看取りのケア 聖隷三方原病院 緩和支持治療科 森田 達也 聖隷三方原病院 緩和ケアチーム 藤本 亘史 聖隷三方原病院 ホスピス 福田 かおり 聖隷三方原病院 緩和支持治療科 森田 達也 聖隷三方原病院 緩和ケアチーム 藤本 亘史 聖隷三方原病院 ホスピス 福田 かおり 聖隷三方原病院 ホスピス科 大谷 弘行 1
話題 1 「遺族の声」をきく 事例 1) 「後悔しない」ように一緒に考えてくれていると思える 1 「遺族の声」をきく 事例 1) 「後悔しない」ように一緒に考えてくれていると思える 一緒にいられる時間、話したいこと、場所 2) 「後悔しない」ように一緒に考えてくれていると思える 3 看取りのパンフレット 2
緩和にとりくむべきつらさ 外来患者 ●「この先どうなるかわからない」ことに多少見通しをつけ、一緒 に考えてくれていると思える ●「この先どうなるかわからない」ことに多少見通しをつけ、一緒 に考えてくれていると思える ●希望を支えてくれていると思える ●化療の副作用を最小限になるように努力していると思える 死亡患者(の家族) ●身体的苦痛を最小限になるように努力していると思える ●「後悔しない」ように一緒に考えてくれていると思える ○一緒にいられる時間、話したいこと、場所 ●「モルヒネのせい」と思わなくてすむ 3
基盤となる方針 ●「気にしすぎですよ」「みんなそうですよ」といわれて悲しかった ●亡くなるとき一人で不安ですといってもいてくれなかった ●こっちからはいいだせないので声をかけてほしい ○配偶者や子供の問題などいろいろなことを真剣に考えていただ いて感謝です P: ■患者家族の価値観を尊重し共感、一緒に考える姿勢を見せる ・「わかってもらえた」、「何かしてもらえた」、という気持ちになれば 解決しなくてもよい ・共感 「・・・はたいへんですよね、一緒に考えたいと思います」 ・きく 「何か気がかりはありますか」とこっちからきく ・時間を費やす 1日1回は見に行く・時間をかける 4
身体症状の緩和 痛み以外の症状にも配慮を… 身体症状の緩和 痛み以外の症状にも配慮を… ●痛みはよかったけど、だるそうでなにもできなくてつらそうだった ○むくみはどうしてもだめって言われたけど、マッサージとか自分た ちにできることを教えてもらえてよかった ○難しいと思うけど、いろいろと工夫して考えてくれてよかった P: ■倦怠感でも浮腫でも、「あきらめずに何か考えてもらえた」と思える ようにかかわる *浮腫、倦怠感のマッサージ *家族のできること 5
希望を支えてくれていると思える ●悲観的な態度で診察されると非常に不安にある。害がないので あれば、サプリメントなども「だめだめ」といわずにのませてほしい ●食べられないからと言って患者にも聞かずに食止めになって、もう 見捨てられたんだなと思った ○免疫療法がいいかどうかはわからないが、少なくとも受けることを 許してもらえた満足のほうが大きかった ○体力を維持できるようにしておきましょう」といわれたのがよかった P: ■代替療法 「むげ」にしないで気持ちをくみ取る 「なんでも患者さんにいいと思えることはやってみましょう。(サプリ など)は続けてください。もし、医学的にまずいものがあれば言いま すのでその時相談しましょう」 ■食事 相談しないでやめない 6
「後悔しない」ように一緒に考えてくれていると思える ●どうなるかわからずこんなに早いと思っていなかったので24時間 付き添いできなかったことが悔やまれる ●意識がなくなると思っていなかったので、お別れが話せなかった ●わかっていたら、最期は自宅に連れて帰りたかった ●「すすんでいるとは聞いているがどれくらいとはきいていない」 P: ■意識の悪化が「普通に思っているよりも早く来る」ことを伝え、 しておきたいことを相談 「今後もちろん良くなればいいですが、よくなくても後悔しないよう考えましょう」 ■急変の時はすぐ家族に連絡。具合悪い時に何か使うときは あらかじ め相談する 7
■鎮静薬、オピオイドを状態が悪くなってから使用するときは説明を ○オピオイドのせいでは寿命は短くならない ○オピオイドのせいでは寿命は短くならない ○でも、状態が悪いので風邪薬とかでも眠気が出やすくなっている。 はじめてうとうとくらいで苦痛が取れることがあるけど、お話があ まりできなくなることもある。後で量は調節できるが、「もしお話し ておきたい、しておきたい」ことがあればいましたほうがいい 8
「モルヒネのせい」と思わなくてすむ ●モルヒネはじめたら意識がなくなってびっくりした ●「モルヒネ増やしたから」次の日死んでしまったけどよかったのか P: ■モルヒネ使うとき、普通に見ると「使ったから**なった」となって しまうので、「全身状態のため」と説明する *モルヒネつかうと寿命が短くなるとか、中毒みたいに幻覚が出るってみなさん 思われるんですけど、そうじゃないんですよ。いまは、肝臓が働いていないので 毒素が代謝されなくて(酸素が足りなくて、血圧が下がって脳の血流が減って)、 うまく脳が働かないんです。使ったから、使わなかったから、と命の長さに差が あるわけではないんです。モルヒネのせいではないので使うのは大丈夫です。 ■準備ができないときは症状をなくすことだけでなくて「納得」を! ・少量ずつ ・麻薬じゃないものを ・「苦しいとき」を直接見てもらってから・・・ 9
緩和にとりくむべきつらさ 外来患者 ●「この先どうなるかわからない」ことに多少見通しをつけ、一緒 に考えてくれていると思える ●「この先どうなるかわからない」ことに多少見通しをつけ、一緒 に考えてくれていると思える ●希望を支えてくれていると思える ●化療の副作用を最小限になるように努力していると思える 死亡患者(の家族) ●身体的苦痛を最小限になるように努力していると思える ●「後悔しない」ように一緒に考えてくれていると思える ○一緒にいられる時間、話したいこと、場所 ●「モルヒネのせい」と思わなくてすむ 10
このあと、看護師による症例に基づいたレクチャーを 行いましたが、プライバシー保護のため、割愛させて いただきました。
OPTIM 緩和ケアセミナー 看取りのパンフレット 2009/02/24 OPTIM 緩和ケアセミナー 看取りのパンフレット 聖隷三方原病院 ホスピス科 大谷 弘行
Contents Ⅰ 背景 どうしてこんなパンフレットがあるの? Ⅱ 運用 いつどのように渡すの? Ⅲ 有用性 実際のご遺族の声は?
看取りのケアで大切なことは何でしょう?
一番大切なことは 大切な方が亡くなってから 御家族がつらい思い(後悔など)が できるだけ生じないような工夫が必要 亡くなってから いくらフォローを行っても ご遺族のつらい思いはなかなか癒せない
では、どんな工夫が必要でしょう?
*御家族の心の準備はできているか *御家族が安心して寄り添えているか →予期しない死は複雑性悲嘆の原因 →家族にとっては初めての体験で戸惑う →予期しない死は複雑性悲嘆の原因 *御家族が安心して寄り添えているか →家族にとっては初めての体験で戸惑う (どういう症状が生じて苦痛はないのか)
*御家族の心の準備はできているか 家族は患者がどんなに悪くても 実はまだ大丈夫と思っている可能性 重症患者の医師の予後予測に対する家族の認識 重症患者の医師の予後予測に対する家族の認識 対象:集中治療患者の家族50人 結果:88%(44/50人)が医師の予後予測に対して疑っていた その理由として ・そもそも将来を予測すること自体が本質的に困難 ・過去の予後予測の不正確さ ・これまでの患者の容態 家族は患者がどんなに悪くても 実はまだ大丈夫と思っている可能性 Zier LS. Crit Care Med 36: 2341-2347, 2008
*御家族の心の準備はできているか 御家族が病状を聞くだけでなく 御家族自身で見て悪くなっていると 感じとることができる
*御家族が安心して寄り添えているか ・予測される経過を伝える ・患者への接し方やケアの仕方を伝える ・家族が十分悲嘆できる時間を確保すること 臨終前後の家族の経験と望ましいケア がん患者の遺族670名 ・予測される経過を伝える ・患者への接し方やケアの仕方を伝える ・家族が十分悲嘆できる時間を確保すること ・苦痛の緩和への配慮
*御家族が安心して寄り添えているか 症状の理由について書かれている 御家族ができることが書かれている 医療者が自信をもって伝えられる
いつ、どのように渡すの?
今までも、死期が迫っているとき “口頭で”説明されてきたと思います
そして、 こんな質問にも“口頭で” 説明されてきたと思います 「これからどうなるの」 「苦しさは増すの」 「おかしなことをいうのですがどうして」 「点滴はしないの」 「のどのゴロゴロはどうして」
視覚補助ツールとして いつもの“口頭で”説明するときに 渡していただけたらよいです。
ちょっとしたコツ ・「他のページは現在関係ないところ ですが、また見ておいてください」 ・面談室などに常時置いておく (ついつい渡し忘れてしまうため)
家族支援小冊子の有用性調査 リーフレットの有用性 あなた以外のお身内を亡くされる 御家族にとっても役に立つと 思われますか リーフレットは分かりやすい と思いますか 総合的に役に立ちましたか
教育的マテリアルや家族間の共有ツールとなる 家族支援小冊子の有用性調査 リーフレットの認識 多くの方の意見 ・この先どのような変化があるかの目安になる ・家族ができることや、しても良いことが分かる ・他の家族に、状況を伝えるために利用できる ・患者さまの状況と照らして、現状を理解するのに役に立つ ・気持ちの準備をすることに役に立つ ・いろいろな症状や変化が、なぜ起きているのが分かる ・患者さまの苦しさが増したときの対応が分かる 教育的マテリアルや家族間の共有ツールとなる
ご家族の声 ●もう少し早くお話を聞いていれば、心の準備もできたような気がします。 ●最初は、リーフレットの内容が信じられませんでした。「父は絶対に大丈夫だ」と思いました。リーフレットの内容をみたときには、複雑な気持ちになりました。書いてあることはショックでしたが、その反面、とても役立ちました。父が亡くなる前、リーフレットに書かれている状態になっていることに気づき、他の家族にも連絡をとり、最後に話ができました。 ●母をみていて、「せん妄」がでていたこと、その理由を知ることができました。いろいろと心の準備ができたように思います。 ●もう少し早くお話を聞いていれば、心の準備もできたような気がします。 ●家族として「がんばってほしい」、「希望をもち続けたい」思いもあり、このリーフレットをみることは苦しいことでもありました。 ●家族の気持ちを考えて、先生からのお話もぎりぎりになったのかもしれませんが、リーフレットをみて、もっとできることがあったかもしれないと思いました。