すのか』の結末で取り上げられる 2002年、ひつじ市民新書創刊(41歳、厄年)
概要 出版はどこから来て今はどのようなところにいるのか 出版というものが生き残れるとしたら、どのようなものとしてなのか 情報を生み育てるものとしての出版社と図書館の共生関係
出版はどこから来て今はどのようなところにいるのか 本とコンピュータのシンポジウム シンポジウム「21世紀の出版文化を考える」 第1部「東アジアの出版の伝統と電子化」 結論として 近代化、高度経済成長過程の中で、本が元気 低成長時代の出版をどう考えるかこそ、重要ではないか?
1960年代は高度経済成長時代、出版は二桁代の成長 政治の時代の後の意識的な読者 教養主義を否定しながらも消費生活の向上の時代の中で、読書量は増えていく時代 知識の大衆化の時代 大学以外にも知識を持つ人々が生まれた 書き手として、塾の教師であったり、ルポライターであったり 読み手として、高校卒業以上の知的な読者としてのサラリーマン 読書時間・読書空間としての通勤(時間)
出版年鑑2001
1970年代後半 ミステリーやSF、中間小説の大量読者の時代 本の雑誌の創刊(1976年4月) 別冊宝島(全都市カタログ 都市生活者のフォークロア 1977) 教養の普及 高校進学率がほぼ90パーセントを超える (http://pacs.co.jp/miyagaku/jouhou04.htm「社会構造の変遷と教育」宮城学習会より)
1980年代前半 ポストモダン 浅田彰・中沢真一 G・S・たのしい知識 la gaya scienza 1 特集;反ユートピア 冬樹社 1984年6月 冬樹社で、GSを出荷していた私 消費財としての本
1980年代後半 電算写植機 ワープロ・パーソナルコンピューター パソコン通信 1986.04 PC-VAN (NEC) 1987.04 Niftyserve(富士通) 消費の局地、成熟した時代 1989年ベルリンの壁の崩壊
1990年代のバブルの崩壊 近代の行き止まりと見えない未来 マッキントッシュ、ページメーカー、ポストスクリプトプリンター、DTP 電子メール インターネット 手元で作れる面白さ、情報の権威の崩壊
1990年代後半 インターネットの爆発的な普及 阪神神戸大震災 1998年3月19日に特定非営利活動促進法(NPO法)が成立 NPOの機運
2001年以降 鈴木書店倒産 売り上げの連続ダウン 作家と図書館の軋轢 インターネットは携帯電話・iModeへ 2チャンネル 「2002年4月1日〜6月30日に全国で新しく認証されたNPO法人のデータを追加し、掲載総数7,360件となりました。」(http://www.npo-hiroba.or.jp/)
出版は、どこにいるのか? 多くの人が、高学歴で「教養」を持っている人になっている時代に、なぜ本が必要とされなくなってしまったのか 知的飢餓感がなくなっている→情報の必要性は高まっているはず 知的に質の高い情報を提供できていないことが原因?
どんな人を相手にしているのか 人が読む本を読む人 自分で本の世界にないことを実現する人 必要ならインターネットで情報の受信も発信もできてしまう人 幅が広い 誰が読者か?
出版が生き残れるとしたらどのようなかたちでか? 本の価値の積極的な再構築 たのしい知識から<ためになる知識> 戦後、エンターテインメント、サブカルチャーの方へ拡張された<消費財化への道筋の逆方向>
情報を手に入れることが困難だから、本ですませていた人ではなく 本だから新しい情報を手に入れることができ、新しいネットワークを作ることができる 主体的に本あるいは情報と関わる人に 意図的に認めてもらい、評価してもらった上で、購入してもらう あるいは、本によってその人の探していたものを見つけることができたという喜び、感動を与えうる そんな価値を付けられるか?
状況を整理すると 印刷技術から複製技術へ 郵便からインターネットへ 書籍からwebへ
さらに願いとして 複製技術から、(海賊版ではなく)共有技術へ インターネットから(情報搾取ではなく)情報共有へ webから(情報消費主義ではなく)情報共産主義社会へ
課題 低成長時代の本作り 超複製時代の本作り 市民のためになる本 市民と共に作る本 市民に提案する本作り ひつじ書房の結論として市民新書の創刊にいたる
情報消費型ではなく、情報支援型の図書館へ
情報の(消費の)自由ではなく、情報の先駆けを支援して、情報活性化の時代を 図書館と出版社は連携して次の時代の情報インフラを作る