Wormhole dynamics revisited セミナー @ 大阪市立大学, 2009年6月19日 Wormhole dynamics revisited 前田 秀基 (CECS) based on HM, PRD79, 024030 (2009) HM, Harada & Carr, PRD79, 044034 (2009) From Scientific American
内容 (I) 導入 (II) 動的ワームホール (III) ワームホール形成 (IV) まとめ
(I)導入
ワームホール 複数の異なる無限遠が存在する時空構造 球対称静的ワームホール解の例 (Ellis ’72; b>0) 元来大域的概念 しかし「スロート(のど)」によって局所的に特徴 づけることができる 非時間的な超曲面上での極小面積を持つ 空間的2次元面 球対称静的ワームホール解の例 (Ellis ’72; b>0) スロートはx=0 物質: 無質量ゴーストスカラー場 (エキゾチック物質) 通行可能ワームホール 観測者は一つの無限遠からもう一方の無限遠へ移動可能
Ellisワームホールの大域的構造 スロート 移動可能 移動可能
ワームホール: これまでの研究 相対論的重力に特徴的なオブジェクト ブラックホールと並んで興味深い対象(see Visser’s textbook) 見かけの超光速移動の可能性 タイムマシーンに関係 静的時空における一般相対論の定理 (Hochberg-Visser `97) スロートで光的エネルギー条件が破れる これは何らかの量子論的効果実現できるかもしれない 静的ワームホール解はたくさん知られている シェルを用いるもの・そうでないもの 安定性 解析的な(=シェルなし)解に関しては安定解は見つかってない このセミナーでは安定性の問題は考察しない
ワームホールの動的な側面 まだ完全には解明されてない 三つの自明でない問題 (互いに関係) 本セミナーではこれらの問題を考える 1) (準)局所的な定義 数値シミュレーションでどうワームホールを定義する(見つける)か? 一般に自然な時間一定面は存在しない 2) エネルギー条件 エキゾチック物質は本当に必要なのか? 漸近的平坦時空では``Yes’’ (位相検閲定理) 3) 形成 時空の空間断面のトポロジーチェンジ 一般にコーシー地平線ができる 本セミナーではこれらの問題を考える
本セミナーの主題 A) 動的ワームホールの動的な定義を議論する B) ワームホール形成の性質を議論する 簡単化のために4次元球対称を考える 「隠された」クラスの動的ワームホールの存在をあからさまに示す B) ワームホール形成の性質を議論する 厳密解を構成 解から何らかの一般的であろう性質を議論したい 簡単化のために4次元球対称を考える
(II)動的ワームホール
ワームホールの準局所的定義 ワームホールは本来大域的概念 しかしスロートによって準局所的に定義できる 実用的に重要 数値シミュレーションで同定するため エネルギー条件を議論するため 静的時空では時間的キリングベクトルに対応する自然な時間一定面が存在する スロートで光的エネルギー条件が破れる (Hochberg-Visser `97)
動的ワームホール 問題: 自然な時間一定面はない 2つの準局所的定義 (Hochberg-Visser `98, Hayward `99) あるクラスの捕捉地平線で定義 光的超曲面上でスロートを定義 ワームホールと通行可能性が関係してる
捕捉地平線 球対称時空 外向き(u=-)と内向き(v=+)光的ベクトルに沿った面積膨張 臨界面: 捕捉地平線 (Hayward `94) 一般性を失うことなく が臨界面でゼロであると置ける 捕捉地平線 (Hayward `94) Futureもしくはpast, innerもしくはouter型の臨界面が断面となる超曲面の閉包 where
非捕捉面 未来型marginal surface 未来型捕捉面 黄色: Sに垂直な``外向き’’光線 赤: Sに垂直な``内向き’’光線
静的な地平線の4つのクラス Outer Inner BH-type Anti-cosmological Future area area v White-hole Past area area
動的ワームホールスロートの2つ定義 Hochberg & Visserによる定義 (1997) Haywardによる定義 (1999) θ+=0 and ∂θ+/ ∂ +>0 空間的になれる Haywardによる定義 (1999) θ+=0 and ∂θ+/ ∂-<0 Outer型で時間的な捕捉地平線 捕捉地平線による定義 光的(空間的ではない)超曲面上でスロートを定義 定理 スロート上で光的エネルギー条件が破れる
今ひとつの可能な定義 球対称計量:diag(gAB,r2γab) 定義: ワームホールスロート 通行可能性とは直接関係なし ζは動径空間的ベクトル S2の面積は空間的超曲面上で極小 スライス依存 通行可能性とは直接関係なし 注:例えば宇宙論的な状況では過去無限遠は無く、通行可能性に意味はない
我々が示すこと 「隠された」クラスのワームホール時空が存在する 「宇宙論的」ワームホールのクラス Hochberg-VisserやHaywardの意味でワームホールではない ブラックホール地平線なし 時空全体でエネルギー条件を満たせる
定義:動的ワームホールスロート 定理 定義(動的ワームホールスロート) 定義 (準静的ワームホールスロート) スロートは分岐型補足地平線かもしくは捕捉領域内にある 我々のスロートは捕捉地平線である必要はない 定義(動的ワームホールスロート) ワームホールスロートで分岐型捕捉地平線でないもの 定義 (準静的ワームホールスロート) ワームホールスロートで分岐型捕捉地平線であるもの
エネルギー条件の破れの回避可能性 定理 漸近的フリードマン宇宙の場合(θ+ θ->0)、捕捉地平線がない場合も可能 時空に動的ワームホールスロートがあり、空間的無限遠でθ+ θ-<0が成り立つ場合、時空には少なくともひとつ捕捉地平線がある 漸近的平坦 => 捕捉地平線が存在 漸近的フリードマン宇宙の場合(θ+ θ->0)、捕捉地平線がない場合も可能 Hochberg-VisserやHaywardの意味でワームホールではない 光的エネルギー条件の破れの定理をすり抜けることが可能
宇宙論的ワームホール厳密解 計量: a(t)=t/t0とすると ブラックホール地平線がなく、ワームホールスロートが存在 漸近的平坦フリードマン宇宙 物質: 完全流体+ゴーストスカラー場 a(t)=t/t0とすると t0<2b: 捕捉地平線なし(いたるところ捕捉面) t0<b: 優勢エネルギー条件が成立 ブラックホール地平線がなく、ワームホールスロートが存在 HaywardやHochberg-Visserのワームホールではない エネルギー条件がいたるところ成立できる
ペンローズ図
定義に伴う問題 最大拡張Schwarzschild時空 は動的ワームホールとなる これを排除するには条件を 追加する必要がある 例:BH地平線なし
(III)ワームホール形成
動機(再) ワームホール形成 ワームホール形勢を表す厳密なモデル(解)を構成する 時空の空間部分のトポロジーチェンジ 解析的な結果は少ない 厳密解から一般的な性質を読み取りたい ワームホール形勢を表す厳密なモデル(解)を構成する 4次元球対称時空 無質量ゴーストスカラー場 (or ``K-essence’’) 運動エネルギー項が逆符号 最も単純なエキゾチック物質
系 作用: もし非ゴースト の解のスカラー場がパラメータによって純虚数になったら、それはゴースト の解とみなせる 物質: ゴーストスカラー場: 基礎方程式: もし非ゴースト の解のスカラー場がパラメータによって純虚数になったら、それはゴースト の解とみなせる
Roberts解 (1989) 一般相対論の4次元球対称解 実スカラー場解 双光的座標の計量 1パラメータ解 (C1かC2のどちらかを1にできる) Misner-sharp質量とKretschmann不変量
Roberts解におけるスカラー場 For non-zero C1, For zero C1, C1C2=1/4はMinkowski
瞬間的な曲率特異点(時空における唯一面積半径が0) ゴースト場の場合のペンローズ図 瞬間的な曲率特異点(時空における唯一面積半径が0) Roberts Minkowski 動的ワームホール時空
光的超曲面での接続 2つのRoberts時空はu=0かv=0で正則につながる Robert時空は過去のMinkowski時空と正則につながる Barrabes-Israel条件(1991):誘導計量とtransverse曲率の連続性 u=0の誘導計量 u=0のtransverse曲率 ここで u=0ではC1 は同じでなくてはならないがC2 は違ってもよい v=0ではC2 は同じでなくてはならないがC1 は違ってもよい Robert時空は過去のMinkowski時空と正則につながる ワームホール形成を表すことが可能
ワームホール形成の時空 影:Roberts 白: Minkowski(s) 正則な中心がある 初期超曲面 正則な中心がなく、 2つの異なる無限遠 がある超曲面 影:Roberts 白: Minkowski(s) 正則な中心がある 初期超曲面
u=v=0の瞬間的特異点 一般的か? 裸の曲率特異点 弱い特異点 空間的にコンパクトな時空の場合、トポロジーチェンジは特異点か閉じた時間的曲線を伴う (Geroch 1971) 空間的にコンパクトでない場合にも一般的かもしれない 裸の曲率特異点 ワームホール形成の瞬間に現れ、すぐに消える そこから出る因果的動径・非動径測地線がともに存在 弱い特異点 動径測地線に沿ってのParallelly propagating frameでRiemannテンソルの成分が1/λより遅く発散する(λはアフィンパラメータ) TiplerまたKrolakの意味で弱い 測地線に伴うヤコビ場で定義される体積とその微分が特異点で有限
特異点の強さ 測地線N(アフィンλ=0が特異点とする)に沿ってのJacobi場(J(i):i=1,2,3 for timelike and i=1,2 for null)を考え、J(i) で構成される体積Vを考える Tipler strong 特異点でVが0になる 定理:Tipler strongなら は特異点で収束しない Krolak strong 特異点でVは有限だがVの微分が発散 定理:Krolak strongなら は収束しない Nに沿ってのParallelly propagating frame: Timelike Nの場合: Null Nの場合:
(IV)まとめ
まとめ1 動的ワームホールスロートの2つの定義 より洗練された定義は可能か? 光的超曲面上 空間的超曲面 通行可能性と関係 エネルギー条件の破れ あるクラスのワームホールを見逃す 空間的超曲面 通行可能性と無関係 エネルギー条件が保たれる場合もある Schwarzschild時空は動的ワームホール より洗練された定義は可能か?
まとめ2 ワームホール形成を表す厳密解を構成した 問題 一般的なワームホール形成 の性質を知るために、違う 厳密なモデルが有効 Roberts時空とMinkowskiを正則にくっつける Roberts時空はゴーストスカラー場 裸の特異点がワームホール形成の瞬間に現れるが瞬間的に消える 弱い裸の特異点 問題 特異点形成は一般的か? そうだとして、弱い特異点は 一般的か? 一般的なワームホール形成 の性質を知るために、違う 厳密なモデルが有効 From Scientific American
FIN