になるためのパワポ Vol.① 信州大学総合診療科 田村謙太郎 ペニシリン大好き! になるためのパワポ Vol.① 信州大学総合診療科 田村謙太郎
感染症の歴史 肺炎⇒ 肺炎球菌(上気道にいる) 軟部組織感染症⇒ 溶連菌、ブドウ球菌(皮膚にいる) ヒトをいじめ続けてきた感染症・・・ それはなんと言っても、肺炎、軟部組織感染症 その病原体は 肺炎⇒ 肺炎球菌(上気道にいる) 軟部組織感染症⇒ 溶連菌、ブドウ球菌(皮膚にいる)
外界にいる常在菌 肺炎球菌、溶連菌、ブドウ球菌: 皮膚や咽頭、上気道周辺にいる常在菌 外界で生きていくためには、環境に対して強い防御が必要。それが厚い細胞壁(ペプチドグリカン) ⇒これを青く染めるのが グラム染色
肺炎球菌は青い双球菌 喀痰グラム染色で ・ 青く染まる (⇒グラム陽性) ・ 丸っこい細菌が2つ並んでいる (⇒双球菌) ・ 細菌周囲が少し透明 に抜けて見える (⇒莢膜あり)
肺炎球菌!肺炎の横綱 もっとも恐ろしい肺炎の起因菌 治療は・・・ペニシリンG! 肺炎球菌はペニシリンの感受性から3つに分類 PSSP高感度群、中等度耐性群、PRSP高度耐性群 しかし、肺炎についてはほぼ全例PSSP高感度群 ⇒ペニシリンGで治療可! (肺炎球菌性髄膜炎の場合は、PRSP高度耐性群として 他の抗生剤で治療開始)
連鎖球菌は青い球がつながっている その名の通り、球菌が数珠状に並んでいる
ブドウ球菌は青いブドウの房のように ブドウの房のように塊を作って見える Cluster クラスターと呼ぶ
グラム陰性菌 これに対して、腸管内のように外界から守られた環境に生息する菌たちは、厚い細胞壁を持つ必要はない。 ⇒グラム染色で青く染まらない。 (厳密には“簡単に脱色されてしまう”) そこで赤く染めなおす 腸内細菌群である大腸菌やクレブシエラは赤い長丸(桿菌)
グラム染色は役に立つ! GPC:陽性球菌(Gram Positive Coccus) GNR:陰性桿菌(Gram Negative Rod) まずは、 GPC:陽性球菌(Gram Positive Coccus) GNR:陰性桿菌(Gram Negative Rod) をマスターせよ
GPC(陽性球菌)か、GNR(陰性桿菌)か 球菌(coccus) 桿菌(rod) グラム陽性(青) ・ブドウ球菌 ・連鎖球菌 注:肺炎球菌、 溶連菌、腸球菌は“連鎖球菌”の仲間 グラム陰性 (赤) ・大腸菌 ・クレブシエラ
GPC:グラム陽性球菌 (+) chain 連鎖球菌群 溶血の違いから ・肺炎球菌 ・溶連菌 ・腸球菌 グラム陰性 グラム陽性 cluster ブドウ球菌 コアグラーゼ試験 (+) (ー) 黄色ブドウ球菌 表皮ブドウ球菌
ペニシリン登場! イギリス人医師フレミング(Arexander Fleming, 1881-1955) 商船会社に4年間勤務した後、ロンドンの医学校を卒業。 第一次世界大戦に軍医として従事し、多くの軍人が外傷後の致命的な感染症に罹患することに直面した経験から、その 治療に有効な薬剤の探索を始めた。あるとき実験室の培地を廃棄しようとしてブドウ球菌の中にアオカビが生息し、その 周囲に細菌の発育が阻止されているのに気が付く。 そのアオカビを培養し、培養液のろ過した液に抗菌作用をもつ物質が含まれることを見出し、アオカビの属名Penicilliumから「ペニシリン」と名付け、 1929年英国実験病理雑誌に発表した。
そして第二次大戦 Dr.フレミングのペニシリンの論文は医学関係者に受け入れられず、大量に精製できなかったこともあり、その後10年ほど忘れ去られてしまった。 1940年オックスフォード大学 フローリーとチェイン(H.W.Florey、E.B.Chein)がフレミングの論文を参考にしてペニシリンを精製し、動物実験を行った。 1941年フローリーは渡米、製薬会社と交渉し、より精製したペニシリンで治療実験に成功。 1943年工場で大量生産 第二次大戦でペニシリンは多くの兵士を救命した。 1945年フレミング、フローリー、チェインの3名は ノーベル医学・生理学賞を受賞。
ペニシリンの作用機序 肺炎球菌、溶連菌、ブドウ球菌 細胞壁を作る酵素蛋白に結合し、 細胞壁合成を阻害することで抗菌作用を発揮する。 この酵素をPBP: penicillin-binding proteinと呼ぶ。 ⇒厚い細胞壁を作るグラム陽性菌に良く効く! 肺炎球菌、溶連菌、ブドウ球菌
時間依存性 ペニシリン系の薬は、ある程度高い血中濃度を維持する時間が続かないと抗菌効果を発揮できない。 ペニシリン系の薬は、ある程度高い血中濃度を維持する時間が続かないと抗菌効果を発揮できない。 これを時間依存性Time dependentな抗生剤という。 細胞壁を作る酵素を阻害することで抗菌効果を発揮するので、細胞の周り、すなわち血液中に抗菌薬が一定以上の濃度で存在しないと効果が出ないのは当然。
濃度依存性 ニューキノロンやマクロライド系の抗菌薬は、 細胞内に入り込み、細胞内のたんぱく質にくっつくことで抗菌作用を発揮する。 そのためには、一時的に高い血中濃度を達成し、 細胞内に十分量の抗菌薬が入ることが必要になる。 濃度依存性という。
時間依存性 VS 濃度依存性 時間依存性 細胞壁合成阻害剤は (MICを超える)血中濃度が高い時間を長く保つことで抗菌効果を発揮する 時間依存性 VS 濃度依存性 時間依存性 細胞壁合成阻害剤は (MICを超える)血中濃度が高い時間を長く保つことで抗菌効果を発揮する 頻回投与が基本 ペニシリン系 セフェム系など 濃度依存性 細胞内の酵素に作用する ことで抗菌効果を発揮。 高い血中濃度が必要 投与回数は少なくてよいが、一度に大量に投与する ニューキノロン系 マクロライド系など
GPC:グラム陽性球菌 (+) chain 連鎖球菌群 溶血の違いから ・肺炎球菌 ・溶連菌 ・腸球菌 グラム陰性 グラム陽性 cluster ブドウ球菌 コアグラーゼ試験 (+) (ー) 黄色ブドウ球菌 表皮ブドウ球菌
①ブドウ球菌:GPC 陽性球菌 ブドウ球菌は血液と 傷んだ組織が大得意! by Dr. 青木眞 ブドウ球菌 Staphylococcus ↓コアグラーゼ試験 S. aureus 黄色ブドウ球菌 → 耐性:MRSA S. epidermidis 表皮ブドウ球菌(CNS:コアグラーゼ陰性) 皮膚や鼻腔に常在 【感染症】 皮膚軟部組織感染症SSTI、骨髄炎 カテーテル関連血流感染CRBSI:Blood Stream Infection 静脈炎など ブドウ球菌は血液と 傷んだ組織が大得意! by Dr. 青木眞
ブドウ球菌 “血液中と傷んだ組織が大得意!”by Dr.青木眞 ⇔ 肺は得意でない ⇒ 喀痰培養で陽性、はほとんど定着菌 ⇔ 肺は得意でない ⇒ 喀痰培養で陽性、はほとんど定着菌 例外的な状況は、インフルエンザ感染後の肺炎や 人工呼吸器をつけている入院患者さんの肺炎VAP (=傷んだ組織) 第一選択薬は? MSSA ⇒ CEZ セファメジン(第一世代セフェム) MRSA ⇒ 抗MRSA薬 CNS ⇒ 抗MRSA薬
②連鎖球菌 GPC:陽性球菌 連鎖球菌Streptococcus 咽頭や皮膚に常在 溶血性の違いから“Lancefield分類” 咽頭や皮膚に常在 溶血性の違いから“Lancefield分類” A群 S.Pyogenes 化膿性連鎖球菌“A群溶連菌” D群 Enterococcus faecalis, faecium 腸球菌 D群 S. bovis :腸内細菌⇒血培で生えたら大腸がん検索! F~K群 S. viridans 緑色連鎖球菌:口腔内⇒亜急性IE その他 S. pneumoniae 肺炎球菌
連鎖球菌の仲間たち 肺炎球菌 S. pneumoniae ⇒ 耐性 PRSP 咽頭の常在菌 ⇒ 中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、髄膜炎、脾摘後の菌血症 市中肺炎の王様:起因菌の第1位。人類最大の敵! ⇒ 肺炎:第一選択はPCG(またはアンピシリン) ⇒ 髄膜炎:PRSPの可能性。第3世代セフェム+VCM A群溶連菌 S. pyogenes ⇒ 扁桃腺炎、リウマチ熱 ⇒ 蜂窩織炎、壊死性筋膜炎“人食いバクテリア”
連鎖球菌(溶連菌、肺炎球菌) 第一選択薬は・・・ペニシリン! 溶連菌、PSSP (耐性のない肺炎球菌) ① PCG 200-600万単位を 4~6回 (1200万単位/日以上) ②ABPCアンピシリン(®ビクシリン):アミノペニシリン 2gを4~6回
耐性肺炎球菌PRSP Penicillin Resistant S. pneumoniae 肺炎の場合(MIC≧2。ほぼ感受性あり:PSSP) ペニシリンG、アンピシリンで治療可。 肺炎でもMIC≧2なら第3世代セフェム CTX セフォタキシム(®クラフォラン)、 CTRX セフトリアキソン(®ロセフィン)1gを1~2回 髄膜炎の場合(MIC≧0.06。ほぼPRSP) 第3世代セフェム+VCMバンコマイシンで治療開始 CTRX 2g 12時間毎 + VCM 1g 12時間毎
信州大学病院で 非髄膜炎の場合、 肺炎球菌にはPCGが100%使える!
③腸球菌:腸管内の常在菌なのに陽性 腸球菌Enterococcus ⇒ 耐性 VRE:バンコマイシン耐性 E.faecalis E.faecium 基本的に弱毒菌(腸管内では悪さをしない) UTIやIEを起こす。IEは治療がやっかい⇒ GMを併用。 第一選択薬は E.faecalis ⇒ PCG or ABPCアンピシリン E.faecium ⇒ VCM バンコマイシン or TEICテイコプラニン VCM耐性ならLZDリネゾリッド
信州大学病院の場合 *Enterococcus 腸球菌 第一選択薬は E.faecalis ⇒ PCG or ABPCアンピシリン E.faecium ⇒ VCM バンコマイシン
腸球菌の感受性結果に注意! セフェム系(1~4世代) すべて無効! LVFX:S (クラビット感受性)と出ても、UTI以外は効果なし。 セフェム系(1~4世代) すべて無効! LVFX:S (クラビット感受性)と出ても、UTI以外は効果なし。 IPM/CS:S(チエナム感受性)でも、ほかのカルバペネムは 効果弱い 感受性検査に注意が必要 Cf.サルモネラ菌:感受性あり、でも第1、2セフェムに耐性
腸球菌によるIEの治療 4~6週間 E.faecalis ⇒ PCG or ABPCアンピシリン 腸球菌によるIEの治療 4~6週間 E.faecalis ⇒ PCG or ABPCアンピシリン E.faecium ⇒ VCM バンコマイシン VCM耐性 ⇒ LZD リネゾリッド GMゲンタマイシンを併用する“シナジー効果” GM 1mg/kg x3回/日と例外的に回数を増やして併用 (アミノグリコシドは濃度依存性なので通常は1日1回投与) アミノグリコシドなのでTDM血中濃度測定が必要。 腎毒性・聴毒性に注意。
細胞壁合成阻害 ① ペニシリン系 ② セフェム系 ③ カルバペネム系 ④ VCM:バンコマイシン ⑤ モノバクタム系 ① ペニシリン系 ② セフェム系 ③ カルバペネム系 ④ VCM:バンコマイシン ⑤ モノバクタム系 ⇒ 時間依存性なので頻回投与が基本!
ここから本題です(笑) ペニシリン大好き! になるためのパワポ(本編)