学習習慣をつけるスパイラル学習の リーディングクラスへの応用

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学習習慣をつけるスパイラル学習の リーディングクラスへの応用 日本リメディアル教育学会 第11回全国大会 2015.08.28 学習習慣をつけるスパイラル学習の リーディングクラスへの応用 函 館 大 学 壁 谷 一 広 kabeya@hakodate-u.ac.jp

1.取り組みの背景 本務校の学生の英語力と基礎学力が十分でない 目に見える学習成果が求められる 今年度近くの国立大から英語の読解で要約力を伸ばす授業担当の依頼があった リーディングの授業を通して、学習習慣を身に付けるとともに要約力を付ける取り組みを考えることにした

2.学生の実態 不本意入学生: 他大学を複数受験したがすべて落ち、仕方なく入学した学生 学び直し新入生:   他大学を複数受験したがすべて落ち、仕方なく入学した学生 学び直し新入生:   「教育困難校」の優等生で、本人の意思で大学進学した学生で、   意欲はあるがスキルを伴わない 学習意欲欠如大学生:   本人は大学に進みたい訳ではないのに、保護者など周囲の意志で   入学した学生 学習困難入学生:   学ぶ意欲は強いものの、何らかの発達障がいをもっていると考えら   れる学生                                 朝比奈(2010)より  朝比奈(2010)は、学習に問題がある学生として、「不本意入学生」、「学び直し新入生」、「学習意欲欠如大学生」、および「学習困難入学生」の4つのタイプを挙げている。 トロウ(1976)も、ユニバーサル段階に入った高等教育の大きな問題の一つとして、「不本意就学」を挙げている。これは、朝比奈の「不本意入学生」と「学習意欲欠如大学生」に当てはまると考えられる。

3.スパイラル学習 ブルーナー(1960)の認知理論に基づく学習方法 “… any subject can be taught in some intellectually hohest form to any child at any stage of development.” “What matters is that later teaching build upon earlier reactions … to create an ever more explicit and mature understanding ….” 適切に構造化され、繰り返し提示されれば、どのような発達段階にある学習者でも、どのような科目でも学ぶことができる

4.取り組み設計のポイント 学生が学習を放棄しない程度に負荷をかける せざるを得ない工夫をする 学習習慣を確立させる   ⇒やや難しいと感じるレベルの教材    グループでの対応    個人で対応できる課題 せざるを得ない工夫をする   ⇒成績評価に組み込む(割合を大きく)    結果をクラス全体で共有する 学習習慣を確立させる   ⇒チャプターごとに課題をメールで提出させる    未提出学生への声かけ

5.取り組みの概要 取り組みを実施した授業 北海道内の私立および国立4年制大学における英語読解 の授業(前期15回、要約課題提出は10回)   北海道内の私立および国立4年制大学における英語読解   の授業(前期15回、要約課題提出は10回)   使用テキスト 「変わる日本、変わらない日本」             センゲージ ラーニング社   評価基準   確認テスト  40%(2回:1回あたり20%)   要約課題  40%(10回:1回あたり4%,遅れた場合2%)   授業参加態度 20%(80%以上の出席が条件)

5.取り組みの概要 対象 私立大学:商学系学科の2年生10名(1クラス) 英検2級以上の学生は3名 国立大学:複合分野系学科の2年生14名   私立大学:商学系学科の2年生10名(1クラス) 英検2級以上の学生は3名   国立大学:複合分野系学科の2年生14名 (8名のクラス+6名のクラス) それぞれのクラスで1名以外は英検2級以上

5.取り組みの概要 授業の流れ ボキャブラリーや表現の確認 各グループに担当するパラグラフを割り当てる 内容を発表させる 教員が解説し、全体を確認する 2~3日後の指定の日時までに、学生はチャプターの内容を4文以内の英文で要約し、教員にメールで送る 次の授業で、教員は名前を伏せた要約文全体をプリントで配布し、解説を加えて、点数を付ける 教員によるサンプルの要約を示す

6.取り組みの実態 要約の実態 要約および確認テストの結果(平均点) 私立大 : 42分 3.5 私立大*: 53分 3.7  要約にかけた時間 本文を確認した回数   私立大 :  42分 3.5   私立大*:  53分 3.7   国立大1:  81分 6.5   国立大2:  80分 3.5 要約および確認テストの結果(平均点)  要約課題(4点満点) 確認テスト(20点満点)   私立大 :  2.61 9.5   私立大*:  2.72     13.0   国立大1:  2.74 13.9   国立大2:  2.78 13.9 本文は約700ワード 学生の要約は90~100ワード程度

7.取り組みの効果 学習時間の変化(増加) 学力面の変化(1)(内容理解の向上) 私立大 : 10名中6名 (60%)   私立大 : 10名中6名 (60%)   私立大*: 3名中1名 (33.3%)   国立大1: 8名中5名 (62.5%)   国立大2: 6名中5名 (83.3%) 学力面の変化(1)(内容理解の向上)   私立大 : 10名中7名 (80%)   私立大*: 3名中3名 (100%)   国立大1: 8名中8名 (100%) 事前・事後アンケートと要約・テストの結果から効果を確認

7.取り組みの効果 学力面の変化(2)(読解力の向上) 学力面の変化(3)(伸ばしたい力の向上) 私立大 : 10名中7名(80%)   私立大 : 10名中7名(80%)   私立大*: 3名中2名(66.7%)   国立大1: 8名中8名(100%)   国立大2: 6名中5名(83.3%) 学力面の変化(3)(伸ばしたい力の向上)   私立大 : 10名中8名(80%)   私立大*: 3名中3名(100%)   国立大1: 8名中8名(100%)   国立大2: 6名中5名(83.3%)

7.まとめ スパイラル学習を応用した要約課題は、授業外での学習時間を増加させた。 学生の実感では、学力面(内容理解、読解力、その他の英語力)を向上させる効果があった。 経験を積むことによって、効率的に要約をすることが可能になる。 英検2級以上のレベルの学生では、ほぼ同等の効果が得られた。

8.参考文献 Bruner, J. (1960) The Process of Education. Cambridge, MA. 朝比奈なを(2010) 『高大接続の“現実” “学力の交差点”からのメッセージ』 学事出版.